武沢信行の「社長の学校・事始め」 | 経営者会報 (社長ブログ)
社長業を極めるためのカリキュラムについて、「日本的経営のリニューアル」という視点から紹介します
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2007年10月01日(月)更新
而今と全気全念
あるとき、禅僧から而今(にこん)という言葉を聞きました。
「今、この瞬間、そして、今ここ」という意味だそうです。
●私たちは今しか生きられませんし、ここしか生きられません。インターネットは時空を超えますが、生活はあくまで「而今」なのです。さっそくこの禅僧に「而今」という文字を揮毫していただき、部屋に飾って今後のモットーにして行こうと決意した次第。
●「而今」といえば、それに似た言葉が幸田露伴の『努力論』のなかに出てきます。それは、「全気全念」という言葉で、いまこの瞬間にすべての気を集中して、やるべきことに全力で取り組むことだそうです。
●もし、豊臣秀吉が信長の草履取りをしていたとき、「つまらない仕事だなぁ」「もっと重要な仕事をまかせてもらえないかな」などと思っていたら天下人にはなれなかったでしょう。まさしく、「全気全念」で草履を温めたからこそ信長に認められたし、「全気全念」で生涯を貫いたから天下人にまで登りつめたのでしょう。
●些細なことだからと軽んじている仕事があると、その些細なことに私たちの気がそがれます。私が真剣にやるべき仕事はもっと他にある、という思いがあると、「全気全念」にはならないのです。
●社内で一番「全気全念」で仕事ができる人、それが社長です。
●「而今」と「全気全念」、覚えておきましょう!
2007年09月14日(金)更新
目標リストの更新
●「これ急いでコピーを。でもその前に、これを宅急便で送ってきて。あ、それとコーヒーを一杯よろしく」などと無茶苦茶な頼み方をしていたら、「いい加減にしろ!」と、結局何もやってくれないでしょう。
●目標の発表だって同じです。一度にたくさんの目標を掲げて部下や組織を混乱させてはいけません。
●「今期の目標は、あの数字とこの数字の達成。それから、新規事業を一刻も早く軌道に乗せることと、この問題の解決。あとは、この分野への着手に備えて布石を打って・・・」と長々と目標を聞かされたら、社員が混乱するだけでなく、肝心の自分自身が混乱しかねません。
●そこで、自分に対して定期的に、『Is this still valued?』(この目標はまだ本気?)という問いかけをしてみましょう。つまり、本当に価値があって新鮮な目標だけが、「目標リスト」に残されているようにするのです。逆に、まだ諦めてはいないが、実質的には達成にこだわっていない目標は、「ペンディングリスト」に回すのです。また、いつかはやりたいけど、今の段階では考える必要のないものも「ペンディングリスト」に入れておきましょう。
●「目標リスト」は今の瞬間、フレッシュなものばかりでなければなりません。
●決めた目標を、どこまで徹底してやりきるかどうかが企業体質を決めます。達成していない目標や着手すらしていない目標がたくさんあるのに、その上に新しいのが加わったりすると、文字どおり玉石混淆の「目標リスト」になってしまいます。そのままでは「悪貨は良貨を駆逐する」の言葉どおり、どうでもいいことが重要な目標を駆逐しかねません。
●『Is this still valued?』(これ本気?)というような目標に対し、「さあね」という答えが返ってくるような社風は払拭しなければなりません。『Is this still valued?』という問いに対して、『Yes!』と全員が声を揃えて返事してくれる会社にするのです。
●そのためには、「目標リスト」が常に新鮮で、整理されている必要があります。目標を毎月リフレッシュさせること、これが企業体質を決めるツボなのです。
2007年07月13日(金)更新
禁止・抑制・義務
○2つの原理
・自分の嫌いなことをしない(禁止・禁止の原則)
・自分にとって快いことをする(快の原則)
○3つのルール
・たとえ健康によいことであっても、嫌いなことは決してしない
・たとえ健康によくないことでも、好きでたまらない場合は、とりあえず禁止しない
・自分にとって快く、かつ健康によいことをする
●さらに本文には、
「これを踏まえて1日に1食は好きなものを好きなだけ食べてもOKです。我慢して苦しい思いをせずに、食べる楽しさや食事のおいしさを満喫しながら、ダイエットによるストレスを減らし、自然とやせるカラダを手に入れましょう」とありました。
