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2008年09月12日(金)更新

誤った能力主義

●それぞれが自己紹介するのではなく、相手のことについてお互いが質問して理解しあうことで、かえってメンバー同士の理解が進むということがあります。これを他己紹介というのですが、初対面ばかりの会合でもこれをやると意外に盛り上がります。

●また、私たちは自分だけのためにがんばるよりも、相手や他人、あるいはチームのためにがんばる、というモチベーションのほうがより強く働くようです。当然、企業の人事評価制度においても、そうした心理をふまえることが望ましいのですが、個人単位の成果主義にして失敗する会社が、まだまだあとを絶ちません。最近もこんなことがありました。

●ある社長から、「武沢さん、当社も去年から能力主義型賃金にしたのだけど、どうもうまくいっていない。どこがいけないのだろうか?」と相談されました。この会社は子供服専門のお店を4店舗ほど経営しており、正社員やアルバイトなど、あわせて40名近いスタッフが働いています。

●実は、この会社は最近になって業績が急激に低迷し、二年前に初めて赤字転落して以来、毎月赤字が続いているそうです。でも、その割に社員に危機感が見られず、目標意識も希薄だということでした。
●「創業以来、ずっと仲良し集団でやってきた弊害がここにきて出始めている」と社長は思ったそうです。そこで昨年、「能力主義型賃金制度」を思い切って導入し、全社一丸でこのピンチを乗り切ろうとしました。

●この制度を導入するにあたり、社長は書店や図書館に足繁く通い、何冊もの賃金設計の本を読み込んで、独自の評価・賃金制度を設計したというのですから大したものです。『キャスティング・プラン』というしゃれた名前をもつこの制度は、社員一人ひとりの販売額をポイントに換算して合計し、1点に付きいくらというかたちで給与に加算するというものでした。

●つまり、基本給を大幅に下げ、歩合給の要素を相対的に大きくしたのです。また、お互いの販売額を競わせるため、店長室には個人ごとの目標達成度合いを表す棒グラフを貼りだしました。

●ですが、この評価制度を導入して一年近く経っても業績は全然伸びず、逆に社員からはブーイングが浴びせられています。とくに、若い女性スタッフが多いこの会社では、「こんな個人競争はいやです」と言われているそうです。

●デミング賞でおなじみのデミング博士は、「一年に1~2回、伝統的に行なわれる個人業績評価は、かえってチームワークを損なう」と言っています。進学校の受験競争のような、「あなたは○○人中△△番目の結果です」と言わんばかりの評価制度は有害であり、組織の雰囲気を破壊しかねないというのです。

●業績連動型の賃金にするのは結構なことでしょう。ただし、それはもっと緩やかなかたちで導入すべきです。たとえば、店舗全体の業績に対し、チームメンバーは全員連帯責任を負う。しかし、「信賞必罰」はすべて賃金に反映させるのではなく、社員旅行や食事会の予算にはねかえってくるなど、チーム全体が盛り上がるような方法を模索した方がいいのではないでしょうか。

2008年09月01日(月)更新

誰よりも常識的でありたい

古今東西、成功した人はそのキャラクター性の一部として、「熱」とか「狂」という要素を持ち合わせていました。それは、次のような名言にみることができます。

・「思想を維持する精神は狂気でなければならない」(吉田松陰)
・「熱狂せずに作られた偉大なものは何もない」(エマーソン)
・「結果というものにたどり着けるのは偏執狂だけである」(アインシュタイン)
・「大切なのは熱狂的状況を作ることである」(ピカソ)

●我々はこうした名言を100でも200でも探してくることができるでしょう。ですから私は、過去に「狂気を持とう」「熱を帯びよう」という話を何度もしてきました。その必要性をますます感じる今日この頃ですが、なかには誤解もあるようです。

