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2009年12月18日(金)更新

目標とマイルストーン

計画を立てるときは、あれこれ盛り込みすぎたものにしてはいけません。まして、ただでさえ内容が盛りだくさんの計画を、同時に進行してやろうなどと考えないほうが賢明です

●ある日、来年経営コンサルタントとして独立する予定の銀行マン(31歳)に、「武沢さん、来年の10大目標を作ったので見て欲しいのですが」と言われました。「えっ! もう来年の目標が決まったのですか?」と言いながら見てみると、次のような項目が並んでいました。

<仕事目標>・・・起業を成功させる

1. メルマガを1月に創刊し、読者数を一年で3,000人にする
2. 地域内で異業種交流会を企画・開催し、年末には100人規模の会にする
3. ホームページを立ちあげて、毎日100アクセスを目指す
4. 年末までに顧問先を10社にする(月商200万円・月収100万円を達成する)
5. 本を一冊出版し、「キャッシュフロー経営の専門家」というブランドを打ちたてる

<個人目標>・・・自己管理の徹底で進化する

1. 筋トレを週2回行ない、体重62キロ、体脂肪率15%にする(今はそれぞれ66キロ、20%)
2. 家族旅行を年2回実施する(春は国内、秋はグアム旅行を予定)
3. 年間に100冊の読書をする(今は年50冊のペースなので、倍増する)
4. 英語力を高め、今は550点のTOEICスコアを650点にする
5. 経営に関する専門知識と営業力を身につける

●一通り目を通し、「ほぉ、なかなかスゴイじゃないですか」と讃えてから、

・この10大目標をどうやって具体化して、行動するのですか?
・この中で一番大切な目標はどれですか?

といった質問をしてみたところ、次のような答えが返ってきました。
●「この10大目標をエクセルでガントチャートにしてあります。横軸に来年の1月から12月までを、縦軸にこれらの目標を設定し、セルを使って詳細な予定を書き込んであります。また、このなかで一番大切なのは、仕事目標の4番目にある「年末までに顧問先を10社にする」です。起業してから1年以内に月収100万を達成できれば、自分に合格点を付けてもいいと思います」

なるほど、良くできた計画です。完ぺきと言ってよいでしょう。

●しかし、私は計画が完ぺきすぎるがための弱点を知っています。「細部にいたるまで完ぺきにしようと欲ばって計画を立てると、枝葉にとらわれて逆に幹が見えなくなる」という弱点です。

●みなさんは、有名な“ブレイクスルー発想”のなかに、次のような逸話があるのをご存知でしょうか?

・・・
ある大手電力会社では、長年のあいだ頭を悩ませている、停電の原因が1つありました。カラスが鉄塔に集まって巣作りをはじめたときに、針金を落としてショートすることがある、というのがその原因です。

そこで、その電力会社はいろいろな専門家にお願いをして、カラスが近寄らない方法を研究しました。カラスが嫌う音、カラスが近寄らない臭い、カラスが恐がる天敵などといろいろ手を打ちましたが、どれもいたちごっこで解決には至りませんでした。

そこでブレイクスルー発想の専門家に相談したところ、瞬時に解決法を考案してくれました。

それは、カラスの巣をあらかじめ鉄塔に作っておき、巣を作る必要をなくすというものでした。それを実行したところ、見事に停電が起こらなくなりました。
・・・

●停電の理由は、カラスが近づくことではなく、カラスが針金を落とすためです。なので、カラスを近づけない工夫をするのではなく、巣作りを不要にしてあげれば良い、という本質を見抜いたことがこの話の要点です。

●話を銀行マンの彼に戻しましょう。

彼が一番重要視している目標は、「来年末に顧問先を10社にし、月商200万円・月収100万円を実現すること」です。つまり、仕事目標にあるそれ以外の項目は、マイルストーン(通過点)にすぎません。あるいは、目的と手段の関係と言い換えてもいいでしょう。

●意欲的に目標を掲げ、詳細な計画を作って行動するのは素晴らしいことです。しかし、「カラスを近づけないのではなく、停電を防ぐのが目的」という発想と同様に、あなたの目標を整理し、手段と分けて考えることの必要性を忘れないでください

