武沢信行の「社長の学校・事始め」 | 経営者会報 (社長ブログ)
社長業を極めるためのカリキュラムについて、「日本的経営のリニューアル」という視点から紹介します
2009年06月26日(金)更新
脳は違う状況を欲する
●1か月ぶりに会っても半年ぶりに会っても前と顔つきが変わらず、話す内容も前と同じようなことしか口にできないようでは、ビジネスリーダーたる資格がありません。
●大阪で30名ほどの建材卸業を営む山田会長(仮名)という方がいます。彼は、「人間、生涯が学習や。まだまだ若いモンにはまかせておけへん。来年でワシも60歳になるが、今からもう一度大学生として学校へ通うんや」と言い、二年間学生として毎週土曜日に学校に通う決心をしました。
●山田さんは去年、社長職を譲って会長に退いたのですが、ヒマができたから学校通いを決意したのではありません。建設関連の知識をブラッシュアップし、卒業後2年以内に新会社を設立するという将来の計画のためです。
●意気軒昂というか、この心がけが素晴らしいではありませんか。山田会長は、常にこうした新しいプロジェクトを抱えているから魅力的に映るのでしょう。
●体は加齢とともに衰えますが、脳だけは年齢に関係なく、鍛えれば鍛えるほど成長することがわかっています。しかも、脳は同じことの繰り返しだと活動が停滞していきますが、新しい状況を与えてあげることで活性化するそうです。
●『図解 頭がよくなる、朝10分の習慣』(川島隆太著、PHP研究所)によると、脳の鍛え方は単純な“読み書き計算”で充分とのことです。同書より、私が“なるほど”とうなった箇所をご紹介しましょう。
●この本を読んでまずビックリしたことは、ワクワク楽しみながら頭を使っているほうが脳のためにも良いことだと思っていましたが、そうではないらしいのです。
●ワクワクやっていようが淡々とやっていようが関係なく、たとえば、単純な計算を10分程度やりさえすれば脳は著しく活性化し始めることがわかっています。この本にある実験では、テレビゲームを楽しんでいるときの脳の活性度と、単純なクレペリン検査(足し算を使った性格検査)のときの脳とを比較した結果、単純計算に分があったことを報告しています。
●同じように、10分間の読書(特に音読)やメモを取ることによって脳の活性度が高まることを証明しています。とくに大脳の活性度が高い午前中こそが、もっとも読み書き計算にふさわしい時間帯だというのです。
●また、トランプゲームで連勝したり連敗したりしても脳の活性度は変わらないが、連敗していたときに、そこから脱出する1勝をあげたりすると、にわかに脳は活性化し出すといいます。
●もう一度確認します。
「脳に刺激を与えましょう」
そのためには、読み書き計算が一番。具体的には、
・毎朝10分間の音読
どうせなら積極的でやる気が生まれるような本を読み、自社や自分の目標も朗々と音読しましょう。ただし、目標などはワンパターンにならないよう、ときどき内容を書き換えるといいでしょう。
・毎朝、目標や計画・アイデアなどを紙に書こう
●このように脳を活性化させ、新しい目標や計画を考えることで、ブレイクスルーできるすばらしいアイデアがいくつか出てくると思います。「脳はいつもと違う状況を欲している」ということを忘れずにいたいものです。
2009年06月19日(金)更新
ナイスガイに捧ぐ
●社長には、たとえ部下に反対されたとしても、決断しなければならないときがあります。ですが、最近の社長には、強烈なリーダーシップが必要とされる場面ですら、ナイスガイであろうとするあまり、リーダーシップを発揮できない人が多いようです。
●こうしたケースでは、「あなたの会社の一番の問題は、経営者であるあなた自身の性格です」ということを申し上げなければなりません。
●私は「目指せ紅帯! 経営体質チェックシート」というものを作り、毎年社長のみなさんに、ご自身の経営力を判定してもらっています。内容は、「組織力」「営業力」「計画経営力」「企業文化」「自らの人間力」の5つの分野でそれぞれ5問ずつの、計25問で構成されていますが、ほとんどの人が「自らの人間力」に高評価をつけています。
●「自らの人間力」は、次の5つの質問からなっています。
1.会社を経営するにあたって、私利私欲だけではない公益を意識した理念や理想をもっているか
2.経営者の「五大義務(高収益、好財務、雇用、納税、教育)」を自覚した経営をしているか
