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2011年05月13日(金)更新

100%のノー

今日は、ちょっとした実話ベースの物語を紹介しましょう。
 
●「あのぉ、お父さん。ちょっといいかしら」
 
リビングで趣味のクラシック音楽を楽しんでいた父・芳夫がヘッドフォンを外す。
 
「ああ、恵子か、どうしたんだい?」
 
今年大学生になる娘の恵子は、ちょっと言いにくそうな表情をしながらも父に近よって話し始めました。
 
●「お父さんね、私も今年から大学生になるので、そろそろウチを出てマンションで生活してみたいの。それって許してもらえるかしら?」
 
まったく予期していなかっただけに、芳夫は面食らいました。
「え~、マンション生活?なんだよ、それ。そんなのダメだよ。ダメに決まってる。何か理由でもあるわけ?大学は家から通っても充分近いでしょう」
 
「うん、家から通えるけど、前から大学生になったら独り住まいするのが夢だったの」
 
「夢といったって恵子、そんなにウチがいやなのか?」
 
●そうした押し問答のあげく、いつもの会話のように結局、折れるのは娘のほうでした。
 
「やっぱりダメかぁ・・・」

恵子は力を落とし、自室に戻りました。
恵子にとって大学生活をマンションで過ごすことが夢とはいえ、経済的にゆとりがないことも知っていたのでこの話はずっと黙っていたのです。
 
「アルバイトしようかしら・・・。でも美術をもっと勉強したくて入った大学なのだからアルバイトする時間がもったいないし」恵子は途方にくれました。
 
●一方、父の芳夫も音楽を止めてバーボンをかたむけながら考え込んでいます。
 
「娘の独り暮らしかぁ。恵子のやつ、相当思いつめた顔をしていたな。きっと、昨日や今日思いついた話じゃなかろう。もっとゆっくり話を聞いてやるべきだったな。でも、いくら話を聞いたところでマンション費用はどうする?それに心配のネタを増やしたくないし」
 
●この段階では、娘の希望に対して父が「NO」を宣告し、話は決裂したままです。
 
でも簡単には諦めきれない恵子は、友人の誘いで「がんばれ!ナイト」」という勉強会に参加し、コンサルタントの武沢先生に相談してみることにしました。
 
事の経緯を理解した武沢は、レターヘッドにペンを走らせました。
 
1.父はなぜ反対していると思うか
 
 
2.どのようにしたら父の反対理由を消し去ることができるか
 
 
と書いてあります。
 
 
●武沢は言います。
 
「アメリカには、『話す前に、相手の靴を履け』ということわざがあります。自己主張するまえに、まず自分の靴を脱ぎ、相手にも靴を脱いでもらい、許可を得てから相手の靴を履かしてもらう。それによって、お互いに深い理解が得られるということです。自分の立場だけに固執していると迷路にはまります。この場合、お父さんの気持ちとして、なぜ反対していると思うか、考えたことはありますか?」
 
恵子は、
「はい、あります。父もサラリーマンとしてがんばっていて尊敬しているのですが、自宅のローンが残っていて私のマンションの賃料を新たに負担するのは大変なのではないかと」
 
「じゃぁ、それを1番の欄に書きましょう」
と武沢は、「マンションの賃料負担が困難」と書きました。
 
●恵子はさらに続けて、
「反対理由は費用だけじゃないと思います。親として娘の独り暮らしが心配なのだと思います」
「ほぉ、それはなぜ」
「生活が乱れたりしないかと」
「生活が乱れるとは、例えばどのようなこと」
「う~ん、食生活が偏ったりとか、夜更かしして睡眠不足になったりとか、男性が遊びに来たりとか・・・」
「じゃあ、それも書こう」
 
●このようにして、次のようなものが完成しました。
 
1.父はなぜ反対していると思うか
  ・マンションの賃料負担が困難
  ・生活の乱れ(食事、睡眠などの健康管理や時間管理、友人と遊
         びすぎて勉学がおろそかになること)
 
