武沢信行の「社長の学校・事始め」 | 経営者会報 (社長ブログ)
社長業を極めるためのカリキュラムについて、「日本的経営のリニューアル」という視点から紹介します
もう一人の白虎隊
●江戸時代、会津藩(今の福島県)では藩校「日新館」に入学する前の6歳から9歳までの子供を地域ごとに組織し、武士としての心構えを互いに学びあうシステムがありました。
そのときの規則が「什の掟(じゅうのおきて)」です。その内容は、
一.年長者の言うことに背いてはなりませねぬ
二.年長者にお辞儀をしなければなりませぬ
三.虚言(うそ)を言うことはなりませぬ
四.卑怯な振る舞いをしてはなりませぬ
五.弱い者をいぢめてはなりませぬ
六.戸外で物を食べてはなりませぬ
七.戸外で婦人(おんな)と言葉を交えてはなりませぬ
「ならぬことはならぬ」と締めくくっています。ダメなものはダメなんだということです。
●これらは要するに、「人として恥を知りましょう」ということなのです。
中国の孟子は、「人は羞恥心がなければならない。羞恥心は人間にとって重大な徳目である。もし羞恥心がないことを恥ずかしく思うようになれば、辱められることはない」と語っています。
会津の「什の掟」も羞恥心を定義したもののように思えるのです。
●電車の中での携帯電話やお化粧。コンビニの前での座り食い。公園や路上での男女の抱擁や接吻。
彼らに注意しようものなら、「私の自由でしょう。それに誰にも迷惑かけてないじゃん」と反発するでしょうが、実は迷惑をかけているのです。
運転中の携帯電話を取り締まるだけでなく、これらの行為も公然わいせつ罪とか何かで取り締まってほしいものです。眉をひそめるだけでなく、国や学校の問題として「ならぬものはならぬ」と羞恥心を教えていかねばならぬはずです。
●会津藩に話は戻します。
白虎隊の物語は多くの方がご存知だと思うのでここでは割愛します。実は白虎隊と同世代の若者で郡 長正(こおり ながまさ)という若者がいます。
彼の行為は、「もう一人の白虎隊」として語り継がれているのですが、あまり知られていないようです。
わずか16歳で自らの命を絶ったせい惨な最期は、「ならぬものはならぬ」という教えに殉じた武士の引き際です。ご紹介しましょう。
●郡 長正(安政3年~明治4年)
会津藩家老、萱野権兵衛の次男。明治のはじめ豊津小笠原藩(福岡県)に留学した。育ち盛り、食べ盛りの長正は、ある日郷愁を覚えて母に手紙を書き送った。
「稽古や野外訓練が終わったあとなど、空腹で辛いことがあるので、会津の柿を送って下さい」
●その手紙を受け取った母は、さすが武士の親。
「事もあろうに空腹を訴え、柿を送れとは何ごとですか。会津武士の精神はどこへやったのですか」と戒めたのです。愛する息子への思いやりは、甘やかすことではなく、たしなめることです。しかし長正の母は、まさかこの手紙が息子を死へおいやるとは露知りません。
●長正は母からのこの手紙を心の支えとして大切に持ち歩いていました。
あるとき不運にも、これを落としてしまいます。それを学友に拾われ、皆の前で読まれてしまったのです。
小笠原藩士の学友たちに会津武士を辱められるほど恥ずかしく悔しいことはありません。悩んだあげく、長正は会津武士の屈辱をはらそうと藩対抗剣道大会で完勝し、その後切腹して果てました。時に16歳。
「ならぬものはならぬ」という恥の精神を貫いたのです。
●無病息災と不老長寿を願うばかりが幸せではなく、思想や志操に殉ずるためには、いつでも死と背中合わせに生きる生き方も人として大切なのではないかと思います。
「もう一人の白虎隊」と言われるこの長正の生き様から何かを学びたいですね。
そのときの規則が「什の掟(じゅうのおきて)」です。その内容は、
一.年長者の言うことに背いてはなりませねぬ
二.年長者にお辞儀をしなければなりませぬ
三.虚言(うそ)を言うことはなりませぬ
四.卑怯な振る舞いをしてはなりませぬ
五.弱い者をいぢめてはなりませぬ
六.戸外で物を食べてはなりませぬ
七.戸外で婦人(おんな)と言葉を交えてはなりませぬ
「ならぬことはならぬ」と締めくくっています。ダメなものはダメなんだということです。
●これらは要するに、「人として恥を知りましょう」ということなのです。
中国の孟子は、「人は羞恥心がなければならない。羞恥心は人間にとって重大な徳目である。もし羞恥心がないことを恥ずかしく思うようになれば、辱められることはない」と語っています。
会津の「什の掟」も羞恥心を定義したもののように思えるのです。
●電車の中での携帯電話やお化粧。コンビニの前での座り食い。公園や路上での男女の抱擁や接吻。
彼らに注意しようものなら、「私の自由でしょう。それに誰にも迷惑かけてないじゃん」と反発するでしょうが、実は迷惑をかけているのです。
運転中の携帯電話を取り締まるだけでなく、これらの行為も公然わいせつ罪とか何かで取り締まってほしいものです。眉をひそめるだけでなく、国や学校の問題として「ならぬものはならぬ」と羞恥心を教えていかねばならぬはずです。
●会津藩に話は戻します。
白虎隊の物語は多くの方がご存知だと思うのでここでは割愛します。実は白虎隊と同世代の若者で郡 長正(こおり ながまさ)という若者がいます。
彼の行為は、「もう一人の白虎隊」として語り継がれているのですが、あまり知られていないようです。
わずか16歳で自らの命を絶ったせい惨な最期は、「ならぬものはならぬ」という教えに殉じた武士の引き際です。ご紹介しましょう。
●郡 長正(安政3年~明治4年)
会津藩家老、萱野権兵衛の次男。明治のはじめ豊津小笠原藩(福岡県)に留学した。育ち盛り、食べ盛りの長正は、ある日郷愁を覚えて母に手紙を書き送った。
「稽古や野外訓練が終わったあとなど、空腹で辛いことがあるので、会津の柿を送って下さい」
●その手紙を受け取った母は、さすが武士の親。
「事もあろうに空腹を訴え、柿を送れとは何ごとですか。会津武士の精神はどこへやったのですか」と戒めたのです。愛する息子への思いやりは、甘やかすことではなく、たしなめることです。しかし長正の母は、まさかこの手紙が息子を死へおいやるとは露知りません。
●長正は母からのこの手紙を心の支えとして大切に持ち歩いていました。
あるとき不運にも、これを落としてしまいます。それを学友に拾われ、皆の前で読まれてしまったのです。
小笠原藩士の学友たちに会津武士を辱められるほど恥ずかしく悔しいことはありません。悩んだあげく、長正は会津武士の屈辱をはらそうと藩対抗剣道大会で完勝し、その後切腹して果てました。時に16歳。
「ならぬものはならぬ」という恥の精神を貫いたのです。
●無病息災と不老長寿を願うばかりが幸せではなく、思想や志操に殉ずるためには、いつでも死と背中合わせに生きる生き方も人として大切なのではないかと思います。
「もう一人の白虎隊」と言われるこの長正の生き様から何かを学びたいですね。
ボードメンバープロフィール
武沢 信行氏
1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。
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