武沢信行の「社長の学校・事始め」 | 経営者会報 (社長ブログ)
社長業を極めるためのカリキュラムについて、「日本的経営のリニューアル」という視点から紹介します
人を使う
■新任社長に就任した渡部敏夫(仮名)は、悩んでいました。
父が育て上げた鋳造会社を守ってゆけるのだろうか、と考えはじめると、夜も眠れません。
今年30才になる渡部は、学校卒業と同時に大手工作機械メーカーに就職。昨年、倒れた父の会社に入るまで経理畑一本をあゆんできました。
経営のイロハもわからないし、子どもの頃から人の上に立ってリーダーシップを発揮したことなど一度もありません。
■そんな渡部も、高校生の頃から学校休みの多くを父の鋳物工場でアルバイトしてきたので、鋳物に関する知識や技術は相当もちあわせています。
ですが、親分肌を発揮して会社を大きくしてきた父とは違い、渡部はどちらかというと几帳面で細かいことが気になるタイプ。自分のことを「悩み多き小心者」と思っているのです。
■前社長の父が急逝した今、悩んでいるヒマはありません。来週の月曜日には、"あの"古参社員と二人で会食しなければなりません。
"あの"古参社員とは、自分のことを父と比較して"小僧"呼ばわりしているらしい太田製造部長(55才)のことです。敏夫社長にとって、一番気がかりな存在なのです。
■「息子の敏夫は赤ん坊のころから俺が面倒みてきた」が口ぐせで、「敏夫」と渡部を呼び捨てにするのが直りません。
それどころか、「敏夫に社長はつとまらない。会社を潰すに決まっている。俺もそろそろ転職情報誌のお世話かな」などと工場内で言いふらしているようなのです。
■複数の社員からそれを聞いた渡部。
勇気を振り絞って太田に告げました。「部長、ちょっと二人で話をしませんか。近々、夕食の時間を確保してほしい」と伝えました。それが来週の月曜日なのです。
どんな話をしようか・・・。渡部はまた悩みはじめました。とにかくよく悩みます。
■その夜、敏夫社長が何気なく見ていたDVDに松下幸之助翁が登場し、こんなことを語り始めました。
・・・
私は従業員が40人位になったとき、悪い人が社内に混じるようになって、悩むようになった。ずっと悩んだが、ある時、これは悩んじゃあかんと思うにいたった。
天皇陛下の徳をもってしても日本から悪人はなくならない。悪人を隔離することはしても国から放り出すことはしない。天皇でもそうならば、自分が悪人を放り出すことなんて出来っこない。会社は良い人ばかりでやろうなんて思っちゃイカン。それ以来、人を使うということに私は非常に大胆になった。
・・・
■「国ですら悪い人を追放しないのに、どうして自分の会社から悪い人を追放などできるものか」という松下翁のメッセージに、渡部は、目から鱗が落ちる気分でした。経営の神様が、今の自分に語ってくれているように思えました。
「このDVDは父が見せてくれたのだ・・・」
■ついに月曜日が来ました。
渡部は太田と格闘したり、関係が確執化させるのをやめようと思いました。
本音で太田にぶつかり、これからの彼の協力をお願いしようという素直な気持ちでいたました。そしてこう告げたのです。
「太田さん、小さいころからお世話になってきました。おかげで自分もオヤジの意志をついで社長を任されるときがきました。30年なんてあっという間です。太田さんから見たらいつまでも自分はガキでしょうが、社長らしくなったとあなたから言われるようがんばるので、これからも、いろいろ、応援をよろしくお願いします!」
■新社長に頭を下げられ、酒を勧められた太田はビックリしました。
ひょっとして自分の放言が新社長の耳に入り、クビになるかも知れないと内心おそれていた太田ですが、彼も男です。その後、意気に感じてくれて、新社長を最も支える活躍をしてくれているといいます。天国の父もそんな二人の関係をほほえみながら見てくれていることでしょう。
■人を使うということに悩まない社長はいません。ですが悩んでしまってはいけません。
人使いは大胆にいきたいものです。案ずるよりぶつかる、それが対人関係の基本です。
しかも、上(立場が上の者)から下に降りていくのが鉄則なのです。