●意志の力よりも数倍強い、本能の力を味方に引き入れることで、ダイエットしようという作戦なのですが、これらの原理・ルールは、経営や人生に積極的に応用するべきでしょう。
●私たちは失敗しないために努力するのではなく、成功するために努力するのです。「○○したい」という内的な欲求があるからこそがんばれるのであって、決して「××したくない」という恐怖感や外的要求に屈してがんばるのではありません。
●先日、『2007年版新規開業白書』を見ていたら、すこし気になるデータがありました。「開業にふみきった直接のきっかけは?」という問いに対する回答内容だったのですが、そのなかで第一位の理由(20.4%)は、「勤務先に不満・不安があったから」というものでした。
●「○○したい」という積極的な理由ではなく、「このままでは不満や不安があるから」という消極的な理由で開業する人がトップであるということに対し、懸念せざるを得ません。
●もしかすると、背景には団塊の世代をはじめとする中高年が、一気に定年をむかえるという事情があるのかもしれません。ですが、「年金だけでは足りないから、やむなく開業した」というネガティブな理由では、開業してもうまくいきません。「○○したいから開業した」というポジティブな方向に自らを変えていく必要があります。
●経営者も同じです。事業計画書や経営方針書を毎年作るのは、「○○したい」という目的や目標を、いつも最新の状態に保つためです。冒頭のダイエットの原理と同じく、あなたの本能の力を味方にするような、モチベーション管理を行う必要があるでしょう。
●BOOCSダイエットの本には、「××したくない」「△△せねばならない」という禁止や抑制、義務感がたくさんある毎日を送っていると、「脳疲労」という現象を起こす、とありました。大切なのは、自分に厳しいだけではなく、時には脳に優しくしてあげることなのです。
2007年06月25日(月)更新
黄金の日々の始まり
「武沢さんはメルマガやブログで活躍されていますが、私は住宅業界だけで生きてきました。本当は住宅関係の記事を書く、プロのブロガーになりたいと思っているのですが、自分の経験や知識だけでは足りなくて、他人様に認めてもらえるようなものは書けそうもない」
●彼はどうみてもまだ60歳手前。前途洋々たるビジネスマンなのに、「できそうもない」と言うとは、なんて消極的なのだろうと思いました。
●もしかすると、他人の凄いブログやメルマガを見て、気後れしておられるのかもしれません。確かにすごいブロガーって言われている人はたくさんいますが、最初はみなさん見よう見まねのヨチヨチ歩きだったと思います。
●ところで、一生涯の持ち時間は約70万時間あるといわれています。その計算根拠は平均寿命が80年として、24時間×365日×80年=70万800時間というわけです。その中から仕事に割ける時間は、わずか10万時間。総持ち時間の7分の1しか私たちは仕事をしないのです。
●たとえば、上場企業のサラリーマンだったら、年間労働時間数2,200時間×定年までの40年間勤務として8.8万時間となります。中小企業で働く社員でしたら、もう少し多くなって年間3,000時間労働×40年勤務で12万時間。どちらにしたって、8.8万~12万時間という範囲内でしか仕事をしないのです。
●10万時間と一口に言っても、あまりに大きい単位なのでピンと来ないかもしれません。そこで、仮に一日24時間のすべてを仕事に回して不眠不休で働くと仮定すると、80年の生涯で12年間しか働かないという計算になります。
●同じように計算をすると、私たちは80年の生涯を次のように使っていることになります。
睡眠・・・・25年
学校・・・・ 3年
その他・・・40年(休日、生活、家族や友人との時間、自由時間)
●こうしてみても、やっぱり仕事時間は短いと言えます。学校で勉強する時間と仕事する時間を合計したとしても、それでも15年間に過ぎません。しかし、この15年間の過ごし方が、他の人生時間に多大なる影響を及ぼしている訳ですから、大切に使いたいものですね。
●ちなみに、この計算には一つトリックがあります。それは、60歳で引退するという古い前提にたっているのです。そこで、終生現役をめざす中高年のみなさんに、残り時間はまだまだたっぷりあるぞ、というお話をしようと思います。
●例えば私の場合、今年で53歳になりました。仮に80歳までバリバリと働くとすると、人生の残り時間が27年となり、次のような計算ができます。
