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2006年08月07日(月)更新

利益とは何か

●お客様にゴリヤクを提供し、社員の物心両面の幸せを実現しようという経営者にとって、大切なものは「利益」である

●なぜなら、お客様に対してより良いゴリヤクを提供していくためには、社員を教育してサービス水準を高めたり、新たな設備投資をしたりする必要がある。その原資は資金であり、資金調達のための大きな呼び水が「利益」なのだ。

●また、従業員の幸せを心から願う以上、一生の職場たるにふさわしい雇用条件や待遇の実現など、働きがいと誇りがもてる環境を作っていく必要がある。その原資もやっぱり「利益」なのだ。

●では、「利益とはいったい何なのだろう」か。たまには、まじめに考えてみたい。

●まず、私の考えを述べてみたい。

 1.利益とは、会社全体の社会に対するお役立ちの結果であり、お客様や市場がくれた通信簿である
 2.利益とは、単なる儲けではなく、お客様や従業員に対して今以上に喜んでいただくための唯一の資金源である
 3.利益を内部留保していくことによって、会社には安全性と柔軟性が増し、社員には新たな仕事の機会がもたらされることになる

 つまり、利益とは最終的な儲けの金額を指すのではなく、会社の存続と従業員の豊かな人生を実現するための「必要経費」なのである。

●これが模範解答という意味ではない。ご自分なりの回答で構わない。いずれにせよ、こうした利益観をじっくりと従業員に教え、対話をして理解を深めることが重要である。

●ある会社の営業部長某氏が、営業会議でこんな発言をしているのを聞いたことがある。

「先月までの上半期で利益目標は未達成ですし、前年の半分しか利益は出ていません。しかしながら、いまだに半期で1,000万円の儲けがあるわけですから、あわてる必要はないかと思います」

 私は唖然とした。残念だがこの部長氏、利益に対する理解が不十分だ。利益の半分が税金に取られ、その残りから借金返済の元金や株主への配当、役員賞与を払い、その残りだけが会社に蓄積されるという事実を知らないのだろうか。1,000万円の「儲け」では銀行返済さえままならない可能性だってあるのだ。

●もう一度申し上げる。「利益がなぜ、いくら必要なのか」「利益目標の達成がどれだけ大切なことなのか」、社員に対して真剣に教え込んであげてほしい。あなた自身の言葉で

2006年08月03日(木)更新

社長は黙って・・・

●「燕雀(えんじゃく)いずくんぞ鴻鵠(こうこく)の志を知らんや」ということばがあります。出典は、中国の古典『史記』で、秦の時代の英雄・陳渉のことばだそうです。あの坂本竜馬も、この言葉を好んで使っていたといいます。

●燕雀(えんじゃく)とは、スズメやツバメのこと。鴻鵠(こうこく)とは、おおとりと、くぐい、いずれも大きな鳥のこと。その意味するところは、小人物がどうして大人物の志を知ることができようぞ、というものです。

●竜馬には、こうした自らを鼓舞することばが多く残されています。たとえば、「世の人は、我をなんともいわば言え、我がなす事は我のみぞ知る」もそうです。小物にはわからない大物の志というものがあるのですね。

●経営者という職業も、なにかと周囲から理解されないことが多いものです。たとえば、経営者の会合などに顔をだすと、ときどき「家庭をかえりみずに仕事に明け暮れて、家族から愛想をつかされています」と頭をかく経営者がおられます。たしかに、「家庭すら守れずに会社を守れるのか!」というヤジが飛んできそうですが、私はこうしたヤジにくじけてはならないと思います。

●たとえ、家庭における人間関係がうまくいっていなかったとしても、従業員や顧客の幸せに貢献しようと一心不乱にがんばっておられる真摯な経営者だってたくさんいるのです。「より大きな愛」をもった経営者だからこそなせるわざではないでしょうか。自分のためでも家族のためでもなく、ただひたすら良い会社を作るため、良い社会を作るために真摯に働いている経営者って、鴻鵠(こうこく)そのものですね。

