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2007年05月11日(金)更新

改革スローガンを作ろう

●小泉純一郎氏が退陣してからというもの、政治への興味が薄らいだのは私だけでしょうか。

●小泉氏は、総理としての手腕や業績には賛否両論こそありましたが、国民の関心を政治に向ける事に関しては、成功したと言えるでしょう。とりわけ、選挙中や在任時に何度も繰り返された、

・「郵政民営化なくして構造改革なし」
・「構造改革なくして景気回復なし」
・「改革断行政権!」

などといったフレーズは、シンプルながらも力強く、今なお多くの人々の記憶に残っていると思います。

●国民にわかりやすいということは、政治家や官僚にもわかりやすかったに違いありません。きっと当の本人もわかりやすかったことでしょう。改革をすすめるリーダーとしては、メッセージがシンプルであることや、それを何度も繰り返すということをためらってはならないのです。
●GWに入る前、我が家では「アグレッシブで行こう!」をスローガンに掲げました。連休はいつもダラダラ過ごしがちになるのですが、GW前に家族揃って外食に行った時、いかにして今回はそうならないようにするか相談しました。そのとき、スローガンを作ることが決まり、「アグレッシブで行こう!」となったのです。

●「アグレッシブで行こう!」と互いに声をかけあう。ただそれだけなのに効果はテキメンです。いつもは母親から「もう○時だよ、早くしないと」とか、「いつまでパジャマ着てるの?」などと叱られている子供たちですが、スローガンの効果もあってか、今年の連休だけは自発的に過ごしていました。私もそれに影響され、休みであるにもかかわらず、朝6時に起きて8時に散歩や仕事、ジム通いをするなど、生産的な時間を過ごすことができました。

わかりやすいスローガンの反復は、政治や家庭の運営だけでなく、会社経営にも活かせます。経営目標や事業計画を作る場合でも、シンプルなスローガンを決め、反復しましょう。小泉流スローガンにならって、

・「顧客創造なくして利益なし、利益なくして繁栄なし」
・「改革断行経営!」
などでいきましょう!

私も今は、
「経営 is エンタテインメント。日本の社長を応援するネットベンチャー『がんばれ社長!』」
をスローガンにして、燃えています。

2007年04月27日(金)更新

社長の評価

●いよいよゴールデンウイークです。休日を利用して旅行や買い物に出かける人も多いと思いますが、景気をさらに良くするためにも、みんなでドシドシお金を使いましょう。かく言う私も、この連休は大分県の湯布院の名旅館に泊まって、ゆっくりかみさん孝行をさせてもらうつもりです。

●さて、今回は評価について考えてみたいと思います。評価とは言っても、今回とりあげるのは社長の評価についてです。

●社員の評価については書籍やセミナーなどのテーマとして頻繁に取り上げられるため、そこで得た知見をベースとしてオリジナルの評価表を作成し、運用している会社が多いようです。

●しかし、オーナー企業の社長に限ってみますと、昇進や昇格がないため、評価されるような機会はほとんどありません。金融機関が決算書を判断基準として評価するということはありますが、それはあくまで企業としての評価であって、必ずしも社長自身のマネジメント能力やリーダーシップの評価に結びつくものではありません。

●サラリーマン社長ならば、株主総会で評価され、場合によっては更迭されることもあります。他方、オーナー社長は、たとえ業績が悪いからといって、自ら退任するようなことは滅多にしません。
●そこで、経営力を甘くさせないために、定期的な社長評価が必要になってきます。2005年に日本能率協会が「役員の業績評価と報酬に関するアンケート」を行いました。一部上場企業のトップに対して行った調査で、詳細は下記のURLからご覧いただけます。
http://www.jma.or.jp/release/23.html

●結果から言えることは、役員の評価と報酬との関係は、依然としてブラックボックスの中にあるということです。成果主義で社員を評価する風潮が、すごい勢いで浸透しているのに対し、役員の評価に対してはなかなか浸透していきません。

●そこで、社長自身のために、一年に1~2回は自己評価をしてみましょう。場合によっては、部下に経営能力を評価してもらうのもいいでしょう。

●あくまで一例ですが、社長を評価する項目を考えてみました。

■定量的評価項目
 1.利益額(率)
 2.売上高
 3.目標達成度
 4.ROAまたはROE
 5.キャッシュフロー

■定性的評価項目
 1.経営方針とビジョンの明確化
 2.当期重点課題の実行進捗度
 3.部下の採用・定着・育成
 4.社風の向上とリーダーシップ
 5.経営力向上のための個人的な取り組み
 