3.社内外で話すこと(書くこと)は、人々を鼓舞し、リードする内容のものになっているか
4.毎日、個人目標と仕事目標を音読または黙読しているか
5.口頭や文書で人に約束したり宣言したことは立ち消えになることなく、きっちりけじめをつけているか
つまり、「勤勉に働く」だとか「よく勉強する」などの項目については、みなさん自信があるようです。
●逆に、みなさんが低い点数をつけるのは「計画経営力」です。そこには以下の質問が並んでいます。
1.成文化された経営方針書があり、それを全員に伝えているか
2.経費の使い方は、あらかじめ決めた予算をもとにしているか
3.経営陣は、毎月の月次決算書を読み、それをもとに今後の対応を考えているか
4.年次・月次・週次での目標設定書式があり、それを部下に書かせているか
5.計画と実績は定期的に見直し、問題があればすぐに対策を打てるような会議やミーティングがあるか
これらが最も低い点数になるのです。
●この回答結果から、私は次のような仮説をたてました。
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中小企業の経営者はリーダーシップのとり方に関して、個人的な魅力を頼りにしすぎている。真のリーダーシップは、リーダー個人の人間性が基本ではある。しかし、それだけで企業をリードできるわけではない。
とくに、現状のような難局をリードするためには、これまで要求していなかったことでも部下に要求しなければならない。その際に、「思っているけど言えない」という社長のキャラ(個性)が、ボトルネックになる可能性がある。
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ということです。
●たとえば、
・目標や計画の作成と修正
・行動や意識の変化
・成長
などについては、堂々と部下に要求しなければなりません。妥協や言い訳がまかり通るような組織風土を、思い切って変えていきましょう。
●このように、当然ともいえる内容を部下に要求し、実行させるのが社長です。部下から見た人間的魅力を大切にするあまり、仕事に対する要求水準で妥協をしてはいけません。社員からみて、もっとイヤな社長になろうという決断が求められます。
●また、社員も妥協は望んでいないはずです。むしろ、厳しい指導を望む部下が増えています。そろそろ、人間性を武器にしようとするのはやめにしようではありませんか。
2009年06月12日(金)更新
ミッション・インポッシブル
●卑近な例で恐縮ですが、私も「ミッション・インポッシブル」を何度かクリアしてきました。特に大きな節目となったのは、次の5つのミッションです。
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●最初のミッション…企画スタッフ職で成功せよ(27歳)
20代半ばまでは、町工場の工員や小売業の販売員として経験を積み、それなりに責任を果たしていましたが、27歳のときに初めての頭脳労働となる企画職を命じられました。そのとき与えられたテーマは人事教育。直属の上司は社長でしたので、勤務先のオフィスに出社したときにはとにかく頭が真っ白だったのを覚えています。
しかし、1年後に私が考案した社員教育制度が動きだし、それが機能し始めたときの手応えと自信は相当なものがありました。
●二つ目のミッション…フルコミセールスマンとして成功せよ(31歳)
結婚、未知の街だった名古屋への引っ越し、完全歩合制(フルコミ)のセールスマンへの転職、と初めてづくしに挑み、すべて乗り切ったのが31歳のときでした。
完全歩合制だったので、どこで何をしていても自由です。売りまくって億万長者になる可能性もあれば、一文無しになって夜逃げすることもある、という状態でした。
「収入がほしい」「仕事をしよう」と思っても、セールスとは相手があってのことです。思うように成果が上がらないときはやる気も低下し、数か月間収入が途絶えたこともありました。
しかし、最終的には国内ベスト10の販売実績をあげ、その後、組織のマネジャーとして表彰されるくらいの実績をあげることができました。ここで私は、新たな自己概念を獲得したのです。
●三つ目のミッション…経営コンサルタントとして成功せよ(40歳)
経営コンサルタントという仕事が何なのかもよくわからないまま、とにかくやりたくて開業しました。これも大変むずかしいミッションでした。