●経営者はもうひとつ、押さえておかねばならないことがあります。それは言葉ではなく、結果で評価されるという一面です。しかも一年とか二年という短期スパンでも結果を求められる存在だということです。そのあたりが昔の志士や今の政治家と異なる点です。自分の理念も理想も主義主張もすべては決算書に表れる、という覚悟も、経営者には必要なのです。

●あなたの事業の目的は何か、志は何かということについて百人百様の考え方があると思いますが、あなたがどのような経営者だったかは、「男は黙ってサッポロビール」(古い宣伝文句)ならぬ「社長は黙って決算書」なのです。

●鴻鵠の志と決算書の両方で勝負できる経営者になりましょう!

2006年07月19日(水)更新

非エリートの戦略

●大手建設会社のA社長は、会社設立時に《非エリートがエリートに勝つ》という戦略を打ち立てたそうです。そして、真っ先に社員に誇りを植え付けるための取り組みをはじめました。

●なにしろ会社を作ったばかりなので知名度も実績もなく、非エリートの社員しか入社してきません。当然、自信や誇りをもった人よりも劣等感をもった人のほうがたくさん入社してきます。そんな条件のもと、社員に誇りを植えつけるにはどうした良いのか、A社長は真剣に考えました。

●そして、まっさきに取り組んだのは「時間を守る」というテーマでした。「これなら非エリートでもできる。才能はいらない。簡単ではないが、だれでも心がけ次第で時間は守れる」と思い立ち、時間厳守を徹底をしました。

●それから何か月かたったある日、A社が受注した物件の施工会議がありました。当然、全員が時間厳守です。そんななか、ある施工店の社長が遅れて到着してきました。A社長は、烈火の如く怒りました。
「うちの社員は1日に何件もの訪問や打合せをこなしながらも、全員がこうして時間を守っている。どうしてお宅が時間を守れないのか」

●そして、その施工店社長を会議の間、立たせたままにしたそうです。カリスマ社長ならではのエピソードですね。

●ここで注目したいのは、外部の人の前で社員を誉めるということ。しかも、時間を守るという具体的事実で誉められると、社員はますます守ろうとするものです。こうした達成感や義務感が、やがて使命感へと高まっていくのではないでしょうか。
「うちの会社は世間のどんな会社よりも時間を守っている」という事実が、会社の誇りや自分自身の誇りにつながっていくのです。

●時間を守るということが浸透したら、次のステップへ進みましょう。




●たとえば、「うちの会社では、お客様との約束をすべて紙に書く」という新たな誇りづくり(約束事づくり)に着手するのです。

●こうした「当たり前だがなかなか徹底できない」というテーマに目をつけて、それを徹底させることによって、自己イメージや自社イメージを高めていくという戦略は、どの企業でも使えます。

●私自身も40才で経営コンサルタントで独立したとき、全国・全世界から必要とされる経営コンサルタントになるという夢を掲げましたが、現実的には会社所在地(愛知県名古屋市)周辺から一歩も外へ出ることができませんでした。私の理念やビジョンは、現実の前で上すべりしていたように思います。

●しかし、2000年8月に意を決して、「メールマガジンを毎日出そう! 読者が必要としてくれるかぎり、メルマガは欠かさず発行しよう!」と動き始めました。

●これは自分に課した義務でした。こだわりというべきかも知れません。このように、背伸びしてでも続けられる義務感をもてたことは幸せでした。文字どおり、自己イメージ向上に一役買ったからです。

●非エリートが何かの分野で頭角をあらわし、エリートを打ち負かすようになるには、小さな約束を自分に課してそれをクリアし続けて、自信を深めていくことが大切なのではないでしょうか。