●最近、ソフト開発会社を経営している人にこう言われました。
「武沢さん、うちには挨拶とかマナーとかが苦手な社員が多いのです。たとえば服装ひとつをみても、カジュアルを通り越してだんだんだらしない雰囲気になりつつあり、何度注意をしてもすぐに崩れてしまいます。ですが、そんな彼らも仕事の面ではすごく有能だし、付き合ってみれば楽しい仲間なので、しつけは諦めるしかないかなと思ってしまうのです」

「え、諦めちゃうのですか?」

「だってかわいそうだもの。最近の『がんばれ社長!』でも狂気とか熱狂が大事とありますし、別に挨拶くらいできなくても仕事が人一倍できればそれでいいか、と自分に言い聞かせているのですよ」
●残念ながらこの社長は勘違いしておられるようです。
「狂気」とか「熱狂」とは言っても、それはあくまで仕事ぶりの話であって、決して人間性の話ではありません。マナーが悪いとかルールを守れないということは人間として常識をわきまえていないということです。これを許してはなりません。

●「思想を維持する精神は狂気でなければならない」と最も自分に狂気性を求めていた吉田松陰ですら、「他人から見てどんな人間でありたいか?」と友人に聞かれたときには「誰よりも常識的で、むしろ貴婦人のように慎ましやかでありたい」と答えています。

「狂気」や「熱狂」が大切なのは、その思想・アイデア・行動のことであり、態度や立ち居振る舞いのことではないのです

2008年08月25日(月)更新

話し方講座にて(その3)

●ある話し方講座に参加してみたときのことです。講師に「“外的要求“を“内的欲求“に切り替えることができるかどうかが勝負だ」と教えられました。

●話し手に必要なのは、何といっても思いの強さです。友人と世間話をするときなどの軽いおしゃべりならいざ知らず、経営者として社員や客先、取引先に対して語るには、内容に加えて思いの強さを相手に感じさせなければなりません。経営理念や方針、ビジョンに関する内容であればなおさらです。

●その話し方講座では「自宅でスピーチを30回練習してくるように」という宿題が出されたので、帰宅した私は子どもたちを前に、早速宿題にとりかかりました。

●スピーチのタイトルは「私を変えた二人の社長」と設定しました。内容は私が20代前半で仕えたA社長と20代後半で仕えたB社長のリーダーシップを対比させたものです。A社長を反面教師、B社長を教師として、私が育んできた人生訓を2分間にまとめました。

●中学生と小学生の息子を椅子に座らせて、彼らの前に立ち

「16番、武沢信行です。今から『私を変えた二人の社長』についてお話しいたします。どうぞよろしくお願いします」

と、話し方の講師にならい、最初に深々とお辞儀をしてから話をはじめたところ、彼らは目が点になったようにびっくりしていました。
●スピーチを初めて3回目くらいまでは、息子たちの反応を見ている余裕がなく、ただ、自分のスピーチをどう組み立てるか、それだけを考えて喋っていました。

●それが5回目、6回目あたりになったころでしょうか。聞き手の反応を見る余裕も生まれてきたのですが、彼らは実につまらなさそうな顔をして、「早く終わって欲しい」と目で訴えかけてきます。

●そこで私は、「そうだった。話は自分だけでするのではなく、聞き手に理解してもらい、興味をもってもらい、共感してもらうためのものだった」と思い出しました。そこから、中学生や小学生でも理解できるような言葉づかいに変えていきました。

●そうして15回目を数えるころには、さっきの目線とはまるで違って、子どもが真剣に聞いてくれているのがわかるようになり、25回目、30回目となると、今度は私自身が変わっていきました。

●練習を始めた時とは別人のようになっていた私は、あまりに話したくてしかたがなかったので、風呂に入っていた家内と娘を部屋に呼び「お父さんの話を聞いてくれ」と強要していました。それだけでは飽き足らず、翌朝も午前5時に、眠りこけている息子の枕元に正座して、「私を変えた二人の社長についてお話しします」と一人で練習もしました。

●「スピーチの練習をしている」という感覚が消え、この話を聞かせたい、語らずにはいられないという状態になっていたのです。私のスピーチが、「“宿題”という外的要求」によるものから「“話したい”という内的欲求」によるものへと変わった瞬間でした