友人が何社か顧問先を紹介してくれたので、初期の苦しさを緩和することはできましたが、自分で自分を売り込むことには長い間慣れることができませんでした。
最初こそ自転車操業でしたが、開業して1年経ったころには、安定した収入が得られるようになりました。その頃になると、「自分の労働がストレートに収入になる」という実感をもてるようになり、感無量だったことを覚えています。
●四つ目のミッション…インターネットで成功せよ(46歳)
コンサルタントの仕事が軌道にのってから数年が経ち、もっとエキサイティングな冒険がしたくてインターネットに取り組みました。
最初はホームページを作ってアクセスを集めることしか眼中になかったのですが、メールマガジンの存在を知り、やってみることにしました。ネットバブルの崩壊により業界が閑散としていたころの話です(もっとも、当時の私はそんなタイミングだったとは、まったく知りませんでした)。
最初はメルマガを発行すること自体が恥ずかしく、自分の原稿が稚拙にみえて耐えられないほどでした。しかし、毎日継続していると、それが習慣化して度胸もついてきました。
読者数が1,000人、5,000人、10,000人、20,000人、30,000人とハードルを越えていくたびに大騒ぎし、私のビジネスも人生も自己概念も大きく変わっていきました。
●五つ目のミッション…本の作家として成功せよ(49歳)
読者数が多いメルマガとして、「がんばれ社長!」の知名度も上がり、ネットからの収入も増えてきましたが、当時の私はまだ著作がなく、書いたとしてもそれが売れるかどうか自信がありませんでした。
しかし、49歳のときに処女作となる『経営の教科書』(明日香出版社)を執筆し、発売3日後に増刷がかかるくらい売れました。これをきっかけに出版の依頼が増えるようになり、今では5冊の著作があります。
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●六つ目のミッション…????
六つ目となるミッションの内容は、まだ決まっていません。ですが、これからも「ミッション・インポッシブル」を乗り越えていきたいと思っています。
2009年05月29日(金)更新
老剣士のつぶやき
●老剣士が研ぎたての青々とした刃先をもつ刀で、わら人形を一瞬で斬りました。力は入れていないようで、刀の重力を利用してシャープに振り抜いただけです。
●この老剣士は、今日も明日も明後日も、一日にわら人形を一体ずつ斬っていきました。
●それから3か月、刀の切れ味は鈍ってきているはずですが、本人も周囲もあまり気にしませんでした。
●さらに1年後、久々に老剣士の様子を見に行きましたが、今度ははっきりとわかるほど、様子がおかしくなっていました。
●研ぎたての刀を使っていたころは惚れ惚れするほどカッコよく斬っていたのに、今は「フムッ!」と力んだ声を出さないと斬れないのです。おまけに切断面もザラザラで、斬った後には息が乱れています。
●「大丈夫ですか?」と聞くと、老剣士は「大丈夫、ただ老いただけさ」と淋しそうに答えました。
●しかし、この息の乱れは老いが理由ではありません。剣を研いでいないだけなのです。
●なぜ研がないのか?
1.剣を研ごうと思っていない
2.剣の研ぎ方がわからない
3.剣を研ぐ時間がない
のいずれかです。
●あなたの人生やビジネスにおいて「剣を研ぐ」ことに相当するものは何でしょうか? 本を読むことか、勉強することか、人と夢を語りあうことか、一人静かに考えることか。
●今日の私の提案はこれです。
「剣を研ぐことを毎日の日課にしよう!」
あなたにあったやり方で、剣を研いでほしいのです。
●先日お会いした福島のAさん(47歳)は午前2時に起床し、2時間散歩するという習慣の持ち主だそうです。これは学生時代から続けている習慣で、心と身体を練るために欠かせない日課だといいます。
●それを聞いてビックリした私が「何時に寝るのですか?」と尋ねると、「午後7時半」という答えが返ってきて二度ビックリしました。私がネオン街に繰り出す時間に彼は休むのです。それが彼流の剣の研ぎ方です。
●ちなみに私は、早朝のカフェで読書と計画を練るときが剣を研ぐ時間になっています。
もういちど言います。
「あなたにあったやり方で、剣を研ぐことを毎日の日課にしましょう!」
2009年05月22日(金)更新
悪いサービスも悪くない