●これらを評価表のスタイルに落とし込んで、各10点、合計100点の評価シートにするのです。
上半期と下半期それぞれで評価し、結果を毎回記録しましょう。当然、役員報酬の額を結果に連動させるべきです。

●他の役員も同様の方法で評価します。もし、社長より経営力がありそうな人物がいたら、その人に社長を任せてみるのも一つの手でしょう。自分は最大株主であっても、経営の最前線からは離れ、新社長に会社の舵取りを任せるのです。

●このように、社長自身も社員と同じように評価対象になり、自らの競争原理にさらすことが、会社を健全に保つ秘訣なのです。

●勇気をもって「社長の評価」を始めてみませんか。

2007年04月20日(金)更新

営業マンは自動販売機にあらず

●「営業社員を自動販売機のように扱ってはなりません
そんなことは言われなくても当たり前のことなのですが、本当にそう言い切れるでしょうか。

●ある会社でこんなことがありました。ただし、名前はすべて仮名です。

●A電子株式会社の営業部に配属された山下君と金原君は、同期入社。二人は幼なじみの仲良しで、互いに誘いあってA電子に昨年入ったそうです。ちょうど一年を経過した頃、営業成績を比較してみたら、なんと5倍もの開きがありました。山下君の圧勝だったのです。

●二人の営業成績を引き合いに、A電子の社長は全社員会議で、次のように話しました。
「山下君は本当によくがんばってくれた。もともと期待してはいたが、その期待をも大きく上回る実績を残してくれた。ご苦労様と言いたい。一方、金原君の成果は平凡だったと言わざるを得ない。努力不足だとは言わないが、身近に山下君という良きお手本がいるので、彼を見習い、今後はより一層発奮してもらいたい」

●社長の言った、ライバル心をあおり、奮い立たせるようなハッパのかけ方にはある種の効果があるかも知れません。しかし、直属上司(営業部長)までもが、社長と同じようなハッパをかけるだけの指導に終始しているのだとしたら、問題があります。金原君が今後何をどうすべきかを示し導いてあげるような、具体的な行動計画を立てるべきでしょう。
●実際に二人に会ってみました。仲良しというから似たもの同士だと思っていたら、性格はまるで違いました。山下君は社交的な性格で、気配りもできるし話術も巧みです。一方、金原君は社交性に乏しくて、内向的な印象があり、話す言葉も途切れがちです。その部分だけを見た場合、金原君は営業マンに向いていないように思えます。

●山下君のように社交的で人から好かれやすい性格は、営業マンとしての武器になるのは間違いありません。しかし、営業は性格だけではないはずです。金原君は金原君の性格のままでも、他の部分を磨き上げることにより、山下君とは違ったタイプの優れた営業マンになれるはずです。

●営業マンを育成するためには、知識や技術といったテクニカル面と、心構えやモチベーションといったメンタル面の2つに分けてアプローチしていく必要があります。セールス能力開発というテーマをこれら2つに分類するとすれば、次のように分けることができるでしょう。

【テクニカル面のアプローチ】
<知識>
 ・商品知識(自社製品や他社製品)
 ・業界全般の知識と会社知識
 ・顧客心理や顧客ニーズに関わる知識
 ・計数の知識

<技術>
 ・コミュニケーション技術(聞き方や話し方)
 ・見込み客発見の技術
 ・アポイント電話の技術
 ・商談におけるプレゼンの技術
 ・提案書や企画書、見積書の作成技術
 ・クロージングの技術
 ・契約を締結までもっていく技術
 ・アフターフォローの技術
 ・良好な人間関係を構築する技術
 ・スケジュール管理やタスク管理、勤務習慣の技術

【メンタル面のアプローチ】
<心構え>
 ・対人関係における心構え
 ・自社製品に対する信頼と自信
 ・営業力を磨くことに対する意義
 ・目標を達成するための強い意志
 ・お客様に感謝される喜びを知る

