武沢信行の「社長の学校・事始め」 | 経営者会報 (社長ブログ)
社長業を極めるためのカリキュラムについて、「日本的経営のリニューアル」という視点から紹介します
2010年03月05日(金)更新
冬季五輪のメダル数より
●ただし、関係者にとって気になるのはメダルでしょう。
メダルの数という点で事前の期待や予想を下回るものになってしまいました。国別のメダル獲得数を金メダルの多い順に並べてみました。
<2010年バンクーバー五輪 メダル獲得数>
国 | 金 | 銀 | 銅 | 合計 |
1位:カナダ | 14 | 7 | 5 | 26個 |
2位:ドイツ | 10 | 13 | 7 | 30個 |
3位:米国 | 9 | 15 | 13 | 37個 |
4位:ノルウェー | 9 | 8 | 6 | 23個 |
5位:韓国 | 6 | 6 | 2 | 14個 |
6位:スイス | 6 | 0 | 3 | 9個 |
7位:中国 | 5 | 2 | 4 | 11個 |
7位:スウェーデン | 5 | 2 | 4 | 11個 |
9位:オーストリア | 4 | 6 | 6 | 16個 |
10位:オランダ | 4 | 1 | 3 | 8個 |
11位:ロシア | 3 | 5 | 7 | 15個 |
・ | ||||
・ | ||||
20位:日本 | 0 | 3 | 2 | 5個 |
●日本のメダル5個という結果はトリノの1個よりは躍進しました。
しかし、他のアジア勢の韓国(金メダル数5位)や中国(7位)と比較すると見劣りするのは明らかです。選手個々はよく戦ったと思うので、イメージとしては選手任せの日本、国の総力をあげたカナダや韓国という図式でしょうか。
今回、ロシアの低調ぶりも目立ちました。プーチンが「我慢ならない」と激怒しているそうですので、次回のソチ(ロシア)大会でどれだけ巻き返しするか、注目ですね。
●国別メダル数=選手個人の力+国の強化費用
強化費用とは何でしょうか。
可能性ある選手を発掘し、練習に集中できる環境を与え、優秀なコーチをつけ、国外試合などの経験を豊富に積ませ、メダル獲得時のご褒美をしっかり与えればトータルとしてメダル数は伸びていって当然です。
●あとは、国として政府としてどれだけお金を拠出できるかという意志の問題が残っています。国の財政力の強い弱いも関係あるのでしょうが、他の国家予算に比べたら100億円程度など微々たる金額だと思います。多分に「意志」なのです。
●さて、上記の「メダル数」のところを「人材数」に変えてみたら、「国の強化費用」は「会社の教育予算」と置き換えることができそうです。
2010年02月26日(金)更新
起業家とサラリーマン
この本は大前氏がサラリーマンに送る檄文のような内容でしたが、楽しく痛快に読むことができました。
「サラリーマン同士でつるむな」、「やりたいことを10以上あげることができるか」、「死ぬときは貯蓄ゼロでいい」など、相変わらず歯切れがいい"大前節"を堪能させてもらいました。
●しかし異論もあります。たとえばこの箇所。
・・・
サラリーマンは常に上司によって、「人に言われたことをきちんとこなす力があるかどうか」で評価される。20代にこうやって育てられると、言われたことはやる、言われないことはやらない、という思考・行動パターンが習慣化する。これは、サラリーマンの生活習慣病みたいなもので、数年のうちに「お手」といわれたら、サッと手を出すという“サラリーマン染色体”に染まってしまうのだ。
・・・
●サラリと読んでしまえば問題ないのかもしれませんが、私は少々引っかかっりました。
私も30才になるまでは真面目で勤勉なサラリーマンでしたが、著者が言う「サラリーマン染色体」には染まっていません。
というより、勢いのある中小企業やベンチャー企業では、そうした染色体に染まる要素がないと思うのです。また、官僚的になってしまった巨大企業のサラリーマンだったとしても、本人の自覚次第で染色体まで染まるような愚はさけられるはずです。
●ですから、サラリーマンという立場の人を必要以上にワルモノにし、断罪するのは危険なことだと思います。
サラリーマンが悪いのではなく、"サラリーマン根性"が悪いわけで、その根性を要求したり、許容したりする仕組みの方が悪いと考えてみてはどうでしょうか。
サラリーマンの中にも経営者マインドに富んだ人がいる一方で、経営者の中にもサラリーマン根性の人がいます。大切なのは"根性"、つまり意識の方なのです。
