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2010年12月17日(金)更新

顧客満足度レベル表

●コンサルタントとして駆け出しのころ、あるパチンコホールの経営者から「店舗用のマニュアルを作りたい」という依頼がありました。
お引き受けしたのはよいのですが、参考事例がなくて困りました。小売店や飲食店のマニュアルは市販の参考書で充分役に立つのですが、パチンコホールとなると、きわめて特殊な仕事や用語を使います。「ゴト師」とか「ドル箱」とか「サービス玉」とか「景品交換」など、まずパチンコにあまり縁のなかった私自身が覚えることがたくさんありました。
そのおかげで、現場のベテラン店長や幹部からたくさんのことを教えていただき、ほぼ1年がかりで「新人用」「一般社員用」「店長用」の三種類のマニュアルを作りあげることができました。

●「接客マニュアル」を整備するにあたって、まず「顧客満足度レベル表」というものを作りました。これは、"あなたは今、どのレベルにいるか。上のレベルに行くには何をすべきか"を明確にしたものです。

★レベル1.顧客たたき(社内にいてはいけないレベル)
 自分の都合を優先し、お客様に感謝の気持ちを表せていない。時にはお客様に嫌な顔を見せ
 たり、ぞんざいな口のきき方をしたりする。

★レベル2.義務感だけ(三ヶ月以内に改善しないと社内にいられない)
 お客様に対して最低限のマナーは守ってはいるが、お客様の立場にたって何かをしてあげよ
 うという気持ちまでは持ち合わせていない。むしろお客様は、店側の都合に合わせるべきだ
 と思っていてイレギュラーな対応を嫌う。

★レベル3.ハンバーガーショップ店員(最低限の社員合格レベル)
 お客様から言われたことを速やかにこなすことができる。だが標準化された受け答えをする
 ことが大半で、臨機応変に人・時・状況に応じた対応まではできない。

★レベル4.デパートガール(社員として及第点を与えることができるレベル)
 標準化された対応がきちんと出来るだけでなく、お客様の期待や要望にしっかり応えるため
 の個別対応もできる。お客様の顔を覚え、好みを覚え、お客様が望めば親密なコミュニケー
 ションも取ることができる。

★レベル5.ホテルマン(一般社員が目指したい究極のレベル)
 一流ホテルのフロントのような落ち着きと信頼感、それにフレンドリーさをもってお客様に
 接し続ける。もし、クレームやトラブルなどでお客様との関係にヒビが入りそうになっても、
 お店側を防衛しようとするだけでなく、お客様の立場や言い分を尊重し、双方が納得できる
 答えを見つけ出すことができる。

★レベル6.ドクター(店長以上の役職者に期待したいレベル)
 お客様の表面的なニーズの裏にある本当のニーズをつかみ取り、そのニーズを満足させるサ
 ービスを提供しようとする。お店の短期的な利益に合致していなくとも、お客様との長期的
 な信頼関係構築を尊重する。

●この会社では「レベル6」まで作りましたが、現場の社員には「レベル5」までを要求しました。
この「顧客満足度レベル表」は、これを仕上げる過程で徹底的な議論がなされました。実は、その過程に価値があったように思います。店舗間の認識のズレや作業の不統一がなくなっていったからです。さらに、「我社は誰のために、どのように喜ばれたいのか」という大切な問いかけに対して、幹部以上が共通の答えを持てるようになっていったのが大きな財産でした。

●マニュアルは作ることが目的ではなく、作るプロセスに経営者が入って議論することが大切です。
ちなみにこの会社はある県内でも有数なパチンコ企業として優秀な若者たちが入社する会社になっています。

2010年12月10日(金)更新

念ずることの磁力

●壇上の講師が聴衆にむかって質問しました。

「このじゃがいもにストローが貫通すると思う人、手をあげて下さい」

「そんなのムリだ」と思った私は手をあげませんでした。周囲をみてみたら、なんと半数以上の人が手をあげています。「そんなバカな」と私。

指名された数人がステージにあがり、講師の号令にあわせて「突き通す」と言いながらストローを振り下ろすと、全員が貫通しました。

●私は目を疑いました。
「では、もう一グループあがってもらいましょう」と私も指名され、ステージにあがることになりました。さっきは全員貫通したわけですから、私もできると思いました。「突き通す」と言いながら迷わず振り下ろすと、見事貫通しました。
しかし、隣の人は結局数回やってもできず、「ほら、やっぱりできない」と言いながら席に戻っていきました。