<モチベーション>
 ・自社そのものと自社製品に対する誇り
 ・自分個人として夢や目標
 ・仕事上の目標達成と個人での目標達成の同一視
 ・自社のビジョンと個人の価値観における接点の再確認
 ・目標と実績を対比し、常に行動計画を更新する
 ・小さな成功体験を積み重ねることで、自信を深める

●直属上司である営業部長は、金原君は山下君に比べ、これらのどこが劣っていたのかを把握し、克服策を作らなければなりません。単に実績だけを比較してハッパをかけるだけでは、上司として失格です。それでは営業マンを自動販売機と同じに扱っていると批判されても反論できません。

上司がなすべき仕事は、部下同士が励まし合い、成長することで新たな高みへ到達できるよう、それぞれにあった指導計画をつくり、導いていくことなのです。

2007年04月13日(金)更新

幸せホルモンを分泌させよう

仕事をする以上は、それ自体を思いっきり楽しみたいものです

●大好きなゴルフで腕を磨くために練習場でボールを打ち、コーチにレッスンを受ける時のような熱心さと向上心をもって仕事ができたら、どんなに幸せでしょう。
「仕事と趣味を一緒にするのはおかしい」
という意見もあるでしょう。もちろん、一緒にするつもりはありませんが、やっぱり仕事は楽しくなければならないと思うのです。

●最初は好きで始めた仕事でも、毎日同じことを単調にくり返しているだけだと、やがて仕事は義務と化し、好きだった仕事も好きではなくなってしまうものです。

●つい数年前に、「脳内モルヒネ」という言葉が流行しました。ベストセラー本で紹介された「脳内モルヒネ」とは、「βエンドルフィン」といわれるホルモン。私たちの体内で分泌されるもので、麻薬以上に快感を得ることができる、と紹介されました。

●こうした "幸せホルモン" は、私たちが心の底から喜んでいる時や、楽しいと思っている時に分泌されやすいと言われています。楽しいことを想像しただけでも脳内モルヒネが出るときがありますが、それは一時的な話。大切なのは、持続的に幸せホルモンが出ることです
●たとえば、次のようなケースでは、ある程度持続して "幸せホルモン" が出ていると考えられます。

◇マラソンランナーが苦しさを乗り越えたときに訪れる「ランナーズ・ハイ」
◇登山家が険しい登山の最中にいっさいの恐怖心がなくなる「クライマーズ・ハイ」
◇ダイエットで空腹の辛さを乗り越えたときに訪れる「ダイエット・ハイ」
◇猛烈に忙しいはずなのに、疲れを全然感じない「ハードワーク・ハイ」

●幸せホルモンが持続的に分泌された結果、ふだんなら出せないような力を発揮できることだってあるのです。これを「潜在能力の発揮」ともいいますが、それは長時間労働や義務的な労働では決して得ることはできません。無上の喜びや、極上の楽しみを感じているときだけ得られるのです。

●ゴルフや趣味に熱中するのも悪くありませんが、しょせんゴルフはゴルフ、趣味は趣味。現実のビジネスや会社経営という仕事は、本来、ゴルフや趣味などとは比べものにならないくらいに面白いはずです。いや、面白くしなければおかしいのです。

●そのために、経営者をはじめとして社員全員の脳にある「βエンドルフィン」が分泌するような仕事のスタイルに変えましょう

●そこで、定期的に次の四つの視点で仕事をチェックされることをご提案します。

1.仕事そのものが刺激的か?
2.仕事の進め方が刺激的か?
3.仕事仲間や顧客が刺激的か?
4.仕事の報酬が刺激的か?

●この四つに対して「YES」「NO」「どちらでもない」で回答してみましょう。
四つともが「YES」であれば最高。あなたは今、仕事に熱中しているはずです。

●最悪なのは、すべてが「NO」のとき。これでは、仕事がつまらないどころか、「ノルアドレナリン」という不幸せ感とストレスを増幅させるホルモンが分泌し始めます。それを断固として阻止しなければ、うつとか出社拒否といった結果を招きかねません。

仕事が面白いか、面白くないか。仕事が楽しいか、楽しくないか。そうした素直な感情を大切にキャッチし、幸せホルモンが途切れないよう、早めに手を打っていきましょう。

2007年04月06日(金)更新

決断力の本質とは何か

●ソフトバンクの孫さんは、こう語ります。
「インターネットが普及しなかったら、当社はただのは石ころみたいな会社だったでしょうね」
創業時、パソコンソフトの卸売り会社だったソフトバンクは、インターネットの普及で大変身を遂げました。この大変身以降も、孫さんは大胆な決断を何度もしてきたことは、みなさんご存知のとおりです。