2009年12月11日(金)更新

魅惑的なコピー

●ある日、弊社に若い女性が営業目的で飛び込み訪問してきました。少し話をしたあと、「あのぉ、『がんばれ社長!』って素敵な社名なのですが、どのような活動をされているのですか?」と聞かれました。

●なので、「う~ん、詳しく話すと長くなるのですが、メルマガや本の執筆に加えて、セミナーや講演、異業種交流会の主催などをやってます。まあ、社長にがんばってもらうのが仕事なので、『がんばれ社長!』にしました」と答えました。

●「へぇ、すごそうですね」と彼女は言ってくれましたが、おそらく全然わからなかったでしょう。といっても、それは彼女の理解力に問題があったのではありません。こちらの伝え方の問題なのです

●アメリカの人気コンサルタント、トム・ピーターズは「自分や自社を世間に伝えるときの表現力が大切である」として、次のように述べています。

・・・
陳腐な言葉がならんだ自己紹介ではなく、すこしはあなたの顔が見えるような表現をしよう。

たとえば、

・セクハラ訴訟を避けるエキスパート。私の名前は25の新聞・雑誌に取り上げられた
・金融サービスと小売業に豊富な経験をもつ○○○

など、はっきりと正確に伝えることが大切。(若干、見栄が入っていたとしても)それがブランドになるので、次の設問に答えを出すことで自分の表現力を高めよう。

1. 自分はいったいどういう人間か
2. 自分の商品は何か
3. その商品は何が特別なのか
4. 類似商品とどこがどう違うのか
5. その信頼性をどう表現すればいいのか
6. 自分が進んでいることをどう伝えればいいのか
7. 自分がカッコいいことをどう伝えればいいのか
8. これだけは誰にも負けないという技能はなにか
9. 過去の実績(自慢できるプロジェクト)がいくつあるか
10. 世間の評判はどうか
11. 見た目(身だしなみは大切だ、そして名前も…)
12. 話術(説得力、表現力)
13. 人柄・個性(いちばん大切なのは、あなたらしさ)
・・・

他人の口を介した言葉やイメージは一人歩きしていくものです。ですから、あなた自身が発するキャッチコピーが実態を正しく反映させたものであり、会う前から期待を高める役割をしてくれるのであれば、それに勝るものはないでしょう。

少なくとも、飛び込み訪問の営業マンや交流会で名刺交換した相手が、帰社してからあなたのサイトにアクセスし、注意深く読んでくれるような魅惑的なキャッチコピーを作りたいものです

●ちなみに、もし、冒頭の女性に今度同じ質問をされたら、「『がんばれ社長!』とは、日本の社長にがんばってもらうためにオンラインでサービスを提供する、経営コンサルタント会社です」と答えるつもりです。これでもまだ満足はしていませんが、冒頭の説明より相当すっきりしたと思いませんか?

2009年12月04日(金)更新

会社の動体視力

●スポーツでは、「動体視力」が大切だと言われます。「動体視力」とは、移動するひとつの目標物を連続して追い続ける眼の能力のこと。野球のバッティングでいうと、ボールに眼を追従させる能力がこれにあたります。

●ですが、動体視力だけが優れていても能力的に十分とはいえず、「眼球運動能力」も大切だといわれています。こちらは、サッカーのゴールキーパーが瞬時に移動するボールや相手選手にすばやく視線を動かすための、眼球自体の運動能力のことです。

●さらに眼の能力には、視野の広さと的確さをあらわす「周辺視力」、移動または静止する目標物に対して、瞬時にフォーカスを当てる「瞬間視力」などもあります。「ボールが止まって見える」と豪語した野球の川上哲治選手は、たぶん「瞬間視力」が異常に高かったのでしょう。

以上の能力が渾然一体となって、競技能力をサポートしているのです。

●ここで整理すると、スポーツ選手に求められるものは身体そのものの運動技能に加え、
・動体視力
・眼球運動能力
・周辺視力
・瞬間視力
などの、眼の能力も大切だということです

●では会社経営はどうでしょうか?

変化に対応できる会社のことを次のようにたとえることがあります。

・作業しながらでも、そのやり方を変えることができる
・車の運転をしながらタイヤ交換ができる
・実行しながら計画を変えることができる・・・etc.

