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2011年06月17日(金)更新

目指せ! 辛勝

●今年の日本ダービーはオルフェーヴルが優勝し、皐月賞とあわせて二冠に輝きました。
秋の菊花賞とあわせて三冠馬の夢がひろがり競馬ファンの気持ちは早くも秋に向かっているのかもしれません。
 
●私は馬券を買いませんが、G1レースの中でも大きいレースはテレビ放送をチェックします。たくさんの馬をみていて分かることは、本当に強い馬はかなり多彩な勝ちパターンを持っているということ。たとえば、圧勝したかとおもうと次のレースでは辛勝したりします。早めに仕掛けて勝ったり、ギリギリまで我慢して後方一気に追い込んで勝ってみたりもします。内枠で勝ったり外枠でも勝ったり、短距離で勝ったり長距離で勝ったり。
要するに特定の勝ちパターンにこだわらないのが本当に強い馬の条件なのかもしれません。
 
日本ダービーでの勝ち方を見ていて、オフフェーヴルもそんな馬になる可能性があります。
 
●「勝ち方」といえば、かつて私は山梨に旅行した際、こんな石碑をみつけました。
 
その石碑は、「武田信玄公訓言」と題されていました。
 
・・・
凡そ、軍勝五分をもって上となし、七分を中とし、十分をもって下と為す。その故は、五分は励を生し、七分は怠を生し、十分は驕を生するが故、たとえ戦に十分の勝を得るとも驕を生すれば次には必ず敗るるものなり。すべて戦に限らず世の中のこと、其の心がけ肝要奈利。
(山梨県甲州市塩山「恵林寺」の石碑より抜き書き)
・・・
 
●軍勢は敵方と五分五分が良いというのです。信玄公のこの言葉をみつけたとき、最初はエッ?と疑問を感じたものです。豊臣秀吉の場合は、いつも敵の二倍の勢力を確保して
"もう、これで負けない"と思うようにしてから戦に挑んだ、と聞いていたからです。
 
●資金があり、人材もある。そんな会社は敵の2倍の兵力を投入し物量作戦で勝利できるのは理屈で分かります。しかし現実は、そんな余裕がないことのほうが多いでしょう。特に中小企業はいつもギリギリの人材と資金のなかで経営しています。
 
●そんな時には、信玄公の教えのほうが適切なのかもしれません。
 
「ギリギリ粘って勝った」とか、「達成できるかどうか分からない目標に挑んでどうにか達成できた」というような経験が実力アップにつながり、チームに勢いをつけるのです。
 
 

2011年06月10日(金)更新

ちょいワルと日々好日

●ある夕食会で隣にすわった若い経営者に「理想とする経営者像」をたずねてみました。
 
すると彼は、「う~ん、そうですね。ちょい不良(わる)オヤジになりたいです」という答えが返ってきました。
 
「エッ?」と聞き返す私に向かって、もう一度彼は、「ちょい不良オヤジって知りませんか? 例えば、タレントのジローラモとか中尾彬なんかがその例だと思うのですが、不良中年という感じで格好良いですよね」
 
「それが理想像なの?」
 
「はい、彼らのような中年男になりたいです」
 
●結局、彼が語ってくれた理想の自分像というのは、外見のことばかりでした。
 
いかにも中味が乏しい将来像ではありませんか。そこで私はちょっと意地悪な質問をしてみました。
 
「じゃあ、"ちょい不良オヤジ"と"不良オヤジ"の違いは? ちょい不良がよくて、不良がダメな理由は?」
 
●彼曰く、「そこそこ不良でそこそこ良い人」というのは「ちょい不良」の定義だそうです。不良までいってしまうと悪人なので、根は善人のちょい不良ぐらいが自分に合っているというのです。
 
それでは中途半端! と私は彼に言いました。思いっきり不良、もしくは思いっきり善人、その両極が同じ人に同居しているほうが人間の幅が広くて面白いではありませんか。そっちの男を目指そうよ、という話をしました。中庸とは足して二で割った答えではなく、両極を知っていてこそ中庸が選べるのです。
 
●同じような例として、
「日々是好日(ひびこれこうじつ)」とか「晴耕雨読」などを将来の理想像として掲げる人もありますが、それらの言葉の意味にも誤解があるようです。
 