●あるとき、経営者が冗談めかして語ってくれました。

「武沢さん、ソフトバンクの孫さんがナスダックジャパンへの出資を決めたときは、たった5分での決断だったそうですよ。やっぱり優れた経営者は決断が早いのですね。それに比べて私は優柔不断でしてねぇ。昼にうどん屋に入ってからも何を注文するか、迷っちゃう時があるのですよ」

私が笑っていると、さらに続けてこう言いました。

「そこで最近、即断即決の訓練をしているんです。座る前に『きつねうどん』と頼んじゃう。結構できるものですね。もちろん昼食に何を食べるかという事くらいなら簡単に即決できるようになるのですが、経営の問題、たとえば人の採用や投資案件などは、なかなか即断できるものではないですね」

●決断は早いに越したことはありませんが、間違った決断ばかりしていては意味がありません。適切なタイミングで正しい決断をすることが必要です。それと同時に、今何を決めるべきかという「問いの正しさ」も必要です。

●そこで、決断力の総合値を公式にしてみました。

決断力=「問いの正しさ」×「決断のタイミング」×「決断の正しさ」

ではないかと思うのです。一つひとつの要素について、チェックしてみましょう。

●「問いの正しさ」

経営会議においてどのような案件が議題にのぼり、討議されるかという段階で、すでに企業間格差がついています。ドラッカーは『現代の経営』の中で、次のように語っています。

「戦略的な意思決定において重要かつ複雑な仕事は、正しい答えを見つけることではない。それは正しい問いを探すことである。間違った問いに対する正しい答えほど、危険とまではいわないまでも、役に立たないものはない」
(以下、中略)
「したがって、意思決定において最初の仕事は、本当の問題を見つけ、それを明らかにすることである。この段階では、いくら時間をかけてもかけすぎるということはない」

つまり、経営における決断力を考えるうえでは、まず決断すべき事柄の選択が正しいことが前提条件なのです。

●「決断のタイミング」

決断すべきタイミングにも賞味期限があります。鮮度がみずみずしいうちに決定しなければ、永久にタイミングを失することすらあります。朝令暮改をおそれず、まず決断し、後から決断のよし悪しを再チェックしても良いのです。まずは、すばやく決断できる癖は身につけておきたいものです。

●3.「決断の正しさ」

決断の正しさは、その結果において証明するしか方法がありません。仮に二者択一の決断の場合、どちらか一方を決めるしかなく、残った一方の結果がどうであったかは知るよしもないのです。自分の決断が正しかったかどうかは客観的にはわからないもの。大切なことは、決断する前の段階で、成功と失敗の定義をしておくことです。

私は、7割の満足度が得られれば大成功だと思います。なぜなら、プロの世界におけるに次の勝率をみれば一目瞭然でしょう。

◇プロ将棋・・・年間約70の対局で勝率7割で一流
◇プロ野球・・・年間135試合で勝率6割で優勝
◇プロ野球の投手・・・バッターに対して勝率7割5分以上で一流
◇大相撲横綱の勝率・・・8割以上の勝率で一流

●賢明な経営者ならば、決断の勝率が5割を切ることはまずありません。それならば、理論的に考えて決断の数が多いほど有利になるという計算が働くでしょう。
プロスポーツでは、年間の試合数が決められていますが、経営では決断すべき数に制限はないのです。よって決断の勝率にこだわるのでなく、決断の勝数を重視しましょう

●決断力が鈍いと感じているあなた、うどん屋での即断即決訓練も楽しいと思いますが、いかがでしょうか?