2006年07月14日(金)更新

リーダーの4種類の力

●「世界の社長1,000人に聞いた、理想的なリーダー像はだれ?」なんて特集があると楽しそうですね。

●理想のリーダー像は「ところ変われば・・・」ではないかと思うのです。たとえば、ヨーロッパではナポレオンやシーザー、英国の騎士(ナイト)などが上位にくるでしょう。アメリカでは強さとタフさの象徴のような人物が、日本では信長、秀吉、家康といった戦国の英傑に人気が集まることでしょう。

●一口に戦国の英傑といっても、さまざまなタイプが存在します。上杉謙信はたとえ自らが単騎でも敵の陣地に乗り込んで攻撃をしかけるタイプですし、武田信玄は陣地最後尾で軍配を振るうのみ、というタイプです。まさしく両極にあるリーダー像です。これは、どちらが正しいかというより、どちらが好きかという好みの問題でもあります。

●リーダーシップに関する専門書によれば、リーダーシップとは、対人影響力のことであり、それは4種類の力から生じるものだといいます。あなたのリーダーシップを強化するヒントがここに隠されていると思いますので、参考のためにご紹介しましょう。

リーダーの4種類の力
1.賞罰を与える力
2.正当性の力
3.同一化の力
4.権威の力

●「賞罰を与える力」とは、年収や役職、権限などを与える・減らせる力を言います。
社長であればこの力は絶大でしょう。また管理職でも、部下の収入や出世に対して大きな権限をもつ場合には、この力が強いことになります。

●「正当性の力」とは、部下を心から納得させる力を言います。仮にそれが部下にとって嫌な要求であったとしても「なるほど、そういう理由ならやむを得ない」と納得させることができれば、一生懸命やってくれるものです。そうした力を行使できるのが「正当性の力」といいます。



●「同一化の力」とは、部下と一心同体のつながりがあって、あの社長のためなら無理してでもやろうぜ、と思わせるような人間的魅力のことをいいます。同じ釜の飯を食うという表現がありますが、いっしょに苦労をともにし、時には食事したり酒を酌み交わしながら本音で交流し、太い信頼関係をつくっていくなかで生まれるものだと思います。

●「権威の力」とは、専門的な知識や技術、実績などを背景に、誰もが認めざるを得ない存在であることです。強運をもっているとか、先見性があるなど、常人では計り知れないカリスマ性をもつ人は、この力を存分に発揮していると言えましょう。

●あなたがどのようなリーダー像を目指すかは自由ですが、4種類の力それぞれを自己採点し、めざすリーダー像に近づくために何をすべきかを決めましょう。

●ただし、、これだけは断言できます。天性の“名リーダー”という人はいない。すべて本人の後天的な努力によって培われていくものだと言うことです。

2006年07月03日(月)更新

彫りながら考える

●昨年、フィレンツェのアカデミア美術館で初めて「ダビデ像」(ミケランジェロの代表作)を見たとき、鳥肌がたつ思いをしました。写真撮影禁止でしたので、市庁舎前にあるレプリカ像を撮影したものがこれです。
 その大きさと迫力に圧倒されそうになっただけでなく、何だか後光が差しているように見えました。

ダビデ

●美術館の廊下の端からダビデ像の立っているところまで数十メートルありますが、その廊下の両側に、未完成ながらミケランジェロの彫刻作品が並べられています。それらの作品を見て私は「はっ!」としたのを覚えています。それらの未完成作品は、ちょうど子供の出産みたく、大理石の中から作品が今にも生まれ落ちそうになっているように見えたのです。

●鎌倉時代の仏師・運慶の作品も、木を彫って作品を作ったというよりは、木の中に隠れている作品を彫りだしてあげたようだと評されています。大理石のミケランジェロ、木の運慶、東西の天才に共通する仕事術なのかもしれません。

●では、会社経営を彫刻に例えるならばどうなるのでしょう。ミケランジェロや運慶の
ように、彫る前から中に埋まった完成像が見えているような会社経営なら楽しいでしょうね。しかし現実的には、"彫りながら考える"という経営に軍配があがるように私は思います。