●私は15年ほど前から、さまざまな理由により車を運転することをやめました。それ以来、市内の移動は大半がタクシーです。また、雨の日や歩きたくない日などは、たとえ数百メートルの距離でもタクシーに乗ります。
●数年前のある日のこと、こんな運転手に出会いました。
私「悪いけど…、ヒルトンまでお願いします。」
運転手「えっ?」
私「ヒルトンホテルです。」
運転手「伏見の…? ちっ!」
●はっきりと舌打ちが聞こえました。こちらも至近距離だということはわかっていますが、急いでいました。一方、運転手は運転手で駅のロータリーで何分もの間、客待ちしているのはわかっています。だから、運転手が気持ちのいい応対をしてくれれば、かかった運賃の釣り銭を受け取らないでいるつもりでした。でもこのような対応だったので、釣り銭はおろか、領収書までしっかり受け取ってやりました。
●今ではタクシー業界でも全国的なサービス競争が始まり、以前ほどひどい運転手は減りました。ですが、それでも私が友人や取引先のためにタクシーを拾うときには、タクシー会社を選別しています。もちろん、どのタクシー会社にもすばらしい運転手がいるのは知っていますが、嫌な態度の運転手は、教育にばらつきがある会社に多いのです。サービスとしての品質にこれほどばらつきがあるサービス業は、他に見あたらないと思えるのがタクシー運転手なのです。
●冒頭のヒルトン行きの件があってから、私が名古屋駅でタクシーに乗るときには、必ず降車場で乗るようにしました。他の乗客が降りる降車場でタクシーを探し、それに乗るのです。そうすると不思議なもので、ワンメーターの行き場所を告げても嬉しそうに、「はい、ありがとうございます」と返事がきます。
●タクシーの顧客満足度のほとんどは、運転手の態度や人柄で決まるのではないでしょうか。もし、あなたがタクシー会社の経営者であり、運転手と顧客との関係を良好なものにしたいと願っているとしたら、どんな手をうちますか?
●ちなみに、私は次のような手を考えてみました。
1.ワンコインまたはツーコイン専用タクシーを作る
つまり、短距離しか乗せないことを売り物にしたタクシーを走らせるのです。先ほどの事例のようなトラブルがなくなるだけではなく、潜在的な顧客層を開拓できるはずです。
2.賃金制度を変える
最近、売上高に対する歩合制が主流ですが、それが諸悪の根元ではないでしょうか。大切なのは賃走回数、つまり、何人の顧客を乗せたかも成績評価に入れるようにすれば、逆に短距離客を歓迎することになり、タクシー会社の評判を高めることにもなるはずです。
3.基本訓練を徹底する
挨拶や言葉づかいはもちろん、人間性の教育を徹底します。また、運転手によって基本的な動作にもバラツキがありますので、それを解消します。たとえば、顧客の荷物をトランクに出し入れするとき、運転手が親切にやってくれるタクシーもあれば、全部自分でやらされるタクシーもあります。たとえ同じタクシー会社であっても、運転手によってサービスにばらつきがあるので、そうした基本訓練を再徹底します。
●受けたサービスへの不満と感動を教訓にして自社に置きかえる訓練もしていけば、文字通り「他山の石」にもなるでしょう。そう考えれば、悪いサービスを受けるのもまんざら悪くないのではないでしょうか。
2009年05月15日(金)更新
ナンプレに熱中して
●自宅で子どもが「ナンプレ」に熱中しているのを見て、私も一度やってみようと思ったのですが、最初はルールや解き方がよくわからなかったので、「標準時間5分」の問題に30分以上もかかりました。だんだん慣れてきて、上海に着く頃には15分そこそこで解けるようになったのですが、それでも標準時間の5分はクリアできませんでした。
●結局その日、上海に着いてからもホテルで「ナンプレ」に熱中していたのですが、その日の最短時間は9分。普通の人は5分で、上手な人はもっと短い時間で解いていると思うと悔しくてたまりませんでした。
●こんなとき、私は新しい問題を解くのをやめて、発想を変えようと努めます。「なぜ5分で解けないのか」を考えるのではなく、「5分で解いている人はどのように発想しているのだろう」と考えてみるのです。その時に、ハッとするような新発想が生まれることもあります。このときは、残念ながらその新発想が出ませんでした。ということは、「解き方は正しいはずだ、あとは練習が足りないだけだ」という結論になります。