●「日々是好日」とは、毎日毎日が良き日でありますように、という願望を表した生やさしい言葉なのではないのです。本来は、厳しく激しい決意表明の言葉なのです。
 
●日々是好日の本来の意味は、
「私は毎日毎日を良き日にしてみせます。そのためには、今この瞬間瞬間に全身全霊を傾けて命を完全燃焼します」という覚悟と決意を表したものなのです。
 
●同じく、晴耕雨読だってそうです。
なまけ者がこの言葉を使うときは、
「晴れたら田んぼでも耕し、雨が降ればのんびり本を読む。そんな自然まかせの悠々自適な生き方も悪くない」となります。
 
ですが、賢者がこの言葉を使うときはこうなります。
「晴れたら野良仕事に精をだし、雨が降れば読書を全力でやる。いつだってどこだって私は全力で今を生きる」
となります。
 
●「ちょい不良オヤジ」「日々是好日」「晴耕雨読」に限らず言葉には表面的な意味と真意との二つがあります。人と会話するときには、言葉の意味を理解しながら会話したいものです。
 
 

2011年06月03日(金)更新

インドでの気づき

●私には、「ぜひとも行きたい外国ベスト50」というリストがあります。すでに訪問したことがある国(14カ国)は除外し、これから行きたい国の名前が羅列され、その横に行きたい都市や食べたいもの、見たいものなどのメモが書かれています。
 
●そのリストに入っていなかった国・インドに、2005年2月、縁あって行くことになりました。
「がんばれ社長!」メルマガの広告主でもあり、私が愛用している「マンダラ手帳」の開発者でもある松村寧雄先生。
先生が開催される『仏陀ゴールデンロード、悟りの旅』に "一緒に行きませんか" とお誘いいただいたのです。
 
●「今回は数年ぶりの開催です。次回はいつになるか分かりません」と聞けば、最初で最後のインド行きのチャンスになるやもしれず、その場で参加申込みを決断しました。
2005年といえば、今からみれば業績は絶好調で東京にもオフィスを新設した年です。仕事がどんどん増えるので、新卒学生の求人も始めたころでした。しかし、そのころの私は、とにかく悩みが多く、「悟りの旅」という副題にある「悟り」が欲しくてたまりませんでした。
 
・なぜ、私は毎朝寝坊してしまうのか
・なぜ、自分で決めたことが守れないのか
・なぜ、予定外のことをやるのか
・なぜ、子供や家族は思い通りにならないのか
・なぜ、私は愛欲の欲望に負けるのか
・なぜ、自分は老けるのか
・なぜ、自分は太ってしまうのか
・なぜ、大食い・大酒してしまうのか
・なぜ、体力が落ちるのか
 
「それって更年期障害でしょ」と家内は冷やかしましたが、とにかく心が何かを渇望していたのです。
 
●だからこそ「心のシステム」を理解し、それを自在にあやつることが出来るようになりたい。誘惑を退けられるようになりたいし、苦悩や葛藤からも解放されたい。
 
そういう意味において、『仏陀ゴールデンロード、悟りの旅』への参加は、これからの人生の大きな転換点になるかもしれないと期待していました。
 
●参加者は、主催者含む14名。
2500年前、ブッダが歩んだ悟りへの道をあえてそのまま歩むことで、我々一行も「悟り」というテーマをずっと維持することができたように思います。
 
●結論から申し上げます。
 
第一の結論:「インドに行っただけでは答えは見つからない」
 
インドに行けば何とかなると、バックパッキングで出かける学生もいるが、インドの景色をどれだけたくさんながめても答えはありません。インド人にどれだけ接し、会話しても答えはないのです。もちろんおいしいカレーやナンをどれだけ食べても答えはないです。
 
●第二の結論:「今回の旅は、人生屈指の旅になった」
 
主催者であり講師でもある松村寧雄先生(クローバ経営研究所)が開発された、ブッダの叡智を人生や経営に活かすためのテキスト&講義に私の悟りへの回答がありました。
このテキストと講義が日本ではなく、インドで行われたからこそ、臨場感バツグン、効果万倍のセミナーになったのでしょう。
 
●私の場合、まだまだ"悟り"とは呼べないかもしれませんが、先に掲げた多くの「なぜ・・」に対する答えを見つけ、打開策のヒントをつかむことができました。これは大きい。余りにも大きな収穫なのです。
 
