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あえて部下と特別な関係を結ぶ

投稿日時:2006/10/27(金) 14:38rss

●前号で、「才能ある部下が遅刻の常習犯。あなたならどうしますか?」という質問をしました。代表的なご意見を紹介しましょう。

◇服務規程や就業規則に違反する社員は、規定にそって罰することが組織の秩序維持には欠かせない。
◇遅れたら、その分よぶんに働いてもらえば結構だ。
◇時間を守れないのは時間にルーズな証拠。ましてや常習犯なら解雇する。
◇才能重視で考えるのなら、フレックスタイム制を検討するべきでは。

どの回答も誤りではありません。各社各様の対応策があってしかるべきでしょう。
しかし、それらの行動の前にやるべきことがあるはずです。

●前号のマガジンでご紹介したギャラップ調査によると、すぐれたマネージャーは、異口同音に次のような回答をしたといいます。

まず、理由を聞く

●この答えはマネージャーと部下との信頼関係をあらわしています。
「理由のいかんにかかわらず、遅刻は遅刻。つまり規則違反なので罰する」
というのではなく、まず理由を聞く。それは、甘やかすという意味ではありません。
上司と部下との間にある特別な信頼関係の重要さです。

固定観念にとらわれて物事を考えてはいけません。この場合の固定観念とは、

◇誰であろうと規則やルールを守らなければならない。したがって、今のルールを守れない人間には、ペナルティーを課さねばならない。
◇遅刻は本人の怠慢によるもので、理由のいかんを問わず許すわけにはいかない。
◇社員は平等に扱うべきであって、個人ごとに異なる対応をしていては組織が維持できない。

これらはいかにも、もっとらしく聞こえる固定観念です。

●もちろん、単なる怠慢と甘えによってルールを破る社員もいます。それに対しては毅然とした処置が必要でしょう。しかし、その場合でもまず、理由を聞くのが先決です。


●才能ある部下、しかし遅刻の常習犯、こんな部下に理由を聞くといろいろな個人的事情がみえてきます。単なる私生活のルーズさもあるでしょう。でも、もしかすると家族の健康問題、バスの運行事情、本人の体調の問題などが隠れているのかも知れない。

●部下がもつ才能を存分に活かし、組織の目的を達成することが経営者やマネージャーの任務です。そのためであれば、捨てなければならない常識というものがあります。

部下全員に同じような貢献を期待してはいけない。たとえば、営業課長が3人いれば3人とも異なる成果を要求して良いはずです。社員が20人いれば20通りの期待があっても構いません。それを鋳型にあてはめて画一的な評価基準を作ろうとするところに無理が生じます。

●有能な部下ほど上司に対して、特別な扱いと特別な関係を期待するのです。それを無視し、全員が同じ時間に勤務を開始し、同じ時間に終わることに価値をおく意味はありません。

●経営の現場では、欠点を是正させるような教育指導が目につきますが、中小企業やベンチャーには欠点だらけの人間が集まるものと開き直りましょう。いや、それこそ武器なのです。

●欠点をはるかにしのぐ個人的才能をもっていれば、その欠点を補う工夫をするのがマネージャーの仕事です。誤解をおそれずに言えば、社員に対しては不平等に接し、えこひいきも辞さないことが、中小企業の強みを活かすことにつながるのです。

ボードメンバープロフィール

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武沢 信行氏

1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。

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