武沢信行の「社長の学校・事始め」 | 経営者会報 (社長ブログ)
社長業を極めるためのカリキュラムについて、「日本的経営のリニューアル」という視点から紹介します
俗交から素交へ
●関ヶ原の合戦前に、大谷吉隆が盟友の石田三成に宛てた手紙が残っています。要約すると、こんな内容です。
――最近の君は金を大切にしすぎだ。人にも金さえ与えれば何とでもなると思っているのか、家人(家族や部下)にもことごとくそうしているように見受けられることから、甚だしい心得違いをしているのではないだろうか。
主人が貧しい時は、自然と礼儀をわきまえ、人を尊ぶから、家人もそれに応えてくれる。だが、主人が豊かになり気前もよくなってくると、部下は「働いているのだから、これぐらいもらって当然」と思うようになる。
はじめは、その家に望みをいだいて来た者も、主人がそうなってくると希望を見失い、貧しいが礼儀厚かったころよりも働いてくれなくなるものだ。
●とても400年前の戦国武将の手紙とは思えない、現代にも十分通用する忠告ではないでしょうか。
●たとえば、この手紙にある「主人」は「経営者」と置きかえることができます。経営者は、まず人間として一人ひとりの社員を尊重しなければなりません。言い換えれば、尊重したくなるような社員を採用すべき、ということでもあります。
●また、中国・周の時代を生きた劉峻という思想家が、「広絶交論」という論文を書いています。それによれば、そもそも人間関係には「素交」と「俗交」の二種類があり、「素交」とは裸の交わり、つまり人間の地の付き合いを指し、「俗交」とは何らかの利益を期待した交わりのことだそうです。
●さらに「俗交」にも5種類あり、次のようなものがあります。
◇「勢交」:相手の勢い、勢力を期待した交わり
◇「賄交」:儲かる相手とつき合う、金を出させるといった、金銭を期待した交わり
◇「談交」:自分の名声を上げられる、自己宣伝を期待した交わり
◇「量交」:相手の景気次第で、態度を変えるような交わり
◇「窮交」:首が回らなくなったときの、援助を期待した交わり
●会社の採用活動で出会った社長と社員に例えるなら、その一番最初の出会いそのものは、すでに「俗交」の色合いが濃いものです。ですが、資本主義社会の中で、「素交」だけを賛美して「俗交」を拒否していては、劉峻のように次々に絶交する羽目になり、ついには友達が誰もいなくなってしまいます。
●だからといって、ビジネスだからすべて「俗交」で良いんだと割り切ることもできません。大切なのは、「経営者と社員」「会社と顧客」の関係を「素交」に近づけていく努力です。そのためにも「俗交」と「素交」、この言葉はぜひ覚えておきましょう。
――最近の君は金を大切にしすぎだ。人にも金さえ与えれば何とでもなると思っているのか、家人(家族や部下)にもことごとくそうしているように見受けられることから、甚だしい心得違いをしているのではないだろうか。
主人が貧しい時は、自然と礼儀をわきまえ、人を尊ぶから、家人もそれに応えてくれる。だが、主人が豊かになり気前もよくなってくると、部下は「働いているのだから、これぐらいもらって当然」と思うようになる。
はじめは、その家に望みをいだいて来た者も、主人がそうなってくると希望を見失い、貧しいが礼儀厚かったころよりも働いてくれなくなるものだ。
●とても400年前の戦国武将の手紙とは思えない、現代にも十分通用する忠告ではないでしょうか。
●たとえば、この手紙にある「主人」は「経営者」と置きかえることができます。経営者は、まず人間として一人ひとりの社員を尊重しなければなりません。言い換えれば、尊重したくなるような社員を採用すべき、ということでもあります。
●また、中国・周の時代を生きた劉峻という思想家が、「広絶交論」という論文を書いています。それによれば、そもそも人間関係には「素交」と「俗交」の二種類があり、「素交」とは裸の交わり、つまり人間の地の付き合いを指し、「俗交」とは何らかの利益を期待した交わりのことだそうです。
●さらに「俗交」にも5種類あり、次のようなものがあります。
◇「勢交」:相手の勢い、勢力を期待した交わり
◇「賄交」:儲かる相手とつき合う、金を出させるといった、金銭を期待した交わり
◇「談交」:自分の名声を上げられる、自己宣伝を期待した交わり
◇「量交」:相手の景気次第で、態度を変えるような交わり
◇「窮交」:首が回らなくなったときの、援助を期待した交わり
