武沢信行の「社長の学校・事始め」 | 経営者会報 (社長ブログ)
社長業を極めるためのカリキュラムについて、「日本的経営のリニューアル」という視点から紹介します
2010年10月12日(火)更新
コッテージ・チーズを洗う
このように、大切なことを思い出せるようにしておくことはとても重要なことです。なぜなら大切な目標に至るにはずいぶん時間がかかるからです。
●石油の鉱脈にたどりつくためには、杭打ち機によって何度も何度もくり返しくり返し、杭を打ち込む必要があります。強烈な一発で杭が鉱脈にたどりつくことはあり得ません。
限界の突破にはエネルギーが必要なのです。
『ビジョナリーカンパニー2 飛躍の法則』の著者コリンズは、「飛躍にいたる条件は、規律ある考えと規律ある行動が大切」としてコッテージ・チーズを洗うたとえ話を紹介しています。
●これは、ハワイの鉄人レースで六回優勝したトライアスロンの世界的スター、デーブ・スコットの話です。彼の練習がすさまじい。
毎日の練習で平均して自転車で120キロ、水泳で2万メートル、長距離走で27キロというトレーニングを一日も欠かさずこなしているというのです。
毎日の練習だけで5,000キロカロリーも消費しているのです。
私の場合、最高にがんばった日にはマシンで1時間ほど走ったことがあります。それでも消費カロリーはわずか500キロカロリーでしたから、その10倍を毎日やっているのです。
●それでもスコットは、さらに能力を高めるために栄養にも万全の気配りをしているそうです。
少しでも脂肪分が少なく、炭水化物が多い食事をとっているのです。さらにさらに、コッテージ・チーズを食べる前には入念に洗って、少しでも脂肪分を落としてから食べるようにしているといいます。
●この行為を『ビジョナリー~』のコリンズはこう表現します。
・・・
鉄人レースに勝つにはコッテージ・チーズを洗わなければならないことを示す証拠があるわけではない。核心はそこにはない。チーズを洗うのは小さなことではあるが、この小さな方法によって自分の力がさらに少しでも強まると本人が確信している点にこそ核心がある。この小さな方法を他の多数の方法に付け加えることによって、強烈なほど規律のある一貫した計画を作り上げているのだ。
・・・
●あなたにとって、コッテージ・チーズを洗う行為とは何でしょうか?
★『ビジョナリーカンパニー2 飛躍の法則』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822242633/
2010年10月01日(金)更新
変わる経営理念
「もう逃げるのはやめましょう。今作ってください。今です。今、この場で作ることができますから、やってみましょう!」と。
A社長は「経営理念を作りたい。そして、中長期の経営ビジョンもまとめ上げたい」ということで、私が主催するセミナーに参加されました。
●複数回にわたって経営理念の作り方をご説明し、そのための書式も差し上げました。でも二ヶ月たった、そのときになっても理念が一行も出来ていないというのです。
その理由は「あと延ばし」の誘惑に負けているからではないでしょうか。
経営理念を教科書的に理解すると金縛りにあってしまい、結局「あと延ばし」してしまいます。
●教科書いわく、「経営理念は未来永劫変わらないもので、それこそ社長が何世代も代替わりしようとも変わらない我社の根本的価値観と理想を文章にしたもの」
今までそれに近いものが何もなかったのに、そんな理想的な理念がすぐに作れるわけがないのです。もし作れるとしたら、他社事例を参考にして作った模範解答的な理念に過ぎなく、社長の魂が入っていない借りものの理念でしょう。
●私はセミナーで幾度となく「経営理念は変えても良い」と申し上げてきましたが、今後はもっと大胆にこう申し上げることにしました。
「経営理念はどんどん変わっていくべきだ」
「経営理念は毎年、いや、当面は毎月変わっても構わない」
と。