・人生の残り総時間は、236,520時間(24時間×365日×27年)
・睡眠時間は、68,985時間(7時間×365日×27年)
・仕事時間は、67,500時間(10時間×250日×27年)
・休日は、52,785時間(17時間×115日×27年)
・他の生活時間・自由時間(47,250時間)
●この計算結果を簡単に要約すれば、睡眠7時間、仕事7時間、他の自由時間10時間(合計24時間)という一日を27年間繰り返すということになります。これから27年間、一日も休まずに7時間労働して10時間の自由時間があるのです。なんて素敵なことでしょう。
●まだまだ結構仕事ができるもの。もちろん、仕事ではなく、趣味やライフワークに打ち込んでも構いません。
●60歳で引退するのではなく、終生現役でいくと決めたら、まだまだ使える時間はたっぷりあります。むしろ、若いころと違って、子育てが終わり、家族サービスもほぼ終わった中高年にとって、睡眠時間以外の全時間が自分のものとなるのです。
●子どもや家族サービス、親戚や地域活動などといった、社会的雑事に割かれてきた時間の多くが、これからは自分のためだけに使えるという新事実に気づいてほしいのです。
●残された人生時間のマネジメントを上手にやれば、今からライフワークの一つや二つものにできるはず。ヘッセが言うような「人は成熟するにつれて若くなる」という人生を送るのも自由。他人の手助けを受けながら老醜をさらすのも自由。選ぶのはあなたなのです。
●若いときと違い、金も時間も経験もある中高年こそ、人生でもっとも自由度が高い黄金期だと私は思います。そんな時期を大切に過ごすために、今から人生計画と人生ビジョンを作る必要があるでしょう。
●もちろん、冒頭の紳士にもそのようなお話をしました。そして彼は今、すでに毎日欠かさず1記事を執筆するブロガーになっておられます。これを一年続けたら、間違いなく人気ブロガーになられることでしょう。
●やるべきこと、やれることはまだまだ多いのです。
2007年06月11日(月)更新
夢を語る
●歩きながら私は、「A産業さんって、どのような会社なのですか?」と聞いたところ、彼はほんの一瞬、間をおいた後、こう言ったのです。
「夢のある会社です!」
●私は思わずうなってしまいました。このようなセリフは、そう簡単に言えるものではありません。会社のビジョンと社員のやり甲斐とがリンクしているからこそ、出てくるセリフではないでしょうか。
●夢とは、誰かに与えられるものでなく、自ら作るべきものです。同様に、会社のビジョンも社長から与えられるばかりでは、優秀な社員ほど嫌になります。なぜなら、社員もビジョンを与えられるのではなく、作ることに参加したいと思っているからです。冒頭の彼が「夢のある会社です」と胸を張って言えるのは、きっと会社のビジョン作りに参加できているからに違いありません。
●話は変わりますが、私が20代の頃、毎月のようにお見合いをしていた時期がありました。最初は初対面の女性の前で緊張して、話題もとぎれがちでしたが、途中から作戦を変えました。
●自作の「人生25か年計画」を初対面の女性に話すようにしたのです。具体的に言うと、大学ノートに書きためたビジョンを熱心に語りました。その結果、それまでとは明らかに違う反応が返ってきました。
●いわゆる「ドン引き」というやつです。私が、自分のビジョンを熱っぽく語れば語るほど、彼女たちは逆に引いていくのです。最初はその理由がわからず、「きっと、計画のどこかが甘いからだろう」と思い、ますます詳細な計画を作っていったのですが、うまくいきません。
●そんなある日のことです。いつものように通り25か年ビジョンを語り終わったあと、女性からこのような質問をされました。
「それで奥さんは何をすればいいの?」
●私はこの質問を聞いたときにドキッとしました。とっさに、「できれば家庭を守って、家事に専念してもらえれば、ありがたいと思います」と答えながらも、男の自分が未来を全部切り開いていくものだ、と気負っていたことに気づいたのです。私はその女性に、理想の家庭像を聞き、自分の考えも述べました。それが今の妻です。
●経営でも同じことが言えます。詳細で完璧な計画を作れば作るほど、優秀な社員はかえって引きます。ある会社では、毎年一回、社内論文大会を開催しています。主眼はあくまで業務の改善改革ですが、論文のテーマは自由に設定できることとし、優秀作品の執筆者は、無料で2週間の米国企業視察旅行に派遣する、というものです。最初の頃はほとんど応募がなく、社長も困ったそうですが、10年たった今では、全社員のほぼ8割から応募があるほどのイベントになりました。