2007年03月30日(金)更新

五省(ごせい)

●前号では日報の五つの目的について、実例を交えてご紹介しました。会社におけるホウレンソウ(報告・連絡・相談)のツールとして、日報は大切な役割を担っているのです。

●さて、今回は他人のためのホウレンソウではなく、“自分自身のなかにいる最良の自分”に対するホウレンソウというものを考えてみたいと思います。

●ある日のこと、私は広島県西部にある江田島市を訪問しました。明治時代中頃から第二次世界大戦が終わるまでの間、この地には海軍兵学校が置かれていました。「イギリスのダートマス」「アメリカのアナポリス」と並らんで「日本の江田島」が三大海軍学校として世界に知れわたっていた時期もありました。

●わが国における海軍の歴史は、1869年(明治2年)に海軍操練所が開設されのがはじまりです。その後、海軍兵学校と改称。兵学校が江田島に移転されたのは、1888年(明治21年)のことでした。現在この場所は、海上自衛隊幹部候補生学校、第一術科学校になっています。

●さてこの江田島の学校を見学した際、「五省」と書かれた文章を発見しました。その内容は、次のようになっています。

一.至誠に悖る(もとる)なかりしか
一.言行に恥ずるなかりしか
一.気力に欠くるなかりしか
一.努力に憾み(うらみ)なかりしか
一.不精(ぶしょう)に亘(わた)るなかりしか
●この「五省」を定めたのは明治15年当時の海軍学校校長・松下元少将です。松下校長は、当時の世相を鑑みて、将来海軍将校となるべき兵学校生徒に対し、日々の行為を反省させ、明日の修養に備えさせるためにこの五箇条を制定したといいます。

●「五省」の意味はこうです。

一、至誠に悖(もと)るなかりしか・・・真心に反するようなところはなかったか
一、言行に恥ずるなかりしか・・・自分の発言や行動に恥じるべきところはなかったか
一、気力に欠くるなかりしか・・・惰性ではなく、気力に満ちていたか
一、努力に憾みなかりしか・・・最善の努力をしたか
一、不精に亘るなかりしか・・・妥協や手抜き、自己満足に陥ることはなかったか


●毎晩、自習終了五分前になると「G一声」のラッパが鳴り響きます。すると、生徒はみなすばやく書物を机の中におさめ、粛然と姿勢を正します。当番の生徒が「五省」の五項目を読み上げる。生徒は瞑目して心の中でその問いに答えながら、その日一日を自省自戒するそうです。「自習やめ、解散」のラッパが鳴り響くまでの五分間が「五省」の時間です。

●終戦後に来日した米国海軍のウィリアム・マック海軍少将がこの「五省」に感銘を受け、自国に持ち帰り翻訳しました。それは現在でも、アナポリスの海軍兵学校で利用されているといいます。もちろん、現在の海上自衛隊幹部候補生学校、第一術科学校でもこの伝統が受けつがれてるそうです。

●ちなみに英語で「五省」は、こうなります。

Five Reflections Japanese Imperial Neval Academy
 
1.Hast thou not gone against sincerity?
1.Hast thou not felt ashamed of thy words and deeds?
1.Hast thou not lacked vigor?
1.Hast thou exerted all possible efforts?
1.Hast thou not become slothful?

●私たちも、内なる自分と対話するために、この「五省」を活用しようではありませんか。

2007年03月23日(金)更新

日報を社員教育ツールに

●「武沢さん、うちはホウレンソウ(報告・連絡・相談)がまったく出来てないんです。とくに日報は、何回言っても出してこない。あきれちゃうんですわ。他社さんはどうやってるんですか?」
 とぼやく建設会社のA社長。たしかに、日報の不徹底に悩ましい思いをしている経営者は多いようですが、あえて私はA社長に「なぜ、日報が必要なのですか?」と聞いてみました。

●すると、次のような回答が返ってきました。
「日報とは働いたことを証明をするものであり、従業員の義務でしょ。経営者は日報を見て、仕事の流れを把握するものであり、これがなければ誰が何をやっているかわからない」
たしかにその通りですが、残念ながら「50点」の回答と言わざるをえません。

●日報の活用法やスタイルなどは各社各様ですが、うまくいっていない会社では、日報の目的をはき違えているか、運用の仕方に問題がある場合が多いようです。そこでもう一度、日報の目的を確認してみましょう

●日報の効用をまとめると、次のようになります。

1.上司に対してその日にあった出来事を報告・連絡・相談するためにある
2.上司に対してその日の実績を報告するためにある
3.上司から本人に対してタイムリーな指導や教育をするための情報源である
4.上司が各部署や全社の状況を把握し、今後の対策や方針を決めるための情報源である

