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2009年12月18日(金)更新

目標とマイルストーン

計画を立てるときは、あれこれ盛り込みすぎたものにしてはいけません。まして、ただでさえ内容が盛りだくさんの計画を、同時に進行してやろうなどと考えないほうが賢明です

●ある日、来年経営コンサルタントとして独立する予定の銀行マン(31歳)に、「武沢さん、来年の10大目標を作ったので見て欲しいのですが」と言われました。「えっ! もう来年の目標が決まったのですか?」と言いながら見てみると、次のような項目が並んでいました。

<仕事目標>・・・起業を成功させる

1. メルマガを1月に創刊し、読者数を一年で3,000人にする
2. 地域内で異業種交流会を企画・開催し、年末には100人規模の会にする
3. ホームページを立ちあげて、毎日100アクセスを目指す
4. 年末までに顧問先を10社にする(月商200万円・月収100万円を達成する)
5. 本を一冊出版し、「キャッシュフロー経営の専門家」というブランドを打ちたてる

<個人目標>・・・自己管理の徹底で進化する

1. 筋トレを週2回行ない、体重62キロ、体脂肪率15%にする(今はそれぞれ66キロ、20%)
2. 家族旅行を年2回実施する(春は国内、秋はグアム旅行を予定)
3. 年間に100冊の読書をする(今は年50冊のペースなので、倍増する)
4. 英語力を高め、今は550点のTOEICスコアを650点にする
5. 経営に関する専門知識と営業力を身につける

●一通り目を通し、「ほぉ、なかなかスゴイじゃないですか」と讃えてから、

・この10大目標をどうやって具体化して、行動するのですか?
・この中で一番大切な目標はどれですか?

といった質問をしてみたところ、次のような答えが返ってきました。
●「この10大目標をエクセルでガントチャートにしてあります。横軸に来年の1月から12月までを、縦軸にこれらの目標を設定し、セルを使って詳細な予定を書き込んであります。また、このなかで一番大切なのは、仕事目標の4番目にある「年末までに顧問先を10社にする」です。起業してから1年以内に月収100万を達成できれば、自分に合格点を付けてもいいと思います」

なるほど、良くできた計画です。完ぺきと言ってよいでしょう。

●しかし、私は計画が完ぺきすぎるがための弱点を知っています。「細部にいたるまで完ぺきにしようと欲ばって計画を立てると、枝葉にとらわれて逆に幹が見えなくなる」という弱点です。

●みなさんは、有名な“ブレイクスルー発想”のなかに、次のような逸話があるのをご存知でしょうか?

・・・
ある大手電力会社では、長年のあいだ頭を悩ませている、停電の原因が1つありました。カラスが鉄塔に集まって巣作りをはじめたときに、針金を落としてショートすることがある、というのがその原因です。

そこで、その電力会社はいろいろな専門家にお願いをして、カラスが近寄らない方法を研究しました。カラスが嫌う音、カラスが近寄らない臭い、カラスが恐がる天敵などといろいろ手を打ちましたが、どれもいたちごっこで解決には至りませんでした。

そこでブレイクスルー発想の専門家に相談したところ、瞬時に解決法を考案してくれました。

それは、カラスの巣をあらかじめ鉄塔に作っておき、巣を作る必要をなくすというものでした。それを実行したところ、見事に停電が起こらなくなりました。
・・・

●停電の理由は、カラスが近づくことではなく、カラスが針金を落とすためです。なので、カラスを近づけない工夫をするのではなく、巣作りを不要にしてあげれば良い、という本質を見抜いたことがこの話の要点です。

●話を銀行マンの彼に戻しましょう。

彼が一番重要視している目標は、「来年末に顧問先を10社にし、月商200万円・月収100万円を実現すること」です。つまり、仕事目標にあるそれ以外の項目は、マイルストーン(通過点)にすぎません。あるいは、目的と手段の関係と言い換えてもいいでしょう。

●意欲的に目標を掲げ、詳細な計画を作って行動するのは素晴らしいことです。しかし、「カラスを近づけないのではなく、停電を防ぐのが目的」という発想と同様に、あなたの目標を整理し、手段と分けて考えることの必要性を忘れないでください

2009年10月30日(金)更新

利益を出す意欲

●フジテレビの軽部アナウンサーがトム・クルーズにインタビューしたときのことです。軽部アナに「私とあなたは同い年なのに、あなたがそんなに若々しいのはなぜですか。最近僕はすぐに疲れるようになってしまったので、なにか秘訣があれば教えてほしい」と聞かれたトム・クルーズは、ガッツポーズを作りながら、「僕は人生を生きる意欲が強いから」と明るく答えていました。