●「戦略は前もって計画され、書式に記入できるもの」というのは、環境がそれほど大きく変化しない前提で成り立つもののようです。『ビジョナリーカンパニー』(日経B
P刊)では、「崩れた神話」と題して私たちが無意識にもっている常識が、実態とはか
け離れていることを指摘しています。その中に次のようなことが書かれているのです。

神話1.すばらしい会社をはじめるには、すばらしい事業構想か画期的製品が必要である。
神話2.大きく成長している企業は、綿密で複雑な戦略を立てて、最善の動きをとる。
 この2項目はいずれも「現実的ではない」という指摘なのです

●今でこそ世界を代表するような企業になったところでも、初期の段階では実験や試行錯誤、臨機応変、あるいは偶然によって生まれたものが少なくないというのです。むしろ、「大量のものを試し、うまくいったものを残す」というドロナワ的な方針の勝利だともいうのです。

●誤解しないでいただきたいのは、戦略も目標も計画も必要ないという意味ではありません。むしろ緩やか戦略や目標をもち、あとは行動しながら考えて変更を加えていくという程度の方が、実際上は有効だという意味です。

●時々、勘定科目ごとに円単位で経費予算をたて、円単位で毎日の実績をチェックしているような会社がありますが、それが効果的だったのは環境が大きく変化しない時代です。今はあらゆる業界が乱世です。

●アメリカには「戦略クラフティング(工芸)」という単語があります。ちょうど粘土
をこねながら造形物を作るようなものに似ているからこうしたネーミングが生まれたのでしょう。会社経営は、ミケランジェロや運慶のような天才を必要とせず、彫りながら考える、考えながら彫るという非・天才のやり方に勝ち目があると私は思うのです。

●大切なことは、定期的に立ち止まって考えることと、必要な軌道修正を行い続けることなのです。

2006年06月27日(火)更新

爆弾とミサイル

●ワールドカップサッカードイツ大会で日本は惨敗した。あらためて世界との差をまざまざと見せつけられた思いだ。日本が初めてW杯に出場できた1998年のフランス大会では、一次リーグ3連敗したが、今回の方が事前の期待が大きかっただけに、敗北による挫折感が強いように思う。

●書店の自己啓発のコーナーに行くと、「心に描いた夢は必ず実現する」というような教えを書いた本が多い。もしその通りだとすれば、日本代表のジーコ監督や選手諸君は何を心に描いたのだろう。

●達成する人の数に限りがあるような目標(総理大臣になるとか世界一になるなど)の場合は描いても実現しないことの方が多いのはたしか。でも、自分の努力次第でどうにかなるテーマ、たとえば「減量する」とか「今日中にこの原稿を仕上げる」というような課題についても、達成できる時とできない時があるのは、なぜだろう

●「事業計画を作ってもその通りにならないから、作るのをやめました」という社長がいるが、なぜ事業計画を作ってもその通りにならなかったのかを考えてみる必要があるのだ。事業計画を達成できなかったということは、
計画通り実行したのだが、うまくいかなかった
計画通り実行しなかったので、うまくいかなかった
 のどちらなのだろう。

●「やってみたのだが、うまくいかなかった」というのならやり方を変えねばならないということだし、「事情があってやれなかった(やらなかった)」というのなら、どのようにしたらやれるのかを率直に考えてみるべきだろう。どちらにしても、大切な目標をいつまでも未達成で放置しておくのは精神衛生上良くない。

●私は、未達成の目標の多くは「爆弾型」であり、達成する目標の多くは「ミサイル型」だと思っている。物騒な名前を付けたが、これには深い意味がある。
●爆撃機などに積まれた爆弾は目的地の上空で投下され、地上で爆発する。目標物が動かない建物などの場合は爆弾が有効だろう。爆弾投下は、こちらが速いスピードで動く飛行機で、しかも風の影響もあるという障害があるにもかかわらず、訓練さえ積めば、かなりの精度で当たるようになるらしい。