●話し方講座の二日目の朝、一人ずつ全員が前に出て2分間スピーチをしましたが、みんな見違えるように素晴らしい話をしていました。もちろん、私も緊張はしましたがあがることもなく、無事成功しました。

●ところが、明らかに練習してこなかったような人も数名いました。「あの~」、「え~」、「その~」が多くて目線も定まらず、声に力がないのです。考えながら話し、話しながら考えるという、「内的欲求」で話しているとはとても思えないレベルでした。

●歴代の米国大統領の中でも、屈指のスピーチ上手といわれるウッドローはこう言っています。

・私に1時間の話をせよと言うなら、準備の時間はいらない
・私に20分の話をせよと言うなら、2時間の準備時間がほしい
・私に5分の話をせよと言うなら、一日と一晩ほしい

●長々と話せるのなら準備は要らないのかもしれません。しかし、経営者が社員の前で話せる時間は長くても30分程度でしょう。ということは、ウッドローが言うように、何時間、何十回かの準備と練習をしなければなりません。その練習によって、上手な話し方ができるようになるだけでなく、あなたのメッセージに対するあなた自身の思いも強く、熱くさせてくれるのです

●「外的要求」から「内的欲求」へ。スピーチをするときは、このキーワードを覚えておきましょう。

2008年08月01日(金)更新

話し方講座にて(その2)

●「つまらなかったら、抜け出そう」と、軽い気持ちで参加した「話し方講座」。しかし、「自分は話し上手なんかじゃない。ただ、場慣れしていただけだった」ということがわかり、態度を改めて、受講することにしました。というのが、前回までのお話。

●私の一番の克服課題は“あがり症”であること。50歳になってもあがり症が直らないのだから困ったものです。場慣れすることで、徐々に緊張のボルテージもやわらいではきたものの、知らない人ばかりの場所へ行くと、今でもアウェーの気分になり、会場から逃げ出したくなります。

●なぜあがるのでしょうか?
講師いわく「自意識過剰だから」ということでした。「私はつまらない話をして失笑を買うような人間ではない」という思いが強すぎて、上手に話そうと思い過ぎてしまうようです。もっと肩の力を抜けばいいのに、こういう性格の人間はそれもできません。そうなると、対策はひとつしかありません。十分な練習をすることです。十分な練習ほど自信の素になるものはないのです

●そこで、原稿を作ることになりました。講師は、「スピーチにおいて大切なことは、論旨が明確であること。つまり、主題が明らかであることと、主題が一つであることが欠かせない」と説明しながら、一人ひとりの受講者に、白い紙を配りました。そして、配り終えると、こんな要求をしました。
●「明日は、朝からみなさんに2分間スピーチをやっていただきます。今お配りした紙に線を引いてください。上の部分には、主題、つまり何を伝えたいのかを30文字以内で書いてください。下の余白には、主題を伝えるためのネタや素材を箇条書きにしていってください。10分ほどでその作業を終えてください。ではどうぞ」

●結婚式の祝辞に例えるならば次のようになります。
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主題:新郎の田中君と新婦の陽子さんに心からオメデトウを言ってあげたい
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素材:田中君と私とは20年来の友だち
   高校生のとき一緒に山に登ったときの体験
   受験のときのあのがんばり
   社会人になって間もなくお酒で失敗したあのエピソード
   新婦の陽子さんとの出会った直後の田中君
   プロポーズ成功の翌日、二人で祝い酒を交わした思い出
   これからも家族づきあいしたい
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このようにまず、主題と素材を明確にし、頭の中で何度も繰り返してシナリオを完成させるのです。

●さて、何を書こうかと考えていると、「原稿を書く上で、決してスピーカーがやってはならないこと」を教えてくれました。それは、「全文原稿を作ること」です。全文原稿は緊張のあまり丸忘れにつながるだけではなく、聞き手に顔を向けることができない、という重大な問題もあるからです。