●では、具体的に「根性」や「意識」はどうあるべきでしょうか。
『イノベーションと起業家精神』でドラッカーが訴えているのは、サラリーマン根性を涵養するような組織ではなく、起業家精神を涵養する組織を作れということです。
昔から「諸行無常、万物流転」と言いますが、ドラッカーも、「人の手によるものに絶対のもの、永遠のものは存在しない。あらゆるものがやがて陳腐化する。そして進歩する。それが文明というものである。だからあらゆるものにイノベーションと起業家精神が必要となる。しかも常時必要となる。イノベーションと起業家精神が当たり前に存在し、継続していく起業家社会が必要なのだ」と説いています。
●サラリーマン根性を育てかねない仕組みや制度があればすみやかに廃止し、逆に起業家精神を涵養する仕組みを考案しましょう。
それには、あなたがなぜ起業家的であるのかをよく考えてみれば、そのヒントが見つかるはずです。
2010年02月19日(金)更新
行動を共にできる相手
それだけ聞くと、“大のオトナが情けない”と思われるかもしれませんが、彼らにとってカレーの好みの差は氷山の一角であり、一事が万事、日ごろから意見や好みがあわなかったのです。
意見が合う・合わないというのは調整できますが、趣味や感性が違っていると互いに歩み寄りようがないのかもしれません。
●だからこそ、部下の喜怒哀楽や趣味嗜好が自分と同じである時、社長はすごくうれしいものです。それは社長に限った話ではなく人間の本性というべきものかもしれません。
ある日、私の講演会に部下を連れて参加されたS社長からこんなメールをもらいました。
「先日の岐阜での公開セミナーに大阪より参加させてもらいましたSでございます。私は武沢先生のお話をうかがうのはこれで2度目ですが、途中、涙がこみ上げてくるのを堪えていました。
今回は、自社の社員に是非聞かしてあげたいと最近入社してくれた二人の若手社員を連れて行きましたが、正直、最初は彼らがどういう意識で拝聴するか、不安でした。社長に無理やり連れて来られて、あまり感動もなく、ただ座っているだけで終わるかもと思っていました。
最初、受付で武沢先生の本を売っていたので、お前も買わないか?と尋ねたところ、[僕はこんな本、自宅にもたくさんありますから要らないです]といっていました。あぁやっぱり、連れてきても意味が無かったかと思いました」
●「セミナーが終わって、私は先生に挨拶に行きましたが、彼ら2名はその間になんと、自分の意思で先生の本を2冊ずつ購入していました。私は、1冊しか購入しませんでしたが(笑)・・。涙がこみ上げてくる思いでした。
そのあと、懇親会場へ移動する間、彼らが満足げな顔で『社長、今日は本当に来て良かったです』と素直に心から感謝していました。私は涙を堪えるのに苦労しながら感激しました。彼らの心に何か響いたのでしょう、心からこみ上げてくる熱い思いが顔に出ていました。
自分より一回り以上年下の彼らと、同じ感動を分かち合うことができて、これからの会社運営に意を強くもつことができました。創業して10年目になりますが、ようやく盟友に出会えた気分です。(後略)」
●私もこのメールに感動したので、さっそくS社長に返信したところ、再び次のメールが来ました。
「あれから、三人で話し合いましたが、我社の経営方針がはっきり決まりました。我々が真剣に世の中を変えてやろう、我々がこの業界を引っ張ってやろうと決断しました。男50にしてようやく死に場所が定まったようです」とありました。
●人気ビジネス書『ビジョナリー・カンパニー』でも、まず大切なことは「適切な人をバスに乗せること」だと説いています。時には不適切な人をバスから降ろすか、後部座席に追いやることも重要だと説いています。そして、適切な人が運転席に集まって、自分たちの目的地を決めるくらいで十分だというのです。
目的地へいくのにふさわしい人を探すのではなく、ふさわしい人を見つけて目的地を決めるのだという考え方に最初私は疑問を抱きましたが、夫婦だってそれに似ています。結婚してから互いに話し合って夢を見つける方が一般的です。
盟友を見つけるには、こちらも盟友相手にふさわしい人間でなければなりません。男惚れする人間になること、それが行動を共にできる相手を見つける鍵だと思うのです。
2010年02月12日(金)更新
もうとまだ
「もう半分しか残っていない」と考える人はなくなった水を見ているから否定的。「まだ半分残っている」と考える人は残っている水を見ているので肯定的。だから、いつでも「まだ」の心で今あるものに目を向けなさいというお話でした。