●だが、問題は、対象物が肉眼で見えない時や動く時はどうするか、である。

●そこでミサイルというものが誕生した。ミサイルには目標を追求する装置が付いているために、対象物が動いてもそれに合わせてこちらも移動する。パトリオット(迎撃)ミサイルに落とされないかぎり、必ず当たるようにできているのがミサイルだ。

●あなたの会社で投下する目標は、「爆弾型」か「ミサイル型」か、どっちだろう。会社経営とは、爆弾を落とすことではなくミサイルの機能を働かせることだ。なぜならば、経営環境は刻々と変化する。獲物は動いているのだ。したがって、期首に作った目標や計画のままではうまくいかなくなることが多いのだ。

●だからこそ、ミサイルになろう。あなたの会社にとってミサイルの機能を果たすようなシステムとは何だろう。まさしく「目標到達システム」とでも呼べるような強力なミサイルを取り付けようではないか。

2006年06月19日(月)更新

中国の経営者(その2)

<前号に続き、中国山東省の青島(チンタオ)で中国人経営者数十人を集めて講演会を行ったときの話を続けます。>

●私は講演の最後に、「質問や意見はありませんか?」と聴衆に水を向けました。すると、半分くらいの人が挙手しました。7年前の苦い思い出(前回のブログ参照)があるだけに、少々ドキドキしながら彼らの質問を待ちます。

●最初の質問者は30代半ばの男性経営者で、済南市にある中堅ホテルのオーナーでした。

「私の会社のスタッフは、あまり長期間定着してくれません。戦力になってきたなぁと
思うころには転職していってしまいます。引き抜かれることもあります。日本には、ソニーや松下のように会社と社員が家族的なつながりをもって、長期間働いてくれるような関係を作っている会社が多いと聞いています。そのために経営者がすべきことは何でしょうか」

●いきなりの難問でした。本題から離れるといけないので、ここでは質疑応答のくわしいやりとりをご紹介しませんが、この質問に端を発して、次から次へレベルの高い質問が飛んできます

・「良い経営理念は掲げたいが、それはどのようにしたら作れるのか」
・「経営方針を社内に徹底させるために、どのようなことをすればよいか」
・「採用面接で、優秀な人材とそうでない人材を見抜くコツはあるか」
・「社長(総経理)として、一番大切な役割は何か」

●私と聴衆の間に通訳が入るわけですから、一つの質問を終えるのに最低10分はかかりました。ですから質疑応答だけで1時間以上もかかったのですが、こうした真剣なやりとりを通して私は、「中国はこわい国になる」と思ったのです。
●ちょっと前までは「会社経営=金儲け」という単純な発想しかもっていなかった中国人経営者たち。ところが、彼らの多くは今、本当の会社経営者として成長してきました。なぜ彼ら中国人経営者は急速に経営力をつけてきたかを私なりに考えてみました。二つ原因があるように思います。一つは「失敗体験」、もう一つは彼らの「学習環境」です。

●かつて鄧小平が「金儲けは悪いことではない」と語り、一攫千金を夢みて都市部に出てきて事業を始める若者が急増しました。しかしその多くは、「会社経営=商売=金儲け」、「金持ち=経営上手」という短絡的な損得勘定だけを基準に会社経営をしていたのでしょう。そこには長期的な視点や善悪、信用、信頼という発想が欠けていたのです。

●しかしあれから時間がたちました。彼らも進化しているのです。猛スピードで学習し
ているのです。自分たちの考え方ややり方の限界を感じたのでしょう。「会社経営は金儲けだけではないぞ」と気づき始め、儒教の精神を経営に活かす経営者のことを「儒商」とよび、尊敬するようになってきたのです。私たちにとってこの変化は見逃せません。