●最近では論文に限らず、小説やマンガ、映像、歌なども受け付けていて、昨年の受賞作品は、「2015年宇宙への旅」と題した会社の未来予想小説だったそうです。
●さて、あなたの会社の社員は、社外の人から会社のことを尋ねられたら何と答えるでしょうか。気になるところですね。
2007年04月06日(金)更新
決断力の本質とは何か
「インターネットが普及しなかったら、当社はただのは石ころみたいな会社だったでしょうね」
創業時、パソコンソフトの卸売り会社だったソフトバンクは、インターネットの普及で大変身を遂げました。この大変身以降も、孫さんは大胆な決断を何度もしてきたことは、みなさんご存知のとおりです。
●あるとき、経営者が冗談めかして語ってくれました。
「武沢さん、ソフトバンクの孫さんがナスダックジャパンへの出資を決めたときは、たった5分での決断だったそうですよ。やっぱり優れた経営者は決断が早いのですね。それに比べて私は優柔不断でしてねぇ。昼にうどん屋に入ってからも何を注文するか、迷っちゃう時があるのですよ」
私が笑っていると、さらに続けてこう言いました。
「そこで最近、即断即決の訓練をしているんです。座る前に『きつねうどん』と頼んじゃう。結構できるものですね。もちろん昼食に何を食べるかという事くらいなら簡単に即決できるようになるのですが、経営の問題、たとえば人の採用や投資案件などは、なかなか即断できるものではないですね」
●決断は早いに越したことはありませんが、間違った決断ばかりしていては意味がありません。適切なタイミングで正しい決断をすることが必要です。それと同時に、今何を決めるべきかという「問いの正しさ」も必要です。
●そこで、決断力の総合値を公式にしてみました。
決断力=「問いの正しさ」×「決断のタイミング」×「決断の正しさ」
ではないかと思うのです。一つひとつの要素について、チェックしてみましょう。
●「問いの正しさ」
経営会議においてどのような案件が議題にのぼり、討議されるかという段階で、すでに企業間格差がついています。ドラッカーは『現代の経営』の中で、次のように語っています。
「戦略的な意思決定において重要かつ複雑な仕事は、正しい答えを見つけることではない。それは正しい問いを探すことである。間違った問いに対する正しい答えほど、危険とまではいわないまでも、役に立たないものはない」
(以下、中略)
「したがって、意思決定において最初の仕事は、本当の問題を見つけ、それを明らかにすることである。この段階では、いくら時間をかけてもかけすぎるということはない」
つまり、経営における決断力を考えるうえでは、まず決断すべき事柄の選択が正しいことが前提条件なのです。
●「決断のタイミング」
決断すべきタイミングにも賞味期限があります。鮮度がみずみずしいうちに決定しなければ、永久にタイミングを失することすらあります。朝令暮改をおそれず、まず決断し、後から決断のよし悪しを再チェックしても良いのです。まずは、すばやく決断できる癖は身につけておきたいものです。
●3.「決断の正しさ」
決断の正しさは、その結果において証明するしか方法がありません。仮に二者択一の決断の場合、どちらか一方を決めるしかなく、残った一方の結果がどうであったかは知るよしもないのです。自分の決断が正しかったかどうかは客観的にはわからないもの。大切なことは、決断する前の段階で、成功と失敗の定義をしておくことです。
私は、7割の満足度が得られれば大成功だと思います。なぜなら、プロの世界におけるに次の勝率をみれば一目瞭然でしょう。
◇プロ将棋・・・年間約70の対局で勝率7割で一流
◇プロ野球・・・年間135試合で勝率6割で優勝
◇プロ野球の投手・・・バッターに対して勝率7割5分以上で一流
◇大相撲横綱の勝率・・・8割以上の勝率で一流
●賢明な経営者ならば、決断の勝率が5割を切ることはまずありません。それならば、理論的に考えて決断の数が多いほど有利になるという計算が働くでしょう。
プロスポーツでは、年間の試合数が決められていますが、経営では決断すべき数に制限はないのです。よって決断の勝率にこだわるのでなく、決断の勝数を重視しましょう。
●決断力が鈍いと感じているあなた、うどん屋での即断即決訓練も楽しいと思いますが、いかがでしょうか?