 
●第三の結論:「これからが始まり」
 
インド旅行は終わりましたが、悟りへ本当の旅はそのときから始まりました。どのようにして悟りへの修業を継続実行してゆくか。
それは、日常の修業にあります。
今この瞬間瞬間、自らに関心を集中することや、八正道、六波羅蜜などブッダの教えの中に今日の私たちが応用できる叡智と実践プログラムがたくさんあるのです。
 
●このインド旅行では、偶然とは思えない奇妙な出会いがありました。
 
それは、14名の参加者のお一人が広島の禅僧であり、全国でも有名な座禅指導者の方だったのです。しかも北海道から参加されていたO弁護士ご夫妻は、このインド旅行をきっかけにして、今でも交友させていただいています。
 
●帰国直後、私は一週間かけて広島の禅僧の寺で参禅修業しました。
 
悟りというにはおこがましいまだまだ小さい「気づき」程度のものですが、心の問題は必ず解決できると確信をもつことができました。
その日以来5年、「クローバ経営研究所」の松村寧雄先生の月例セミナーに毎月通うようになり、その確信がますます深まっているのです。
 
 
★クローバ経営研究所 http://www.myhou.co.jp/seminar/mandala_series.php
 

2011年05月31日(火)更新

お金より価値あるもの

●「道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である」とか、「論語と算盤(そろばん)の両立が大切」などを説いた渋沢栄一翁。
 
氏は、西洋渡来の資本主義に東洋思想の味付けをし、日本独自の資本主義や日本的経営とよばれるものの原型をつくりあげた人です。
 
「経営者は利益を上げなければならない」とする西洋の考え方にプラスして、「経営者は志をもち、道を究める人でなければならない」という考えも付け加えたと言えましょう。
 
●ついこの前まで士農工商の士分にいた渋沢たちが、そこいらの商人と一緒にされてはたまらないという誇りのような気分が混じっていたのかもしれません。
 
それによって日本の経営者は、ビジネスで利益を上げるだけでなく、道を究める人でもあらねばならなくなったわけで、考えようによってはずいぶんハードルがあがってしまいました。しかし、それは実に取り組み甲斐のある挑戦なのです。
 
●「士」の誇りと「商」の才覚の融合こそ日本的経営。
 
・理想とする企業を作ること
・理想とする経営者になること
・理想とする経営環境を作ること
 
その「理想」を明文化する必要が私たちにはあります。当然、その「理想」は借り物ではいけません。自らの言葉で理想を語り、その実現策も語りましょう。
 
それこそが、かねてより申し上げている「経営マニフェスト」というものの本質だと思うのです。


 

2011年05月20日(金)更新

会社に生命を吹き込む

●会社や組織というものには実体がありません。会社が入居しているビルやオフィス、店舗が会社ではないのです。あくまで登記簿謄本に記載された書類上にその存在が確認されるだけです。
 
●しかし、間違いなく会社や組織には命があります。
生命力あふれるダイナミックな会社もあれば、その反対に、沈滞ムードが漂っている会社もあります。また、同じ会社なのに元気な時とそうでない時があります。実体がないはずの会社なのに、そのあたりが面白いところです。
 
●かつて京セラの稲盛さんがこんなことを語っていました。
 
「会社のトップである社長が生命を吹き込んでいないと、社長が一人の素の人間になってしまったら会社の生命はなくなる、空っぽになる。社長の場合、いつも会社に対して思いをいたしていないといけない。他の役員や社員は仕事を離れれば個人にかえることが許されるが、トップである社長が個人になることは許されないのだ」
 
●会社の生命とは、すなわち社長そのものの生命だというのです。たしかにそれは事実でしょう。
社長のテンションや情熱がそのまま会社の生命になります。とくに、まだ規模が小さい会社の場合は、社長が寝食を忘れるほど会社のことに夢中になる必要があります。
寝ても覚めても仕事と会社、という状態が望ましいし、それが成功のための自然な姿なのです。
 
●社長が、夕方になるとソワソワと帰宅時間を気にし、子供との入浴やナイター中継を楽しみにして仕事を放り出して帰宅するような会社では成功しません。
魂を込めて仕事に打ち込み、人がアッと驚くような素晴らしい仕事をしましょう。