いずれもおかしな話に聞こえますが、そうしたことを行なうのが経営というもの。変化に対して迅速かつ柔軟に対応できる経営組織を作りたいものです。

そのためには、計画→実行→評価→対策→計画→・・・と続くマネジメントサイクルが、一流アスリートたちの視力のようにきちんと機能しているかどうかがポイントです

●ですので、計画値と実績値の誤差を、可能なかぎり短いスパンで把握できなければなりません。「翌月に送られてくる月次試算表を見るまで、今月の業績がわからない」という状態をいち早く卒業し、週ごと、日ごとであっても実績値が把握できる状態を作りましょう。

●また、アイデアが浮かんでから実行に移すまでのリードタイム(準備時間)をどれだけ短くできるかも重要です。なぜなら、今日思いついたグッドアイデアが、明日も素晴らしいままであるとは限りません。鮮度が落ちないうちに実行してこそ、いいアイデアなのです

「変化にもっともよく適応したものが生き残る」、とダーウィンが『種の起源』で結論づけたように、私たちの会社も変化に適応できる俊敏さと柔軟さが欠かせません。会社全体の変化対応力を高めるのに必要なことを、着実に実行していこうではありませんか。

2009年11月27日(金)更新

喜怒哀楽の共有

●名古屋で冠婚葬祭センターを営んでいるA社長と会ったときのことです。

A:「武沢さん、ちょっと相談があるのですが・・」
武:「何でしょう」
A:「会社の方針や目標を社員に浸透させる方法がわからない。
   いろいろ手を尽くしているのですが、浸透していかない」
武:「もう少し詳しくお聞かせください」

●A社長の悩みは次のようなものでした。

・・・
毎年、決算期にあわせて方針書を作っているのだが、ときには2~3日社長室に閉じこもることもある。

そうして作った方針を発表し、その後も社内報や社内ネットを用いて繰り返し伝えているのだが、新しく決めたことが実行されることはめったになく、毎年変わりばえがしないまま終わってしまう。

「目標の浸透」というのか「目標の共有」というのか、表現はともあれ、会社全体が一体感をもって動いていくような経営をしたい。
・・・

●こうした経営上の課題をもっている会社は多いようですが、上意下達の意識だけでは、「目標を共有する」企業文化は生まれません。「共有すべきものは目標だけではない。まずその前に共有すべきものがある」というのが私の考えで、それには4つの段階があります。
●最初に試みるべきは、「事実の共有」です。
「事実の共有」なんて、決算書や報告書を公表さえすればそれで終わり、などと思わないでください。日々の出来事やそれに伴う感想、そして、ありのままの現実を共有し、そこから一歩進んで問題を共有するということが、「事実の共有」なのです

●そのためには、ネットやメールに頼るまえに、まず顔をつきあわせましょう。報告だけの会議なんて無用、と会議を廃止する前に、フランクに事実を交換しあう場を作るのです。雑談でも朝礼でもいいので、こうしたことを普段から行なうのが第一歩ではないでしょうか。

次に必要なのは「価値の共有」です
すでに価値観や使命、ミッションなどが決まっている会社は、それをトコトン社員の意識に刷り込んでいきましょう。ジョンソン&ジョンソン社の「我が信条」のように、大切なものを順位づけしていくのも効果的です。

★我が信条:http://www.jnj.co.jp/group/community/credo/index.html

一方、まだ価値観などが決まっていない会社では、社員との対話の中でそれを成文化していけばいいでしょう。

3番目にくるのが「目的や目標の共有」です
努力と奮闘の結果、どのようなゴールが期待できるのか。また、どのような面白いストーリーで自分たちの道を歩もうとしているのかを語り合いましょう。

そして最後が「結果の共有」です
結果を厳粛に受け止め、良い結果の場合は勝利の美酒を、悪い結果の場合は苦い冷や水を飲み明かし、改めて、最初の「事実の共有」というスタートラインに戻っていくのです。

1.事実の共有
2.価値の共有
3.目的・目標の共有
4.結果の共有
  ↓
1.事実の共有
  ・
  ・

このサイクルをくり返すことで、企業文化が発展していくのです。

2009年11月20日(金)更新

常識は自分で塗りかえろ

●「武沢君は内向的で、一見すると茫洋とした性格の持ち主で・・・」

これが小学一年生のとき、私が最初にもらった通知表に書いてあったコメントです。小学校一年生の私にはその漢字が読めず、理解もできませんでしたが、母親に「要するにおとなしくてボーッとしてるってことだよ」と教えられて、納得しました。