●部屋の冷蔵庫にあったコーラとチョコレートをほおばりながら、新しい問題を何問も何問も解いていくうちに、「ナンプレ」の本をまくらに眠っている私がいました。結局、その日はあきらめてベッドで休み、翌朝気分を一新して「ナンプレ」に立ち向かいましたが、やっぱり15分くらいかかります。
●朝食をすませ、シャワーを浴びて再挑戦するうちに、スコンと10分で解けるようになりました。今度は9分、次は8分…と一気に時間短縮がすすんでいき、約束のためホテルを出発する直前には5分台の記録を出すことができました。そのときの私は、興奮してアドレナリンが大量に分泌されていたはずです。
●これから紹介するのは、バスケットボールの神様、マイケル・ジョーダンの談話です。
・・・
大事なシュートを失敗しても、僕はその原因を考えたことは一度もない。失敗した原因をあれこれ考えると、必ず否定的な結果を考えるようになってしまうからだ。
人生で何かを達成したいと思うときは、積極的かつ、攻撃的にならなければならない。目標を決め、それに向かってひたすら努力するだけだ。受身の姿勢では絶対に達成することはできない。何かに挑戦するとき、僕はそれを達成すること以外、何も考えないことにしている。
スポーツにおいては、恐怖心は時に、集中力の欠如から生まれる。例えば、フリースローのとき、カメラの向こうで多くの人が僕を見ていると考えると、絶対にシュートを成功することはできない。
だから、こんな時自分の中にイメージを描くことにしている。試合でも、何千回と練習してきた方法やテクニックでシュートする。結果は考えない。そうすれば、リラックスしてシュートを放てるからだ。
僕は失敗を受け入れることができる。誰にでも失敗することがあるからだ。しかし、僕は挑戦することをあきらめることは絶対にできない。だからこそ、僕はチャレンジすることにも恐怖を感じたりしない。
成功できるかどうかなんて、僕にはどうでもいいことだ。情熱の全てを注ぎ、110パーセントの努力をしている限り、結果はどうでもいい。恐怖心は幻想だ!
・・・
●今、私は「標準時間5分」の問題であれば3分台で解くことができるまでになりました。なぜなら、何百問、何千問も解いているうちに、解いている間は何も考えず、脳と手が一体になって動くようになったからです。
●トレーニングとは、何も疑わずに練習をくり返すことなのだと思いました。頭ではなく、身体で習得しなければならないことには、トレーニングが必要なのです。
2009年04月30日(木)更新
上質なクリーム
●かつての総理大臣のなかで、任命した大臣の不祥事が次々に発覚し、支持率を失って退任した人がいました。もし彼が周囲から担がれ、待望されて総理になった人ならそのような不祥事は起こらないはずです。結局、消去法で選ばれた総理の宿命で、彼を命がけで担ぐ人がいなかったのではないでしょうか。もちろん、今の政治家にそんな人がどれだけいるかと言われればお寒い限りではあります。
●経営者が消去法で選ばれることがあるとすれば、後継社長を選ぶときです。ある日突然トップの座に座るわけですから、その座にふさわしいかどうかは、そのトップが「おいしい」人かどうかで決まります。
●勝海舟は、かつて教え子に「あの親分子分の間柄をご覧ナ。何であんなに服しているのだい。精神の感激というものじゃないか」と語ったそうです。「精神の感激」が指導者と部下との間に必要だということでしょう。
●新しい社長が部下を感激させられるようなリーダーであれば、リーダーのために良い仕事をしようと必死になってがんばるので、自然とうまくいくはずです。要求されていない仕事まで進んで行うようになるでしょうし、そのための勉強もすると思います。
●人が育ちやすい会社と育ちにくい会社の違いとは、結局のところ、社長の人間的魅力によるところが大きいのです。特に中小零細企業であれば、社長の人間的魅力がすべてと言っていいでしょう。
●しかし、リーダーの属人的な魅力にも限界があります。社員数が10人を超え、20人、30人…となってくると、社長ひとりの魅力ですべてをカバーすることはできなくなります。経営幹部や部門リーダーが必要となり、その役を担う人物の魅力や実力が要求されるようになります。
●米国の海軍兵学校では、「ウソをつく」「人をだます」「人のものを盗む」を禁止条項の3つの教えとし、「そうする者たちを見逃さない」という4番目の教えを加えています。「見逃さない」という表現がポイントです。「そうさせない」のではなく、「そうする者たちを見逃さない」のです。この表現が組織に規律をもたらします。