●私もウンウンうなりながら、主題と素材を書き出しました。これで話の準備ができた……と思いきや、いえいえ、まだまだこれからです。料理で言えば、レシピを揃えた段階に過ぎません。ここからが準備の本番なのです。
それは、
声に出して話す
30回練習する
時間を計る
ということです。

●「え~、30回も練習? 2分スピーチ×30回だから最低でも1時間は練習かぁ」と、受講者からため息が漏れてきましたが、実は、この30回練習が私の人生観を変えたのです。とても大きな気づきを与えてくれる結果になるのですが、今日は紙面が尽きたようです。

<次回につづく>

2008年07月18日(金)更新

話し方講座にて

●世間には、自分と自社に自信をもてない経営者もいますが、年配経営者に多いのはその逆で、過信の方です。
「わが実力の不十分なるを知るこそ、わが実力の充実なれ」(オーガスチン)という言葉がありますが、どうも自慢話ばかりしたがる経営者が多いようです。「自慢話ばかりする=自分を過信している=謙虚さがなくなる=裸の王様になる」ということがわからないのでしょうか?
そう思っていたら、自分もそうだった、というお話。

●ある日のこと、日本を代表する話し方教室の事務局長さんから「武沢さんも話し方講座に参加されませんか」と誘われました。
「え、私が? なぜ」と思いました。「話はうまいほうだし、少なくとも下手ではない。そんな自分が今さら『話し方講座』に参加するなんてとんでもない」
とはいえ、ちょっと義理もあって結局受講することにしました。

●朝から晩まで、1日10時間の研修が3日間続きます。「そんなに長い時間、いったい何をやるのだろう?」とおそるおそる参加したのですが、「もし、つまらない内容だったら受講料はフイになっても構わないのでこっそり抜け出そう」と考えていました。
●初日の第一講座が90分間で終わると、休憩時間となり、トイレに行く人、携帯で電話をする人、タバコを吸う人たちが一斉に席を立ちます。しかし、私は席を立てませんでした。講師の話を聞いて、号泣しているこの顔を誰にも見られたくなかったからで、しかも、放心状態になっていて体が動きませんでした。

●決して涙もろいほうではない私がいったいどうして泣いているのか、自分でも不思議でした。講師の先生の心に染み入るお話を聞き、私の魂の琴線にふれたのでしょうか。まるでマグマが吹き上げてくるように、湧き出る涙が止まりませんでした。つい先ほどまで、会場を抜け出す算段をしていた自分が恥ずかしくなり、「上手だと思っていた自分の話し方を根本から変えなくては」と、覚悟した瞬間でした。

●自分は話し上手なんかじゃない。ただ、場慣れしていただけの自意識過剰な人間なのだと知って、「今日からの3日間を天からの贈り物にしよう」と決意した次第です。

<次回につづく>

2008年07月11日(金)更新

理解と同意

●私が40代後半だったある日のこと、名古屋市内にある電気設備会社のE会長(70歳)からこんなことを言われました。

「武沢くん、男も還暦を超えるとね、若いときのようなパワーや欲望が薄らいできて、自分のエネルギーのはけ口をコントロールしなきゃならんのですよ。限られてくるからね、エネルギーが。きっと何年かしたら、あなたもそれを実感するときが来るに違いない」
「はぁ、そんなものですか。ノートパソコンみたくパワーマネジメントが必要ですかね、ハハ」

●このE会長、その枯れたセリフに似つかわしくない漆黒のテスタロッサを操りながら、私を名古屋駅まで送ってくれました。

「今から東京出張だね、がんばってきなさいよ、向こうには全国からすごいヤツらが集まってきてるから、気を抜くんじゃないよ」
「はい、がんばってきます」
「まるで出征兵を送りだすみたいだね、ワハハ」

