武沢信行の「社長の学校・事始め」 | 経営者会報 (社長ブログ)
社長業を極めるためのカリキュラムについて、「日本的経営のリニューアル」という視点から紹介します
成果主義に欠けるもの
●近頃、大企業・中小企業はもちろんのこと、家業と言っても差し支えないような零細企業にまで、成果主義賃金が普及するようになりました。たとえば、先日お会いしたリフォーム業(社員数2名、パート1名)の会社にも社員の評価表があり、驚かされた記憶があります。
●かつて、社員の雇用維持と生活の保証が、経営者にとってのいわば義務になっていました。しかし、最近は社員にプロフェッショナリズムが要求される時代になり、「成果主義」や「能力主義」の名の下に、会社に貢献した分だけ、報酬を分配するという考え方になってきています。
●私は、成果主義・能力主義が普及していくこと自体は賛成です。ですが、そうした制度さえ導入すれば、優秀な社員が皆やる気になってくれる、と信じている社長には、警告を発したいと思っています。
●成果主義は、昔の西洋の農園で発達したものだといわれています。農地所有者は、収穫時期になると人手が足りなくなるので、臨時に人を雇うことで、すみやかな収穫を期待しました。ですが、給料を固定給や時間給で支払うと、個人の能力差が反映されないため、出来高で支払うことを考えました。
●そこで一部の農地所有者は、他の農園よりも早く収穫を終え、いち早く市場に出荷するために、労働者に対する出来高報酬率を引き上げて、彼らの勤労意欲をそそろうとしたのです。
●少しでも多くのお金がほしい労働者は、報酬率の高い農園にあっさり移籍しますが、お金にこだわらない労働者は移籍しません。たとえば、こっちの農園は、休憩があるとか、食事が付いているとか、人間関係が良い、などといった理由が、その代表格です。
●上記の例のように、賃金の単純な上げ下げだけが、人間の勤労意欲をコントロールできるわけではないとわかっています。
●では、賃金以外にどのような要素が人の意欲を左右するのでしょうか。それは、一言でいうと「やりがい」です。この「やりがい」を因数分解していくと、
・理念や夢・ビジョンといった目的意識を共有できる
・物理的、精神的に恵まれる職場環境が用意されている
・信頼や尊敬できる上司や経営者がいる
・研修や教育などを通じて、自分が成長できる
・自由裁量の余地がある
・仕事そのものが面白い
などといった要素があります。これらをうまく組み合わせて、突出した魅力を作っていけば良いのです。
●話をわかりやすくするために、読者のみなさんに質問をしてみましょう。あなたがこれからアルバイトをするとしたら、次のどの会社に申し込みますか?
・ヤマト運輸
・ディズニーランド
・マクドナルド
・ヒロセ電機
・牛角
・ブックオフ
・セブンイレブン
・ユニクロ
・がんばれ社長
●もちろんあなたの好みなので、正解はありません。これらの企業に共通しているのは、思ったほど時給が高くないことです。しかし、パートやアルバイターも、場合によっては社員以上の自覚をもって、働いているような会社です(一番最後は私の会社です。少々冗談気味ですが、まったくの冗談でもありません)。
●たとえば、東京ディズニーランド・ディズニーシーでは、正社員が2,500名、パート社員(準社員)が2万人が働いていますが、パート社員の時間給は1,000円前後です。マクドナルドのアルバイトは、最高ランクでも1,000円強。パートが生産現場を取り仕切るため、「パート王国」とも呼ばれるヒロセ電機ですら、時間給が1,000円を切る水準、といずれもけっして高い時給ではありません。(ただし、賃金データは少し古くて2002年のものです)
●これらの事例を見ると、パートの戦力化と賃金水準は、けっして強い相関関係があるわけではないと、ハッキリしてきました。もちろん、パートだけではなく、正社員にも同じことが言えるのです。
●以前、「日経ビジネス」にこんな記事が載っていました。マクドナルドのアルバイト歴が9年になるPさんは、28歳の大学院生なのですが、ASWと呼ばれるアルバイト社員の中における最高ランクまで上りつめたそうです。Pさんの時間給は1,050円。他にも時給が高いアルバイトがあるのに、なぜ9年も続けたのかという質問に、彼は「面白みの更新があったんです」と答えました。
●「面白みの更新」とは素晴らしい表現です。経験を積むごとに、新しい仕事・より責任ある仕事を任され、今では40人いるアルバイトの評価をする立場にあるそうです。彼の言葉こそ、社員戦力化の大きな鍵を握っています。
●「やりがい、面白み、楽しみ、喜び、感動」。これらすべてが更新されつづけるような会社でなければいけません。