●それは今も忘れられない神戸でのできごとでした。
席にもどって、改めて「念ずる」ということがどういうことなのかと考えさせられました。そのときの講師が「加賀屋感動ストアーマネージメント」の加賀屋克美さんでした。彼は「念ずる人」でした。

●加賀屋さんが東京ディズニーランドに初めて行ったのは小学校6年生のときだったそうです。それは、ディズニーランド開園の年でした。
子供ながらに「僕を子供扱いせず、ひとりのお客さんとして接してくれることに感動した」という加賀屋さんは、以来、ディズニーのことなら何でも知りたい、見たい、欲しいというディズニー・フリークの人生が始まりました。

●「ディズニーランドで働きたい」と思うようになるまでに時間はかからなかったそうです。
学生になったとき、近くでアルバイトさがしするときも、将来に備えたバイトを選びました。それはマクドナルドでした。当時、女性の深夜労働が禁止されていたので、午後10時以降になると加賀屋さんはカウンターで接客できました。「0円スマイル」を毎日実践したそうです。

●「念ずれば花ひらく」

やがて加賀屋さんはディズニーランドを運営するオリエンタルランドに入社しました。悲願達成でしたが、それで満足しませんでした。
今度は、アメリカ・フロリダにあるウォルト・ディズニーワールドで働きたいと思いました。まず英語を覚えよう! と、自宅にあった中学校の教科書を引っ張り出してきて英語の特訓をはじめました。そして、ついに1年後、渡米勤務が実現したのです(今では、加賀屋さんはイギリス人も賞賛する美しい英語を話すまでになりました。私はその場面を目撃したことがあります)。

●日本勤務にもどったとき、「スプラッシュ・マウンテン」が日本にも出来ると聞きました。加賀屋さんはその乗務員になろうと決意します。どんなアトラクションになるのか誰よりも早く知りたいと思った加賀屋さんは、毎日工事現場に通って、作業員たちと仲良くなりました。作業の様子を聞きながら情報収集にはげみ、自らは「ビッグサンダーマウンテン」に乗って一瞬だけみえる「スプラッシュ」の工事現場をカメラにおさめました。それを紙で模型にして、自宅に完成予想の模型を作り上げてしまいました。加賀屋さんの自宅でそれをみた友人は、絶句するとともに、念じている男の執念を感じたといいます。

●「念ずれば花ひらく」

加賀屋さんの感動追求はまだ始まったばかりです。今はディズニーを退職し、「加賀屋感動ストアマネージメント」という会社を設立しました。こんどは自分自身がテーマパークになるのです。自らの人生体験を通して、感動作りを求める企業や店舗を支援するサービスを始めたのです。感動の輪を全国、全世界に広げていきたいという加賀屋さんの思いが形になったのです。


●「念ずれば花ひらく」

幕末の思想家・吉田松陰は、「思想を維持する精神は狂気でなければならない」と語っています。周囲の人からみれば、狂気変人のようにみえるぐらいにひとつのことに打ち込むことを恐れてはなりません。

思いの力があれば、じゃがいもだって貫通します。同じじゃがいもでも、「できない」と思っている人にとっては、できないのです。できるかできないかは、自分で前もって決めていることが多いのです。最初は単なる思いつきに過ぎなかった夢やアイデアも、徹底的に念ずることによってそれを可能にするエネルギーが生まれてくるようです。

2010年12月03日(金)更新

傷ついた枝

●かつて、ホームセンターで薄板を買ってきて手書きの年賀状を作ろうとしたことがあります。
さっそく板を切って葉書サイズにし、墨汁で「謹賀新年」と書いてみたのですが、かすれてうまく書けません。どうしたものかと試行錯誤するうちにある方法を思いつき、成功したことがあります。
それが現場の智慧とでもいうもので、技術の粋を凝らした自動車製造現場でも、ボディの仕上げ部分には人の職人芸が必要だそうです。理論よりもコンピュータよりも人間の方が優れていることがまだまだたくさんあるようです。

