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経営者の情熱

投稿日時:2006/08/07(月) 18:27rss

●「うちも若返りが必要だから3年以内に息子へのバトンタッチを考えている」という経営者にお会いしました。聞くと、まだ52歳だそうです。息子の年令がではなく、その社長が52歳なのです。

●まだこれから円熟するはずの経営者が、早くも世代交代を考えるには、積極的な理由による場合と消極的なそれとがあります。積極的な理由とは、後継者に任せた方が経営はうまくいくと信じていて、ご自分も他にやりたいことがある場合。消極的な理由とは、「疲れた」とか「飽きた」という社長自身の情熱喪失です。

●ここで問題にしたいのは、消極的な理由です。

●引退するときは誰にでもやってきます。その瞬間まで、社長は社内でだれよりも熱い情熱の持ち主であってほしい。にもかかわらず、情熱喪失に陥るのはなぜでしょうか? 

●先行きが読めないとか、勘が働かなくなったとか、肉体が衰えたとか、いかようにも理由は見つかるでしょう。しかし、そうした表向きの理由の裏にあるもの、それは「夢」がなくなっているということではないでしょうか。夢がなくなると気力も衰えるのです。

●若手ベンチャー社長がマスコミにもてはやされ、20代や30代で成功するケースを多く接するようになりました。大橋巨泉流ライフスタイルにあこがれる経営者も多いそうです。

●そうした、周囲の成功者から学ぶことはあっても自分自身と対比する必要はありません。「彼らに比べて自分は今まで何をやってきたんだろうか」とか、「オレの出番はもう終わったのか」などと思うのは早計の至りです。老け込むにはあまりに若すぎます。

●日本初の地図制作者として有名な伊能忠敬は、養子先の家業再建のために50歳まの時を費やしました。人生50年時代の50歳だから、今でいえば70歳を超えていた感覚です。その後、彼は20歳も年下の若い天文学者の門を叩きました。そして測量術を学び、幕府の許可を得て地図制作を開始したのです。

●それから73年間の生涯を閉じるまで忠敬は日本中をくまなく歩き、彼の没後4年目に弟子たちが跡を継いで、ついに日本地図を完成させました。

●米国のマクドナルドハンバーガー創業者のレイ・クロック氏も、50代半ばまで、ミキサーのセールスマンをやっていました。ケンタッキー・フライド・チキンの創業者カーネルサンダースも60歳を超えるまで1店舗のガソリンスタンドを所有するにすぎない変わり者社長でした。

夢と情熱は肉体年齢を超越します。私たちのクライマックスはまだ来ていないと考えて、もう一段高いところにピークを作ろうではありませんか。

ボードメンバープロフィール

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武沢 信行氏

1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。

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