武沢信行の「社長の学校・事始め」 | 経営者会報 (社長ブログ)
社長業を極めるためのカリキュラムについて、「日本的経営のリニューアル」という視点から紹介します
雇用を守りたいのはやまやまだが その2
<前号の続き>
●派遣切りによって失業した人たちは、たしかにお気の毒だと思います。財布の中に50円しかないとか、おにぎりをもらって人の優しさに涙が出た、というような報道は、お涙ちょうだい話のネタとしては格好の題材でしょう。
●しかし、そうなった責任は派遣契約を解除した企業のせいではありません。前回も書いたとおり、企業は最初に結んだ契約にしたがって動いているだけです。失業して収入が途絶えたことの責任は誰か、それは半分以上が本人自身にあると私は思います。決して彼らを一方的な被害者扱いにしてはなりません。それが自由主義であり市場の原理なのですから。
●同時に、失業した彼らが今まで働いてきた勤務先の経営者にも責任の一端があります。いままでの勤務先が社員教育をきちんとやってくれる経営者であったならば、どこにも行き先がないという社員を作ることはなかったはずです。ですから、社員教育に力を入れるということは将来の失業者を作らないための貢献であることを、経営者は自覚しましょう。
●ところで、新聞やテレビを見ていると識者たちが「派遣切りの次は正社員切りだ。経営者は何があっても雇用を守れ!」などと語っていますが、第三者に言われるまでもなく、(特に中小企業の)経営者は雇用を守ることの責任を大変強く感じています。「いままで一緒にやってきた社員をクビにすることほど辛くて嫌なことはない」と、どの経営者も言っているのです。
●しかし、現実問題として「雇用を守っていたら、企業が守れない」という会社もたくさんあります。そんな会社に対しては、私は「勇気をもって、雇用よりも企業を守ってほしい」と申し上げています。もちろん、どさくさまぎれの安易な解雇は許されないので、ギリギリまで粘らなくてはなりません。そこで、順序としてやるべきことについて、解説しましょう。
1.助成金や緊急融資制度の勉強
雇用を守るために必死になってがんばっている会社には助成金が出ます。あなたの会社も該当するのかどうかも含めて、厚労省のホームページで調べるか、社労士さんに相談してみましょう。
*参考* 厚生労働省「事業主の方への給付金のご案内」
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/index.html
同様に、国からの緊急制度融資もスタートしています。「うちはもう借金はできない」と決め込むのではなく、銀行や公庫などの金融機関に相談して、制度融資が受けられるよう努力しましょう。
2.役員報酬のカット
責任をまっさきに負うべきは経営陣です。業績が悪い会社はすぐにでも、社長の報酬を生活できるぎりぎりのラインまで大幅カットしましょう。他の役員の報酬も同様に、社長の減額幅に準じてカットしましょう。
3.正社員やパートアルバイトのボーナス支給ストップまたは大幅カット
夏の賞与、冬の賞与がゼロ円、またはゼロ程度のものになる見通しを今から発表しておきましょう。春の定期昇給についても同様です。ベアゼロまたは減給も検討すべきかもしれません。ただし、業績目標の達成状況に応じて、昨年並みあるいは昨年以上に支払うことも可能であることを、同時に示しておきましょう。
4.給与や時間給、手当などの削減
賞与の次に給与カットも検討しましょう。辛いことですが、雇用を守るためには正社員やパートアルバイトの給与カットを避けて通れない会社も多いはずです。また、残業が恒常化している会社は定時で仕事を終える体制に切り替え、残業代を払わずに済むようにしましょう。仕事が少ない場合は、早退や半日勤務、自宅待機などを組み合わせて、勤務時間を減らすことで給料を下げましょう。いわゆるワークシェアリングです。
あとは技術的な話ですが、必要によっては賃金体系を見直し、モデル賃金のベースを下げるか、本人の資格等級を下げましょう。こうした作業は雇用契約の変更でもあり、法律面も充分に押さえるべきなので、社労士などの専門家と相談しながら行なうほうがよいでしょう。
5.最終手段としての人員削減--部門、営業所の閉鎖とそれに伴う解雇
それでも業績改善が不十分なのであれば、そこではじめて社員を解雇します。とは言え、かねてから問題のあった社員を、「ここぞ」とばかりにどさくさに紛れて解雇するのは不当解雇になりかねませんので、企業の現状を鑑みたうえで、一部の部門や営業所、店舗などを丸ごと閉鎖し、該当者を全員解雇します。その後に、問題社員を除いた一部の人を再雇用するスタイルがよいでしょう。
実際に辞めさせたいような問題社員がいる場合は、企業業績に関係なく解雇すべきなので、それはそちらのルートでやるべきです。
●以上が雇用に手をつける際の手順です。いつ着手を始め、どの程度の早さで実行するかはあなたの判断です。ただし、こうした非常時において認識しておかねばならないのは、「混乱によって今月の業績が悪くなったことは社長の責任とはいえないが、半年後の業績は100%社長の責任である」ということです。社長の責任を自覚し、やるべきことを粛々とやっていきましょう。
