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食うために生きる?

投稿日時:2007/11/09(金) 16:53rss

聖書に「人はパンのみに生きるにあらず」とありますが、会社にとっても「利益のみに生きるにあらず」と、同じことが言えます。そのこと自体は、経営者であれば誰もが承知していることでしょう。経営をしていて利益が出なくなってくると、頭の中はとにかく利益を出すことでいっぱいになり、ついには本末転倒の経営をしてしまうものです。

●以前、ある総菜メーカーを訪れたときのことです。その会社は、地元では有名なのですが、なにせ競争環境が激烈なため、近年は減収減益をくり返し、3年前からずっと赤字経営ということでした。

●訪問時、社長は工場に出ていて不在でした。社長室で待っていた私は、壁面に飾られた表彰状や感謝状の数々に混じった、「経営目標」と書いた紙を見つけました。

●その紙には「最重要テーマ:黒字体質の定着」と書かれていたのですが、その次に書いてある内容を見て、私はびっくりしたのです。それは次のようなものでした。

「今期改革課題」
1.顧客の選別と重点営業
2.経費予算の二割カット
3.人件費の削減、そのための余剰人員削減と給与カット断行
●そこへ社長が戻ってきましたので、さっそく人件費のことを尋ねてみると、「今の月間人件費5,000万円を、今期中に3,500万円にすることで労働分配率が60%を切り、収支も黒字に転換する予定」というものでした。

●たしかに数字はその通りかもしれません。しかし、リストラというものは経営目標として掲げて発表するものではありません。会社が生き残るための手段として、やむを得ず行うべきものであるはずなのです。たとえるなら、手術というものがそれ自体が目的ではなく、「健康になって明るく生活すること」が目的であるのと同じことなのです。

●たしかに赤字企業にとっては、黒字転換が最大の目標でしょう。その手段として大胆なリストラが必要になることもあります。しかし経営目標というのは、主体的に入手すべきものであり、決して守りきって得られるものではないのです

●私は社長に、「あなたは寝ても覚めても人件費抑制の夢を見るのですか?」と、少しいじわるな質問をしてみました。彼は「そんなバカな」と笑っていたので安心しました。

●社長とは、良い会社になることを夢見たいものなのです。その良い会社とはどんな状態なのかを定義するのが経営目標です

●この社長、実は大変勉強熱心な方で、夢と理想がびっしり書かれたノートを見せてもらいました。相当年季が入ったものでした。しかし、このノートの内容を社内で発表したことはないのだそうです。理由を聞くと、「会社が赤字では、部下に厳しい要求ばかりせざるを得ない。将来の夢や自分の哲学を語っている場合ではない」とのことでした。

●そこで今度は「余裕ができたら何をしたいですか?」と質問すると、「真っ先に新工場の建設に着手したい。図面だけはあるのですが、この工場を本当に実現させることで、提供している弁当が今より格段にグレードアップする」と、目をイキイキと輝かせて熱弁をふるいました。

●私はこのとき強く思ったのです。「やはり、会社は利益のためにあるのではなく、夢を実現するためにあるのだ」と。

ボードメンバープロフィール

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武沢 信行氏

1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。

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