2.どのようにしたら父の反対理由を消し去ることができるか
 
  ・マンション賃料は10万円するので、その負担法について父と相
   談する。
   私としては、一年生のうちは特に学業に専念したいので、二年
   になったら家庭教師と音楽のアルバイトで数万円以上稼ぐ。趣
   味の洋服と旅行はしばらく我慢する。図書館利用で本代も浮か
   す。
 
  ・生活の乱れについて
   信頼してもらえるまでの間は、父と母にもマンションの鍵を渡
   し、いつでも飛び入り査察を受け入れる。
   毎日帰宅・就寝報告メールを両親に送る。
   
●恵子は完成したシートを見ながら、明るい笑顔を取り戻していました。
 
「これでもう一度、お父さんにぶつかってみる。私も、二年生になるまで我慢する覚悟ができたし、お父さんとお母さんには決して心配かけないという自信がもてたから。ありがとう、武沢さん。『がんばれ!ナイト』ってすごい会なのですね」
 
恵子は翌日からメルマガ読者になってくれました。
 
●「部長、そろそろホームページをリニューアルしたいのですが」
「ダメだ。今でも有効に使われていないのに。とんでもない」
 
「社長、新しいパソコンを買って欲しいのですが」
「ダメだ、あそこに機械が余っているだろう」
 
などなど、
あなたも時と場合に応じて恵子役や芳夫役を演じることがあるはずです。
家庭や仕事での人間関係は、対立する関係ではないはず。最初は困難に思えた対立的問題も、粘り強く接していくことによって解決の糸口が見つかることが多いのです。
 
「100%のノー」なんてそんなにあるものではありません。

 

2011年04月08日(金)更新

部下に起業家が何人いるか

●成長著しい会社の多くはいつも社内が混乱しています。
 
部下:「部長、また変更ですか?」
部長:「おお、仕様を変更する。すぐに対応してくれ」
部下:「あっちの仕事とどっちが優先ですか?」
部長:「どっちも最優先だ。いつまでにできる?」
部下:「今日中になんとか……」
部長:「悪いが待てない、午前中にやってくれないか」
 
こんな会話が毎日のように起きています。さながら戦場のようなもの。部下にとっても、毎日が未知の仕事ばかりで、過去の前例などなにも頼りになりません。
 
●しかし、停滞している会社では通常、社内はとても静かで秩序だった毎日を送っています。そして深く静かに大企業病に犯されていくのです。
大企業病とは、大企業が陥りやすいからそう名づけられたのですが、中小零細企業でもそれは起こりますし、ベンチャー企業だってそうなる危険性をはらんでいるのです。
 
●それは、秩序を乱されるのが嫌いな人たちが権力を握ったときに生まれる"秩序維持病"のようなものです。
 
壊されるのが嫌いで守るのが大好きな人たちはこう言います。
 
・専務、またやり方を変えるのですか?
・また新しいことをやるのですか?
・前回このようにおっしゃったではありませんか
・もう絶対に変えませんね?
 
そんなとき、「もう絶対に変えないよ」「これが最後だから」などと言ってはなりません。上司がそう言った瞬間から大企業病が始まるのです。
 
●むしろ変革の必要性を説き、変えるのを嫌がる人たちを鼓舞し、リードするのが上司の役目です。優秀な人たちの多くは、秩序を大切にしたがります。そうした人を大切にしなければなりませんが、「何も変えない・何も始めない」のが素晴らしいのではないということも伝える義務があるのです。
 
●ドラッカーはこう言います。
 
「経営はマーケティングとイノベーションに尽きる。そのイノベーションを行うのは人であり、人は組織のなかで動く。したがってイノベーションを行うには、そこに働く人間一人ひとりがいつでも起業家になれる構造が必要である」
(『イノベーションと起業家精神』)
 
あなたの部下に起業家が何人いるかが勝負なのです。
 
●あなたの会社の経営幹部にはこう言ってあげましょう。
 
・サラリーマン同士でつるむなよ。たくさんの経営者や起業家と接触しなさい!
・自分でやりたいことを10以上あげることができるか(もちろん仕事で)?
・3年以内に社長になる計画をもっているか?
・その気があれば、私と組んでパートナー会社を立ち上げないか?
 