●ここまでのことなら、読者のみなさんはすでに理解しているかも知れません。そこで、事例を交えつつ、日報の戦略的な活用法をもう少し突っ込んで研究してみましょう。

●ある生命保険代理店に腕利きのマネジャーがいると聞きました。普通の成績の営業マンがこのマネジャーの部下になったとたん、半年もしないうちに営業実績が上がりだすそうです。このマネジャーの部下指導法のどこかに学ぶべきポイントがあるのではないかと思い、彼のもとに出向きました。

●あいにくマネージャー氏は不在でしたが、部下の営業マンから興味深い話が聞けました。

うちのマネージャーはものすごい質問魔なんです。マネージャーが同行してくれて営業に出向くと、恒例行事がある。お客さんとの商談終了後には必ず5分以内にファミレスか喫茶店に入るのです。そして、根ほり葉ほり質問攻めされるのですよ。この前なんかは、お客さんと会っている時間より長くなっちゃいました」

●どんな質問をされるのかを尋ねると、次のような問いかけが続くのだそうです。

・「さっき面談したお客様のニーズは何か?」
・「商談の中でお客様が決算資料を見せてくれたけど、あれはどういう意味だと思うか?」
・「最初の数分間、お客様は不機嫌そうだった。そんな時、君一人だったらどんなことに注意するか?」
・「お客様は商談中に一度も時計を見なかったと思うが、君は何か気づいたか?」
・「この商談を成功に導く最大のポイントは何か?」
・「この商談が失敗に終わるとしたら、それはどんな時か?」

●恐るべし、マネジャー氏。これぞまさしく「追体験」なのです。わずかな商談時間の中にも無数の学習ヒントがあります。それは商談直後の生々しさがあるうちに反芻、確認されるべきなのです。

●商談の成功失敗に一喜一憂するのではなく、部下の経験を確実な学習機会にしようとするこのマネジャーの姿勢に、学ぶべき点は多いのです。

●さて、今日の主題は日報なのですが、もうおわかりでしょう。マネジャーの追体験教育そのものが日報の目的なのです。一日の仕事の中から何を感じ、何を学び、何をなすべきかを振り返る作業こそが、日報を書くという行為です。

●先ほど、私は日報の目的として次の四つをあげました。

1.上司に対してその日にあった出来事を報告・連絡・相談するためにある
2.上司に対してその日の実績を報告するためにある
3.上司から本人に対してタイムリーな指導や教育をするための情報源である
4.上司が各部署や全社の状況を把握し、今後の対策や方針を決めるための情報源である

●そして今、ここにつけ加えるべき日報の目的には、

5.一日の仕事を振り返り、明日の成果と成長につなげる学習機会とするため本人と上司がコミュニケートするためにある

という項目を加えるべきでしょう。

2007年03月16日(金)更新

客離れ対策

●ある印刷会社の経営者との会話。

武沢:「客離れが目立つようになったという事ですが、理由は何でしょうか?
社長:「最近は経営者の世代替わりが進んで、以前からうちと取引実績があるにもかかわらず、簡単に他社に乗り換えられてしまう。薄情なもんですよ。」
武沢:「どのような対策をたてておられますか?」
社長:「相手の世代にあわせて、当社も後継者か若い担当者をつけることで対応しています。信頼関係ができるまでには時間がかかりますからね。」

これだけの発想では、少々的はずれの努力と言わねばなりません。

●過去の取引実績が、未来の取引を保証してくれるものではありません。そのことは、この印刷会社の社長も充分承知しています。事実、この会社でも長年のつきあいがあった近所の原材料納入業者を、ネットで見つけた安い業者に切り替えたばかりです。

仕事における信頼関係とは、担当者同士の人間関係で決まるものではありません。ましてや、社長同士の交友の有無で決まるものでもないのです。仕事の中身で決まります。中身とは、顧客の側からみた満足度や価値なのです。

●私たちは、新しく買ってもらうための努力は一生懸命しますが、それに比べてこれからも買い続けてもらうための努力は軽くなりがちなもの。

●ある保険代理店は、顧客に対して毎年一回、手紙に沿えてレポートを添付しています。そのレポートには、顧客の契約保険の内容と、その保障内容や特長がわかりやすく箇条書きにされています。こうしたフォローのおかげで、顧客は、なんのためにこの保険に入ったのかを再確認でき、契約の更新率が上がるだけでなく、新規の保険購入という面でも実績につながっているといいます。