2011年05月13日(金)更新

100%のノー

今日は、ちょっとした実話ベースの物語を紹介しましょう。
 
●「あのぉ、お父さん。ちょっといいかしら」
 
リビングで趣味のクラシック音楽を楽しんでいた父・芳夫がヘッドフォンを外す。
 
「ああ、恵子か、どうしたんだい?」
 
今年大学生になる娘の恵子は、ちょっと言いにくそうな表情をしながらも父に近よって話し始めました。
 
●「お父さんね、私も今年から大学生になるので、そろそろウチを出てマンションで生活してみたいの。それって許してもらえるかしら?」
 
まったく予期していなかっただけに、芳夫は面食らいました。
「え~、マンション生活?なんだよ、それ。そんなのダメだよ。ダメに決まってる。何か理由でもあるわけ?大学は家から通っても充分近いでしょう」
 
「うん、家から通えるけど、前から大学生になったら独り住まいするのが夢だったの」
 
「夢といったって恵子、そんなにウチがいやなのか?」
 
●そうした押し問答のあげく、いつもの会話のように結局、折れるのは娘のほうでした。
 
「やっぱりダメかぁ・・・」

恵子は力を落とし、自室に戻りました。
恵子にとって大学生活をマンションで過ごすことが夢とはいえ、経済的にゆとりがないことも知っていたのでこの話はずっと黙っていたのです。
 
「アルバイトしようかしら・・・。でも美術をもっと勉強したくて入った大学なのだからアルバイトする時間がもったいないし」恵子は途方にくれました。
 
●一方、父の芳夫も音楽を止めてバーボンをかたむけながら考え込んでいます。
 
「娘の独り暮らしかぁ。恵子のやつ、相当思いつめた顔をしていたな。きっと、昨日や今日思いついた話じゃなかろう。もっとゆっくり話を聞いてやるべきだったな。でも、いくら話を聞いたところでマンション費用はどうする?それに心配のネタを増やしたくないし」
 
●この段階では、娘の希望に対して父が「NO」を宣告し、話は決裂したままです。
 
でも簡単には諦めきれない恵子は、友人の誘いで「がんばれ!ナイト」」という勉強会に参加し、コンサルタントの武沢先生に相談してみることにしました。
 
事の経緯を理解した武沢は、レターヘッドにペンを走らせました。
 
1.父はなぜ反対していると思うか
 
 
2.どのようにしたら父の反対理由を消し去ることができるか
 
 
と書いてあります。
 
 
●武沢は言います。
 
「アメリカには、『話す前に、相手の靴を履け』ということわざがあります。自己主張するまえに、まず自分の靴を脱ぎ、相手にも靴を脱いでもらい、許可を得てから相手の靴を履かしてもらう。それによって、お互いに深い理解が得られるということです。自分の立場だけに固執していると迷路にはまります。この場合、お父さんの気持ちとして、なぜ反対していると思うか、考えたことはありますか?」
 
恵子は、
「はい、あります。父もサラリーマンとしてがんばっていて尊敬しているのですが、自宅のローンが残っていて私のマンションの賃料を新たに負担するのは大変なのではないかと」
 
「じゃぁ、それを1番の欄に書きましょう」
と武沢は、「マンションの賃料負担が困難」と書きました。
 
●恵子はさらに続けて、
「反対理由は費用だけじゃないと思います。親として娘の独り暮らしが心配なのだと思います」
「ほぉ、それはなぜ」
「生活が乱れたりしないかと」
「生活が乱れるとは、例えばどのようなこと」
「う~ん、食生活が偏ったりとか、夜更かしして睡眠不足になったりとか、男性が遊びに来たりとか・・・」
「じゃあ、それも書こう」
 
●このようにして、次のようなものが完成しました。
 
1.父はなぜ反対していると思うか
  ・マンションの賃料負担が困難
  ・生活の乱れ(食事、睡眠などの健康管理や時間管理、友人と遊
         びすぎて勉学がおろそかになること)
 
2.どのようにしたら父の反対理由を消し去ることができるか
 
  ・マンション賃料は10万円するので、その負担法について父と相
   談する。
   私としては、一年生のうちは特に学業に専念したいので、二年
   になったら家庭教師と音楽のアルバイトで数万円以上稼ぐ。趣
   味の洋服と旅行はしばらく我慢する。図書館利用で本代も浮か
   す。
 