●人が育つ会社では、遅刻者に対して上司や先輩だけでなく同僚も注意します。組織の決まりごと、つまり規律に反することがあれば、役職者が立場にもとづいて注意するというのではなく、誰もが注意しあう環境になります。このようにして、規律ある社風が作られていくのです。
●人が育ちにくい会社では、決めごとを破る社員がいても他の者が黙っています。そして社長だけが怒りをため込み、あるとき爆発する。これでは規律もなにもありません。規律ある組織にするにはどうするか。その答えは一つしかありません。
●「あなた以上に自己規律をもった人を役職者に据える」
これだけです。その結果、あなたは上質なクリームになる道が開けます。まずはあなたの自己規律を確認し、部下にどんな規律をもってほしいのかを明らかにしてみましょう。
2009年04月24日(金)更新
劇団四季はなぜ強い
●劇団四季の年間公演回数は3,000回強、売上高は230億円強と、この数年ほど高原状態が続いています。大不況のあおりを受けてチケットを値下げするなど、先行きは楽観視できませんが、報道によれば当面の業績はまだまだ底堅いようです。
●そんな劇団四季の強さの秘訣について知りたいと思い、あるとき同社のサイトをくまなく見ていたら、ヒントになりそうなコンテンツを発見しました。それは「理念」の力ではないか、ということです。
●劇団四季のサイトには、1953年(昭和28年)に四季を創立したときの仲間、浅利慶太氏と日下武史氏の「二人の仲間」と題した対談記事が掲載されていました(今はリニューアルに伴って削除されています)。
●その対談のなかで浅利氏は、「僕の一生を決めた」として『演劇論』(ルイ・ジュヴェ著)の一節を紹介しています。そのなかから一部を引用してみましょう。
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日下:フランスの大演出家で、プロデューサーでもあったルイ・ジュヴェの
「演劇論」を讀んで以来だね。
浅利:そう。そこに「演劇の問題」というエッセーがある。それが僕の一生を決めた。
日下:内容を話してみてよ。
浅利:最近朝日新聞の読書面に連載したエッセーの中で紹介した。ちょっと
堅い文章だし、長くなるけれど、読んでみようか。
日下:是非やってよ。
浅利:「演劇に諸問題などありはしない、問題はただ一つだけだ。それは当るか
当らないかの問題だ。当りなくして演劇はない。大衆の同意、その喝采、
これこそこの芸術の唯一の目的と断じて憚らぬ。演劇は先づ一つの事業、
繁昌する一つの商業的な企業であらねばならぬ。
然る後に初めて演劇は芸術の領域に自己の地位を確保することを許容される。
二つの目標を同時に結びつけねばならぬ怖るべき二者選一、それは演劇の
地位をあらゆる追従とあらゆる妥協の面の上に置く。
現実的なものと精神的なものとが結びつき、相対立する必然とは正にかくの
如きものであって、これを以てすればわれわれの職業の苦い快楽も、
その憐れむべき偉大さも一挙に説明することが出来る。(鈴木力衛訳)」
こういうことなんだよ。
日下:四季の理念の根本にはこの考え方がある。
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●いかがでしょうか。「演劇の問題はただ一つだけだ。それは当たるか当たらないかの問題だ。当たりなくして演劇はない。」とは何たる痛快な断言でしょう。
そしてのちにこう続くのがまたまた明快です。
「演劇は先づ一つの事業、繁昌する一つの商業的な企業であらねばならぬ。然る後に初めて演劇は芸術の領域に自己の地位を確保することを許容される。(後略)」
●これは演劇の問題だけではありません。一般の事業においてもまさしく当てはまるはずです。それはこうなります。
「事業の問題はただ一つだけだ。それは利益が出るか出ないかの問題だ。利益なくして事業はない。事業はまず一つの繁昌する商業的な企業であらねばならぬ。然る後に初めて事業は理念や思想の領域に自己の地位を確保することを許容される。」(「がんばれ社長!」訳)
●劇団四季の考え方がすばらしいというよりは、ルイ・ジュヴェの「演劇論」の方を賛美すべきかもしれませんが、劇団四季の場合はその徹底度合いが並外れているから、賞賛に値するのではないでしょうか。
●昨今の経営環境のなかでも最高益を更新している会社のほとんどが、理念を際だたせている会社であることにも注目したいものです。