それを聞いて私は、「なるほどなぁ」という気持ちと同時に「そんな単純なものか?」という違和感を同時に感じました。
●相場の格言に「もうはまだなり、まだはもうなり」というのがあります。
もう底だと思えるようなときは、まだ下値がある。その反対に、まだ下がるのではないか、と思うときは、それが底かも知れないという先人の知恵です。
●「もう」か「まだ」かという二者択一だけで、その人が否定的か肯定的かが分かるというのはどうみてもナンセンスではないでしょうか。むしろ、「もう」や「まだ」のあとに続く言葉や態度が問われるはずです。
●たとえば、こうです。今年も1月が終わりました。あと11か月、その事実をどう考えるのかを例にしてみましょう。
「もう」の人たちはこう考えます。
「もう1か月が終わってしまった。時間がたつのはあっという間だ。この1か月で私たちは何を達成したか。何が問題だったか、そして残された11か月を最高にすごすにはどうすべきだろうか」と考え計画を作り、行動を開始します。
「まだ」の人の発想はこうです。
「まだ今年も11か月残っている。まだまだ始まったばかりだ。さあ、この新しい2010年で何を達成しようか」と考え計画を作り、行動を開始します。
この二つの場合は、どちらも目標志向で積極的です。
●その反対に、「もう」でも「まだ」でも、どちらにしたってうまくいかない人の考え方はこうです。
「もう1か月が終わってしまった。あと11か月しか残っていない。このままだと今年もあっという間に終わってしまうだろう。ああ、何て無駄な1か月を過ごしてしまったのか」となげく人。
「まだ今年も11か月残っている。大丈夫、まだまだ余裕。あわてなくてもなんとでもなるさ」と残り時間の多さをあてにする人。
●経営者は「もう」も「まだ」も両方を使いこなしましょう。
事実や現実はありのままを受けいれ、過去を引きずらず、たえず今日を出発点にして最善を尽くそうと考える姿勢こそが大切だと私は思うのです。
2010年02月05日(金)更新
木の五衰について
●まず第一段階として、木が繁茂してくると「懐の蒸れ(ふところのむれ)」というものが始まります。枝葉がふんだんに茂ったために風通しが悪くなり、蒸れはじめるのです。そうなると、酸素の代謝が悪くなり、害虫が付きやすくなるなどの問題が出始めます。
●その結果、木が伸びなくなります。これを「末止まり(うらどまり)」といい、成長がストップします。これが第二段階です。
●次の第三段階目では、「裾上がり(すそあがり)」が始まります。本来、木が成長過程にあるならば、根は深く広く伸びなければなりません。しかし、「裾上がり」になると、根が地表に出てしまい傷ついたり腐ったりします。
●裾上がりした木は根っこからではなく木の上部から枯れ始めます。これを第四段階の「末枯れ(すえがれ)」といいます。
●そして最後、「虫食い」の発生です。末枯れした木は害虫によって完全に枯れていきます。木が枯れるプロセスをみると、最初から害虫に食われて枯れたように思われがちですが、実際に枯れるまでの過程には、こうした段階があるのだそうです。以上が「木の五衰」です。
●人間も企業も、真の実力は根っこの充実によるところが大きいものです。果たして、私たちは広く、太く、地表の奥深くに根をおろしているでしょうか。どこかで「末止まり」や「裾上がり」を起こしていないでしょうか。また、根っこ以外にも、枝葉をつけすぎるあまり代謝を阻害してはいないでしょうか。
●芽生えたての木が一日で大木になれないのと同様に、個人や企業が社会に認知される前には、「実力はあるが、まだ無名」という時期が必ずあります。そのようなときは、見てくれだけをよくして売名行為にうつつを抜かすのではなく、根っこの充実を図ることを忘れないようにしましょう。
2010年01月29日(金)更新
本質を変える
●「それはそうやけど、それが出来んから困っとるんや」と苦笑する多くの社長に対し、松下さんが「まず強く願うことですな」と教えるのを聞いて「背中に電流が走った」と、京セラ創業者の稲盛和夫氏が回顧しています。
●当時青年だった稲盛さんは、まず強く願い、具体的な一歩の行動を開始することが、自分の経営者人生を切りひらくのだと悟ったのでした。
●正月を迎えて心機一転を誓ったにも関わらず、1月も下旬になると、結局なにも変わっていないということがあります。なにも変わっていない自分の本質に嫌気がさすこともあるでしょう。