  ・生活の乱れについて
   信頼してもらえるまでの間は、父と母にもマンションの鍵を渡
   し、いつでも飛び入り査察を受け入れる。
   毎日帰宅・就寝報告メールを両親に送る。
   
●恵子は完成したシートを見ながら、明るい笑顔を取り戻していました。
 
「これでもう一度、お父さんにぶつかってみる。私も、二年生になるまで我慢する覚悟ができたし、お父さんとお母さんには決して心配かけないという自信がもてたから。ありがとう、武沢さん。『がんばれ!ナイト』ってすごい会なのですね」
 
恵子は翌日からメルマガ読者になってくれました。
 
●「部長、そろそろホームページをリニューアルしたいのですが」
「ダメだ。今でも有効に使われていないのに。とんでもない」
 
「社長、新しいパソコンを買って欲しいのですが」
「ダメだ、あそこに機械が余っているだろう」
 
などなど、
あなたも時と場合に応じて恵子役や芳夫役を演じることがあるはずです。
家庭や仕事での人間関係は、対立する関係ではないはず。最初は困難に思えた対立的問題も、粘り強く接していくことによって解決の糸口が見つかることが多いのです。
 
「100%のノー」なんてそんなにあるものではありません。

 

2011年05月06日(金)更新

同じことをくり返す

●かつて「世界一受けたい授業」(テレビ番組)にメジャーリーグで活躍している松井秀喜選手が登場しました。彼の授業テーマは、"どのようにしたら緊張せずに、普段通りの力が発揮できるか"というテーマでした。授業の内容は記憶に残らなかったのですが、その後のちょっとしたパフォーマンスが素晴らしかった。
 
●日米通算で500本近い数のホームランを打っている松井選手ですが、そのすべてのホームランを覚えているというのです。そこで実験として出演者が「じゃあ、72本目は?」などと聞く。それに対して松井選手は、
「ん~、たしか広島市民球場で○○投手から直球を打ったホームラン」
 
と返答していくのです。
 
●全部正解しているので司会者が、「松井さんは覚えようと努力しているのですか?」と聞くと「いいえ、自然に覚えました」と。
毎打席終わるたびにベンチでバッティングを修正してきた証拠でしょう。きっと夜、自宅に戻ってからも日記などに記録を付けているに違いありません。
 
●そういえば、将棋でも囲碁でも試合後の感想戦で、今の対局をそのまま再現できるのはもちろん、ずっと以前の棋譜までを記憶のデータベースに格納し、それらを参照しながら今の対局に臨んでいるといいます。
 
恐るべし、プロの記憶力。
 
●「武沢さん、あなたはメルマガの1000号記念で何を書いたの?」と聞かれたら、私の場合は絶句してしまいます。
正直言って、いつ1000号に到達したのかも覚えていません。
 
●松井選手みたく、
「1000号目のメルマガ記事は?」と聞かれ、『不人気メルマガも悪くない』とスラスラ答えたいものです。
ですが、それらのことを覚えていることに価値があるのではないはずです。
 
毎回の体験を次に活かすために整理し、修正していくからこそ自然に覚えられるものなのでしょう。だから、自らの体験をふり返り、整理することに意味があると思います。
 
●高野山専修学院の添田隆俊大僧正は、「同じことをくり返すことが一番大切な修業である」と次のような主旨のことを語っておられました。
 
・・・
熱があろうが風邪をひいていようが、朝のお勤めを365日果たす。それを50年くらい厳粛にする。
修行するということは、水をかぶったり断食したりすることではない。
そんなのは、特別な人がやることであって、大切なのは誰でもできるものでなければ修行にならない。
だから、同じことをくり返すということが一番大切な修行の信心だ。
何を信心するかというと、同じことをくり返すこと、なのだ。
・・・
 
●どれだけ上手くできようが浮かれず、奢らず。また、どれだけミスし、失敗しようが決してくじけない。ただ淡々と自らの体験から学習し、他人の体験からもヒントや教訓をもらい、次に活かす。自らのテーマを決めてくり返す。真理はそんなシンプルなことのようですが、それに倦くことがあってはいけません。

 