そういう働きかけに対して敏感に反応する人が頼もしいのです。
 
・人に言われたことをきちんとこなすか
・上司に気に入られる人間性をもっているか
・報告・連絡・相談がきちんとできるか
 
などはサラリーマンの評価尺度です。
それら以上に大切なことは、依頼主(顧客や上司)が望む成果を上げることができる人なのです。細かい指示をしなくても、望む結果を伝えれば分かってくれる人を登用しましょう。
 
●あなたの部下、特に経営幹部には大いに起業家精神を要求すべし。
 
この二年間で何を立ち上げたか、何を壊したか、を評価基準にしよう。そして今月は何を始め、何をやめるつもりなのか、お互いに明確にしながら仕事を進めていきたいものです。
 

2011年04月01日(金)更新

確認しよう「聖」と「俗」

●空海は高野山を開くにあたり、「結界」というものを設定しました。
「結界」とは、神聖な場所と世俗的な場所を厳しく区別する境界のことを言い、結界内には、修業の妨げになるような世俗的なものは一切が排除されたのです。
高野山を取り囲む尾根道など二箇所に境界線を設けた空海。宗教家にとっては、「聖」と「俗」とをきっちり区分けすることが大切なのでしょう。
 
●芸術家のピカソもこんなことを言っています。
「回教徒が寺院に入るとき靴を脱ぐように、私は仕事中、ドアの外に肉体を置いてくる」。
 
本来なら私たちの職場もそのような場所なのですが、パソコンとインターネットによってゲームも映画もアダルトも友だちとの私用メールも、なんでも一台で済ませられるようになってしまいました。それはある意味、大変便利なのですが生産性や集中力という点で由々しき問題でもあります。
 
●何年か前、ヨーロッパの企業で重役の一人がアダルトサイトにアクセスしていたことが発覚し、辞任に追いやられるという"事件"がありました。
本人にしてみれば、ちょっとした息抜きのつもりなのでしょうが、組織のリーダーが率先して禁止事項を破った代償はあまりに大きかったのです。
 
仕事中の息抜きが悪いのではありません。息抜きの内容です。
 
●オフィスの中には、仕事に関係しないモノは持ち込まないこと。それは新入社員教育で教えることです。すべての私物はロッカーに預け入れるのは当然のこと。問題はパソコンや携帯、スマートフォンなどです。
 
会社で使うパソコンは、
 
・ゲーム類のソフト削除
・インターネットサイトへのアクセス制限
・メール内容の監視(私用メールの禁止)
 
などの徹底が必要でしょう。
 
●人間として器量が大きい人のことを、"清濁あわせのむ"という表現で称賛しますが、「聖」と「俗」はあわせのむことはできないかもしれません。
パソコンは仕事と連絡手段の道具と割り切り、ゲームや映画などは専用機で楽しむのが一番賢明なのでしょう。
 
もういちど、部下のパソコン使用に関する規定を整備しておきましょう。

2011年01月28日(金)更新

人を使う

■新任社長に就任した渡部敏夫(仮名)は、悩んでいました。
父が育て上げた鋳造会社を守ってゆけるのだろうか、と考えはじめると、夜も眠れません。
今年30才になる渡部は、学校卒業と同時に大手工作機械メーカーに就職。昨年、倒れた父の会社に入るまで経理畑一本をあゆんできました。
経営のイロハもわからないし、子どもの頃から人の上に立ってリーダーシップを発揮したことなど一度もありません。

■そんな渡部も、高校生の頃から学校休みの多くを父の鋳物工場でアルバイトしてきたので、鋳物に関する知識や技術は相当もちあわせています。
ですが、親分肌を発揮して会社を大きくしてきた父とは違い、渡部はどちらかというと几帳面で細かいことが気になるタイプ。自分のことを「悩み多き小心者」と思っているのです。

■前社長の父が急逝した今、悩んでいるヒマはありません。来週の月曜日には、"あの"古参社員と二人で会食しなければなりません。
"あの"古参社員とは、自分のことを父と比較して"小僧"呼ばわりしているらしい太田製造部長(55才)のことです。敏夫社長にとって、一番気がかりな存在なのです。