2007年03月16日(金)更新
客離れ対策
武沢:「客離れが目立つようになったという事ですが、理由は何でしょうか?」
社長:「最近は経営者の世代替わりが進んで、以前からうちと取引実績があるにもかかわらず、簡単に他社に乗り換えられてしまう。薄情なもんですよ。」
武沢:「どのような対策をたてておられますか?」
社長:「相手の世代にあわせて、当社も後継者か若い担当者をつけることで対応しています。信頼関係ができるまでには時間がかかりますからね。」
これだけの発想では、少々的はずれの努力と言わねばなりません。
●過去の取引実績が、未来の取引を保証してくれるものではありません。そのことは、この印刷会社の社長も充分承知しています。事実、この会社でも長年のつきあいがあった近所の原材料納入業者を、ネットで見つけた安い業者に切り替えたばかりです。
●仕事における信頼関係とは、担当者同士の人間関係で決まるものではありません。ましてや、社長同士の交友の有無で決まるものでもないのです。仕事の中身で決まります。中身とは、顧客の側からみた満足度や価値なのです。
●私たちは、新しく買ってもらうための努力は一生懸命しますが、それに比べてこれからも買い続けてもらうための努力は軽くなりがちなもの。
●ある保険代理店は、顧客に対して毎年一回、手紙に沿えてレポートを添付しています。そのレポートには、顧客の契約保険の内容と、その保障内容や特長がわかりやすく箇条書きにされています。こうしたフォローのおかげで、顧客は、なんのためにこの保険に入ったのかを再確認でき、契約の更新率が上がるだけでなく、新規の保険購入という面でも実績につながっているといいます。
●また、ある食品販売会社では顧客を工場に招待し、その衛生管理の徹底ぶりや食材へのこだわり、化学物質無添加などを訴えています。バス旅行も兼ねて無料招待しているので、毎月一回のこの企画は絶えず満席だそうです。
●こうした話を講演で話したところ、住宅建材販売の経営者から、こんな質問を受けました。
「当社では社長の人脈だけに頼った客先開拓をしてきて、これといったウリモノがないのです。どうすれば良いのですか?」
そこで、私はこう答えました。
「あなたの会社のウリモノが何なのか、再検討しましょう。できれば、それをお客様の側からみたゴリヤクで表現しましょう」
●最初は社長の人脈で営業できた相手とはいえ、顧客からみれば何らかのゴリヤクがあったはずです。それがあなたの会社の本質的なウリモノなのです。
●マーケティングを成功させる第一のキーワードは、「総合化」と「専門化」。関連製品やサービスや総合化することで顧客満足を高める作戦です。逆に、製品やサービスを特化し、顧客満足を高める作戦もある。名古屋のある印刷会社では何年も前から、「社内報」制作に特化したサービスを展開し、全国から注目を集めています。
●まずは、総合化の道を歩むのか、専門化の道を歩むのかを決めましょう。
●第二のキーワードは、「市場」と「ウリモノ」。第一と第二のキーワードを組み合わせて考えると、4つの選択肢が生まれます。
1.「市場」と「ウリモノ」をともに「総合化」する作戦
2.「市場」と「ウリモノ」をともに「専門化」する作戦
3.「市場」を「総合化」し、「ウリモノ」を「専門化」する作戦
4.「市場」を「専門化」し、「ウリモノ」を「総合化」する作戦
●経営コンサルタントを例にとれば、こうなる。
1.とは、あらゆる業界を対象にしたあらゆるコンサル活動
2.とは、特定業界に向けた特定メニューのコンサル活動
3.とは、あらゆる業界に向けた特定メニューのコンサル活動
4.とは、特定業界に向けたあらゆるコンサル活動
●こうして見てくると、冒頭の印刷会社の対応が的外れであることがおわかりでしょう。そして今、成長している会社は、ウリモノの矛先がしっかりとんがっているのです。
2007年03月09日(金)更新
コントロール係数<その2>
●まず、「コントロール」という言葉の意味は、"自分の意思で結果を左右できる能力"のことでした。思った通りの場所へボールを投げることができるピッチャーのことを「コントロールがいい」と言いますが、それと同じ意味です。