●つまりは、「ダマされるな」「ひどい目にあう」という、私たちの中になる中国観を修正すべきなのです。

●彼らの学習環境についてですが、読書人口や読書数はまだまだ日本より見劣りがします。しかし、中国人が自由に入手できる情報の質と量は急増しました。一定規模以上の街になると市内の中心地には書城(しょじょう)と呼ばれるデパートのように大きな書店があります。日本の大型店と比べても規模的にまったくひけをとりません。しかも、そこには多数の客が押し寄せ、新しい知識や情報を入手しています。

●共産党支配の社会主義国ながら、中国でも比較的オープンに世界の最新知識や情報が手に入るようになっているのです。ドラッカーの本もジャック・ウエルチの本も、そして、大前研一の本も読めるようになっているのです。

●失敗体験に懲り、学習意欲をもった中国の若手経営者が真に効果的な学習を始めたとき、中国は私たちにとって信頼できる強力なパートナーとなるのか、それとも恐るべき難敵となるのか、それを決めるのは、ほかならぬ「あなた」なのです。

2006年06月08日(木)更新

中国の経営者(その1)

●今から10年ほど前の中国での話です。経営コンサルタントとして私は、顧問先のA社長の商談に同行するため、初めて中国を訪れました。連日、過密なスケジュールをこなし、最終日前夜の食事会のことです。この夜は、A社長と比較的親しくしている取引先企業の経営者ばかりを10人ほどを招いての会食で、出席者はもちろん全員が中国人です。

●自己紹介で私は若干、社交辞令もまじえてこうあいさつしました。
「私は日本で経営コンサルタントをやっています。子供のころから三国志や水滸伝を読んできて、中国には特別な思い入れがありますし、なにより中華料理がおいしい。そこで、将来は中国でもコンサルティング活動ができれば良いなぁと思っています。どうぞよろしく!」

●すると彼らがザワザワと何やら隣同士で囁きあうではありませんか。てっきり、私のスピーチの評判が良かったのだろうと思って通訳の顔をみると、彼の顔が曇っているのです。
「あのぉ、彼らは何を話しているのですか?」
 と私が尋ねると、通訳は言いづらそうな表情でこう言いました。

●「日本の経営コンサルタントが自分たちに何を教えてくれようとしているのだろう?むしろ自分たちの方が、このセンセイに中国でのビジネスのやり方とか儲け方を教えてあげるのが筋じゃないのかい
 などと私の悪口を言っているというのです。私は一気に興ざめしました。その後、会食で何を飲んだか、何を食べたか、まったく覚えていません。そして、内心で固く誓いました。
こんな国、二度と来るものか!」




●それから7年ほど経過した2003年のこと。ある日突然、中国人経営者から日本語でメールが届きました。彼は私のメールマガジンの読者で、青島(チンタオ)で貿易会社を経営しているといいます。そんな彼が、私に講演の打診をしてきたのです。理由を尋ねると、「がんばれ社長!」メルマガのおかげで彼の会社がグングン成長しており、青島の経営者仲間を集めるので2時間ほど講演を頼みたいということでした。

●私の心は動きました。なにしろ、美しいと評判がある青島へはいつか行ってみたいと思っていたからです。しかし、そのメールを無視しました。
「こんな国、二度と来るものか」
 と誓ったあの日のことを思い出してしまったからです。
しかし彼は熱心でした。一度や二度の無視ではめげません。さすが有名な「三顧の礼」の国だと感心もしました。

●半年後、私は青島で講演していたのです。数十名の中国人経営社長者が集まり、彼の逐次通訳によって私のメッセージを彼らに伝えたのです。
もし以前のように、
「日本のコンサルタントが我々に何を教えてくれるというの?」
 という態度の経営者がいたら、即刻ホテルに戻るつもりでいました。

●でも彼らの聞く姿勢は、以前のそうした経営者とは全然違っていました。私が変わったのか、それとも彼らが変わったのか? とにもかくにも講演が終わりました。私が、
「質問や意見はありませんか?」
 と聴衆に水を向けると、なんと半分くらいの人が挙手しました
。少々ドキドキし
ながら彼らの質問を聞きました。私は彼らから発せられたその質問内容に驚かされることになるのです。

<続きは次号で>

2006年06月02日(金)更新

いよいよスタートします!