■「息子の敏夫は赤ん坊のころから俺が面倒みてきた」が口ぐせで、「敏夫」と渡部を呼び捨てにするのが直りません。
それどころか、「敏夫に社長はつとまらない。会社を潰すに決まっている。俺もそろそろ転職情報誌のお世話かな」などと工場内で言いふらしているようなのです。

■複数の社員からそれを聞いた渡部。
勇気を振り絞って太田に告げました。「部長、ちょっと二人で話をしませんか。近々、夕食の時間を確保してほしい」と伝えました。それが来週の月曜日なのです。

どんな話をしようか・・・。渡部はまた悩みはじめました。とにかくよく悩みます。

■その夜、敏夫社長が何気なく見ていたDVDに松下幸之助翁が登場し、こんなことを語り始めました。

・・・
私は従業員が40人位になったとき、悪い人が社内に混じるようになって、悩むようになった。ずっと悩んだが、ある時、これは悩んじゃあかんと思うにいたった。
天皇陛下の徳をもってしても日本から悪人はなくならない。悪人を隔離することはしても国から放り出すことはしない。天皇でもそうならば、自分が悪人を放り出すことなんて出来っこない。会社は良い人ばかりでやろうなんて思っちゃイカン。それ以来、人を使うということに私は非常に大胆になった。
・・・

■「国ですら悪い人を追放しないのに、どうして自分の会社から悪い人を追放などできるものか」という松下翁のメッセージに、渡部は、目から鱗が落ちる気分でした。経営の神様が、今の自分に語ってくれているように思えました。
「このDVDは父が見せてくれたのだ・・・」

■ついに月曜日が来ました。
渡部は太田と格闘したり、関係が確執化させるのをやめようと思いました。
本音で太田にぶつかり、これからの彼の協力をお願いしようという素直な気持ちでいたました。そしてこう告げたのです。

「太田さん、小さいころからお世話になってきました。おかげで自分もオヤジの意志をついで社長を任されるときがきました。30年なんてあっという間です。太田さんから見たらいつまでも自分はガキでしょうが、社長らしくなったとあなたから言われるようがんばるので、これからも、いろいろ、応援をよろしくお願いします!」

■新社長に頭を下げられ、酒を勧められた太田はビックリしました。
ひょっとして自分の放言が新社長の耳に入り、クビになるかも知れないと内心おそれていた太田ですが、彼も男です。その後、意気に感じてくれて、新社長を最も支える活躍をしてくれているといいます。天国の父もそんな二人の関係をほほえみながら見てくれていることでしょう。

■人を使うということに悩まない社長はいません。ですが悩んでしまってはいけません。
人使いは大胆にいきたいものです。案ずるよりぶつかる、それが対人関係の基本です。
しかも、上(立場が上の者)から下に降りていくのが鉄則なのです。

2011年01月14日(金)更新

社長と社風

●年明け早々から、寒さが一段と厳しくなっているようです。

年初に、群馬県に出向きました。当初は温泉目的だったのですが高崎市の経営者団体から講演依頼が入ったため、仕事も兼ねることになりました。
高崎に到着し市内散策に出たところ、あまりの強風にくしゃみを連発してしまいました。マツモトキヨシで薬を買ってから思い出しました。ここは上州「からっ風」の本場だったのです。

●上毛三山から吹き下ろす風は想像以上だったのですが、「風」といえば、「風」にまつわる単語が日本にはたくさんあります。

風味、風貌、風格、風習、風俗、風評、風説、校風、家風、社風・・・という具合。
「風」という文字を明鏡国語事典で調べてみると「様子、様式、やり方、しきたり、流儀」というような意味でした。

●社長の場合、一番気になる「風」といえば、やはり「社風」でしょう。

好ましい社風を作っていきたいものですが、大会社と中小企業、はたして社風が強いのはどちらだと思いますか?