●先日、柿の栽培に情熱を注ぐ農家の方からたいへん興味深いお話しをうかがいました。
それは、「美味しい柿の実は傷ついた枝になる」という話です。
ベテラン農家ではそれを知っていて、故意に枝に傷をつけるなどして活用しているというのですが、それがどんな理由によるものかは農家の方もよくわかっていないそうです。

●たぶん、枝が傷ついて弱っているのをみて、根っこや幹が必死になってその枝を救おうと養分を送るからだろう、というのが憶測ですがそれが証明された訳ではありません。
私はその話を聞いて、野菜ビジネスで失敗したユニクロの柳井会長の談話を思い出しました。

「当社の野菜ビジネスは、カネがあり人材もいたから、うまくいかなかった」

さらに、こう続きます。

「カネがない、ヒトがいない、モノがない、チャンスがないことは、事業を成功させる4大条件だと僕は思っています」と。

●柿の実のように、厳しい環境にあることそのものが成功の条件だと考えるようにしましょう。

・「美味しい柿の実は傷ついた枝になる」

    ↓   応用    ↓

・「優秀な人材は困難な部門で育つ」
・「すぐれた事業は過酷な条件下で育つ」
・「逆境がないということが大問題だ」

なにもない過酷な環境だからこそ智慧が出せるのです。

2010年11月29日(月)更新

会社の98%は社長一人の実力

●同じ業界に属し、同じ地区で同じような年齢の社長がいたとしても、企業内容は全然違ってきます。
「うちの業界にはろくな人材が回ってこない」と嘆く赤字会社のA社がある一方で、「社員のおかげで本当に助かっている」と社員を誇る黒字会社のB社があります。

こうした差はなぜ生まれるのでしょうか?

●「組織とは凡庸な人たちを率いて非凡なことをなすところ」と定義した学者がいますが、A社に入社する人材もB社に入社する人材にも、もともとの素質には大した差などありません。
社員の素質を開花させ、本気で目標に立ち向かう戦闘集団にしたのがB社長であり、それができずに、社員の力不足を嘆いているのがA社長なのです。

●ランチェスター経営戦略の竹田陽一氏は、次のように語っておられます。

・・・
従業員6人迄は100%、10人~30人迄は98%、30人~100人迄は96%が、社長1人の実力で決まります。会社は人で決まると言いますが「その人」とは、まぎれもなく「社長自身」なのです。
・・・

●日本に300万社あるといわれる会社のほとんどが従業員100人未満ですから、極端にいえば日本の経済力の大部分が300万人の社長の経営力にかかっていると考えることができるのです。
私が毎日メールマガジンを書いているのもそのためで、孤軍奮闘する中小企業社長を応援することがささやかな私の役割だと思っているのです。

●さて、会社の問題のすべては「社長ひとりの実力」であると考えましょう。そのように受け入れてしまえば、かえって気持ちが楽になります。要するに、自分を変えれば良いということです。社員のせいでもないし、ライバル会社のせいでもないし、親のせい、業界のせい、政治家のせいでもないのです。

●フランスには 「1頭のライオンに率いられた100匹の羊の群れは、1匹の羊に率いられた100頭のライオンの群れに優る」という諺があります。

また、イタリアには「ゴールを征服したのはシーザーに率いられたローマ人であり、たんなるローマ人ではない」という格言があります。

あたなたライオンですか、シーザーですか?
それとも、羊ですか、単なるローマ人ですか?