●小学生ながら、自分が同級生に比べて口数が少なく、恥ずかしがり屋であることはわかっていました。
しかし、尊敬する先生から「おとなしくてボーッとしている」とハッキリ言われ、親もそれを認めるということは、相当に内気だったのでしょう。

●55歳になった今でも自分のことを内向的だとは思います。若いころは社交的な方がかっこいいとのでは、と思うこともありましたが、今では自分の性格のことをあまり気にしなくなりました。むしろ、内向的だからこそ、こうしてメルマガやブログで自己表現するようになったのかもしれません。もし私が活動的な人間だったら、こうした執筆作業が10年間も続いたかどうか疑問です。

●「あがり症で人前でまったく話せなかった少年が、コンプレックス克服のため弁論部に入り、自己改造した」というような話をよく聞きます。セブンイレブン躍進の立役者として知られ、現在はイトーヨーカ堂のCEOを務める鈴木敏文氏もその一人です。
●氏は、小学生のときは教科書の朗読をさせられたりするとあがってしまって読めず、中学でも口頭試問で頭がまっ白になってしまい、何も発言できずに叱られたといいます。しかし、鈴木少年は積極的に自己改造に取り組み、高校生のときには生徒会長をつとめたり、卒業式で送辞や答辞を読むほどになったそうです。

●また、自己改造の分野は性格だけではありませんでした。足が遅くてからかわれたことから陸上部に入り、県大会に出場するほどの選手にもなりました。肉体面・性格面の両方で、自分のイメージを塗り替える経験をしたのです

●その後、鈴木氏はトーハン(東京出版販売)に入社し、友人の斡旋で1963年にイトーヨーカ堂に転職しました。当時はまだ4~5店舗の中堅企業だったイトーヨーカ堂ですが、そこで出店説明の仕事や広報の仕事をするうちに、世間の常識に疑問を感じるような場面に遭遇したといいます。

●出店候補地に出向き、地元商店街の人たちを相手に説明会を開いた際に、「規模の小さい店が大きい店に勝てるはずがない」と激しい反対を受けしました。しかし、鈴木さんは、「規模が問題なのではなく、生産性が問題なんだ」といった確信のもとに商店主と接しました。このときの経験が、のちにセブンイレブンの立ち上げにつながったのです。

●セブンイレブンは当時のアメリカで成功をおさめていましたが、その独特な業態を日本に持ち込むことに対し、FC契約を検討していたヨーカ堂社内ですら賛否両論がありました。むしろ、「日本では無理」という意見が主流派で、鈴木氏も絶対的な自信があったわけではなかったそうです。

●ですが、商品の調達を多品種少量方式とし、店舗運営の情報システムをすべてアウトソーシングするなど、当時の業界の常識をすべて塗りかえ、日本独自の精緻なシステムを作ってきました。そこまでできたのはもしかすると、氏の内向的でコツコツ努力するタイプのおかげだったのかもしれません。

この記事をお読みのみなさんも、自分自身と社員の個性や強みをより活かせるビジネス展開を考えようではありませんか

2009年11月13日(金)更新

考えすぎると悩みがふえる

●以前、作家になりたいという、知り合いのAさん(35才、女性)から、次のように言われたことがあります。

「私の使命は書くことです。私の文章で日本の若者に生きる勇気を与えたい。それ一本で生計がなりたつようにしたいのです」

私はそう聞いて、「ほぉ、すばらしい。私と同志ですね。私も書くことを通じて、日本の経営者を応援したいと願っています」と申し上げました。

●以下、その時のやりとりです。

武沢 :具体的には今、どんな仕事をされているのですか?
Aさん:現実には、物書きの仕事がありませんので、人材派遣会社に登録して
    短期の派遣仕事を複数かけ持ちすることで、生計を維持しています。
武沢 :それは大変ですね。派遣仕事の合間をぬって、若者に勇気を与えるための
    ブログかメルマガをやっているのですか?
Aさん:いえ、まだ何もやっていません。
武沢 :え?
Aさん:物書きの仕事はまだ構想の段階でして、何も書いていません。
    この2~3年はリサーチしている段階です。
武沢 :2~3年もリサーチですか。あとどれくらいの期間、リサーチされるのですか?
Aさん:詳しく決めてはいませんが、「これで行こう!」と思える時がくるまで、
    周囲の成功事例を焦らずにウォッチしていくつもりです。