新幹線に乗りこみ、E会長の言葉を反すうしてみました。
「男も還暦を気にする…、あなたもそれを実感するときが来るに違いない。あと12年か……」

●それから6年経ち、私も54歳になりましたが、故人となられたE会長のあの笑顔と言葉と運転技術の確かさは忘れることができません。しかし、その意見にはいまでも「同意」していません
●加齢によってパワーが落ちるのは一般的なことですので、当然「理解」はできます。しかし、私は「そんな歳のとりかたはしたくない」と思っているので、「同意」はしていません。あくまで、「理解」と「同意」は別物です。トレーニングジムやヨガ教室に通って体を鍛えていますし、精神的にも老けることを拒否しようとしています。ですから、仮に若い世代の経営者とキャバクラへ行くことがあってもホステスさんとは話題に事欠かないようにしているつもりです。

●キャバクラのことはさておき、「理解」と「同意」は別物という話に戻りましょう。経営者としてのあなたが示す会社の方針や目標は、部下に「理解」されるだけでなく、「同意」されているでしょうか? 「部下が動いてくれなくて…」と悩むリーダーは、「理解」と「同意」、どちらの手前で止まっているのかをチェックしてみましょう。また、あなた自身も、部下の意見や気持ちを「理解」しているのか、それとも「同意」しているのか、考えてみてください。

●「理解」を得るだけなら、一度の説明で済むかもしれません。ところが「同意」を得るためには、繰り返しくりかえし、さらにはくり返して反復することや、感情に訴えかけるようなメッセージで共感を得なければなりません同時に、相手の意見や気持ちも積極的に聞かなければなりません

そんな取り組みがあって初めて、「理解」が「同意」に進化していくのだと思います理解と同意は別だということをいつも忘れずにいたいものです

2008年07月08日(火)更新

Wish Listの成長

●某日、牛島社長(仮名)がやってきました。

「やりましたよ、武沢さん。ついにWish Listの数が500個になりました。よろしかったら、ちょっと見ていただけませんか」
※「Wish List」とは、夢や願望や問題を箇条書きにリストアップしたものです。

「へぇ500個とは凄い! さっそく拝見します」

●『2009年 私のWish List』と題したレポート用紙には、次のような項目が並んでいました。

・ドバイに行きたい
・マカオに行きたい
・香港か上海に進出したい
・都内に行きつけの寿司屋を見つけたい
・年商を5億円にしたい(3年以内)
・経常利益を5,000万円にしたい(3年以内)
・役員報酬を3,000万円にしたい(3年以内)
・資本金を1億円にしたい(2年以内)
・35歳までに結婚したい(今31歳)
・○○に関する技術で世界一になる
・IPO(株式公開)したい
・IPOしてから本を書きたい
・新卒学生を採用したい
・強力な右腕幹部がほしい
・人前で堂々とプレゼンできるようになりたい
・「青年の船」のような研修船に乗ってみたい
・美人秘書がほしい
・美人受付を置きたい
・レクサスハイブリッドに乗る
・毎月10冊、本を読む
・WEBを改造したい

ここまで読むと、個性があってなかなか良いリストだと思いますが、いかんせん、ほしいものばかりが並んでいました
●私も牛島さんと同じ31歳のころに作った「Wish List」は、このような内容だったと記憶しています。自分が得たいものが何なのか、ご褒美ばかりが並んでいたのです。肝心の、「自分が何者になりたいのか、何を成し遂げたいのか」があまりわかっていなかったのです

●私は牛島さんに質問しました。以下、そのやり取りを紹介すると・・・。

「10年後、このWish Listのうち何パーセントくらいが実現していると思いますか?」
「う~ん、20%くらいだと思います」
「その数字を40、60、80へと上げていって、Wish Listがお遊びで終わらないようにするための最重要課題は何ですか?」
「自己管理だと思います。Wish Listが達成できるような人間に自分がなることが
最大のポイントだと思います」

●さすがは牛島さんです。自分の「Wish List」にある危うさに、ちゃんと気づいていたのです。「レクサスに乗るならレクサスにふさわしい人間になろう。それはどのような人間なのかを定義し、それもWishとして書き出すことが大切だ」と、牛島さんは気づいていたのです。

Wish Listの成長が本人の成長であり、年々進化する人だけが、実際にWishを実現することになるのでしょう

●今年も後半戦に入りました。“下半期のお正月”ともいえるこの時期に、
 もう一度Wish Listのメンテナンスをしてみませんか?