●また、ある食品販売会社では顧客を工場に招待し、その衛生管理の徹底ぶりや食材へのこだわり、化学物質無添加などを訴えています。バス旅行も兼ねて無料招待しているので、毎月一回のこの企画は絶えず満席だそうです。

●こうした話を講演で話したところ、住宅建材販売の経営者から、こんな質問を受けました。
「当社では社長の人脈だけに頼った客先開拓をしてきて、これといったウリモノがないのです。どうすれば良いのですか?」
 そこで、私はこう答えました。
「あなたの会社のウリモノが何なのか、再検討しましょう。できれば、それをお客様の側からみたゴリヤクで表現しましょう

●最初は社長の人脈で営業できた相手とはいえ、顧客からみれば何らかのゴリヤクがあったはずです。それがあなたの会社の本質的なウリモノなのです。

マーケティングを成功させる第一のキーワードは、「総合化」と「専門化」。関連製品やサービスや総合化することで顧客満足を高める作戦です。逆に、製品やサービスを特化し、顧客満足を高める作戦もある。名古屋のある印刷会社では何年も前から、「社内報」制作に特化したサービスを展開し、全国から注目を集めています。

●まずは、総合化の道を歩むのか、専門化の道を歩むのかを決めましょう。

第二のキーワードは、「市場」と「ウリモノ」。第一と第二のキーワードを組み合わせて考えると、4つの選択肢が生まれます。

1.「市場」と「ウリモノ」をともに「総合化」する作戦
2.「市場」と「ウリモノ」をともに「専門化」する作戦
3.「市場」を「総合化」し、「ウリモノ」を「専門化」する作戦
4.「市場」を「専門化」し、「ウリモノ」を「総合化」する作戦

●経営コンサルタントを例にとれば、こうなる。

1.とは、あらゆる業界を対象にしたあらゆるコンサル活動
2.とは、特定業界に向けた特定メニューのコンサル活動
3.とは、あらゆる業界に向けた特定メニューのコンサル活動
4.とは、特定業界に向けたあらゆるコンサル活動

●こうして見てくると、冒頭の印刷会社の対応が的外れであることがおわかりでしょう。そして今、成長している会社は、ウリモノの矛先がしっかりとんがっているのです

2007年03月09日(金)更新

コントロール係数<その2>

●前号の続き「コントロール係数」について取り上げます。改めて、「コントロール」可能な出来事と、「コントロール」不可能な出来事とを整理してみましょう。

●まず、「コントロール」という言葉の意味は、"自分の意思で結果を左右できる能力"のことでした。思った通りの場所へボールを投げることができるピッチャーのことを「コントロールがいい」と言いますが、それと同じ意味です。

●一方、起きてしまった出来事を受け入れ、そこから最善の対応を素早くとれる能力のことを「マネジメント」と言う、とも説明しました。

●つまり、経営の仕事とは、「コントロール」と「マネジメント」という2つの力の“和”を高めることでもあるわけです。

◇コントロール可能・・・自分自身とその未来
◇コントロール不可能・・・天候やアクシデント、社会現象、それに、過去
◇中間・・・他人(顧客、上司、部下、家族)や世の中

といったところでしょうか。

●自分が決めた目標をきっちりと達成しようとしたら、未来に対するコントロール係数を高めていかねばなりません。そのためには、粘り強さが必要になります。

●たとえば、営業という仕事を例にして考えてみましょう。目標が未達に終わった営業マンは、達成した営業マンと違ってサボっていたのでしょうか? サボっていた人もいるかも知れませんが、それがすべての理由とは思えません。

●『成功哲学』の著者ナポレオン・ヒルは、「大多数の人間が失敗するのは、失敗した計画に勝る新しい計画をたてるだけの粘り強さに欠けるからである」と語っています。この理論をそのまま当てはめるなら、未達成の営業マンは、よりよい計画作りをする粘り強さに欠けているということになります。

●部下の販売実績が計画を下回ったときには、その原因を尋ねてみましょう。いろいろな返答が返ってくるでしょうが、“自分の中に原因がある”ときちんと受け止めているなら、見込みがあります。もし、そうでなければ、実績が上向く可能性はありません。これこそが、結果をコントロール可能とみているのか、そうでないのかの違いなのです。