●あなたの会社にどのような「更新」があるか、今一度点検してみませんか。
●かつて、社員の雇用維持と生活の保証が、経営者にとってのいわば義務になっていました。しかし、最近は社員にプロフェッショナリズムが要求される時代になり、「成果主義」や「能力主義」の名の下に、会社に貢献した分だけ、報酬を分配するという考え方になってきています。
●私は、成果主義・能力主義が普及していくこと自体は賛成です。ですが、そうした制度さえ導入すれば、優秀な社員が皆やる気になってくれる、と信じている社長には、警告を発したいと思っています。
●成果主義は、昔の西洋の農園で発達したものだといわれています。農地所有者は、収穫時期になると人手が足りなくなるので、臨時に人を雇うことで、すみやかな収穫を期待しました。ですが、給料を固定給や時間給で支払うと、個人の能力差が反映されないため、出来高で支払うことを考えました。
●そこで一部の農地所有者は、他の農園よりも早く収穫を終え、いち早く市場に出荷するために、労働者に対する出来高報酬率を引き上げて、彼らの勤労意欲をそそろうとしたのです。
●少しでも多くのお金がほしい労働者は、報酬率の高い農園にあっさり移籍しますが、お金にこだわらない労働者は移籍しません。たとえば、こっちの農園は、休憩があるとか、食事が付いているとか、人間関係が良い、などといった理由が、その代表格です。
●上記の例のように、賃金の単純な上げ下げだけが、人間の勤労意欲をコントロールできるわけではないとわかっています。
●では、賃金以外にどのような要素が人の意欲を左右するのでしょうか。それは、一言でいうと「やりがい」です。この「やりがい」を因数分解していくと、
・理念や夢・ビジョンといった目的意識を共有できる
・物理的、精神的に恵まれる職場環境が用意されている
・信頼や尊敬できる上司や経営者がいる
・研修や教育などを通じて、自分が成長できる
・自由裁量の余地がある
・仕事そのものが面白い
などといった要素があります。これらをうまく組み合わせて、突出した魅力を作っていけば良いのです。
●話をわかりやすくするために、読者のみなさんに質問をしてみましょう。あなたがこれからアルバイトをするとしたら、次のどの会社に申し込みますか?
・ヤマト運輸
・ディズニーランド
・マクドナルド
・ヒロセ電機
・牛角
・ブックオフ
・セブンイレブン
・ユニクロ
・がんばれ社長
●もちろんあなたの好みなので、正解はありません。これらの企業に共通しているのは、思ったほど時給が高くないことです。しかし、パートやアルバイターも、場合によっては社員以上の自覚をもって、働いているような会社です(一番最後は私の会社です。少々冗談気味ですが、まったくの冗談でもありません)。
●たとえば、東京ディズニーランド・ディズニーシーでは、正社員が2,500名、パート社員(準社員)が2万人が働いていますが、パート社員の時間給は1,000円前後です。マクドナルドのアルバイトは、最高ランクでも1,000円強。パートが生産現場を取り仕切るため、「パート王国」とも呼ばれるヒロセ電機ですら、時間給が1,000円を切る水準、といずれもけっして高い時給ではありません。(ただし、賃金データは少し古くて2002年のものです)
●これらの事例を見ると、パートの戦力化と賃金水準は、けっして強い相関関係があるわけではないと、ハッキリしてきました。もちろん、パートだけではなく、正社員にも同じことが言えるのです。
●以前、「日経ビジネス」にこんな記事が載っていました。マクドナルドのアルバイト歴が9年になるPさんは、28歳の大学院生なのですが、ASWと呼ばれるアルバイト社員の中における最高ランクまで上りつめたそうです。Pさんの時間給は1,050円。他にも時給が高いアルバイトがあるのに、なぜ9年も続けたのかという質問に、彼は「面白みの更新があったんです」と答えました。
●「面白みの更新」とは素晴らしい表現です。経験を積むごとに、新しい仕事・より責任ある仕事を任され、今では40人いるアルバイトの評価をする立場にあるそうです。彼の言葉こそ、社員戦力化の大きな鍵を握っています。
●「やりがい、面白み、楽しみ、喜び、感動」。これらすべてが更新されつづけるような会社でなければいけません。
●あなたの会社にどのような「更新」があるか、今一度点検してみませんか。
ボードメンバープロフィール
武沢 信行氏
1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。
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