2008年06月27日(金)更新

Thank you と I love you、I need you

●社会人になってすぐのころ、職場の先輩から「武沢、サンキュー上手になれよ」と教わったのを思い出します。「サンキュー上手ってなんですか?」と聞くと、“気持ちよくお礼を言える人間になれ”ということでした。そのためには、「少なくともお礼は三度言え」とまで言われました。

●たとえば、夕食をご馳走になったとき、一度目はその場でお礼を言う。二度目は翌朝、会社で会ってすぐにお礼を言う。三度目は後日何かの会話のときにさりげなく「そういえば、あそこの唐揚げうまかったですね」とご馳走になった話題をする。そこまでされると先輩から、「こいつは、おごり甲斐があるヤツだな」と可愛がられます。「周囲から引き立てられる必要がある若者は、サンキュー上手になってナンボ」と教えてくれた先輩に、今も感謝しています。

●それから10年たって結婚したときには、「サンキュー上手だけでなく、アイラブユー上手にもなろう」と心に決めました。でも、これはなかなかうまく言えませんでした。

●「アイラブユーって先週言ったでしょう。だから今日は言う必要はないんだ」という理屈は通らないとはわかっていても、そうそう言えるものではありません。本当は「 I love you 」の気持ちが変わっていないかぎり、惜しまずに今日もそれを言葉で伝えるべきなのかもしれません。受け手にとって、愛情メッセージは満たされた瞬間に消滅し始め、すぐに飢えてしまうもので、たえず補給が必要なビタミンのようなものです。
●しかし、与える側はどうでしょう? 四六時中「 I love you 」と言えるものではありません。ですから、言葉と態度でそれを表そうとしました。

●それから10年たって40歳で経営コンサルタントとして独立し、会社を作りました。初めて採用したアルバイトは女性でした。職場で「アイラブユー」と言うわけにはいきませんから、「アイニードユー(I need you)」という気分で仕事をお願いしました。

●今、オフィスには私を含めて5人が働いていますが、「サンキュー、アイラブユー、アイニードユー」という気持ちを忘れないようにしています。同時に、スタッフから「サンキュー、アイラブユー、アイニードユー」と言われる自分でいたいとも思っています。

2008年06月20日(金)更新

ファシリテーション

●あるプロジェクトがひと段落したあとの、ご苦労さんパーティでのことです。一人の女性幹部が、ビールグラス片手に私のところにやってきたのですが、とんがった口元をみると、何か不満げな様子です。

「武沢さん、ちょっと聞いてほしいのですが……。うちの部長は気まぐれなんだから」
「何かあったのですか?」
「部長が『アイデアを自由に出せ』って言うから、いろいろと突飛なことや奇想天外なアイデアを言ったのに、その場ですぐに否定されてしまうの。ときには、怒り出しちゃったりもする」
「へぇ、そうなんですか」
「そう。たとえば私が何かのアイデアを出すとするでしょ。そうすると、『どうやってそれを実現するんだ!』とか、『我々に与えられた予算や時間という制約条件を無視するな』とか言って、ホワイトボードに私のアイデアすら書いてくれない」
「それはちょっとつらいね」
「でしょ? それでもって自分のアイデアはどんなにつまらないものでも、ホワイトボードの目立つ位置にデカデカと書くわけ。これもひとつの『パワーハラスメント』じゃないかってメンバーとひそひそ話しているの」

●たしかに、彼女がかわいそうですね。全員の感情参加が必要なこうした会議では、進行者の何気ない発言や態度によって、参加メンバーの気持ちが左右されていることを忘れてはなりません。会議やミーティングにはいろいろな目的や手法がありますが、アイデアを幅広く求めるときには、アイデアを出すことそのものを目的にすべきです。アイデアの実現可能性や、達成への方法論を問いかけてはいけません。もちろん、誰の発言かによってアイデアを差別するのも禁止です。