●計画未達の営業マンから返ってくる典型的な回答を分析してみましょう。

1.「どの客先も要求が厳しく見積もり負けします」
  これは、売れない理由を景気や他社のせいにしており、自分ではコントロールできない、と表明しているようなものです。そこから脱却して、具体的に自分はどうしたいのかを考えることによって、コントロール係数は上がるでしょう。
  
2.「うちの商品では他社に太刀打ちできません」
  売れない理由は自社製品の競争力のせいとしています。これも、計画未達は自分のコントロール圏外の問題、と言わんばかりです。

3.「今までの売り方が通用しなくなってきました。新しい作戦を考案する必要があります
  計画未達を自分自身もしくは、自部門の問題ととらえています。ここからは、結果をコントロールしようという姿勢が感じられます。
  
●もちろん、うまくいかない原因を頭の中でじっくり考えることも大切ですが、膨大に試してうまくいったものを残すという、エジソンの発明手法も参考になります。

●いずれにしろ、未来に対するあなたのコントロール係数を高めることが目標達成への精度を上げることにつながるわけです。ぜひ、主体的にこのテーマと格闘していきましょう。

2007年03月02日(金)更新

コントロール係数<その1>

●世の中には、自分一人の力で結果が出せることと、一人の力ではどうにもならないことがあります。この二つの分かれ目となるキーワードを、仮に「コントロール係数」と呼ぶことにしましょう。

●「コントロール係数」が100%とはどのようなことかと言うと、自分一人の力によって思い通りに事態を変えられるということです。たとえば、あなたの行動はあなた一人の意志で動かすことができるでしょう。お昼に何を食べるか、夜は何時に就寝するか、明日の朝は何時に起きるか、などはあなたの自由意志で決められますから、「コントロール係数」は100%といえます。

●逆に、あなた一人ではどうにも変えられない状態を「コントロール係数」0%と言います。たとえば、今日の電車が時刻表通り動いているか、お天気はどうか、ドルの為替相場は今後どうなるか、といったことは、あなたの意志や努力ではどうにもなりませんから、「コントロール係数」は0%です。

100%と0%は比較的わかりやすいのですが、問題はその中間です
たとえば、以下の文章の~に「コントロール係数」を当てはめてみてください。
・あなたの部下の~は?
・あなたの伴侶の~は?
・あなたの子どもの~は?
・あなたの会社の今期業績の~は?
・10年後のあなたの会社の~は?

●ところで、経営に関することの大半は、これら「コントロール係数」が1%以上100%未満の間にあると言ってもよいでしょう。
●「一寸先は闇」という言葉がありますが、この言葉の本当の意味は「未来は闇のように暗い」という意味ではなく、「未来は闇の中にあるようにわからない」という意味です。

●未来の会社も未来の私も、「闇」の中にあるのは誰にとっても同じなのですが、濃淡のアミがかかっているようなもので、アミ100%の人は文字どおり真っ暗なのです。ですから先のことは皆目見当がつかないはずです。

●濃淡のアミ50%の人は半分くらいは見えるが半分はまったくわからない人。アミ10%の人はかなりよく見える人ということです。

●「コントロール係数」が高い人とはアミが薄い人なのですが、誰もがアミがかかっているという事実には変わりありません。そして、経営という仕事はこのコントロール係数をいかに高めていくかという勝負ではないかと思うのです。さらに言えば、コントロール不可能な出来事への対処能力をいかに高めるか、ということも経営上の大きな課題です。

●「コントロール」とは反対の意味で使われる言葉に、「マネジメント」があります。マネジメントとは、起きてしまった出来事にどれだけ上手に対応できるか、つまり「状況対応力」のことを指すのです。

●言葉の意味を整理すると、以下のようになります。

・コントロール・・・自分の意思で結果を左右できる能力のこと
・マネジメント・・・起きてしまった出来事を受け入れて、そこから最善策を素早くとる 能力のこと

●そこで提案です。経営者としてまず成すべき事は、「コントロール係数」100%の分野に関心を集中させることです。間違っても、「コントロール係数」0%のことに時間やエネルギーを浪費してはなりません。

●もちろん、部下に対しても、同じように指導しましょう。部下も自分でできることに専念しなければならないのです。

●次号では、私たち自身の生産性を高めることに的を絞って、「コントロール係数」の応用方法について考えていきしょう。

<次号につづく>

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ボードメンバープロフィール

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武沢 信行氏

1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。

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