●派遣切りによって失業した人たちは、たしかにお気の毒だと思います。財布の中に50円しかないとか、おにぎりをもらって人の優しさに涙が出た、というような報道は、お涙ちょうだい話のネタとしては格好の題材でしょう。
●しかし、そうなった責任は派遣契約を解除した企業のせいではありません。前回も書いたとおり、企業は最初に結んだ契約にしたがって動いているだけです。失業して収入が途絶えたことの責任は誰か、それは半分以上が本人自身にあると私は思います。決して彼らを一方的な被害者扱いにしてはなりません。それが自由主義であり市場の原理なのですから。
●同時に、失業した彼らが今まで働いてきた勤務先の経営者にも責任の一端があります。いままでの勤務先が社員教育をきちんとやってくれる経営者であったならば、どこにも行き先がないという社員を作ることはなかったはずです。ですから、社員教育に力を入れるということは将来の失業者を作らないための貢献であることを、経営者は自覚しましょう。
●ところで、新聞やテレビを見ていると識者たちが「派遣切りの次は正社員切りだ。経営者は何があっても雇用を守れ!」などと語っていますが、第三者に言われるまでもなく、(特に中小企業の)経営者は雇用を守ることの責任を大変強く感じています。「いままで一緒にやってきた社員をクビにすることほど辛くて嫌なことはない」と、どの経営者も言っているのです。
●しかし、現実問題として「雇用を守っていたら、企業が守れない」という会社もたくさんあります。そんな会社に対しては、私は「勇気をもって、雇用よりも企業を守ってほしい」と申し上げています。もちろん、どさくさまぎれの安易な解雇は許されないので、ギリギリまで粘らなくてはなりません。そこで、順序としてやるべきことについて、解説しましょう。
1.助成金や緊急融資制度の勉強
雇用を守るために必死になってがんばっている会社には助成金が出ます。あなたの会社も該当するのかどうかも含めて、厚労省のホームページで調べるか、社労士さんに相談してみましょう。
*参考* 厚生労働省「事業主の方への給付金のご案内」
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/index.html
同様に、国からの緊急制度融資もスタートしています。「うちはもう借金はできない」と決め込むのではなく、銀行や公庫などの金融機関に相談して、制度融資が受けられるよう努力しましょう。
2.役員報酬のカット
責任をまっさきに負うべきは経営陣です。業績が悪い会社はすぐにでも、社長の報酬を生活できるぎりぎりのラインまで大幅カットしましょう。他の役員の報酬も同様に、社長の減額幅に準じてカットしましょう。
3.正社員やパートアルバイトのボーナス支給ストップまたは大幅カット
夏の賞与、冬の賞与がゼロ円、またはゼロ程度のものになる見通しを今から発表しておきましょう。春の定期昇給についても同様です。ベアゼロまたは減給も検討すべきかもしれません。ただし、業績目標の達成状況に応じて、昨年並みあるいは昨年以上に支払うことも可能であることを、同時に示しておきましょう。
4.給与や時間給、手当などの削減
賞与の次に給与カットも検討しましょう。辛いことですが、雇用を守るためには正社員やパートアルバイトの給与カットを避けて通れない会社も多いはずです。また、残業が恒常化している会社は定時で仕事を終える体制に切り替え、残業代を払わずに済むようにしましょう。仕事が少ない場合は、早退や半日勤務、自宅待機などを組み合わせて、勤務時間を減らすことで給料を下げましょう。いわゆるワークシェアリングです。
あとは技術的な話ですが、必要によっては賃金体系を見直し、モデル賃金のベースを下げるか、本人の資格等級を下げましょう。こうした作業は雇用契約の変更でもあり、法律面も充分に押さえるべきなので、社労士などの専門家と相談しながら行なうほうがよいでしょう。
5.最終手段としての人員削減--部門、営業所の閉鎖とそれに伴う解雇
それでも業績改善が不十分なのであれば、そこではじめて社員を解雇します。とは言え、かねてから問題のあった社員を、「ここぞ」とばかりにどさくさに紛れて解雇するのは不当解雇になりかねませんので、企業の現状を鑑みたうえで、一部の部門や営業所、店舗などを丸ごと閉鎖し、該当者を全員解雇します。その後に、問題社員を除いた一部の人を再雇用するスタイルがよいでしょう。
実際に辞めさせたいような問題社員がいる場合は、企業業績に関係なく解雇すべきなので、それはそちらのルートでやるべきです。
●以上が雇用に手をつける際の手順です。いつ着手を始め、どの程度の早さで実行するかはあなたの判断です。ただし、こうした非常時において認識しておかねばならないのは、「混乱によって今月の業績が悪くなったことは社長の責任とはいえないが、半年後の業績は100%社長の責任である」ということです。社長の責任を自覚し、やるべきことを粛々とやっていきましょう。
ボードメンバープロフィール
武沢 信行氏
1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。
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