2011年04月25日(月)更新

唖然とする医師

●「人間は80歳まで強くなれる!」というキャッチコピーに惹かれて『武道の力』(時津賢児著 大和書房)という本を読みました。
 
●この本は、
野球でも相撲でも、サッカー、スキー、マラソン、格闘技など何でもが、20代や30代の若手選手が優勝する。つまりその年齢で選手としてのピークを迎え、それ以降は衰えていくばかりのスポーツの現状に対し、警鐘を鳴らしているのです。
 
●例外は剣道。剣道だけは、若手がハァハァと息を乱していても古老の剣士は微動だにせず勝つ。
このように、鍛え方次第でスポーツは80歳まで強くなれるということを教えてくれる本です。
また、それはスポーツだけではなく、人間の脳の働きも80歳までは強化できると著者は主張しているのです。
 
●単なる理論の書ではありません。著者が今なお実践中のことだけに大いに迫力があります。
 
身体というものは、鍛えないと弱っていく一方です。それにつれて脳まで弱っていくのがやっかいです。
情熱や欲望、闘争心、集中力、根気などといった精神力は、脳の働きに負うところが大きいわけですから、身体と脳は鍛えなければならないのです。
 
●また、かつて合気道・大東流の佐川幸義師範の弟子で、筑波大学の数学教授・木村達雄氏が、オリンピック候補になっていた柔道選手を片っ端から投げ飛ばし、全員を自信喪失にさせてしまったことがありました。
 
その木村氏が書いた本に、ビックリするエピソードが紹介されています。
 
・・・佐川先生は十七歳で合気の極意をつかんでしまった。それを強化するためにいろいろ鍛錬を考えているので、最初から普通の人と考え方もやり方も違っている。(中略)
そして何十年と今でも休みなく鍛錬を続けているのである。なお筆者は、最近先生が使っておられる鉄ゲタ、鉄槌、鉄棒、鉄パイプの槍を見せていただいたが、その重さに驚いた。筆者が実際にこれを持ってみて、これをいきなり使ったら腕をこわしてしまうと思った。
(中略)
佐川先生が九十歳の頃、東大病院に念のための再検査を受けに行ったことがある。医師が運動心電図を計るので何か運動してほしいというと、先生はすぐさま百五十回腕立て伏せをやってしまい、医師を唖然とさせた。
・・・
 
●これを読んだとき、私はすごいと思いました。
 
"継続は力なり"とは言いますが、そんな生やさしい表現ではもどかしい。
鍛えるという行為を継続するとミラクルが起きます。
 
●この佐川先生も、若いころは逆三角形の見事な筋肉質の肉体を作っていたらしいですが、その割に技に効果がないという理由で、考え方と鍛錬法を変えたそうです。
 
●身体も頭脳も80歳までは進化することが分かっただけで、やる気が出てくるではないですか。自分にあった鍛え方を見つけていきましょう。
 
★『武道の力』時津賢児著、大和書房
 → http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4479791108/

 

2011年04月15日(金)更新

彼の流儀

●一定の年齢になると、自分独自のスタイルや流儀をもつように心がけたいものです。
 
私の場合は、平日は毎日メルマガなどの原稿を2~3本書き、ブログやFacebookでそれらを外部に発信しています。1本のメルマガ作成に要する時間はおおむね2時間です。原則として書き溜めをしません。その日のメッセージはその日に書くのが好きだからそうしています。従って、月曜日から金曜日まで毎朝最低でも3~4時間は原稿を書くのが私の10年来の日課になっています。
 
●そんなお話しをある所でしたところ、懇親会である経営者からこんな助言をいただきました。
 
「武沢さん、私もメルマガを発行していますが、基本的にはすきま時間を見つけてやっています。仕事に支障が出ないやり方があると思いますので、武沢さんももっとすきま時間を活用して書いてみられてはどうですか?」
 
●助言は大変ありがたいのですが、価値観や流儀が違うのです。
 
私の場合は、メルマガ発行が大切な仕事です。メインの仕事と言っても構いません。ですから、すきま時間でやることではないのです。
これが私の流儀です。流儀とは価値観を反映させたもの。こだわりのようなものです。
 
●ある経営者は、経営会議の時間の半分はメモをとっています。何をそんなに書いているのか尋ねると、
「部下の発言内容をメモるときもあるが、それから触発される自分のアイデアをメモることが多い。一回の会議で10頁以上のメモ量になることもある」ということでした。
 