少し古い資料ですが、2005年の『中小企業白書』で興味深いデータがあります。従業員規模別に企業風土の形成にどれだけ社長が強い影響を与えたかを調べたものです。

回答は次の三つでした。

A・・代表者の人柄、考え方が影響した社風が表れている
B・・代表者の人柄、考え方とは関係ない社風が表れている
C・・社風のようなものはない

として、調査結果は次のようなものでした。

  従業員数     A    B    C    合計
  20名未満    69.8%    9.2%  21.0%  100.0%
  21名~50名   76.5%  11.7%  11.7%  100.0%
  51名~100名  77.5%  11.2%  11.3%  100.0%
  101名~300名  78.1%  13.1%   8.9%  100.0%
  301名以上~  81.3%  13.4%   5.3%  100.0%

●規模が小さい会社ほど社長の個性が強く表れるように思っていたのですが、実態は逆でした。企業規模が大きいほど代表者の人柄がストレートに社風に表れているのです。視点を変えれば、代表者の個性が強いからこそ大きな会社になったと言えなくもないでしょう。

●社長は「からっ風」ほど強い風を吹かさなくても良いのでしょうが、規模の小さい会社はもっともっと個性を前面に出していきましょう。ご自分の思いを「理念」や「ビジョン」としてカタチにして発表することが肝心だと思います。そのことに遠慮はいりません。

2011年01月07日(金)更新

模倣と独創

●芸事などで、新弟子が基礎を学び、成長し、名人になっていくプロセスを、「守 → 破 → 離」の三段階で語ることがあります。
特に「守」の段階は、建物の基礎にあたる部分として一番重要でしょう。
徹底的に基礎を学び、反復訓練する段階です。ある意味、師匠の物まねに徹する時期でもあります。

●そこで武沢仮説・・「独創は師匠(お手本)の物まねから始まる」

物まねがうまい人とは、それだけ観察力が高い証拠であり、上手にお手本の物まねができる器用さがある人です。
外国語の習得もそれと同じです。小さい子供のほうが耳で聞いたとおりに話しますからネイティブに近い発音ができます。しかし大人は単語のつづりや意味の理解から勉強しますから、日本語脳をつかっての発音になるので、ネイティブには通じにくいものになるのです。

●物まね上手になりましょう。
役者や作家だって一流どころは皆、物まね上手が多いようです。かつて、ダスティン・ホフマンがアカデミーの受賞スピーチでこう語りました。

「ハンフリー・ボガードにあこがれ、ボガードを真似し、ボガードを演じ続けるうちに今日私はダスティン・ホフマンになりました」

●シェークスピアだってそうです。
『オセロー』も『ヴェニスの商人』も『ハムレット』も、その元になる民話や物語を上手にアレンジし、世界に影響を与える作品に仕上げました。
あの『リア王』も元の話は、「レア王とその三人娘、ゴネリル、レーガン、コーデラの実録年代記」です。また、その『リア王』を下敷きして作られた黒沢映画が『乱』だといいます。

●古典から生まれた文学作品も少なくありません。
井原西鶴の「好色一代男」は『源氏物語』のパロディだといいます。芥川龍之介の「鼻」や「芋粥」も『今昔物語』などが下地になっています。

●「発明する方法は一つしかない。それは模倣することだ」とアランが語るように、私たちは何かを模倣することに臆病であってはならないのです。

●模倣したいような会社、
模倣したいような経営者、
模倣したいような売り方、
模倣したいような・・・

模倣すべきものを見つけてくる能力は立派な才能であり、実際それを模倣し、元のもの以上に仕上げることはすでに独創なのです。

2010年12月03日(金)更新

傷ついた枝

●かつて、ホームセンターで薄板を買ってきて手書きの年賀状を作ろうとしたことがあります。
さっそく板を切って葉書サイズにし、墨汁で「謹賀新年」と書いてみたのですが、かすれてうまく書けません。どうしたものかと試行錯誤するうちにある方法を思いつき、成功したことがあります。
それが現場の智慧とでもいうもので、技術の粋を凝らした自動車製造現場でも、ボディの仕上げ部分には人の職人芸が必要だそうです。理論よりもコンピュータよりも人間の方が優れていることがまだまだたくさんあるようです。

●先日、柿の栽培に情熱を注ぐ農家の方からたいへん興味深いお話しをうかがいました。
それは、「美味しい柿の実は傷ついた枝になる」という話です。
ベテラン農家ではそれを知っていて、故意に枝に傷をつけるなどして活用しているというのですが、それがどんな理由によるものかは農家の方もよくわかっていないそうです。