●ドラッカーはこう述べています。
「私は父とシュンペーターとの会話に同席し、三つのことを学んだ。一つは、人は何によって人に知られたいかを自問しなければならない。二つは、その問いに対する答えは、歳をとるにつれて変わっていかなければならないということである。成長に伴って、変わっていかなければならない。三つめは、本当に知られるに値することは人を素晴らしい人に変えることであるということである」
( ドラッカー『プロフェッショナルの条件』(ダイヤモンド社)より )
●成長と自己変革に応じて理念はもちろん、理想も変わっていくものです。
ドラッカーも語っているように人も会社も「何によって人に知られたいか」を自問しなければならないし、それは、歳をとるにつれ、成長するにつれ、変わっていかなければならない性質のものだと思います。
●経営理念も長期ビジョンもどんどん変わるべし。
ただし、どうせ変わるから作らない、というのでなく、変わるために今作るのです。
明日でも今晩でもなく、5分の時間があれば今すぐにでも作り始められるもの、それが「経営理念」です。
●まずは、「今月の経営理念」を毎月作りましょう。だんだん変える必要がない理念に仕上がっていくことでしょう。そうしたら今度は、「年度経営理念」に格上げし、やがて年度も取ってしまえば良いのです。
それが理念を成文化するときの正しい姿勢だと思います。
2010年09月24日(金)更新
夢と情熱で負けない
むしろ知ったかぶりをしないことです。知らないことは堂々と知らないと言いましょう。
しかし、どうしたら知ることができるのか、誰なら知っているのかを知っておくことはとても大切です。
●「己の周りに、己より優れし人物を集めたる者、ここに眠る」という米国・鉄鋼王のアンドリュー・カーネギーの墓碑銘はあまりに有名です。彼は電話のプッシュボタン一つで世界中の権威に相談できたと言われています。
●日本でも同様の人物がいます。松下幸之助氏です。
氏が大学生の定期採用を始めたころ、専門知識を披瀝する新入社員の話をさえぎって、こう言い放ちました。
「あんたの話は難しくてさっぱりわからん。難しいことを私にもわかるように話しをするのが大学出のあんたの役目やろう」
●これらのエピソードをあえて大胆に要約すれば、「高度な学問や知識はお金で買える」というものです。大切なのは、それらのものを目的に応じて使いこなしていくことができてはじめて知識は有益なのです。
●「力のある者は頭のいい者に使われ、頭のいい者は金持ちに使われ、金持ちは夢のある者に使われる」と言われますが、中小企業の社長ならそれらのすべてを持っているべきだと思います。
特に社長は、会社をよりよくすることに対する夢と情熱では誰にも負けてはなりません。
・・・
『本当にすばらしい仕事をしてきたじゃないか。ここらで一服してもいいはずだ』
父はいつもそう言われてきました。父の答えはいつも同じでした。
『とんでもない。もっともっと前進して、もっといい仕事をしなければ』
(マリオットホテル会長:J・マリオット・ジュニア)
・・・
2010年09月17日(金)更新
写経ならぬ……
●「え、決算書を写経?」と驚く私にむかってその社長はこう言いました。
「もちろん写経も大好きですが、それより熱中していることは、毎月の決算書や今期の計画数字を何度もくりかえし書くことです。手書きで丁寧に書いていると、その数字の向こう側にあるこちらのガンバリや怠慢の具合が手に取るように分かりますし、やるべきことが鮮明に浮かび上がってきます」
●気になったので幾つか質問してみました。
・書式はあるのか
・所要時間はどれくらいか
・それによってどんな変化があったか
書式はないそうで、コピーの反古紙のウラに「売上高 10,545,961」という具合に千円単位で書くそうです。時には、部門別の売上高を書くこともあるとか。
「売上高」の次に「売上原価」、「粗利益」「販売費及び一般管理費」「営業利益」「営業外損益」「経常利益」「特別損益」「税引前利益」という具合に書いていくそうです。
