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アクバルとビルバル

投稿日時:2011/09/28(水) 11:30rss

●インド・ムガール王朝第三代皇帝アクバルは戦場で生まれました。
当時のインドは戦国時代であり、学芸に親しむひまがまったくない武人中心の時代でもあったようです。そのせいか、皇帝アクバルは学芸に関心が厚く、学者を尊敬していました。
 
側近にビルバルという面白い学者がいて、そのビルバルと皇帝アクバルとの逸話が沢山残されています。
 
●逸話その1
 
宮廷に国中の賢人を集め、壁に一本の線を引いて皇帝アクバルはこう言いました。
 
「誰か、この線に触れることなく、それを短くできる者はいないか?」
 
賢人たちは皆押し黙ったまま誰もできないでいました。そこへビルバルが登場しました。
 
ビルバルが行ったある行為を見て宮廷内はどよめきました。皇帝が出した問いの本質を見抜き、ビルバルがみごと正解したのです。
 
あなたならどうしますか?
 
●長い短い、大きい小さい、有名無名、大物小物、上手下手、うまいまずい、はすべて相対的なものです。絶対的なものではありません。
ですから、皇帝が出した「短くせよ」という問いに対しては、相対的に短くすれば良いだけです。
ビルバルは、皇帝が引いた線の横にもっと長い線を引いたのです。それが正解なのです。
 
●経営には絶対の世界と相対の世界があります。
たとえば、売上げや利益、社員数など定量化できるものはすべて相対の世界。他社との比較、過去との比較において上を目指すなども相対的なものです。しかし、相対だけを判断基準にしていては、いつまでも不安や恐怖から逃れることはできません。
 
●逸話その2
 
ある日、智者・ビルバルは皇帝アクバルにこう言いました。
 
「ウソと真実は9センチほどの差がございます」
 
アクバル「なに? 9センチと申すか」
ビルバル「さよう! 9センチでございます」
 
アクバル王「いかなるゆえに9センチと」
ビルバル「皇帝様、よ~くご覧になってお考えくだされ。なぜならば、皇帝様が人からお聞きになる話には、ウソも含まれておりましょう。すべてが真実ではございません。しかしながら、大王様がご自身の目でしかと確かめられたことは、すべて真実でございます。されば、目と耳の間隔がちょうど9センチですからそのように申し上げた次第です」 
 
こうした教訓を素直に実行した皇帝アクバルは、300年続いた悪税を大改正するなど、屈指の名皇帝になってゆきます。
 
●社長は是非とも、ビルバルのような存在を味方に引き入れたいものです。

 

ボードメンバープロフィール

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武沢 信行氏

1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。

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