■はじめに

みなさん、こんにちは! 武沢と申します。
「有限会社がんばれ社長」というコンサルティング会社の社長をやっていますが、銀行の窓口で「がんばれ社長さ~ん」などと呼ばれると、周囲のお客がみんな私の方を見ます。クスッと笑う人だっています。

どうやら世間ではユニークな会社名みたいなのですが、決してウケ狙いで決めた社名ではありません。実はこの名前、私が6年前(西暦2000年)の夏から発行しているメールマガジンのタイトルなのです。

『がんばれ社長!今日のポイント』というタイトルのメルマガを発行していて、読者数がかなり増えてきたので、社名まで「がんばれ社長!」にしてしまったというのが真相です。

私の願いは日本の中小企業経営者を応援し、元気になっていただくこと。「がんばれ~、ガンバレ!」と応援するサポーターでもありますが、時には、がんばり方もお教えできるコンサルタントの仕事もします。

日本実業出版社さんともメールマガジンを通して出逢い、おつき合いさせていただくようになりました。

この『経営者会報ブログ・アドバイザリ・ボード』でも「社長の学校・事始め」というテーマで経営者のみなさんを応援するコラムを書いてゆきたいと思います。

内容は種々雑多なものになると思いますが、ブログですので、、みなさまからコメントや質問などを頂戴しながら、なるべく楽しく、かつ長く続けられたらよいなぁ、と思っています。


■社長の学校・事始め

第一講座:「聖と俗」

●たしかヨーロッパの企業だったか、重役の一人が仕事中にインターネットのアダルトサイトにアクセスしていたことが発覚し、辞任に追いやられるという"事件"がありました。きっと本人にしてみれば、ちょっとした息抜きのつもりだったのでしょう。しかし、組織のリーダーが率先してルール違反をした代償はあまりに大きかったようで、高額の役員報酬もフイにしてしまいました。

●仕事中の息抜きが悪いのではなく、ルール違反がとがめられたということでしょう。しかし、私はもっと深い意味があるように思えます。だってルール違反するたびに役員が更迭されていては、誰も役員がいなくなってしまいかねません。むしろルール違反の中身が問題です。それは、「聖」(職場)と「俗」(アダルト)の混合が良くないということではないでしょうか
●「回教徒が寺院に入るとき靴を脱ぐように、私は仕事中、ドアの外に肉体を置いてくる」と語ったのは、かのピカソです。中国から日本に仏教を持ち込んだ僧侶のひとり「空海」が高野山を修業の場とするにあたり、「結界」という名の境界線を設定しました。「結界」内には女人が入ることが許されず、ほかにも修業の妨げになるような世俗的なものは一切が持ち込み不可でした。

●このように、古今東西において「聖」と「俗」を区分けすることの大切さが説かれているのです。それは、宗教や芸術だけの話ではなく、ビジネスでも同様のはず。オフィスの中には、仕事に関係しないモノは持ち込まないこと。

●最近では、パソコンの中味も問われます。仕事で使うパソコンにも、何らかの決まりが必要な時代になってきました。多くの企業では、すでに次のようなことが実行されていますが、今後、こうした制約はますます必要になってくるでしょう。

・ゲーム類のソフト削除
・インターネットサイトへのアクセス制限
・メール内容の監視(私用メールの禁止)
・・・etc.

●パソコンは、ビジネスやコミュニケーションの生産性を上げるためのもの。ゲームマシンやDVDプレイヤーにも早変わりする存在だけに、正しい使用法を守らないと、かえって生産性を落とすツールになりかねません。会社としてパソコン使用に関する何らかのルールを作ることや、その管理・監査が必要だと思うのです。

●まずは、経営者であるあなた自身のパソコンを「聖」なるマシンとしてキープすることを誓いましょう。
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ボードメンバープロフィール

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武沢 信行氏

1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。

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