●本質を変えるということに関して、こんな故事があります。
・・・
あるとき達磨(だるま)大師のもとに青年が訪ねてきました。「どうか私の心を落ちつかせてください」と青年は言いました。
達磨はそれにこう答えました。
「その不安な心をここに持ってきなさい。そうしたら私が落ちつかせあげよう」
青年は困って一晩中考えたあげく、翌朝、こう言うしかありませんでした。
「不安な心を探しましたが、とらえることができませんでした」
達磨は言いました。
「とらえることのできぬ心が君の心なのだ」
・・・
●目に見えない心=「自分の本質」を探していても、すぐ日が暮れてしまいます。「本質は行動に宿るもの。今日の生活の一コマ一コマにその本質が宿るとすれば、そのコマを変えれば良い」というのが達磨大師の真意だったのでしょう。
●「人間の再起は朝起きにある」と断言したのは倫理法人会の前身組織をつくった丸山敏雄氏です。ズボラな性格や強情、言い訳ぐせといった、悪い習慣の大本が朝寝にあると考えた丸山氏は、明け方目がさめると同時にふとんから起きるようにしたそうです。
●みなさんも、明日の朝から早起きをしてみましょう。そして、今までやろうと思って先のばししてきたことを始めてみましょう。
心構えと行動、行動と心構え、それは魔法のペアなのです。
2010年01月22日(金)更新
間違った二者択一
「さあ、お父さん。ハートのエースは左右どっち?」
「そりゃ、右でしょ」
「残念、右はダイヤの7でした」
「あれ? いつの間に。じゃあ、左かい」
「これまた残念、左でもないよ」
「えっ、左右どちらでもないの?」
このマジックでは「左右どっち?」と聞かれましたが、正解はいずれでもありませんでした。
●経営においても、「どちらにしたらよいか」などと二者択一を迫られる場面があります。そのとき、二択とも間違いであれば、当然、どちらを選んでも不正解になります。例えば、「進むべきか引き返すべきか」という選択がいずれも間違いであり、「立ち止まって様子を見る」ことが正しいという場合です。
●最近、愛知県のあるメーカーの経営者とお話ししました。多くの同業者が中国に進出するなか、ここの会社は断固として日本に留まる戦略をとっています。そこで、理由を聞いたところ、意外な答えがかえってきました。
●実はこの会社、20年以上も前に中国の地方都市に合弁会社を作り、現地パートナーと共同で事業を立ち上げたことがあるそうです。20年以上も前とはものすごい「先見の明」ですが、当時は中国の民主化が日本でもてはやされ、なかでも、上海の浦東地区の変貌ぶりは連日のように紹介されていました。「第一次中国投資ブーム」といってもよかったかもしれません。
●しかし、その合弁会社は数年で破綻。多大な損失を被った結果、中国から撤退することになりました。その余波で、儲かっていた国内事業にもしばらく悪影響が及びました。
●このことを受け、当時の経営会議で決まった結論が、次の二つだったそうです。
・今後、わが社は二度と合弁事業をやらない
・今後、わが社は外国への進出は一切考えない
●その話を聞いたとき、私は言葉がでませんでした。
「前回の中国進出は○だったか、×だったか」というならば、言うまでも無く×でしょう。だからといって、「今後、私たちの外国進出は○か×か」について、その時点で結論を固定してしまうのは、間違った二者択一ではないでしょうか。万物流転、諸行無常の世にあって、「今後二度と・・・」という結論を後世に残すことは、大きな誤りだと思うのです。
●二者択一の場面に遭遇したら、その二択は正しいかどうか、よく吟味しましょう。
仕事から帰った亭主に対し、妻が「先にご飯にする、それともお風呂にする?」と質問して二択を迫るのも、実はトリックかもしれませんよ。
2010年01月15日(金)更新
表敬訪問の重要性
武沢:「経営の調子はどうですか?」
S :「不況の影響を受けていますが、先代が非常に堅実な経営をやっていたおかげで財務体質には問題ありません。無借金で経営できているということは、今の時代、ものすごい武器になっていると思います」
武沢:「それは素晴らしいですね。では、社長に就任してからいちばん苦労されたことは何ですか?」
という問いに対し、返ってきた答えは「先代社長と比べられること」。また、S社長の会社だけでなく、主力取引先の多くで世代交代が進んだため、先代同士ほどの濃い人間関係がつくれていないことも心配の種ということでした。
