武沢信行の「社長の学校・事始め」 | 経営者会報 (社長ブログ)
社長業を極めるためのカリキュラムについて、「日本的経営のリニューアル」という視点から紹介します
わたしはあなたの味方です
●私は出張が多いので、カバンにこだわりがあります。そのため、カバンの専門店やデパートのカバン売り場に立ち寄ることが多いのですが、いつも「買う所はAカバン店」と決めていました。
●Aカバン店の店員では、30歳前後のY子さんをひいきにしていました。出張や旅行先でカバンがどのように使われるのかを熟知しているだけではなく、カバンの歴史からブランドの比較、商品知識から接客態度など、すべてに及第点がつけられる接客をしてくれるからです。
●ところが、数年前のある「事件」をきっかけに、私はその後A店には一度も行かなくなりました。
●ある年の瀬のことです。私はいつものようにA店で出張用につかうS社製のキャスターバッグを買いました。気に入って使っていたのですが、購入して4か月後に、カバンを引っ張って歩くための取っ手部分が上に持ちあがらないというトラブルが起きました。
●さっそくA店に出向き、修理を依頼しました。Y子さんはその日お休みだったので、彼女の上司に事情を説明したのですが
「まだ4か月しか経っていないし、週に1回程度の出張でごく普通に使用していた。それが急にこんな具合になってしまったので、早急に直してほしい」という私の希望に対し、
「メーカーに修理に出しますので、1か月ほどお時間がかかる場合があります。また、修理費用が発生する場合は、お見積もりを電話にてご連絡します」という対応でした。
●「費用が発生する場合がある」という説明に多少の違和感をおぼえましたが、とにもかくにも今のままでは使えませんので修理を依頼し、その日から私は古いバッグを出張に使っていました。
●40日ぐらいたってから、Y子さんから電話がありました。
「遅くなりましたが、カバンの修理が完了しました。いつでも良いのでご都合のよい時に受け取りに来て下さい」ということでしたので、翌日A店に出向き、Y子さんからカバンを受け取りました。
●受け取るとき、Y子さんはこう言いました。
「ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。フレーム部分がかなり歪んでいたようです。フレームの強度を超える荷重があったのだと思われます。メーカーの方でフレーム交換しましたが、お客様ご負担金として5,000円の請求があがってきました。まことに申し訳ありませんが、パーツ交換分のご負担をお願いします」と言われました。
●使って4か月目に壊れたカバンの修理に40日以上かかり、かつ修理代金として5,000円を負担してほしいという説明に私は納得がいかなかったので、「それはおかしいと思います。むしろ不良品に近いものだと私は思います。実費負担どころか、メーカーからお詫びをされるぐらいの話だと思っています。負担金を払えというのは、Y子さんからみてどう思いますか?」
●Y子さんのその後の説明は、これまで私のことを熟知してくれていた人が、向こう側に行ってしまったと思わせるようなものでした。メーカーのS社の立場を代弁するような説明を始めたからです。
「お客様、メーカーの方でもこのケースは異例なことだと驚いていました。例えば、取っ手を上に出した状態でカバンを長時間持ちあげ続けるとこのようになる場合があるそうですが、それ以外ではちょっと考えられないという話をしていました」
●私がY子さんに期待したのは、メーカーの釈明ではありません。ましてや私の使用法に疑いの念をもつような発言はしてほしくありませんでした。極端に言うと、こんな発言を期待していたのです。
「武沢さん、もちろん私はあなたの味方です。40日も待たせた上に実費負担だなんて、ひどい話だと思います。もう少し私にお時間をくださいませんか。武沢さんはうちのお得意様ですから、メーカーか店長にかけあってみます。もし万一、それでもダメな時は私がその実費分をお支払いしますよ。とにかく、この大切なおカバンは今日お持ち帰りになって、さっそくお使いください」
Y子さんがもしそう言ってくれたら、私は大感激してその場で5,000円払って帰宅したことでしょう。なぜなら、Y子さんに余分な心配をかけさせたくないからです。