●一方、起きてしまった出来事を受け入れ、そこから最善の対応を素早くとれる能力のことを「マネジメント」と言う、とも説明しました。
●つまり、経営の仕事とは、「コントロール」と「マネジメント」という2つの力の“和”を高めることでもあるわけです。
◇コントロール可能・・・自分自身とその未来
◇コントロール不可能・・・天候やアクシデント、社会現象、それに、過去
◇中間・・・他人(顧客、上司、部下、家族)や世の中
といったところでしょうか。
●自分が決めた目標をきっちりと達成しようとしたら、未来に対するコントロール係数を高めていかねばなりません。そのためには、粘り強さが必要になります。
●たとえば、営業という仕事を例にして考えてみましょう。目標が未達に終わった営業マンは、達成した営業マンと違ってサボっていたのでしょうか? サボっていた人もいるかも知れませんが、それがすべての理由とは思えません。
●『成功哲学』の著者ナポレオン・ヒルは、「大多数の人間が失敗するのは、失敗した計画に勝る新しい計画をたてるだけの粘り強さに欠けるからである」と語っています。この理論をそのまま当てはめるなら、未達成の営業マンは、よりよい計画作りをする粘り強さに欠けているということになります。
●部下の販売実績が計画を下回ったときには、その原因を尋ねてみましょう。いろいろな返答が返ってくるでしょうが、“自分の中に原因がある”ときちんと受け止めているなら、見込みがあります。もし、そうでなければ、実績が上向く可能性はありません。これこそが、結果をコントロール可能とみているのか、そうでないのかの違いなのです。
●計画未達の営業マンから返ってくる典型的な回答を分析してみましょう。
1.「どの客先も要求が厳しく見積もり負けします」
これは、売れない理由を景気や他社のせいにしており、自分ではコントロールできない、と表明しているようなものです。そこから脱却して、具体的に自分はどうしたいのかを考えることによって、コントロール係数は上がるでしょう。
2.「うちの商品では他社に太刀打ちできません」
売れない理由は自社製品の競争力のせいとしています。これも、計画未達は自分のコントロール圏外の問題、と言わんばかりです。
3.「今までの売り方が通用しなくなってきました。新しい作戦を考案する必要があります」
計画未達を自分自身もしくは、自部門の問題ととらえています。ここからは、結果をコントロールしようという姿勢が感じられます。
●もちろん、うまくいかない原因を頭の中でじっくり考えることも大切ですが、膨大に試してうまくいったものを残すという、エジソンの発明手法も参考になります。
●いずれにしろ、未来に対するあなたのコントロール係数を高めることが目標達成への精度を上げることにつながるわけです。ぜひ、主体的にこのテーマと格闘していきましょう。
2007年03月02日(金)更新
コントロール係数<その1>
●「コントロール係数」が100%とはどのようなことかと言うと、自分一人の力によって思い通りに事態を変えられるということです。たとえば、あなたの行動はあなた一人の意志で動かすことができるでしょう。お昼に何を食べるか、夜は何時に就寝するか、明日の朝は何時に起きるか、などはあなたの自由意志で決められますから、「コントロール係数」は100%といえます。
●逆に、あなた一人ではどうにも変えられない状態を「コントロール係数」0%と言います。たとえば、今日の電車が時刻表通り動いているか、お天気はどうか、ドルの為替相場は今後どうなるか、といったことは、あなたの意志や努力ではどうにもなりませんから、「コントロール係数」は0%です。
●100%と0%は比較的わかりやすいのですが、問題はその中間です。
たとえば、以下の文章の~に「コントロール係数」を当てはめてみてください。
・あなたの部下の~は?
・あなたの伴侶の~は?
・あなたの子どもの~は?
・あなたの会社の今期業績の~は?
・10年後のあなたの会社の~は?