父が育て上げた鋳造会社を守ってゆけるのだろうか、と考えはじめると、夜も眠れません。
今年30才になる渡部は、学校卒業と同時に大手工作機械メーカーに就職。昨年、倒れた父の会社に入るまで経理畑一本をあゆんできました。
経営のイロハもわからないし、子どもの頃から人の上に立ってリーダーシップを発揮したことなど一度もありません。
■そんな渡部も、高校生の頃から学校休みの多くを父の鋳物工場でアルバイトしてきたので、鋳物に関する知識や技術は相当もちあわせています。
ですが、親分肌を発揮して会社を大きくしてきた父とは違い、渡部はどちらかというと几帳面で細かいことが気になるタイプ。自分のことを「悩み多き小心者」と思っているのです。
■前社長の父が急逝した今、悩んでいるヒマはありません。来週の月曜日には、"あの"古参社員と二人で会食しなければなりません。
"あの"古参社員とは、自分のことを父と比較して"小僧"呼ばわりしているらしい太田製造部長(55才)のことです。敏夫社長にとって、一番気がかりな存在なのです。
■「息子の敏夫は赤ん坊のころから俺が面倒みてきた」が口ぐせで、「敏夫」と渡部を呼び捨てにするのが直りません。
それどころか、「敏夫に社長はつとまらない。会社を潰すに決まっている。俺もそろそろ転職情報誌のお世話かな」などと工場内で言いふらしているようなのです。
■複数の社員からそれを聞いた渡部。
勇気を振り絞って太田に告げました。「部長、ちょっと二人で話をしませんか。近々、夕食の時間を確保してほしい」と伝えました。それが来週の月曜日なのです。
どんな話をしようか・・・。渡部はまた悩みはじめました。とにかくよく悩みます。
■その夜、敏夫社長が何気なく見ていたDVDに松下幸之助翁が登場し、こんなことを語り始めました。
・・・
私は従業員が40人位になったとき、悪い人が社内に混じるようになって、悩むようになった。ずっと悩んだが、ある時、これは悩んじゃあかんと思うにいたった。
天皇陛下の徳をもってしても日本から悪人はなくならない。悪人を隔離することはしても国から放り出すことはしない。天皇でもそうならば、自分が悪人を放り出すことなんて出来っこない。会社は良い人ばかりでやろうなんて思っちゃイカン。それ以来、人を使うということに私は非常に大胆になった。
・・・
■「国ですら悪い人を追放しないのに、どうして自分の会社から悪い人を追放などできるものか」という松下翁のメッセージに、渡部は、目から鱗が落ちる気分でした。経営の神様が、今の自分に語ってくれているように思えました。
「このDVDは父が見せてくれたのだ・・・」
■ついに月曜日が来ました。
渡部は太田と格闘したり、関係が確執化させるのをやめようと思いました。
本音で太田にぶつかり、これからの彼の協力をお願いしようという素直な気持ちでいたました。そしてこう告げたのです。
「太田さん、小さいころからお世話になってきました。おかげで自分もオヤジの意志をついで社長を任されるときがきました。30年なんてあっという間です。太田さんから見たらいつまでも自分はガキでしょうが、社長らしくなったとあなたから言われるようがんばるので、これからも、いろいろ、応援をよろしくお願いします!」
■新社長に頭を下げられ、酒を勧められた太田はビックリしました。
ひょっとして自分の放言が新社長の耳に入り、クビになるかも知れないと内心おそれていた太田ですが、彼も男です。その後、意気に感じてくれて、新社長を最も支える活躍をしてくれているといいます。天国の父もそんな二人の関係をほほえみながら見てくれていることでしょう。
■人を使うということに悩まない社長はいません。ですが悩んでしまってはいけません。
人使いは大胆にいきたいものです。案ずるよりぶつかる、それが対人関係の基本です。
しかも、上(立場が上の者)から下に降りていくのが鉄則なのです。
ボードメンバープロフィール
武沢 信行氏
1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。
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