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社長は孤独か

投稿日時:2006/11/24(金) 17:38rss

●二人の経営者と夕食を共にしたときの話。一方の社長が、「社長は孤独だ」と言い出し、もう一方が、「孤独だなんて思ったこともない」と反論して座が盛り上がりました。主観の問題なので決着はつかなかったのですが、気になるテーマでした。

●そんなある日、東洋人物学・政治哲学の権威・安岡正篤(やすおか まさひろ)氏の書に、それに近い話を見つけました。ご紹介しましょう。

●周の時代に生きた劉峻という人の名論「広絶交論」というものがあります。誰かれなく絶交するという、面白くかつむずかしい作者による論文です。まず、作者は人と人の交わりを大きく二種類に大別しています。

「素交」・・・裸の交わり、人間の生地のつき合いのこと。
「俗交」・・・利益を期待した交わりのこと。

●そして、「俗交」にも5種類の交わりがあるといいます。

◇「勢交」・・・相手の勢いや勢力との交わり
◇「賄交」・・・儲かる相手と付き合う、あるいは金を出させる交わり
◇「談交」・・・マスコミなどとの交わりで、名声をあげ、自己宣伝に期待する交わり
◇「量交」・・・相手の景気次第であっちへ行ったりこっちへ着いたりする交わり
◇「窮交」・・・首が回らなくなり、あそこへ行けば助けてもらえるだろうという交わり

●作者の劉峻は、これらの世俗の交わりは人間と人間、精神と精神が結びつくのではなく、手段的な交わりゆえに、すべて絶交するといいます。

●他方、裸の交わりのほうは、お互いに名もなく、金もなく、同病相憐れむ、同窮相憐れむ。だから、正味の交わりができるゆえに本当の交わりができるというのです。
●資本主義経済の今の日本ですから、その当時の中国と単純に比べるわけにはいきません。したがって、この作者のように「俗交」そのものを否定することはできない、と思います。

●しかし、ビジネスだから「俗交」で良いんだ、とも言い切れません。むしろ、社員との関係も顧客との関係も可能な限り、「素交」に近づける努力が必要なのではないでしょうか。こんな話もあります。

●関ヶ原の合戦前に、大谷吉隆が盟友の石田三成に宛てた手紙が残っています。これも金銭と人間関係に関する友人への忠告です。独自に要約すると、こんな内容です。

「最近の君は、金を大切にしすぎで、人にも金さえ与えれば何とでもなると思っているようだ。家人(家族や部下)にもことごとく、そうしているように見える。はなはだしく心得違いをしているようだ。主人が貧しい時には、おのずと礼儀を厚くし、人を尊ぶので、家人もそれに応えてくれる。」
「やがて、主人が豊かになり、給与をたくさん与え、気前もよくなる。すると、部下は、『これくらい働いているのだからそれ位もらって当然』と思うようになる。はじめは、その家に望みをいだいて来た者も、後には希望を見失い、貧しき主人が礼儀厚かったころよりも働いてくれなくなるものだ。」

●この主人を社長と置き換えてもよいでしょう。日本と置き換えてもよい。リーダーたるもの、家人への接し方において原点を忘れてはいけません。

●ところで、「自分は孤独だ」という冒頭の社長は、そうした交わりが足りなくなっているのではないでしょうか。

ボードメンバープロフィール

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武沢 信行氏

1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。

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