●言葉の裏にあるスタンス(立ち位置)がどこにあるのか、顧客はそれを敏感に感じているのです。
●Aカバン店の店員では、30歳前後のY子さんをひいきにしていました。出張や旅行先でカバンがどのように使われるのかを熟知しているだけではなく、カバンの歴史からブランドの比較、商品知識から接客態度など、すべてに及第点がつけられる接客をしてくれるからです。
●ところが、数年前のある「事件」をきっかけに、私はその後A店には一度も行かなくなりました。
●ある年の瀬のことです。私はいつものようにA店で出張用につかうS社製のキャスターバッグを買いました。気に入って使っていたのですが、購入して4か月後に、カバンを引っ張って歩くための取っ手部分が上に持ちあがらないというトラブルが起きました。
●さっそくA店に出向き、修理を依頼しました。Y子さんはその日お休みだったので、彼女の上司に事情を説明したのですが
「まだ4か月しか経っていないし、週に1回程度の出張でごく普通に使用していた。それが急にこんな具合になってしまったので、早急に直してほしい」という私の希望に対し、
「メーカーに修理に出しますので、1か月ほどお時間がかかる場合があります。また、修理費用が発生する場合は、お見積もりを電話にてご連絡します」という対応でした。
●「費用が発生する場合がある」という説明に多少の違和感をおぼえましたが、とにもかくにも今のままでは使えませんので修理を依頼し、その日から私は古いバッグを出張に使っていました。
●40日ぐらいたってから、Y子さんから電話がありました。
「遅くなりましたが、カバンの修理が完了しました。いつでも良いのでご都合のよい時に受け取りに来て下さい」ということでしたので、翌日A店に出向き、Y子さんからカバンを受け取りました。
●受け取るとき、Y子さんはこう言いました。
「ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。フレーム部分がかなり歪んでいたようです。フレームの強度を超える荷重があったのだと思われます。メーカーの方でフレーム交換しましたが、お客様ご負担金として5,000円の請求があがってきました。まことに申し訳ありませんが、パーツ交換分のご負担をお願いします」と言われました。
●使って4か月目に壊れたカバンの修理に40日以上かかり、かつ修理代金として5,000円を負担してほしいという説明に私は納得がいかなかったので、「それはおかしいと思います。むしろ不良品に近いものだと私は思います。実費負担どころか、メーカーからお詫びをされるぐらいの話だと思っています。負担金を払えというのは、Y子さんからみてどう思いますか?」
●Y子さんのその後の説明は、これまで私のことを熟知してくれていた人が、向こう側に行ってしまったと思わせるようなものでした。メーカーのS社の立場を代弁するような説明を始めたからです。
「お客様、メーカーの方でもこのケースは異例なことだと驚いていました。例えば、取っ手を上に出した状態でカバンを長時間持ちあげ続けるとこのようになる場合があるそうですが、それ以外ではちょっと考えられないという話をしていました」
●私がY子さんに期待したのは、メーカーの釈明ではありません。ましてや私の使用法に疑いの念をもつような発言はしてほしくありませんでした。極端に言うと、こんな発言を期待していたのです。
「武沢さん、もちろん私はあなたの味方です。40日も待たせた上に実費負担だなんて、ひどい話だと思います。もう少し私にお時間をくださいませんか。武沢さんはうちのお得意様ですから、メーカーか店長にかけあってみます。もし万一、それでもダメな時は私がその実費分をお支払いしますよ。とにかく、この大切なおカバンは今日お持ち帰りになって、さっそくお使いください」
Y子さんがもしそう言ってくれたら、私は大感激してその場で5,000円払って帰宅したことでしょう。なぜなら、Y子さんに余分な心配をかけさせたくないからです。
●言葉の裏にあるスタンス(立ち位置)がどこにあるのか、顧客はそれを敏感に感じているのです。
ボードメンバープロフィール
武沢 信行氏
1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。
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