●私はそれを聞いて、「時間がもったいないから、粘土細工のように、あれこれ考えを練りながらかたちを作っていくほうが得策ですよ」と申し上げました。
●キリストは、布教に出かける弟子達に向かって次のようなアドバイスをしています。

=====
金も袋も下着も靴も杖も持たずに出かけなさい。
あなた方に必要な一日の糧は必ず満たされます。

そして、あなた達が語る神の教えを聞いても、誰も信仰をもたない村があれば、
とっととそこを引き上げて次の村へ行きなさい。

ついでに、その不信仰な村を後にするときには、足についた土ぼこりを
きれいに払い落としてから次へ行きなさい
=====

●キリストの言葉を私なりに解釈するとこうなります。

あなたたちは人類すべてに責任を負う必要はない。むしろ、あなたたちの責任は、誠意をもってたくさんの人にメッセージを伝えることである。それを相手がどう受け止め、どう反応するかはあなたの問題ではない」、と。

●「物を書く」、あるいは、「何かを伝える」といったとき、次のポイントについて考えておくことが大切ではないでしょうか。

1.あなたが伝えたいメッセージを要約すればなにか?
2.あなたのメッセージは誰に伝えたいか?
3.相手にメッセージを効果的に伝える方法はなにか?
4.今すぐできることはなにか?

●ここまで決めてあれば、あとは迷わずやるだけです。まだ決めてないのであれば、今すぐに決めてしまいましょう。こういうことは、考えれば考えるほど思考をめぐらせるだけになり、かえって行動できなくなってしまうものです

2009年11月06日(金)更新

社員に「上機嫌」を演じさせよう

●ある映画のロケ現場にて。

---

「シーン11、カット6、スタート!」。カシャッ。
「・・・」
「はい、カット」

以下、監督と俳優・渥美太(仮名)のやりとり。

監督:「渥美ちゃん、ムスッとした顔してどうしたの。ここはあんたがニコッと笑う絵が
    欲しいのよ。わかる? 笑顔だよ? じゃ、もう一回行ってみよう」
渥美:「・・・監督、たのむ。今日は勘弁してほしいんだ」
監督:「勘弁してほしいって何よ。笑顔くらい作れるでしょうが」
渥美:「実は、ちょっと今悩んでることがあって笑える気分じゃないんだよ」
監督:「はぁ?」

---

●もし、こんな役者が本当にいたらどうでしょうか。おそらく、二度と仕事は回ってこないでしょう。

役者の仕事は、台本通り、あるいはそれ以上に役を演じ切ることです。今の自分の気分がどうであれ、瞬時に期待された役を演じなければなりません。それがプロの役者です。

これは、別に役者に限った話ではありません。たとえば、ディズニーランドでミッキーの着ぐるみに入っているキャストが、今日はブルーな気分だからといってステップを踏まずに、パーク内をトボトボと歩きまわるでしょうか? そんなことはありえません。

●では、会社のなかではどうでしょう。私たちが演じるべきことは何でしょうか。
●会社や組織など複数の人で仕事をするならば、「笑顔をみせる」、「時間を守る」、「お辞儀をする」、「あいさつする」、「報告する」などが、基本的な演技です。もちろん、顧客に笑顔を見せてはいけない仕事や、あいさつしてはいけない仕事もあるでしょう。ですが、一般的な職場内では、それらが要求されます。これは、本人の気が向く・向かないかとか、納得できる・できないの問題ではありません。それが仕事なのです。それが演じるべき行為なのです

●「こうした行為が、仕事そのものなのだ」ということをしっかりと社員に教えましょう。仕事だから笑う、仕事だから時間を守るというような義務感で行なうのではなく、自然にできるように鍛えるのです