その次に、今期または今月の目標数字を横に書きます。
所要時間は長くて30分。スラスラと書いてしまえば数分で終わるところを、呼吸を整えつつ丁寧に筆ペンで筆写するので30分近くかかるそうです。
●作業中うれしくなったり、悲しくなったりすることもあるそうですが、それ以上に驚くことは、ご自分でもビックリするぐらい会社の数字が頭に刻み込まれること。
たしかにそうかもしれません。何度も繰り返し同じことを書くことには意味があります。
●25年以上前、ライフワークという言葉が流行しました。その火付け役となったベストセラー本が『ライフワークの見つけ方』(井上富雄 著)です。この本は私にとって最初に読んだビジネス書でもあり、今でもものすごく思い入れのある本です。
●20代前半だった私は、当時、何度も何度も繰りかえし読みました。
そして、男子たるもの気宇壮大に人生の青写真を描こう、そのためには人生25ヶ年ビジョンを作って自分のライフワークをもとう、ということを学びました。
●仕事を終えて深夜の独身アパートに戻り、大学ノートを開いて人生25ヶ年計画を何度も何度も作り直しました。ワープロすらない時代です。
毎日、消しゴムのかすでテーブルが真っ黒になるほど書いては消し、消しては書いてビジョンを作りました。
●シナリオAは、サラリーマンとして出世し、頂点である社長を目指すというもの。
シナリオBは、結婚までに独立して自分の会社をもち、事業を発展させるというもの。
それぞれのシナリオを細部にわたって考え、書きました。
●結局私はシナリオBを選び、今もその路線を歩んでいるわけですが、時間だけは人生25ヶ年計画の終点まで来たわけです。
残念ながらその当時のノートは残っていません。
ですが、脳裏にはっきりと書式や中味が刻まれています。それは、大変な手間ひまをかけて手作業で何度も作り直したからです。
●写経ならぬ、写目標、写計画、写決算、・・・面白い作業だと思いませんか。
2010年09月10日(金)更新
社長の内的生活
あわただしく身支度を調え、朝食をすませて出社しているようでは朝を制しているとは言えません。できれば、朝は自宅かカフェで一人作戦タイムを持ちたいもの。
ゆっくりした朝を過ごす人でも、テレビを見たり新聞を読んでいては何にもなりません。大切なことは、「今日も一日充実した時間を過ごそう」と決意を新たにできるような時間を持つことなのです。
●次に紹介する名言は、考える時間を確保しようと訴えているものばかりです。
・「ほとんどの人は時間をとって考えようとしない。私が国際的な名声を手にしたのは、
週に二回考えたからだ」(劇作家:ジョージ・バーナード・ショー)
・「内的な生活をもたない人は、環境の奴隷である」(スイスの作家:アミエル)
・「朝寝すべからず、はなしの長座すべからず」(徳川光圀)
・「人間の再建は朝起きにある」(丸山敏雄)
●私はまず、心を耕してくれるような名著を読み、そのあと自社や個人の目標に目を通したり、新たな目標やアイデアを書き加える作業が大好きです。出張などでしばらくそうした時間が確保できなくなると、自分の調子が落ちていくのが分かるほどです。
●一人で何をすべきか分からないという人には、【Wish List】を書きだそうと提案しています。【Wish List】に書き出す項目は公私にわたって何でもOK。思いついた順にどんどん書き出すのです。ただし、可能な限り積極的かつ明るく具体的に書いてほしいとお願いしています。
・毎月の売上高を3,000万円にしたい
・キャッシュフローを毎月プラスにしたい
・優秀な人材を採用して組織的な経営をしたい
・早起きしたい
・毎月5冊以上、読書したい
・やせたい(体重70キロ、体脂肪25%の達成)
・休肝日を毎週2回以上つくりたい
・本を書きたい
・社員勉強会を定期開催したい
・朝礼または終礼をやりたい
・・・etc.