●たぶん、枝が傷ついて弱っているのをみて、根っこや幹が必死になってその枝を救おうと養分を送るからだろう、というのが憶測ですがそれが証明された訳ではありません。
私はその話を聞いて、野菜ビジネスで失敗したユニクロの柳井会長の談話を思い出しました。

「当社の野菜ビジネスは、カネがあり人材もいたから、うまくいかなかった」

さらに、こう続きます。

「カネがない、ヒトがいない、モノがない、チャンスがないことは、事業を成功させる4大条件だと僕は思っています」と。

●柿の実のように、厳しい環境にあることそのものが成功の条件だと考えるようにしましょう。

・「美味しい柿の実は傷ついた枝になる」

    ↓   応用    ↓

・「優秀な人材は困難な部門で育つ」
・「すぐれた事業は過酷な条件下で育つ」
・「逆境がないということが大問題だ」

なにもない過酷な環境だからこそ智慧が出せるのです。

2010年11月29日(月)更新

会社の98%は社長一人の実力

●同じ業界に属し、同じ地区で同じような年齢の社長がいたとしても、企業内容は全然違ってきます。
「うちの業界にはろくな人材が回ってこない」と嘆く赤字会社のA社がある一方で、「社員のおかげで本当に助かっている」と社員を誇る黒字会社のB社があります。

こうした差はなぜ生まれるのでしょうか?

●「組織とは凡庸な人たちを率いて非凡なことをなすところ」と定義した学者がいますが、A社に入社する人材もB社に入社する人材にも、もともとの素質には大した差などありません。
社員の素質を開花させ、本気で目標に立ち向かう戦闘集団にしたのがB社長であり、それができずに、社員の力不足を嘆いているのがA社長なのです。

●ランチェスター経営戦略の竹田陽一氏は、次のように語っておられます。

・・・
従業員6人迄は100%、10人~30人迄は98%、30人~100人迄は96%が、社長1人の実力で決まります。会社は人で決まると言いますが「その人」とは、まぎれもなく「社長自身」なのです。
・・・

●日本に300万社あるといわれる会社のほとんどが従業員100人未満ですから、極端にいえば日本の経済力の大部分が300万人の社長の経営力にかかっていると考えることができるのです。
私が毎日メールマガジンを書いているのもそのためで、孤軍奮闘する中小企業社長を応援することがささやかな私の役割だと思っているのです。

●さて、会社の問題のすべては「社長ひとりの実力」であると考えましょう。そのように受け入れてしまえば、かえって気持ちが楽になります。要するに、自分を変えれば良いということです。社員のせいでもないし、ライバル会社のせいでもないし、親のせい、業界のせい、政治家のせいでもないのです。

●フランスには 「1頭のライオンに率いられた100匹の羊の群れは、1匹の羊に率いられた100頭のライオンの群れに優る」という諺があります。

また、イタリアには「ゴールを征服したのはシーザーに率いられたローマ人であり、たんなるローマ人ではない」という格言があります。

あたなたライオンですか、シーザーですか?
それとも、羊ですか、単なるローマ人ですか?

あなたがライオンやシーザーになるための目標や計画を明確にしておきましょう。

2010年11月05日(金)更新

新卒をとる

●「社長、こう言ってはなんだが、もっと三国志や水滸伝を読んで、リーダーの人心掌握のあり方を勉強したほうが良い」と捨てゼリフを残し、第一号社員は会社を辞めました。

●第二号社員は、採用が決まってから一週間、毎朝遅刻するので注意したら、「5分や10分のことで朝からガミガミ言われたくない。僕は、昨日もおとといも残業しているじゃないですか。残業時間から遅刻の分数を差し引けば良いでしょ!」と、手にしていた競馬新聞を机にたたきつけながら逆ギレしました。

その日の昼の休憩から、彼は会社に戻ることはありませんでした。
彼は勤務中にも競馬サイトをチェックしていたのを社長は知っていましたが、気分良く働いてもらうために、注意せずにいたのです。

