武沢信行の「社長の学校・事始め」 | 経営者会報 (社長ブログ)
社長業を極めるためのカリキュラムについて、「日本的経営のリニューアル」という視点から紹介します
熟す
●経営計画書をつくり、発表したのだけれどうまくいかない。中身の問題だろうか、それとも発表したあとの社内チェックの問題だろうか、いや、そもそも経営計画書など我社に必要ないのではなかろうか?というような質問や相談を受ける。
●経営計画書さえ作れば会社は変わるはずと即効薬としてのはたらきを期待しておられるのだろうが、料理や酒と一緒で熟成させるための時間が必要である。
個人でも志を立てることは簡単だ。夢を語ることも誰だってできるだろう。大切なことは、志に生きることであり、それには「熟」すことが肝要なのである。
●新潟県長岡市に「河井継之助記念館」がオープンした年に私はさっそく行ってきた。なにしろ司馬遼太郎の小説『峠』の主人公として日本中にファンをもつ河井継之助。平日の午後だというのに小さい記念館の中は人が絶えることがない。新築ということで、建材のにおいが濃くのこるなか、継之助の手紙や遺品の数々を見ているうちにあっという間に三時間ほど過ごしてしまった。
★河井継之助記念館
●ここに来て分かったことが幾つかある。『峠』で司馬遼太郎が書かなかった河井像が浮かび上がる。
その1.河井は勉強熱心だった
『峠』によれば、河井は江戸の古賀塾に学んだものの、どちらかというと不良学生であった部分を強調して書いているが、むしろ苦学生であったようだ。河井は他の塾生と同じように行動するのを好まなかっただけで、向学心は誰よりも強かったはずだ。その証拠に塾生が寝静まってから「これだ!」と決めた本を何冊も筆写している。
その2.河井は吉田松陰からも学んでいた
その筆写本の中に吉田松陰の著作として名高い『孔孟余話』が入っている。小説『峠』の中では、吉田松陰の愛弟子の吉田稔麿(よしだ としまろ)と東海道で会話する場面があるが、実際には、松陰と継之助はもう少し濃厚な関係があったのかもしれない。
●彫るように書く、文字が立ってくるほどに書く、それが河井流であったらしい。記念館でみた直筆の筆写本は、一文字一文字を彫刻刀で彫り刻むようにして書いてある。わずか一文字といえどもゆるがせにしないという気迫で書き写しているのだ。
●今とは違ってこの時代は、書物が簡単に買える時代ではなかった。書き写すことは当時の教養人のごく一般的な学習法だったのだが、それでも河井の特徴は、『峠』に出てくる次のひとことで察することができよう。
・・・
私は気に入った書物しか読まない。そういう書物があれば何度も読む。会心のところに至れば百度も読む、と、そういうふうなことを、継之助はひくい声でいった。(松陰先生に似ている)と、稔麿はおもった。
・・・
●「松陰」(しょういん)というのは松下村塾で維新の志士たちをたくさん育てたあの吉田松陰のことだが、彼はこのような言葉を残している。
・・・
今、人々が学んでいる四書五経は、孔子、孟子が説いた教えを記したものである。それなのに、善の善なる境地に達することができないのは、「熟」という一字を欠いているからである。「熟」とは、口で読み、読んで熟さないなら、思索、つまり物事のすじみちを立てて深く心で考え、思索しても熟さないならば行動する。行動して、また、思索し、思索してまた読む。本当にこのように努力すれば、「熟」して善の善なる境地に達することは疑いないことである。
・・・
経営計画書に書いてある様々な思いや願いを「熟」していくための継続的な取り組みが会社のなかに必要なのである。
●経営計画書さえ作れば会社は変わるはずと即効薬としてのはたらきを期待しておられるのだろうが、料理や酒と一緒で熟成させるための時間が必要である。
個人でも志を立てることは簡単だ。夢を語ることも誰だってできるだろう。大切なことは、志に生きることであり、それには「熟」すことが肝要なのである。
●新潟県長岡市に「河井継之助記念館」がオープンした年に私はさっそく行ってきた。なにしろ司馬遼太郎の小説『峠』の主人公として日本中にファンをもつ河井継之助。平日の午後だというのに小さい記念館の中は人が絶えることがない。新築ということで、建材のにおいが濃くのこるなか、継之助の手紙や遺品の数々を見ているうちにあっという間に三時間ほど過ごしてしまった。
★河井継之助記念館
●ここに来て分かったことが幾つかある。『峠』で司馬遼太郎が書かなかった河井像が浮かび上がる。
その1.河井は勉強熱心だった
『峠』によれば、河井は江戸の古賀塾に学んだものの、どちらかというと不良学生であった部分を強調して書いているが、むしろ苦学生であったようだ。河井は他の塾生と同じように行動するのを好まなかっただけで、向学心は誰よりも強かったはずだ。その証拠に塾生が寝静まってから「これだ!」と決めた本を何冊も筆写している。
その2.河井は吉田松陰からも学んでいた
その筆写本の中に吉田松陰の著作として名高い『孔孟余話』が入っている。小説『峠』の中では、吉田松陰の愛弟子の吉田稔麿(よしだ としまろ)と東海道で会話する場面があるが、実際には、松陰と継之助はもう少し濃厚な関係があったのかもしれない。
●彫るように書く、文字が立ってくるほどに書く、それが河井流であったらしい。記念館でみた直筆の筆写本は、一文字一文字を彫刻刀で彫り刻むようにして書いてある。わずか一文字といえどもゆるがせにしないという気迫で書き写しているのだ。
●今とは違ってこの時代は、書物が簡単に買える時代ではなかった。書き写すことは当時の教養人のごく一般的な学習法だったのだが、それでも河井の特徴は、『峠』に出てくる次のひとことで察することができよう。
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私は気に入った書物しか読まない。そういう書物があれば何度も読む。会心のところに至れば百度も読む、と、そういうふうなことを、継之助はひくい声でいった。(松陰先生に似ている)と、稔麿はおもった。
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●「松陰」(しょういん)というのは松下村塾で維新の志士たちをたくさん育てたあの吉田松陰のことだが、彼はこのような言葉を残している。
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今、人々が学んでいる四書五経は、孔子、孟子が説いた教えを記したものである。それなのに、善の善なる境地に達することができないのは、「熟」という一字を欠いているからである。「熟」とは、口で読み、読んで熟さないなら、思索、つまり物事のすじみちを立てて深く心で考え、思索しても熟さないならば行動する。行動して、また、思索し、思索してまた読む。本当にこのように努力すれば、「熟」して善の善なる境地に達することは疑いないことである。
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経営計画書に書いてある様々な思いや願いを「熟」していくための継続的な取り組みが会社のなかに必要なのである。
ボードメンバープロフィール
武沢 信行氏
1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。
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