等々、なんでも構いません。
●セミナーなどで、5分間で【Wish List】を何項目書き出すことができるか挑戦してもらうことがあります。過去最高記録は、5分間で55個書き出した居酒屋の経営者です。
5分間、つまり300秒で55項目を書こうとしたら5.5秒につき一項目書いた計算になります。つまりほとんど手が動きっぱなしだったということです。
あなたもやってみていただきたい。5分で50項目以上書ければ、間違いなく全国トップレベルの水準です。いや、30項目を超えたら立派なものだと思います。
●Wish Listをすらすらと沢山書ける人にはひとつの共通点があります。それは、過去に何度もそうした作業をしたことがあるという共通点です。
毎朝カフェでWish Listをゼロから書いているという人もいました。それを何週間も続けていると、一言一句同じ内容で、同じ順番で書けるようになるというのです。そこまで行けば、もうしめたもの。頭の中は大切な目標で占められていることでしょう。
●【Wish List】を早く書けるようになることよりも大切なことがあります。
それは、書き尽くした【Wish List】を持つことです。何個書けばよいのかは個人差があって一概に言えませんが、私の知るかぎり千個以上のWish Listを作っている人はほとんどいません。できればあなたには「Wish千個荒行」に挑んでほしいものです。
2010年09月03日(金)更新
上機嫌
・・・
という書き出しで始まるゲッツ板谷の『板谷バカ三代』(角川文庫)は、とにかく楽しいです。
●家が焼けようが、じいさんが死のうが、自宅の風呂桶で鯉を飼おうが、とにかくこの家庭はなにがあっても異様に明るいのです。
普通の人なら嘆きかなしみ、落ち込み、失意の底に沈むようなことですら、突き抜けて明るい。
ご本人たちいわく、「バカだから」となるが、ここまでバカに徹しきれるのはスゴイです。
●この『板谷~』を知ったのは、齋藤孝著『上機嫌の作法』のなかでです。
「上機嫌でいることが道徳の第一位」とアランが言うように、いつも上機嫌で居続けることは相当むずかしいことです。むしろ私たちは、不機嫌でいることで自分を主張したり武装したりしがちなのです。
●だが不機嫌になる人は二流だと思って間違いありません。
私の友人で不機嫌そうな人は一人もいません。もちろん人間だから喜怒哀楽の感情は表にだしますが、ブスッとした感じで不機嫌にふるまう人はいません。
また、経営者としても、そういう社員の存在を認めてはならないと思うのです。
●齋藤孝氏の本を読むまでもなく上機嫌でいることの必要性はあなたも理解しているはずです。
しかし、本当にそれができているでしょうか? 不機嫌ではない、というだけではダメです。
まずは、今日一日だけでもかまわないので、上機嫌でいることを貫き通してみて、何が起きるかをみてみましょう。
2010年08月27日(金)更新
安心領域の破壊
●では、ひっそりと何をやるか?
できれば、自分自身に対してもっともインパクトの大きいことをやりましょう。それは、誰もが持っている「自らの安心領域(コンフォートゾーン)を脱出する」作戦を開始することです。
●人は無意識のうちに自分の殻(心地よい世界・安心領域)に閉じこもろうとします。
その領域内にいれば、心地良くて安心して自分らしく過ごすことができます。しかし、そこは心地よいがゆえに、なかなかその外側には出たいと思いません。その結果、なかなか進歩成長できないのです。
・そこに居ると落ち着く(空間)
・その事をしていると落ち着く(行為)
・その人(物)と一緒にいると落ち着く(仲間)
そうしたものを壊していきましょう。
●ヤドカリが成長のたびにすみかを替えるように、私たちも意図的に自分の安心領域をぶち壊し、別の次元の領域に移っていくのです。
そのために何ができるか、まずは、なるべく大胆なアイデアを描いてみましょう。
●私も時々、自分の小さな殻をぶち壊すために、こんなことを考えています。
・海外で生活する(一年の半分は○○、残り半分を日本で過ごす)
・本社を××に移転する
・新しい職業「△△△」に挑戦する
・メルマガの発行をやめる
・家族を解散し、林住する。その後、遊行する。
・65歳で完全引退し、その後の人生を○○として送る
●なるべく大胆な発想で自分の小さな世界観を打破しましょう。そうしたことを実行することに比べたら、目先の小さな挑戦や改善改革などたやすいものに感じてくることでしょう。