●経営者は社員の成長を期待しましょう。成長するとは、必要によって本能に逆らえるようなることでもあるのです

●フランスの哲学者・アランの言葉に、次のようなものがあります。

「もし道徳論を書くようなことがあったら、私は『上機嫌』を義務の第一位におくだろう」

「上機嫌」を演じきれる社員を、育てましょう

2009年10月30日(金)更新

利益を出す意欲

●フジテレビの軽部アナウンサーがトム・クルーズにインタビューしたときのことです。軽部アナに「私とあなたは同い年なのに、あなたがそんなに若々しいのはなぜですか。最近僕はすぐに疲れるようになってしまったので、なにか秘訣があれば教えてほしい」と聞かれたトム・クルーズは、ガッツポーズを作りながら、「僕は人生を生きる意欲が強いから」と明るく答えていました。

●私から見れば、軽部アナも一般的な同世代とくらべたらずいぶん若い感覚の持ち主だと思うのですが、それにしても「トムにかなわない原因が生きる意欲とは面白い」と感じました。

経営者も、生きる意欲を強くもつのは当然ですが、会社をよくする意欲も強くもつ必要があります。とくに大切なことは、目の前の現実を好転させることです。つまり、利益を出し、現金収支をプラスにすることに強い意欲をたぎらせるのです。それなくして、次のステージには進めません。

●私は経営者に会うことを職業にしてから25年になりますが、この間に何社もの経営者が世代交代しました。中小企業経営者の平均在任年数が30年だとすれば、世の中にある大半の企業で経営陣が入れ替わったことになります。
●世代別に比較すると、若い経営者はお金や利益に対する意欲が、戦前・戦中生まれの経営者より乏しくなってきているようです。とくに、団塊以前と団塊ジュニアの世代を比べると、あきらかに精神構造が違っています。

●「お金がそれほど欲しいわけでもなく、いい生活をしたいわけでもない。かといって、欲しいものがそんなにあるわけでもない。だから、儲けはホドホドにして好きなことをしていたい」という若手経営者がたくさんいますが、経営者が現状に満足してしまっては会社の未来がありません。経営者という立場にはいつもハングリー精神が求められ、それを養うことは社長の責任なのです。

利益を上げ、資金力をつけることにもっともっと強い意欲をもちましょう。「なぜ、当社は利益を追求するのか」について、社員にわかりやすく語りましょう。それを通じて、自分自身の気持ちを鼓舞するのです。

あなたが利益を求める理由は何かを自問してみてください。そして、トム・クルーズのようなパッションで、利益を追求する意味を語ってみてください

2009年10月23日(金)更新

コンサルタントの秘密

●スイスの哲学者・アミエルの言葉に、「より良い習慣を学ぶことが万事である」というものがあります。

たとえば、食習慣について考えてみましょう。

人間は食べることで体が作られるので、何を好んで食べるかが、その人の身体の骨格や構造、性能を決定し、さらにはメンタルにまで影響を及ぼします。私は甘いものが大好物なので、朝昼晩と口に入れていました。その結果として今の体が作られたのですが、最近はお酒も辛いものもよく口にするので、みるみるうちにメタボ体型に拍車がかかってきました。

●習慣とは、なにも食習慣に限りません。運動習慣、学習習慣、勤務習慣、生活習慣など、おおよそ人間のやることの大半は、習慣で行なわれています。

習慣とは、言い換えれば個々人がもっている常識や標準のことであり、自分のもつ常識や標準を変えていくということは、新しい自分をつくることと同義です。そうした常識や標準を変えるためには、自分から非常識な人や会社、本などに触れる必要があります。ただし、単に非常識なだけのものではだめで、成果が伴っているものでなければなりません
●私の書棚にも非常識な本が並んでいます。なかでも、『コンサルタントの秘密』(G・M・ワインバーグ著、共立出版)は、コンサルタント人生を歩み出した当時の私にとって非常識な内容が多く、読んで驚いた記憶があります。違和感をもったところも多々ありましたが、私がそれまでうまくいかなかった理由や、今後うまくやっていくためのヒントを、この本からたくさん見つけることができました。

●その中から、とりわけ印象的だったところを紹介します。なお、作者が「コンサルタント」や「依頼主」などと表現している箇所は、それぞれ「営業マン」や「取引先」など、あなたの状況にあわせて置きかえてください。

・・・
コンサルタントのあなたは、依頼主が「自分は問題を抱えている」ということを言わずに済ませてあげるようにしよう。それには、問題に対して「技術的問題」というレッテルを貼ることである。それは本当は依頼主の責任ではなく、専門分野に必要な人材を全部揃えておくなどということはまずできないので、外部の専門家を雇う必要性を認めてあげることなのだ。