●ミーティングや会議の運営を「ファシリテーション(促進)」と言い、米国では、この専門家「ファシリテーター(促進者)」のプロには高い値がつくといいます。日本でも組織の風通しの良い会社には、必ず一人はファシリテーターの役を果たせる人がいます。的確なミーティング運営ができる人は、コミュニケーションの達人として高く評価すべきです
●「お前も意見を言え」と強制的に発言させるのではなく、意見を言いたくなるようにメンバーの感情をコントロールできるファシリテーション法をマスターしましょう。たとえば、
・いつも、「今、考えてほしい、発言してほしいテーマは何か」を明確にする
・どんな小さなこと、間違ったことでも構わない。発言すること自体が貴重であるという雰囲気づくり
・発言された内容は無視されたり批判を浴びることがない
・誰が正しいかではなく、何が正しいかをみなで考える
・特定個人が発言を独占することがない
・特定個人の発言に影響されないように、まずは発言内容を全員が前もって紙に書き、それを読み上げていくことからミーティングが始まる
いつ始まり、いつ終わるかを明確にして会議に専念させる
・否定的意見や批判的意見が出て会議のムードが暗くなっても、明るく全体を鼓舞させる進行
などなど。

●ファシリテーションをマスターした人は、それだけで市場で1000万円の値が付くと私は思います。さっそく明日の朝礼からでも、そうした運営をこころがけてみてはいかがでしょうか?

2008年06月13日(金)更新

新しいリソース

●あるミーティングでのことです。
「武沢さん、今回のプロジェクトを成功させるために、あなたはどのような新しいリソース(資源)を提供してくれますか?
と質問されました。
「どういう意味ですか?」
と逆質問すると、
「あなたは今回、審判でも観客でもなくプレイヤーです。一人のプレイヤーとしてチームのためにどのような貢献をしていただけますか?」
とのことでした。

●質問を投げかけてきたのは、大橋禅太郎さん。『すごい会議』、『すごいやり方』などのベストセラーを書いた日本でも屈指のビジネスコーチです。愛知県のある会社が、社内改革のために『すごい会議』のやり方を導入することになり、その会社の社長と友人だった私も、「メンバーとして参画してほしい」と要請され、キックオフミーティングに参加したのでした。冒頭の質問はそのときのものです。

●実は、こんな「がちんこバトル」になるとは思っていませんでした。あくまで、私は研修オブザーバーのようなつもりで、大橋さんのコーチぶりやこの会社の変容ぶりを見とどけたかったのです。しかし、大橋さんはそんな生やさしいメンバーの存在を許しませんでした。そればかりか、他のメンバーにも「空砲での射撃練習」ではなく、あくまで、「実弾射撃」でミーティングを進めていきました。そして、この会社の主力製品の「売上げを半年以内に2倍にする」というチャレンジテーマをもって、毎回のミーティングをやることが決まったのです。
●あれよあれよという間にメンバーは目標を鮮明にし、役割分担と個々の目標に対するコミットメント(誓約)をしていきました。ベテランメンバーからは、批判の声も上がりましたし、途中で挫折して退職する人も出ました。しかし、責任者であるY社長が大橋さんを支持していたので、「新しいリソースを使え」という号令のもと、私もY社長も飛び込み営業をやって目標達成に邁進しました。

●そして半年後、売上げは1.5倍以上になりました。惜しくも目標は未達成でしたが、メンバー全員が大きく成長しました。得られた成果は数字だけではありません。新しいことに挑戦するときには、新しいリソースを各人に要求するということがとても大切だ、ということを学習しあったのです。

●ベテランが「昔取ったきねづか」で仕事をするのは悪いこととは言いませんが、その真逆にある「新しいリソース」を使った挑戦も欠かせないということです。
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ボードメンバープロフィール

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武沢 信行氏

1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。

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