●跡を継いだ社長が、先代の人間力やカリスマ性を真似しようとしても無理な話であり、純粋に商品の善し悪しや価格の競争力、サービスの充実具合などが問われることになります。そのため、世代交代というものは、長年続いた取引先を失う危険性をはらんでいるのです。
●幸い、「先代のように人間力で売ることなどできない」と早くから気づいていたS社長は、純粋に商品やサービスで勝負しようと決意していたといいます。
●さて、あなたの会社は、社長個人の人間力で売れているのか、それとも純粋に商品・サービスの魅力で売れているのか、どうやって判断しているのでしょうか。「その両方で売れている」と考えているかもしれません。しかし、世代交代をする際には、社長個人が持つ人間力を差し引いて評価をし直す必要があるかもしれません。
●ただし、人間力に頼らないとはいえ、定期的に行ないたいのが社長の客先訪問です。「表敬訪問」というと何か儀礼的な訪問に思われますが、実は社長の表敬訪問ほど効果のあるトップ営業はありません。「社長の表敬訪問は、セールスマンの100回の訪問に勝る」(経営コンサルタント・一倉定氏)と言われますが、まさしくその通り。郵便物のポスティング1000枚にも勝ると思います。
●表敬訪問をするときに前もってアポイントを入れておくと、先方も社長や役員が応対してくれることでしょう。そのとき、地元の名産品や地酒に加え、自社の経営計画も持参すれば最高です。
●そして、訪問した際に自社の情報を積極的に開示すると、先方も今後の見通しなどの情報を聞かせてくれるはずです。そうした会話の中から、それまで気づいていなかったニーズや隠れた不満などがわかることもあるでしょう。
●さらにもう1つ、トップの表敬訪問には重要な役割があります。それは、同業他社の動向をつかむこと。他社がどれくらいの頻度で訪問し、どのように攻勢をかけているのか。あるいは、同業他社の社長も表敬訪問をしているのかどうか、それとなく聞き出すのです。それによって、自社の優位性がどの程度なのかを知ることができます。
●とくに、重要な顧客に対してはトップ同士の情報戦がカギとなります。製品やサービスの質や価格で勝負するのは素晴らしい心意気ですが、表敬訪問も決しておろそかにすべきではありません。
2010年01月08日(金)更新
もう一人の白虎隊
そのときの規則が「什の掟(じゅうのおきて)」です。その内容は、
一.年長者の言うことに背いてはなりませねぬ
二.年長者にお辞儀をしなければなりませぬ
三.虚言(うそ)を言うことはなりませぬ
四.卑怯な振る舞いをしてはなりませぬ
五.弱い者をいぢめてはなりませぬ
六.戸外で物を食べてはなりませぬ
七.戸外で婦人(おんな)と言葉を交えてはなりませぬ
「ならぬことはならぬ」と締めくくっています。ダメなものはダメなんだということです。
●これらは要するに、「人として恥を知りましょう」ということなのです。
中国の孟子は、「人は羞恥心がなければならない。羞恥心は人間にとって重大な徳目である。もし羞恥心がないことを恥ずかしく思うようになれば、辱められることはない」と語っています。
会津の「什の掟」も羞恥心を定義したもののように思えるのです。
●電車の中での携帯電話やお化粧。コンビニの前での座り食い。公園や路上での男女の抱擁や接吻。
彼らに注意しようものなら、「私の自由でしょう。それに誰にも迷惑かけてないじゃん」と反発するでしょうが、実は迷惑をかけているのです。
運転中の携帯電話を取り締まるだけでなく、これらの行為も公然わいせつ罪とか何かで取り締まってほしいものです。眉をひそめるだけでなく、国や学校の問題として「ならぬものはならぬ」と羞恥心を教えていかねばならぬはずです。
●会津藩に話は戻します。
白虎隊の物語は多くの方がご存知だと思うのでここでは割愛します。実は白虎隊と同世代の若者で郡 長正(こおり ながまさ)という若者がいます。
彼の行為は、「もう一人の白虎隊」として語り継がれているのですが、あまり知られていないようです。
わずか16歳で自らの命を絶ったせい惨な最期は、「ならぬものはならぬ」という教えに殉じた武士の引き際です。ご紹介しましょう。
●郡 長正(安政3年~明治4年)
会津藩家老、萱野権兵衛の次男。明治のはじめ豊津小笠原藩(福岡県)に留学した。育ち盛り、食べ盛りの長正は、ある日郷愁を覚えて母に手紙を書き送った。
「稽古や野外訓練が終わったあとなど、空腹で辛いことがあるので、会津の柿を送って下さい」
●その手紙を受け取った母は、さすが武士の親。