あなたがライオンやシーザーになるための目標や計画を明確にしておきましょう。

2010年11月19日(金)更新

謀反すべし

●謀反に成功すれば英雄になりますが、失敗すれば英雄になれないし、悪名が歴史に残ることもあります。謀反とはリスキーな行為です。
しかし、ビジネスや人生はもともとリスキーだと考えれば、謀反そのものをイケナイものだと考えるのは保守的過ぎませんか。謀反を起こすことや起こされることを恐れることは禁物です。

●社員からも取引先からも謀反にあうことがあります。子供に謀反されることだってあるでしょう。
社員なんだから社長の言うことを聞くのが当たり前だ、と思っていたら大間違いです。

"社長が社員を採用してやった"というような驕った気持ちがどこかにあると、社員にそれが伝わります。その結果、社員は社長に反旗をひるがえします。

●「社員が会社を選んだのであり、たまたまその会社の社長があなただった」ということだってあります。

社員が黙って去ってくれるだけなら幸せな謀反ですが、声高らかに宣戦布告し攻撃をしかけてくる謀反だってあるのです。

●そもそも、親友や親戚、夫婦、親子ですら謀反がつきもの。表面的にはうまくいっていても、波風をたてたくないから今は我慢しているだけ、という時があるものです。
いや、まず古い自分に対して自分自身で謀反を起こしましょう。殻をやぶるのです。

●昔、こんな若者がいました。

彼は血液型A型の典型的な几帳面タイプ。机の上に置いた腕時計の向きがまっすぐかどうか気になって夜中に目を覚ますような子でした。
親や友だち、学校の先生に対しては、ずっと「良い子」で高校生まで育ちました。中学生までは学級委員を毎年つとめ、成績も学年ベスト10以内が指定席でした。親から見たら自慢の息子だったに違いありません。

●そんな少年がある日、突如、家出しました。ボストンバッグに着替えだけを詰めこんで、衝動的に夜8時に家を飛び出したのです。親が電話中のスキを盗み、弟には「僕は今から家出する」とだけ告げました。理由は詳しく覚えていませんが、親に対する謀反であると同時に「良い子」を演じる自分への謀反でもありました。

●少年はその日を境にして血液がすべて入れ替わったかのように人が変わりました。あれだけ几帳面だったのがウソのようにおおざっぱになり、「良い子」をやめたのです。
親や先生の期待どおりになるのが良いのではなく、自分の考えをもって自分の責任で動き始めました。

その少年が私です。

●親子の関係もその日をさかいに変わりました。

そのあとも、何度か謀反を起こしました。謀反のたびに悟りに近づくように思いますが、あと何回謀反を起こせばよいのか気が遠くなるほどです。

社員にも謀反を起こさせ、大人として対等かつ信頼しあえる関係を作っていきましょう。

2010年11月12日(金)更新

いつもニコニコ元気な笑顔

●自宅から会社まで歩くと25分、自転車だと17分で行けます。今朝は自転車にしましたが、17分間のすべてを笑顔で通してみました。ふと気づくと笑顔が消えそうになっているので、かなり大変な挑戦でした。

●たった一日の試みなので何も変化は起きませんでしたが、明らかにふだんよりたくさん人々の視線を集めたような気がします。もし、これを毎日続けたらどうなるでしょう?
こんなふざけた試みを思い立たせるような出来事が最近、連発したのです。

●まず最初は、ある会社から届いた「ゆうパック」でした。

「一度批評してほしい」と経営方針書を送ってきてくれた会社があるのです。匿名希望なので、仮の名前を『国定製鋼所』としておきましょう。

『国定製鋼所 第6期経営方針書』と金文字で印刷された豪華な装丁で、きちんとした経営管理がなされている印象を私に与えました。

●「きっと中味も正統派の経営方針書になっているのだろうなぁ」と思いきや・・・、明けてビックリの内容でした。イラスト、挿し絵満載、写真もあちこちに。すべてカラーコピーです。

1.経営理念:「いつもニコニコ元気な笑顔」
2.経営方針:「笑顔ウィルスで世界を覆い尽くそう。そのためには、
       ・社員の笑顔
       ・家族の笑顔
       ・お客様の笑顔
       ・取引先の笑顔
       ・地域の皆さまの笑顔
       ・会社の笑顔
       ・株主の笑顔
       をいつも忘れず実践します。」
3.各部活動計画
       ・笑顔で達成する長期と短期の業績目標
       ・笑顔で獲得する新規開拓
       ・笑顔で生み出す新サービス
       ・笑顔がきれいな人を集める活動
       ・笑顔でお金を大切にする経費削減計画
       ・笑顔の人を大切にする人育て計画
       
