武沢信行の「社長の学校・事始め」 | 経営者会報 (社長ブログ)
社長業を極めるためのカリキュラムについて、「日本的経営のリニューアル」という視点から紹介します
3,000円ではなく12,000円
●かつて、北陸のある都市の異業種交流会に招かれて講演させてもらったことがあります。会場には数十人の経営者が集まり、先が読めない時代にいかに会社を伸ばしていくか、というテーマで2時間ほどお話ししたわけです。パンフレットには「受講費3,000円」とありました。2時間の講演で3,000円というのはその都市でもかなりお値打ちな方だとか。
●しかし、その日、私のテンションはなかなか上がりません。受講費が安いからではありません。最前列右端に座っている人がずっと寝ているのです。かすかに寝息まで聞こえてきます。
こういう人が最前列にいるとやりにくい。
途中、願望やお困りごとを箇条書きにする「Wish-List」の5分間作成コンテストを行いましたが、彼一人だけ参加せず、腕組みしたまま眠りつづけています。時々うつろな目を開けるのですが、また姿勢を変えて眠ります。
●結局2時間ずっと眠っていました。今でもその情景と彼の寝顔を覚えているということは、我ながら相当悔しい思い出なのでしょう。
講演後、主催者に苦言を申し上げました。「どうしてああいう人がこの会場にいるの?お金払って話を聞きに来ているのでしょう?」
「はい、申し訳ありません」と平身低頭されましたが、主催者の責任ではないのでそれ以上は追及しませんでした。居眠り経営者にとって3,000円という受講費はお付き合い費用みたいで安すぎたのでしょうか。
●こちらにも反省点がありました。理由の如何にかかわらず、聞く姿勢のない聴衆は追いだすべきでした。それが講師の権限、もしくは義務だと思うのです。他の聴衆の方に迷惑になるし、何より講師に与える心理的ダメージは大きなものがあります。
●そんな中、熱気に包まれた状態で迎えられてゆく講演は講師冥利に尽きます。
北陸講演から戻って間もないころ、東京のセミナー会社が私を講師に呼んで経営セミナーを開いてくれました。この会社が主催するセミナーはいつも満席で、ビジネスとしてもきちんと成立させているのが強みです。
●まず講演会の価格設定にポリシーがあります。
私の90分講演が12,000円。その前の北陸では120分で3,000円でしたから、時間単価にして5倍以上の開きがあります。
主催者の社長いわく、「3,000円で100名集めるよりは、12,000円で25名集めたほうがお客満足度がはるかに高い」
●今回の集客にあたっては、社長みずから一人一人にビデオメッセージを送ったそうです。
過去、同社のイベントに参加して親しくなり、今回のイベントにも是非来てほしいと思う一人一人に対してです。
「あ、山田社長こんにちは。ちょっとご無沙汰してしまって申し訳ありません。日頃、うちの N がお世話なっています。実は、今回、かねがねお招きしたかったメルマガ作者の・・・・」という具合に一本ずつ収録していったそうだ。
●そうしたメッセージを受け取った人の半数が参加してくれたそうです。欠席の知らせを受けた人でも、詫びと同時に次回以降は極力参加するというようなメッセージも送ってくれたというから大したものです。
集客は単なる告知やお願いなのではなく、フェイスtoフェイスでのメッセージングであり、企業におけるマーケティング活動そのものです。
北陸と東京、同じようなお話しをしたのですが、方や3,000円の受講費で苦い思い。方や12,000円の受講費で大満足してもらいました。
価格設定と顧客満足との関係、いまのままで良いのかあらためて見直してみましょう。
ボードメンバープロフィール
武沢 信行氏
1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。
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