●ところで、経営に関することの大半は、これら「コントロール係数」が1%以上100%未満の間にあると言ってもよいでしょう。
●「一寸先は闇」という言葉がありますが、この言葉の本当の意味は「未来は闇のように暗い」という意味ではなく、「未来は闇の中にあるようにわからない」という意味です。
●未来の会社も未来の私も、「闇」の中にあるのは誰にとっても同じなのですが、濃淡のアミがかかっているようなもので、アミ100%の人は文字どおり真っ暗なのです。ですから先のことは皆目見当がつかないはずです。
●濃淡のアミ50%の人は半分くらいは見えるが半分はまったくわからない人。アミ10%の人はかなりよく見える人ということです。
●「コントロール係数」が高い人とはアミが薄い人なのですが、誰もがアミがかかっているという事実には変わりありません。そして、経営という仕事はこのコントロール係数をいかに高めていくかという勝負ではないかと思うのです。さらに言えば、コントロール不可能な出来事への対処能力をいかに高めるか、ということも経営上の大きな課題です。
●「コントロール」とは反対の意味で使われる言葉に、「マネジメント」があります。マネジメントとは、起きてしまった出来事にどれだけ上手に対応できるか、つまり「状況対応力」のことを指すのです。
●言葉の意味を整理すると、以下のようになります。
・コントロール・・・自分の意思で結果を左右できる能力のこと
・マネジメント・・・起きてしまった出来事を受け入れて、そこから最善策を素早くとる 能力のこと
●そこで提案です。経営者としてまず成すべき事は、「コントロール係数」100%の分野に関心を集中させることです。間違っても、「コントロール係数」0%のことに時間やエネルギーを浪費してはなりません。
●もちろん、部下に対しても、同じように指導しましょう。部下も自分でできることに専念しなければならないのです。
●次号では、私たち自身の生産性を高めることに的を絞って、「コントロール係数」の応用方法について考えていきしょう。
<次号につづく>
2007年01月26日(金)更新
中小企業にとっての「自立化」とは何か
●しかし、実際には製造業や建設業に属する中小企業のなかには、まだまだ自立できていない企業が数多く見受けられます。
●まず、「自立」とは何かを辞書で調べてみると、こうありました。
「他の助けや支配なしに自分一人の力で物事を行うこと。ひとりだち。独立」
●さっそく、中小企業家同友会の中で「経営の自立化とは何か」を議論しました。このグループは、たまたま製造業の経営者が多く、そのほとんどが下請け依存度の高い会社でした。
●参加者に、「自立型企業の条件」として考えるものをアトランダムに書き出してもらい、それを発表しあうところから議論をスタートしました。100項目近くがリストアップされたので、とてもすべてはご紹介できませんが、ピックアップしてご紹介しましょう。
1.下請け仕事の比率が少ないこと
2.価格決定権があること(ある程度でも)
3.納期決定権があること(ある程度でも)
4.新規の客先開拓が断続的にできていること
5.相見積もりの仕事が少なく、指名で仕事がくること
6.オリジナル商品・オリジナル技術があること
7.客先がきちんと支払い条件を守ってくれる力関係であること
8.仕事を確保するごとに金策に走らなくて済むこと
9.値段を決めずに仕事が先行するような状態ではないこと
10.社員に突然の残業を頼まなくてもよい状態であること
11.年間労働時間数が世間並みにおさまる状態であること
12.求人広告に対してそれなりの反応がある状態であること
・・・.etc
●次に、自立型企業になるために何が必要かについて、話し合いました。こちらの議論は活発とはいかず、散発的な意見しか出ませんでした。
1.その日暮らしでなく、計画的な経営がなされていること
2.自ら発信できる情報をもっていること
3.社員教育をして経営者が孤軍奮闘しなくても済むようにしておくこと
4.弱者同士が結束して大企業に立ち向かうこと
5.研究開発のための費用と時間を予算化すること
・・・.etc
●議論の過程では、「下請け仕事でも良いじゃないか、どこにも負けないものを持っていれば」という意見も出ました。これは、私も同感です。下請けがいけない、という議論ではありません。自立化していないことが問題なのです。
●さて、同友会のミーティングでこの日たどり着いた最終結論は、次のようになりました。
<経営の自立化の手順>
1.競争の武器をもつ
同業他社との違いをしっかり作り、画期的な技術や製品がなくても競合に勝てる魅力を開発する。特に中小零細企業の場合、コスト競争力と小回りの効いた対応、柔軟性とやる気などが武器になるはずである。
2.自由研究
勤務時間の10%を自由研究時間にあて、製品開発や技術開発を社内で奨励する。または、勤務時間を午後7時までとして、それまでの時間は下請け仕事をやり、それ以後は自由研究時間にあてるのも良い。
3.自由研究から生まれたナイスアイデアに対し、開発資源を確保する
製品開発・事業開発に時間と予算を付けて計画する
4.独自の製品・サービスを世に問う
ただし、一発で成功させようと思わないこと(肩の力を抜いて)
このサイクルをくり返し、ナンバーワンからオンリーワンづくりをめざそうということです。
●要するに、自立化するのだという決意を鮮明にすること。そして、それを実行に移すための方策をもっていることが大切なのです。
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ボードメンバープロフィール
武沢 信行氏
1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。
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