武沢信行の「社長の学校・事始め」 | 経営者会報 (社長ブログ)
社長業を極めるためのカリキュラムについて、「日本的経営のリニューアル」という視点から紹介します
社長は孤独か
●二人の経営者と夕食を共にしたときの話。一方の社長が、「社長は孤独だ」と言い出し、もう一方が、「孤独だなんて思ったこともない」と反論して座が盛り上がりました。主観の問題なので決着はつかなかったのですが、気になるテーマでした。
●そんなある日、東洋人物学・政治哲学の権威・安岡正篤(やすおか まさひろ)氏の書に、それに近い話を見つけました。ご紹介しましょう。
●周の時代に生きた劉峻という人の名論「広絶交論」というものがあります。誰かれなく絶交するという、面白くかつむずかしい作者による論文です。まず、作者は人と人の交わりを大きく二種類に大別しています。
「素交」・・・裸の交わり、人間の生地のつき合いのこと。
「俗交」・・・利益を期待した交わりのこと。
●そして、「俗交」にも5種類の交わりがあるといいます。
◇「勢交」・・・相手の勢いや勢力との交わり
◇「賄交」・・・儲かる相手と付き合う、あるいは金を出させる交わり
◇「談交」・・・マスコミなどとの交わりで、名声をあげ、自己宣伝に期待する交わり
◇「量交」・・・相手の景気次第であっちへ行ったりこっちへ着いたりする交わり
◇「窮交」・・・首が回らなくなり、あそこへ行けば助けてもらえるだろうという交わり
●作者の劉峻は、これらの世俗の交わりは人間と人間、精神と精神が結びつくのではなく、手段的な交わりゆえに、すべて絶交するといいます。
●他方、裸の交わりのほうは、お互いに名もなく、金もなく、同病相憐れむ、同窮相憐れむ。だから、正味の交わりができるゆえに本当の交わりができるというのです。
●資本主義経済の今の日本ですから、その当時の中国と単純に比べるわけにはいきません。したがって、この作者のように「俗交」そのものを否定することはできない、と思います。
●しかし、ビジネスだから「俗交」で良いんだ、とも言い切れません。むしろ、社員との関係も顧客との関係も可能な限り、「素交」に近づける努力が必要なのではないでしょうか。こんな話もあります。
●関ヶ原の合戦前に、大谷吉隆が盟友の石田三成に宛てた手紙が残っています。これも金銭と人間関係に関する友人への忠告です。独自に要約すると、こんな内容です。
「最近の君は、金を大切にしすぎで、人にも金さえ与えれば何とでもなると思っているようだ。家人(家族や部下)にもことごとく、そうしているように見える。はなはだしく心得違いをしているようだ。主人が貧しい時には、おのずと礼儀を厚くし、人を尊ぶので、家人もそれに応えてくれる。」
「やがて、主人が豊かになり、給与をたくさん与え、気前もよくなる。すると、部下は、『これくらい働いているのだからそれ位もらって当然』と思うようになる。はじめは、その家に望みをいだいて来た者も、後には希望を見失い、貧しき主人が礼儀厚かったころよりも働いてくれなくなるものだ。」
●この主人を社長と置き換えてもよいでしょう。日本と置き換えてもよい。リーダーたるもの、家人への接し方において原点を忘れてはいけません。
●ところで、「自分は孤独だ」という冒頭の社長は、そうした交わりが足りなくなっているのではないでしょうか。
●そんなある日、東洋人物学・政治哲学の権威・安岡正篤(やすおか まさひろ)氏の書に、それに近い話を見つけました。ご紹介しましょう。
●周の時代に生きた劉峻という人の名論「広絶交論」というものがあります。誰かれなく絶交するという、面白くかつむずかしい作者による論文です。まず、作者は人と人の交わりを大きく二種類に大別しています。
「素交」・・・裸の交わり、人間の生地のつき合いのこと。
「俗交」・・・利益を期待した交わりのこと。
●そして、「俗交」にも5種類の交わりがあるといいます。
◇「勢交」・・・相手の勢いや勢力との交わり
◇「賄交」・・・儲かる相手と付き合う、あるいは金を出させる交わり
◇「談交」・・・マスコミなどとの交わりで、名声をあげ、自己宣伝に期待する交わり
◇「量交」・・・相手の景気次第であっちへ行ったりこっちへ着いたりする交わり
◇「窮交」・・・首が回らなくなり、あそこへ行けば助けてもらえるだろうという交わり
●作者の劉峻は、これらの世俗の交わりは人間と人間、精神と精神が結びつくのではなく、手段的な交わりゆえに、すべて絶交するといいます。
●他方、裸の交わりのほうは、お互いに名もなく、金もなく、同病相憐れむ、同窮相憐れむ。だから、正味の交わりができるゆえに本当の交わりができるというのです。
●資本主義経済の今の日本ですから、その当時の中国と単純に比べるわけにはいきません。したがって、この作者のように「俗交」そのものを否定することはできない、と思います。
●しかし、ビジネスだから「俗交」で良いんだ、とも言い切れません。むしろ、社員との関係も顧客との関係も可能な限り、「素交」に近づける努力が必要なのではないでしょうか。こんな話もあります。