「事もあろうに空腹を訴え、柿を送れとは何ごとですか。会津武士の精神はどこへやったのですか」と戒めたのです。愛する息子への思いやりは、甘やかすことではなく、たしなめることです。しかし長正の母は、まさかこの手紙が息子を死へおいやるとは露知りません。
●長正は母からのこの手紙を心の支えとして大切に持ち歩いていました。
あるとき不運にも、これを落としてしまいます。それを学友に拾われ、皆の前で読まれてしまったのです。
小笠原藩士の学友たちに会津武士を辱められるほど恥ずかしく悔しいことはありません。悩んだあげく、長正は会津武士の屈辱をはらそうと藩対抗剣道大会で完勝し、その後切腹して果てました。時に16歳。
「ならぬものはならぬ」という恥の精神を貫いたのです。
●無病息災と不老長寿を願うばかりが幸せではなく、思想や志操に殉ずるためには、いつでも死と背中合わせに生きる生き方も人として大切なのではないかと思います。
「もう一人の白虎隊」と言われるこの長正の生き様から何かを学びたいですね。
2009年12月25日(金)更新
剛毅木訥
●「論語」の一節に、「巧言令色少なし仁」という言葉があります。これは、言葉や外見などうわべを美しく飾っても、心が全然伴っていないことを指します。お互いドレッシーに着飾ったパーティーで、ワインやスコッチを片手に交わす会話の多くは、「巧言令色」なものになりやすいのです。
●パーティーのように優雅で社交的な雰囲気のなかでは、文房具屋で売っているノートや、モーター音がうるさくなったノートパソコンを開いて仕事の話をするのは、少し憚られます。どうしてもメモをとりたい状況になっても、せいぜい携帯電話やiPhoneなどで走り書きする程度でしょう。
●しかも、パーティー会場にはお目当てのセレブや著名な社長、人気作家などがゴロゴロいます。パーティー参加者の本当の目的はそうした人たちと交流をもつことであり、いま目の前で話している人を幕間つなぎのような存在として扱いがちです。
私がパーティーを苦手とする理由は、そうした本音を互いにしまいこんだまま交わす会話こそ、「巧言令色」の最たるものだと思っているからです。
●一方の(大)宴会について考えてみましょう。一泊や二泊で温泉旅館に行き、湯上がりに浴衣を着て、運ばれる会席料理に舌鼓を打ちながら言葉を交わします。
こうした宴会では、「終電が・・」「カミさんが・・」「娘がインフルで・・」などの、途中で抜けだすための言い訳が一切通用しません。そうして肚が据わって飲むうちに酔いが回り、本音で語り合う交流ができます。
もっとも、宴会にはセレブも著名人も来ないという難点がありますが、本音の交流をするのにそんなものは必要ありません。
●論語では、そうした本音の交流を、「剛毅木訥(ごうきぼくとつ)、仁(じん)に近し」と言っています。剛毅とは何ごとにも屈しない精神を意味し、木訥は話し下手なことをいいます。つまり、「剛毅木訥であることは、それ自体が仁(じん)、つまり、人を思いやる心の持ち主に近い」という意味です。
●どうやら、古代中国では訥弁であることが、そのまま人徳につながっていたようです。日本でも、無口で話し下手であることは、昔ならば決して欠点ではありませんでした。しかし、いつのまにか訥弁は不器用を意味するようになってしまいました。
グローバル化の影響もあり、コミュニケーション技術を上げることが必須になってきたからかもしれません。
●ここでおまけにもうひとつ。おなじく孔子の言葉で、次のようなものがあります。
「君子は言(ことば)に訥(とつ)にして、行いに敏(びん)ならんと欲す」
「君子たる者は、口が重くて訥弁でもいいが、実践においては敏速でありたい」という意味です。つまり、「言葉の軽い者は訥を志して慎み、実践の遅い者は敏をもってみずからを励ますべし」、という孔子の教えです。
●「巧言令色」「剛毅木訥」「行いに敏」
忘年会と新年会に臨むときは、これらの言葉を胸に秘めて交流をはかりましょう。
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ボードメンバープロフィール
武沢 信行氏
1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。
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- 評価すべきは継続力 [12/20]
- 熟す [12/06]
- D社の貯蓄作戦 [11/22]
- 現金の迫力 [11/14]