・・・etc. ざっとこのように、すべてが経営理念の「笑顔」にリンクして作られています。「国定製鋼所」という会社名は仮のものですが、方針書の骨子はまさしくこの通りなのです。

●笑顔にこだわることは素晴らしい。なぜなら、誰でも心がけひとつで簡単に出来ることだからです。それでいて、いつも笑顔を忘れずにいるのは並大抵なことではありません。それをやりきる、やらせきるところに価値が生まれます。それに笑顔を見るのは楽しいではないですか。

●そんなことがあった翌日、ジムのマシンで走っていました。いつしか、歯をかみしめて必死な形相で走り続ける私。知らぬ間にコーチが横に来ていました。

「武沢さん、ランニングで一番大切なことは何だと思います?」
「ハッ、ハッ、ハッツ、しらない、ハッ」
「ほら、息があがってますよね、それでは完全に心拍数オーバー。減量目的のランニングは、となりの人と会話ができる程度の呼吸を維持しましょう。そのためには、みけんの縦じわをとって、笑顔で走りましょう。笑顔を保ちながら心拍数オーバーになる、なんてことは絶対にありませんから」

●「ここでも笑顔か」と思いました。でも、たしかに笑顔になると、自然に心も明るい気持ちになっていくのが分かります。笑顔のままで暗い考えをすることはできないからです。

よし、しばらくは通勤時間だけでも "笑顔通勤" をやってみよう!

2010年11月05日(金)更新

新卒をとる

●「社長、こう言ってはなんだが、もっと三国志や水滸伝を読んで、リーダーの人心掌握のあり方を勉強したほうが良い」と捨てゼリフを残し、第一号社員は会社を辞めました。

●第二号社員は、採用が決まってから一週間、毎朝遅刻するので注意したら、「5分や10分のことで朝からガミガミ言われたくない。僕は、昨日もおとといも残業しているじゃないですか。残業時間から遅刻の分数を差し引けば良いでしょ!」と、手にしていた競馬新聞を机にたたきつけながら逆ギレしました。

その日の昼の休憩から、彼は会社に戻ることはありませんでした。
彼は勤務中にも競馬サイトをチェックしていたのを社長は知っていましたが、気分良く働いてもらうために、注意せずにいたのです。

●この社長は当時、「社員が宝ものだと思える日が本当に来るのだろうか?」と思ったそうです。

あれから8年、この社長の会社は株式公開企業となり隆盛を誇っています。

●そして今、こう語ります。
「社員はまちがいなく会社の宝もの、財産です。寸分も揺るがず、そうやって言い切れます。でも正直いって、そう言えるようになったのは、2年前くらいからです」とも。

●人は人を知る。類は友を呼ぶ。逆も真なり。釈迦やキリストに石を投げる者がいたように、異質な次元にいる人間に対しては、人は評価を見誤ります。

●別のある社長は、「採用が好きなんだ。要員計画に基づいて人を集めているのではなくて、ただ優秀な人を集めるのが僕の趣味みたいなものなんだ」と笑いながら語ります。
プロ野球の新人選手の活躍同様、ビジネス分野でも優秀な人材は初年度から即戦力の働きをします。

●新卒の採用はいつ始めるか。正解はありません。必要だなと思ったらすぐに取りかかるのが良いでしょう。なぜなら、最初の年からトップ水準がとれるとは限りません。むしろ、こちら側の経験不足のために、「並」「並以下」を「上」と勘違いしてしまうことだってあるのです。だからこそ、早めにたくさんの経験をしておいた方がよいのです。

●新卒学生を定期採用するということを特別なことのように思ってはなりません。ごく普通のことですし、事実、学生は集まります。もし学生が集まってこないような会社だとしたら、お客も集まってきていないはずです。

●新卒の定期採用を決断するまえに、"世間並み企業"の条件を整備してからにしようと思っても、うまくいきません。

たとえば、
・就業規則や賃金規定をつくってから
・社会保険完備してから
・先輩社員をある程度教育してから
・パソコンや机など、仕事環境を整備してから
・人件費予算を組んでから
・もっと儲かるようになってから
・・・etc.