●会社の採用活動で出会った社長と社員に例えるなら、その一番最初の出会いそのものは、すでに「俗交」の色合いが濃いものです。ですが、資本主義社会の中で、「素交」だけを賛美して「俗交」を拒否していては、劉峻のように次々に絶交する羽目になり、ついには友達が誰もいなくなってしまいます。
●だからといって、ビジネスだからすべて「俗交」で良いんだと割り切ることもできません。大切なのは、「経営者と社員」「会社と顧客」の関係を「素交」に近づけていく努力です。そのためにも「俗交」と「素交」、この言葉はぜひ覚えておきましょう。
ボードメンバープロフィール
武沢 信行氏
1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。
- 2014年4月(1)
- 2014年3月(1)
- 2014年2月(1)
- 2014年1月(2)
- 2013年12月(3)
- 2013年11月(3)
- 2013年10月(3)
- 2013年9月(2)
- 2013年8月(2)
- 2013年7月(1)
- 2013年5月(2)
- 2013年4月(2)
- 2013年3月(3)
- 2013年2月(1)
- 2012年11月(1)
- 2012年9月(1)
- 2012年8月(3)
- 2012年7月(2)
- 2012年6月(4)
- 2012年5月(2)
- 2012年4月(2)
- 2012年3月(3)
- 2012年2月(2)
- 2012年1月(2)
- 2011年12月(3)
- 2011年11月(2)
- 2011年10月(3)
- 2011年9月(5)
- 2011年8月(3)
- 2011年7月(4)
- 2011年6月(4)
- 2011年5月(4)
- 2011年4月(4)
- 2011年3月(1)
- 2011年2月(3)
- 2011年1月(4)
- 2010年12月(4)
- 2010年11月(5)
- 2010年10月(4)
- 2010年9月(4)
- 2010年8月(3)
- 2010年7月(5)
- 2010年6月(4)
- 2010年5月(4)
- 2010年4月(5)
- 2010年3月(4)
- 2010年2月(4)
- 2010年1月(4)
- 2009年12月(4)
- 2009年11月(4)
- 2009年10月(4)
- 2009年9月(4)
- 2009年8月(2)
- 2009年7月(3)
- 2009年6月(3)
- 2009年5月(3)
- 2009年4月(5)
- 2009年3月(3)
- 2009年2月(4)
- 2009年1月(1)
- 2008年12月(3)
- 2008年11月(4)
- 2008年10月(3)
- 2008年9月(3)
- 2008年8月(2)
- 2008年7月(3)
- 2008年6月(4)
- 2008年5月(3)
- 2008年4月(3)
- 2008年3月(3)
- 2008年2月(4)
- 2008年1月(3)
- 2007年12月(4)
- 2007年11月(5)
- 2007年10月(5)
- 2007年9月(3)
- 2007年8月(5)
- 2007年7月(4)
- 2007年6月(5)
- 2007年5月(3)
- 2007年4月(4)
- 2007年3月(5)
- 2007年2月(4)
- 2007年1月(4)
- 2006年12月(5)
- 2006年11月(4)
- 2006年10月(4)
- 2006年9月(4)
- 2006年8月(7)
- 2006年7月(3)
- 2006年6月(4)
- がんばれ社長 2014 [04/25]
- 1,000人の社長を小説にしたい [03/20]
- かわいい子には・・・ [02/07]
- 数字に弱い社長 [01/28]
- 行(ぎょう)のある生活 [01/10]
- 婚約体験記 [12/27]
- 評価すべきは継続力 [12/20]
- 熟す [12/06]
- D社の貯蓄作戦 [11/22]
- 現金の迫力 [11/14]
- 私の抵抗勢力 [11/08]
- 勝因は逃げなかったこと [10/25]
- すごい朝礼 [10/11]
- ヘンリーおじさん [10/04]
- お金の支払いに姿勢が出る [09/27]
- 京都・永観堂の阿修羅 [09/13]
- 真摯(しんし) [08/30]
- 社長の自主トレ・キャンプ [08/23]
- 経営者の脳 [07/05]
- 自分を気持ちよく動かす [05/31]