最近、「コンフォートゾーンを作ろう」という主旨の本が売れているようですが、そんなの大間違い。誰だって、都合の良いコンフォートゾーンをすでにもっていて、それを破る必要があると私は思うのです。
2010年08月13日(金)更新
辞令を自分で書く
そこを見抜くのもスカウトマンの腕のみせどころ。
●ファスナー大手・YKKの創業者・吉田忠雄氏(1908~1993)は、晩年になってからも「私は人を見る目がない」と周囲に語っていました。なぜなら、お世話になった方から推薦状までもらって鳴り物入りで入社した優秀な学生がパッとしないままサラリーマン人生を終えていくのを何人も見てきたからだそうです。その反対に、入社当時はまったく目立たなかった若者が、やがてグイグイと頭角を現し会社の大黒柱になっていく。そうした実例を何度も見てきた吉田氏は、「私は人を見る目がない」というのです。
●たしかに人の評価ほどあてにならないものはなく、吉田氏は一般的な人事考課制度にも疑問をもっていたほど、人が人を評価することはあてにならないと思っていたそうです。
ですから、相手がまだ若くて未成熟な段階で「君こそ将来の役員だ」とか、「君に将来社長をまかせたい」などと甘いことを言うのは危険なことです。
●辞令は人事部がつくるものではなく、「辞令は自分で書くものだ」とも語る吉田氏。
YKKでも、自ら「ロンドン支店へ行かせてほしい」と積極的にアピールしてくるような人材は、たとえ能力が70しかなくても空きポストが出たらロンドンに行かせるようにしてきたそうです。仮に能力が100あっても、渋々ロンドンに行くようでは大した仕事をしてくれないというのです。サラリーマンも自分の辞令は自分で書きなさいということなのでしょう。
●プロ野球選手でもサラリーマンでも、持って生まれた能力や素質を超えるためには、情熱や工夫や知恵が必要です。それさえあれば、いくらでも自分の辞令を自分で書くことができるのです。
あなたは今、どんな辞令を自分のために書きますか?
2010年08月06日(金)更新
今の自分で勝負
●15年前、絶世の美女だったころの写真を見せるA子。
「うわぁキレイ」「この子、誰?」などと周囲を騒がせつつも、内心では、色気が失せてしまった今の自分に嫌気がさしていたA子。そんな彼女に向かって江角マキコが放ったセリフが冒頭の言葉です。
やがてA子は昔の自分ではなく今の自分で勝負しようと変身していきます。その結果、ついにA子に求婚者が・・、というハッピーエンド。
●ビジネスだってA子と同じです。
「昔の名前で出ています」ではなく、今の我社で勝負しましょう。昔の私ではなく、今日の私で勝負しましょう。社長とか部長、課長といった社内の役職は名誉職ではなく現役職です。現役とは今の自分で勝負できる人のこと。その役職には社内で今もっともふさわしい人が就かねばなりません。
●現役ばかりの集団、それが会社です。
そのためには、本人も会社も力を磨くための費用と時間を確保し、計画的に経験と学習を付与していきましょう。
●何年か前の統計値ですが、日本企業が使う研修費用は、社員一人あたり年間で数千円というデータがありました。
「年間教育費がたったの数千円?」と驚く方も多いと思いますが、この統計数字には、従業員数が何万人もいるような大企業の製造ラインで働く人たちも含まれています。
●したがって、これからドンドン成長しようという中小企業の場合は、もっと多額の教育費用が必要になります。
私が以前に勤務していたスポーツ用品専門の小売店は、経営目標として「株式公開企業目指して急成長する。そのためには、人材の成長スピードがどの同業者よりも高い会社になる」という方針を打ち出しました。
●そのためにもっとも注力したことが社員教育だったのです。その会社では、まず社員一人あたりの年間教育予算を20万円と定めました。その当時、社員数が100人ほどの会社だったので2,000万円の教育費用を予算化しました。
そしてそれを一年かけてきっちりと使い切るための計画作成を行ったのです。
●鍵を握るのは店長クラスの人材を短期間で育成すること。まさしく人材の促成栽培です。同業他社が5~10年かけて店長になれるかどうかというペースの中、その会社では3年で店長になっていきます。そのための知識や技術、あるいは心構えといったものを猛スピードでマスターできる人材にとっては、若くして責任者になれるので大変楽しい職場でした。
●ただ、反動も二つほどありました。ひとつは、日常業務への支障です。研修のために若手社員が東京や大阪へ出張します。ふだんでも忙しい現場なのに、研修で二日も三日も職場を不在にすると、困るのは現場です。