2009年04月17日(金)更新
リーダーの魅力
●気をよくした私は、それから一週間ひげを剃らなかったのですが、外見をちょっとだけ不良オヤジっぽくしてみたところで、中味が変わらなきゃ意味がないと悟り、結局、ひげはきれいさっぱり落としました。人の中味は生き様で決まるので、どうせならそちらを魅力的にしたいものです。
●特に企業のトップである社長は、表面的なビジュアルや発言内容ではなく、生き様が一貫していなければ、魅力が生まれてきません。もちろん、人間ですから悪戦苦闘し、失敗もすることもあるでしょうが、目指すものがぶれてはいけません。
●また、欠点がいくつかあったとしても、人にはない長所があればそちらのほうが魅力となるでしょう。魅力とは、人として欠点がないこと大事なのではありません。たとえ欠点があっても、それ以上に大きな長所があるからこそ、魅力が生じてくるのです。
●旧約聖書でも、ダビデがゴリアテを倒したとき、街中大騒ぎになり彼をイスラエルの英雄として扱いました。そのダビデ自身は欠点も多く、ひどいケースだと、自分の部下の奥方に惚れてしまい、奥様ほしさに部下を戦死させたりしています。そんなひどい悪事もしていますが、それを上回るだけの大きな魅力があったからこそ、旧約聖書を代表するヒーローになったのでしょう。
●論語のなかで孔子はこう語っています。
「その知及ぶべし、その愚及ぶべからざるなり」
その意味は、彼の賢い点は真似ができるけれども、馬鹿っぷりは到底まねができないということです。めずらしく孔子が、ある人物の愚のみごとさをほめたたえているのです。
●ダビデにも論語にも共通する人間の魅力とは、次の5つにまとめられるのではないでしょうか。
1.誰にも負けない強みがある(長所)
2.人よりはるかに劣るような弱みがある(短所)
3.それらを隠そうとしない(裏表なし)
4.バカなことができる(愚)
5.周囲が想像できないほど高い志がある(イチローのような孤高な「志」)
2009年04月10日(金)更新
情熱のマネジメント
●情熱量の最大値が100ポイントのAさんがここにいるとします。彼は何事にも才能豊かで、本業の経営も、業界活動も、趣味のスポーツも、子供の教育も、地域活動も熱心に行なっています。彼が、それぞれに情熱を分散して使った結果、本業経営に投入できた情熱を60ポイントとしましょう。
●さらにAさんは、本業経営の中で動いている6つのプロジェクトに関心を分散しています。本業に注ぎ込んだ60ポイントを6で割ると、1つの案件にはそれぞれ10ポイントずつ投入していることになります。
●一方、情熱量はAさんよりはるかに見劣りするBさんは、最大で60ポイントの情熱しかもっていません。ところが、彼は不器用なため本業の経営に徹していること、その中でも事業の領域をしぼりこんでいるので、1つのプロジェクトに15ポイントずつ割くことができたとします。もし、AさんとBさんが同じ業界で働いていたとすると、きっとBさんの会社が勝つことでしょう。
●ここに「小」が「大」に勝ち、「弱者」が「強者」に勝つ戦略があるのです。才能でも資金でも人材でも、見劣りする企業や個人が勝つときは、こうした一点集中しているときだけなのです。
●さらにロシュフーコーはこうも言っています。
「小さなことに熱中してしまう人は大きなことができなくなる」
量の個人差はあるにしろ、人は情熱の対象なしでは生きていけません。その情熱の対象はしっかりとマネジメントすべきであり、あなた自身の大切な仕事なのです。小さなことに熱中してしまって、大きなことをおろそかにしていないかどうか、ときどき点検する必要があるでしょう。
●私は一年に四冊の手帳を使います。いつも同じ手帳を使うのですが、四半期ごとにまっさらな手帳を卸しているのです。そうすることで、お正月のときの神聖な気分を奮い起こし、大きなことに挑もうとしているのです。今年も第一四半期が終わって、今の私の手帳はまっさらです。
●あなたは「情熱のマネジメント」をどのようにされているのでしょうか。
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ボードメンバープロフィール
武沢 信行氏
1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。
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