むしろ逆です。"世間並み企業"をつくるために、新卒をとるのです。

今すぐコストの値打ちな新卒採用応援会社をみつけ、担当者を呼んで相談しましょう。すぐに申し込みして、それから逆算でこうした諸条件を整えていけばよいのです。

2010年11月01日(月)更新

無人島での貸借対照表

●臆病なのは短所ですが、慎重なのは長所になります。おせっかいなのは欠点ですが、面倒見が良いのは長所です。
つまり見方次第でいかようにもなる。

でしたら、不運とか不幸というのも、見方を変えれば幸運や幸福になるのでしょうか。

「はい、なります」というお話しをしましょう。

●イギリスの作家デフォーが書いた物語『ロビンソン・クルーソー』(1719年刊)をお読みになった方も多いと思います。

内容は、投機的精神に富む貿易商だったロビンソンが両親の反対を押しきって航海にでる。だがひどい嵐にあい、たったひとり流れ着いた無人島で28年間にも及ぶ孤独なサバイバル生活をおくり、見事生還するという物語です。

●この物語の中でロビンソンは、無人島にたった一人で漂着した我が身の不幸さをなげいて、ひたすら悲しみます。

「私には食物も家も衣類も武器も逃げ場もなく、救われる望みもなく、前途にはただ死があるだけであった。猛獣に喰われて死ぬか、蛮人に殺されるか、喰べるものがなくて餓死するかのいずれかであろう。夜になってから猛獣をおそれて樹にのぼって一夜をあかした」と、ロビンソンは最初の日記に記しました。

●ですが翌日、太陽の光を浴びながら周囲を見渡すと、相当な財産というか資産があることにも気づくきます。

まず、近くには水場がありました。浜辺にはボートが打ちあげられていましたし、沖合には、座礁した船が結構使える状態で残っていました。ボートと船を調べてみたら、食糧や衣類、ピストルや剣などの物資が出てきました。
おまけに、なにかの袋を振ってみたら、穀物が飛び散った。それが、数ヶ月後に大麦の穂を実らせたのです。

●たしかに、無人島単独漂着ということは不幸なことではありますが、身のまわりの境遇は決して悲観材料ばかりでないことに気づくロビンソン。
やがて、彼は貿易商としての知識を活かして、今の境遇の「良い点と悪い点」を貸借対照表にしようと考えます。

●左側に悪い点、右側に良い点を対比させ、次のように表を完成させていきました。

・悪い点その1.
 私はおそろしい孤島に漂着し、救われる望みはまったくない。
・良い点その1.
 他の乗組員全員が溺れたのに、私はそれを免れてげんにこうやって生きている

・悪い点その2.
 私は全人類から絶縁されている孤独者であり、人間社会から追放された者だ
・良い点その2.
 私は「食うものも無い不毛の地で餓死する」という運命を免れている

●この作業をやりながらロビンソンは悟りました。

「痛ましい境涯にあっても、そこには多かれ少なかれ感謝に値するなにものかがあるということを、私の対照表は明らかに示していた。世界じゅうで最悪の悲境に苦しんだ者として、私が人々にいいたいことは、どんな悲境にあってもそこにはわれわれの心を励ましてくれるなにかがあるということ、良いことと悪いこととの貸借勘定では、結局貸し方(良い方)のほうに歩があるということ、これである」と。

●その日から、ロビンソンは助け船を求めるために沖合ばかりを見るのをやめました。そして、自らの力で強く生きる力を回復するため、規則的な生活習慣、労働習慣、学習習慣(聖書と祈り)を守り始めるのでした。

無人島に漂着するのを待たずともよい。壁を感じるときがあれば、いつでも一人で作ってみてはどうでしょう。

2010年10月22日(金)更新

本を買ったら一気に読もう

●アメリカの思想家・エマーソンは、「人々は驚きを愛する」と言いました。
絶叫マシンやおばけ屋敷にお金を払うのもそのためですし、ホラーやサスペンスの映画や小説が人気なのも人々が驚きを愛するからでしょう。