予算レビューの時でも、経営上のコンサルティング料などの科目ではなく、技術上のコンサルティング料として計上することによって体面を保つチャンスを与えてあげることなのだ。誰だって外部からの助力を必要とすることがある。だったら、抵抗なくそれをさせてあげるよう配慮しよう。
・・・

相手のメンツを立てながら仕事を取る必要があると彼は言うのです。また、こんな箇所もあります。

・・・
仕事の成果を誰の手柄になるかを気にしていたら、何も達成できない。しかし、コンサルタントが手柄を認めてもらうためには、逆説的なことながら、一見何も達成していないように見える必要がある。あとでまた呼んでもらえるのは、そうしたコンサルタントだけである。

「有能な」コンサルタントがいる場所では、「依頼主が」問題を解決する、ということである
・・・

●私はこれを読んで、なるほどと膝を打ちました。それと同時に、「あの会社は、私の指導によって売上げが伸びた」などと吹聴するコンサルタントには、もしそれが事実であったとしても、次の依頼がこなくなるのだとわかりました

●コンサルタントや何かの専門家の方、それ以外の方でも、本書から得られる教訓はたくさんあると思います。ぜひ、読んでみてください。

★『コンサルタントの秘密』(G・M・ワインバーグ著、共立出版)
 http://www.amazon.co.jp/dp/4320025377

2009年10月16日(金)更新

腕が良い、とは

●「私は特別な人間だ。特別にカッコ良いし、特別に長生きしそうだし、特別な金持ちになりそうだし、歴史に名を残すような特別な何かをなし遂げる人間」だ、とひそかに思っている人がいるかもしれません。それどころか、真剣にそう思っている人もいることでしょう。

社長やリーダーの役目としては、そう思うことが正しいし、みながそう思うように応援してあげることが大事です。

●一方で、「言うだけならタダだとわかっていても、嘘つきになりたくないから軽率なことは言わない」という考えもあると思います。しかし、社長は正確なことを話すだけでなく、いつも明るい未来を語れる人間でなければなりません

●わかりやすくするために、たとえ話をしましょう。医者が頭痛で訪れた患者を診察し、薬を渡すという場面を思い浮かべてください。そのとき、医者Aは必ず「このクスリを飲めば、あなたは必ず良くなります」と言うようにしていました。

●一方、医者Bは、ものすごく几帳面なタイプで、「このクスリがあなたに効く可能性は、データに基づくかぎり60%です。また、副作用が出てしまう危険性も20%ほどあります」と言っていました。
●患者を前にした医師として、どちらが腕が良いのでしょうか。あなたならどちらの医師の病院に行きたいですか? 時と場合にもよりますが、頭痛程度ならば「私はAのほうにかかりたい」と思う人が多いのではないでしょうか。正確な診察という点ではBかもしれませんが、おそらく多くの患者を直してみせるのはAのほうだと、私は思うのです。

●“正確さ”と“腕の良さ”は一緒ではありません。一番よいのは、“正確さを背景にした腕の良さ”であり、顧客に勇気と確信を与えられる実力・実績を持ち、そして言葉を巧みに駆使することです

●「あなたは出来る」、「あなたは治る」、「あなたは良くなる」と言えるリーダーになりましょう。そもそも、夢やビジョンといった将来のことから今月の売上にいたるまで、未来のことはすべて不確かなものなのです。

●腕の良い経営コンサルタントは、赤字だらけのクライアント社長の前でこう断言します。
「社長、僕の言う通りにやって下さい。必ず儲かるようになりますから」
「本当かい?」
「信じてください。御社の未来を」
「わかった、信じよう」

そう言う社長の目に輝きが生まれます。それは、コンサルタントを信頼したのではなく、自分と自社の未来を信頼できた瞬間なのです

こうした言葉の威力と魔力を最も必要としているのは、自分自身です。自分の中の自分、つまり潜在意識に向かって、力強く明るい未来を断言してあげましょう。「私がうまくいく可能性は57%」などと正確に表現しようとするよりは、「私の前にもはや不可能の文字はない」と断言する社長のほうが“腕が良い”のです。
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ボードメンバープロフィール

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武沢 信行氏

1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。

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