これが彼の流儀です。
 
●ベートーベンは膨大な数の楽譜メモ断片を残していますが、作曲中にはそれらのメモを見ることはなかったといいます。「なぜそうするのか?」と尋ねられたベートーベンは、「一度書かないと忘れるが、一度書けば忘れない。だからもう見る必要はない」と答えたといいます。
 
これが彼の流儀です。
 
●自分が話すのを自分が聞いて学ぶ人もいます。GMの中興の祖とも言われるアルフレッド・スローンもその一人で、会議中には一切メモをとらなかった。部下の発言で、重要なものがあればスローンは自分の言葉でもう一度同じことを語り、その場で咀嚼してしまう人だったのでしょう。
 
これが彼の流儀です。
 
●このように人それぞれに仕事の流儀というものがあって、正解は一つではありません。自分にとって最も高い成果が得られるスタイルを見つけ、自覚し、磨き、貫きましょう。
 
なぜなら、会社経営とは流儀のかたまりのようなものだからです。

 

2011年04月08日(金)更新

部下に起業家が何人いるか

●成長著しい会社の多くはいつも社内が混乱しています。
 
部下:「部長、また変更ですか?」
部長:「おお、仕様を変更する。すぐに対応してくれ」
部下:「あっちの仕事とどっちが優先ですか?」
部長:「どっちも最優先だ。いつまでにできる?」
部下:「今日中になんとか……」
部長:「悪いが待てない、午前中にやってくれないか」
 
こんな会話が毎日のように起きています。さながら戦場のようなもの。部下にとっても、毎日が未知の仕事ばかりで、過去の前例などなにも頼りになりません。
 
●しかし、停滞している会社では通常、社内はとても静かで秩序だった毎日を送っています。そして深く静かに大企業病に犯されていくのです。
大企業病とは、大企業が陥りやすいからそう名づけられたのですが、中小零細企業でもそれは起こりますし、ベンチャー企業だってそうなる危険性をはらんでいるのです。
 
●それは、秩序を乱されるのが嫌いな人たちが権力を握ったときに生まれる"秩序維持病"のようなものです。
 
壊されるのが嫌いで守るのが大好きな人たちはこう言います。
 
・専務、またやり方を変えるのですか?
・また新しいことをやるのですか?
・前回このようにおっしゃったではありませんか
・もう絶対に変えませんね?
 
そんなとき、「もう絶対に変えないよ」「これが最後だから」などと言ってはなりません。上司がそう言った瞬間から大企業病が始まるのです。
 
●むしろ変革の必要性を説き、変えるのを嫌がる人たちを鼓舞し、リードするのが上司の役目です。優秀な人たちの多くは、秩序を大切にしたがります。そうした人を大切にしなければなりませんが、「何も変えない・何も始めない」のが素晴らしいのではないということも伝える義務があるのです。
 
●ドラッカーはこう言います。
 
「経営はマーケティングとイノベーションに尽きる。そのイノベーションを行うのは人であり、人は組織のなかで動く。したがってイノベーションを行うには、そこに働く人間一人ひとりがいつでも起業家になれる構造が必要である」
(『イノベーションと起業家精神』)
 
あなたの部下に起業家が何人いるかが勝負なのです。
 
●あなたの会社の経営幹部にはこう言ってあげましょう。
 
・サラリーマン同士でつるむなよ。たくさんの経営者や起業家と接触しなさい!
・自分でやりたいことを10以上あげることができるか(もちろん仕事で)?
・3年以内に社長になる計画をもっているか?
・その気があれば、私と組んでパートナー会社を立ち上げないか?
 
そういう働きかけに対して敏感に反応する人が頼もしいのです。
 
・人に言われたことをきちんとこなすか
・上司に気に入られる人間性をもっているか
・報告・連絡・相談がきちんとできるか
 
などはサラリーマンの評価尺度です。
それら以上に大切なことは、依頼主(顧客や上司)が望む成果を上げることができる人なのです。細かい指示をしなくても、望む結果を伝えれば分かってくれる人を登用しましょう。
 
●あなたの部下、特に経営幹部には大いに起業家精神を要求すべし。
 
この二年間で何を立ち上げたか、何を壊したか、を評価基準にしよう。そして今月は何を始め、何をやめるつもりなのか、お互いに明確にしながら仕事を進めていきたいものです。
 
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ボードメンバープロフィール

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武沢 信行氏

1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。

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