●アガサ・クリスティ原作の映画『情婦』も驚きを愛する人にはうってつけの映画でしょう。
法廷で繰り広げられる裁判の最後の最後にどんでん返しがあり、観るものの意表を突きます。
「やられた~」と思いながらエンドロールを見ていたら、「この結末は誰にも話さないでください」と念が押されていました。それも当然で、先にネタばらしされたら驚きがなくなってしまうからです。

●おもしろい小説を読みだすと「この先、どうなるのだろう?」と気になって途中でやめられなくなり、結局、朝まで寝ずに読んでしまったということがよくあります。

『本を読む本』(J・モーティマー・アドラー著、講談社学術文庫)は、60年前に書かれ読書指南書として世界的に有名な本ですが、その中でも「小説は一気に読むもの。忙しいときでもなるべく短時間で読むよう努めるべき」と書いてあるのです。

●本も鮮度が命、買ったその日が一番読みたいという気持ちが強い日なのです。その点、読みたい本をまとめ買いしておくと「読みたい」衝動が薄れていって、結局“積ん読”になる場合があります。

読みたい本を見つけたらその日に買ってその日に読み始め、一気に読んでしまうのが正しい読み方なのでしょう。

私もこれからは、未読の本をたくさんストックするのはやめようと思っています。

2010年10月15日(金)更新

リストラと戦略コストを使い分ける

●肥っている人はもちろん、中高年になればほとんどの人がダイエットが必要だそうです。新陳代謝が不活発になるからでしょう。
それと似て、企業だって10年以上たてば常時リストラが必要です。経費の使い方を見直し、経費率を下げる取り組みをしないと自然に経費が増大していく宿命にあるのが会社というもの。

●一円でも無駄な経費は削減していきましょう。それは、経理部門に任せるのではなく、経費削減担当役員をおいてリーダーシップを発揮してもらいましょう。当然、その役員は兼任でも構いませんが、現場ににらみを利かせられる立場の人がよいでしょう。

●それと同時に、将来の売上げを増加させるための経費は「投資」と考えて、削減すべき経費とは別枠で管理したいもの。そうした費用をここでは「戦略コスト」とよびますが、あなたの会社にとっての「戦略コスト」とは何の費用でしょうか。

●知人のある会社は、日本全国を販売エリアとしています。しかし、営業マンは驚くほど少なく、日本中を役員3名だけで回っていた時期もあります。
それでも年商10億、粗利益9億、社員数40名、労働生産性2,000万超という結果を出していたから立派なものです。
この会社の当時の「戦略コスト」は「旅費交通費」でした。毎月コンスタントに300万円ほど使っていたのです。つまり、毎月300万円の交通費をかけて7500万円の月間粗利益を稼いでいたわけですから、25倍の利回りです。抜群の投資効果といえそうです。

●はじめてこの金額を聞いたとき、私はビックリしました。何たる自由奔放な経費の使い方。しかし、この社長は「戦略コスト」という言葉こそ使わないものの、「交通費は投資である」という考えをお持ちだったのです。
私も真似して月間100万円以上の交通費を使ってみましたが、25倍の2500万円も粗利益が稼げそうもなかったので、あわてて減らしたことがあります。

●「教育費」が戦略コストの会社もあります。また、「通信費」(電話・FAX代、切手代など)が営業成果に正比例するという会社もありますし、「家賃が戦略コストだ」という会社もあります。

●投資であるかぎりは、見返りを明確にしましょう。

たとえば、新しいオフィスに毎月50万円の家賃を支払うのであれば、その5倍から10倍の粗利益増加が見込めれば良いのですが、家賃倒れになるのであれば、投資から撤退すべきです。
そうしたコスト意識と投資利回りの観点から、無駄を排除し、ジリ貧にならない新しい機会創造も行っていくべきなのです。
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ボードメンバープロフィール

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武沢 信行氏

1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。

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