●この社長は当時、「社員が宝ものだと思える日が本当に来るのだろうか?」と思ったそうです。

あれから8年、この社長の会社は株式公開企業となり隆盛を誇っています。

●そして今、こう語ります。
「社員はまちがいなく会社の宝もの、財産です。寸分も揺るがず、そうやって言い切れます。でも正直いって、そう言えるようになったのは、2年前くらいからです」とも。

●人は人を知る。類は友を呼ぶ。逆も真なり。釈迦やキリストに石を投げる者がいたように、異質な次元にいる人間に対しては、人は評価を見誤ります。

●別のある社長は、「採用が好きなんだ。要員計画に基づいて人を集めているのではなくて、ただ優秀な人を集めるのが僕の趣味みたいなものなんだ」と笑いながら語ります。
プロ野球の新人選手の活躍同様、ビジネス分野でも優秀な人材は初年度から即戦力の働きをします。

●新卒の採用はいつ始めるか。正解はありません。必要だなと思ったらすぐに取りかかるのが良いでしょう。なぜなら、最初の年からトップ水準がとれるとは限りません。むしろ、こちら側の経験不足のために、「並」「並以下」を「上」と勘違いしてしまうことだってあるのです。だからこそ、早めにたくさんの経験をしておいた方がよいのです。

●新卒学生を定期採用するということを特別なことのように思ってはなりません。ごく普通のことですし、事実、学生は集まります。もし学生が集まってこないような会社だとしたら、お客も集まってきていないはずです。

●新卒の定期採用を決断するまえに、"世間並み企業"の条件を整備してからにしようと思っても、うまくいきません。

たとえば、
・就業規則や賃金規定をつくってから
・社会保険完備してから
・先輩社員をある程度教育してから
・パソコンや机など、仕事環境を整備してから
・人件費予算を組んでから
・もっと儲かるようになってから
・・・etc.

むしろ逆です。"世間並み企業"をつくるために、新卒をとるのです。

今すぐコストの値打ちな新卒採用応援会社をみつけ、担当者を呼んで相談しましょう。すぐに申し込みして、それから逆算でこうした諸条件を整えていけばよいのです。

2010年08月13日(金)更新

辞令を自分で書く

●甲子園で全国高校野球大会が始まりました。この大会からも将来、プロ野球で活躍しファンに夢を与える選手が出てくるのでしょう。プロの世界で活躍し続けるためには、素質の良さに加えて、それに磨きをかけるための練習が好きな選手でないと通用しません。
そこを見抜くのもスカウトマンの腕のみせどころ。


●ファスナー大手・YKKの創業者・吉田忠雄氏(1908~1993)は、晩年になってからも「私は人を見る目がない」と周囲に語っていました。なぜなら、お世話になった方から推薦状までもらって鳴り物入りで入社した優秀な学生がパッとしないままサラリーマン人生を終えていくのを何人も見てきたからだそうです。その反対に、入社当時はまったく目立たなかった若者が、やがてグイグイと頭角を現し会社の大黒柱になっていく。そうした実例を何度も見てきた吉田氏は、「私は人を見る目がない」というのです。


●たしかに人の評価ほどあてにならないものはなく、吉田氏は一般的な人事考課制度にも疑問をもっていたほど、人が人を評価することはあてにならないと思っていたそうです。
ですから、相手がまだ若くて未成熟な段階で「君こそ将来の役員だ」とか、「君に将来社長をまかせたい」などと甘いことを言うのは危険なことです。


●辞令は人事部がつくるものではなく、「辞令は自分で書くものだ」とも語る吉田氏。
YKKでも、自ら「ロンドン支店へ行かせてほしい」と積極的にアピールしてくるような人材は、たとえ能力が70しかなくても空きポストが出たらロンドンに行かせるようにしてきたそうです。仮に能力が100あっても、渋々ロンドンに行くようでは大した仕事をしてくれないというのです。サラリーマンも自分の辞令は自分で書きなさいということなのでしょう。


●プロ野球選手でもサラリーマンでも、持って生まれた能力や素質を超えるためには、情熱や工夫や知恵が必要です。それさえあれば、いくらでも自分の辞令を自分で書くことができるのです。
あなたは今、どんな辞令を自分のために書きますか?
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ボードメンバープロフィール

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武沢 信行氏

1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。

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