ですが、そんなときこそトップの信念が必要になります。その会社では、社長が社内報に「教育は日常業務よりも優先する」という方針をハッキリと打ち出したことで、現場からの不平や不満も出なくなりました。
2010年07月30日(金)更新
社長が考えていること(2)
<社長が今考えていること 後編>
■組織とコミュニケーション関係
・会議体系が整備され、会議が機能する組織でありたい
・京セラ流コンパのような上手な飲み会をやって社員と腹をわって語り合う
・「オフサイトミーティング」が活発に行われる会社にしたい
・自分になりかわって汚れ役を買ってくれるような幹部がほしい
・社員と【Wish List】を共有したい
・明るくて楽しくて活気ある会社にしたい
・事業部ならびに個人毎にP/LとB/Sが出る体制を敷き、報酬還元する
・決算内容を社内にオープンにし、「自分たちの会社」と感じてもらうようにする
・前もって決めた基準に沿って昇給や賞与を決めていきたい
・ノー残業デーを会社で決めるか、個人ごとに決めるなどして早く帰宅できる日を増やす
・一週間以上の長期休暇が取れる会社にしたい
・5年に一回は一ヶ月休暇を取らせてやりたい
・整理整頓とあいさつが行き届いた会社にする
・税務調査が入っても何の問題もない会社にしたい
・妻の仕事(経理)を減らし、家事に専念できるようにしてあげたい
・ドリンクやフルーツ、菓子類がいつでも誰でも無料な会社にする
・クリーニングや買い物など社員の私用を全部請け負うサービス体制
・社員に感動やサプライズがある会社にしたい
・社員が自宅に帰ってからも会社の自慢ができるような会社にしたい
・社員の子供が入社する会社にしたい
■顧客関係
・顧客から指名される企業でありたい
・お客様から感謝のハガキやメールが届く会社にしたい
・お客様満足のバロメータになるような指標を作りたい
・顧客アンケートを定期的に実施し、満足度を毎年高めたい
・リピート率の高い企業でありたい
■取引先や社会との関係
・取引先や金融機関とともに発展する会社になりたい
・国民の義務、企業の義務として毎年納税額を増やしたい
・環境問題への取り組みが先進的な企業であり続けたい
・有給とは別に、毎年一日、社員にボランティア休日を設定する
■競争関係
・地域ナンバーワン、業界ナンバーワンになりたい
・同業者からも尊敬されるような存在になりたい
・社員ひとりあたりの設備装備率を高め、競争力のある会社になる
・ナンバーワンではなく、オンリーワンの存在になりたい
・日本一、世界一、といえるものを作っていきたい
・ギネスに認定されるものをもちたい
■インターネット
・自社サイトを大改革し、ネットに強い会社になりたい
・お客様とメールやブログで繋がるコミュニケーションを構築したい
・社内パソコンは二年サイクルで更新していきたい
・経理や賃金はコンピュータ化し、月次の中間でも損益を確認したい
・情報やデータの社内共有を促進したい
・日報をすべてブログかMLにしたい
・社長ブログを始める
・ニュースのある会社になる
・社員全員にiPhoneかiPadをもたせ、スピーディなサービス体制を作りたい
■経営者自身の成長、楽しみ
・決算書が読めるようになりたい
・役員報酬として前年度粗利益のχ%と設定したい
・日常業務から完全に脱し、社長業に専念できるようにしたい
・アスリートのような肉体と知力がある社長になる
・何才になっても伴侶や異性から魅力的な人だと思われたい
・英語、中国語を話せるようになる
・視野を広げる為、社長は業務があってもなくても海外へ行き続ける
・毎朝出社前に新聞と書籍を読んでから出社する
・大勢の前で落ち着いて話のできる社長になりたい
・暴飲暴食をせず、スマートな酒の飲み方をしたい
・ベストセラーになるような本を企画出版したい
まだまだあるはずです。あなたも【Wish List】を書き出してみましょう。まずは200個書き出してみて、その後は随時加えていきましょう。
前号とあわせてご覧いただくことで、あなたのリスト作りが大いにはかどることになるでしょう。社員にもやらせてみてください。
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ボードメンバープロフィール
武沢 信行氏
1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。
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