●関ヶ原の合戦前に、大谷吉隆が盟友の石田三成に宛てた手紙が残っています。これも金銭と人間関係に関する友人への忠告です。独自に要約すると、こんな内容です。
「最近の君は、金を大切にしすぎで、人にも金さえ与えれば何とでもなると思っているようだ。家人(家族や部下)にもことごとく、そうしているように見える。はなはだしく心得違いをしているようだ。主人が貧しい時には、おのずと礼儀を厚くし、人を尊ぶので、家人もそれに応えてくれる。」
「やがて、主人が豊かになり、給与をたくさん与え、気前もよくなる。すると、部下は、『これくらい働いているのだからそれ位もらって当然』と思うようになる。はじめは、その家に望みをいだいて来た者も、後には希望を見失い、貧しき主人が礼儀厚かったころよりも働いてくれなくなるものだ。」
●この主人を社長と置き換えてもよいでしょう。日本と置き換えてもよい。リーダーたるもの、家人への接し方において原点を忘れてはいけません。
●ところで、「自分は孤独だ」という冒頭の社長は、そうした交わりが足りなくなっているのではないでしょうか。
ボードメンバープロフィール
武沢 信行氏
1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。
- 2014年4月(1)
- 2014年3月(1)
- 2014年2月(1)
- 2014年1月(2)
- 2013年12月(3)
- 2013年11月(3)
- 2013年10月(3)
- 2013年9月(2)
- 2013年8月(2)
- 2013年7月(1)
- 2013年5月(2)
- 2013年4月(2)
- 2013年3月(3)
- 2013年2月(1)
- 2012年11月(1)
- 2012年9月(1)
- 2012年8月(3)
- 2012年7月(2)
- 2012年6月(4)
- 2012年5月(2)
- 2012年4月(2)
- 2012年3月(3)
- 2012年2月(2)
- 2012年1月(2)
- 2011年12月(3)
- 2011年11月(2)
- 2011年10月(3)
- 2011年9月(5)
- 2011年8月(3)
- 2011年7月(4)
- 2011年6月(4)
- 2011年5月(4)
- 2011年4月(4)
- 2011年3月(1)
- 2011年2月(3)
- 2011年1月(4)
- 2010年12月(4)
- 2010年11月(5)
- 2010年10月(4)
- 2010年9月(4)
- 2010年8月(3)
- 2010年7月(5)
- 2010年6月(4)
- 2010年5月(4)
- 2010年4月(5)
- 2010年3月(4)
- 2010年2月(4)
- 2010年1月(4)
- 2009年12月(4)
- 2009年11月(4)
- 2009年10月(4)
- 2009年9月(4)
- 2009年8月(2)
- 2009年7月(3)
- 2009年6月(3)
- 2009年5月(3)
- 2009年4月(5)
- 2009年3月(3)
- 2009年2月(4)
- 2009年1月(1)
- 2008年12月(3)
- 2008年11月(4)
- 2008年10月(3)
- 2008年9月(3)
- 2008年8月(2)
- 2008年7月(3)
- 2008年6月(4)
- 2008年5月(3)
- 2008年4月(3)
- 2008年3月(3)
- 2008年2月(4)
- 2008年1月(3)
- 2007年12月(4)
- 2007年11月(5)
- 2007年10月(5)
- 2007年9月(3)
- 2007年8月(5)
- 2007年7月(4)
- 2007年6月(5)
- 2007年5月(3)
- 2007年4月(4)
- 2007年3月(5)
- 2007年2月(4)
- 2007年1月(4)
- 2006年12月(5)
- 2006年11月(4)
- 2006年10月(4)
- 2006年9月(4)
- 2006年8月(7)
- 2006年7月(3)
- 2006年6月(4)
- がんばれ社長 2014 [04/25]
- 1,000人の社長を小説にしたい [03/20]
- かわいい子には・・・ [02/07]
- 数字に弱い社長 [01/28]
- 行(ぎょう)のある生活 [01/10]
- 婚約体験記 [12/27]
- 評価すべきは継続力 [12/20]
- 熟す [12/06]
- D社の貯蓄作戦 [11/22]
- 現金の迫力 [11/14]
- 私の抵抗勢力 [11/08]
- 勝因は逃げなかったこと [10/25]
- すごい朝礼 [10/11]
- ヘンリーおじさん [10/04]
- お金の支払いに姿勢が出る [09/27]
- 京都・永観堂の阿修羅 [09/13]
- 真摯(しんし) [08/30]
- 社長の自主トレ・キャンプ [08/23]
- 経営者の脳 [07/05]
- 自分を気持ちよく動かす [05/31]