●私から見れば、軽部アナも一般的な同世代とくらべたらずいぶん若い感覚の持ち主だと思うのですが、それにしても「トムにかなわない原因が生きる意欲とは面白い」と感じました。

経営者も、生きる意欲を強くもつのは当然ですが、会社をよくする意欲も強くもつ必要があります。とくに大切なことは、目の前の現実を好転させることです。つまり、利益を出し、現金収支をプラスにすることに強い意欲をたぎらせるのです。それなくして、次のステージには進めません。

●私は経営者に会うことを職業にしてから25年になりますが、この間に何社もの経営者が世代交代しました。中小企業経営者の平均在任年数が30年だとすれば、世の中にある大半の企業で経営陣が入れ替わったことになります。
●世代別に比較すると、若い経営者はお金や利益に対する意欲が、戦前・戦中生まれの経営者より乏しくなってきているようです。とくに、団塊以前と団塊ジュニアの世代を比べると、あきらかに精神構造が違っています。

●「お金がそれほど欲しいわけでもなく、いい生活をしたいわけでもない。かといって、欲しいものがそんなにあるわけでもない。だから、儲けはホドホドにして好きなことをしていたい」という若手経営者がたくさんいますが、経営者が現状に満足してしまっては会社の未来がありません。経営者という立場にはいつもハングリー精神が求められ、それを養うことは社長の責任なのです。

利益を上げ、資金力をつけることにもっともっと強い意欲をもちましょう。「なぜ、当社は利益を追求するのか」について、社員にわかりやすく語りましょう。それを通じて、自分自身の気持ちを鼓舞するのです。

あなたが利益を求める理由は何かを自問してみてください。そして、トム・クルーズのようなパッションで、利益を追求する意味を語ってみてください

2009年10月16日(金)更新

腕が良い、とは

●「私は特別な人間だ。特別にカッコ良いし、特別に長生きしそうだし、特別な金持ちになりそうだし、歴史に名を残すような特別な何かをなし遂げる人間」だ、とひそかに思っている人がいるかもしれません。それどころか、真剣にそう思っている人もいることでしょう。

社長やリーダーの役目としては、そう思うことが正しいし、みながそう思うように応援してあげることが大事です。

●一方で、「言うだけならタダだとわかっていても、嘘つきになりたくないから軽率なことは言わない」という考えもあると思います。しかし、社長は正確なことを話すだけでなく、いつも明るい未来を語れる人間でなければなりません

●わかりやすくするために、たとえ話をしましょう。医者が頭痛で訪れた患者を診察し、薬を渡すという場面を思い浮かべてください。そのとき、医者Aは必ず「このクスリを飲めば、あなたは必ず良くなります」と言うようにしていました。

●一方、医者Bは、ものすごく几帳面なタイプで、「このクスリがあなたに効く可能性は、データに基づくかぎり60%です。また、副作用が出てしまう危険性も20%ほどあります」と言っていました。
●患者を前にした医師として、どちらが腕が良いのでしょうか。あなたならどちらの医師の病院に行きたいですか? 時と場合にもよりますが、頭痛程度ならば「私はAのほうにかかりたい」と思う人が多いのではないでしょうか。正確な診察という点ではBかもしれませんが、おそらく多くの患者を直してみせるのはAのほうだと、私は思うのです。

●“正確さ”と“腕の良さ”は一緒ではありません。一番よいのは、“正確さを背景にした腕の良さ”であり、顧客に勇気と確信を与えられる実力・実績を持ち、そして言葉を巧みに駆使することです

●「あなたは出来る」、「あなたは治る」、「あなたは良くなる」と言えるリーダーになりましょう。そもそも、夢やビジョンといった将来のことから今月の売上にいたるまで、未来のことはすべて不確かなものなのです。

●腕の良い経営コンサルタントは、赤字だらけのクライアント社長の前でこう断言します。
「社長、僕の言う通りにやって下さい。必ず儲かるようになりますから」
「本当かい?」
「信じてください。御社の未来を」
「わかった、信じよう」

そう言う社長の目に輝きが生まれます。それは、コンサルタントを信頼したのではなく、自分と自社の未来を信頼できた瞬間なのです

こうした言葉の威力と魔力を最も必要としているのは、自分自身です。自分の中の自分、つまり潜在意識に向かって、力強く明るい未来を断言してあげましょう。「私がうまくいく可能性は57%」などと正確に表現しようとするよりは、「私の前にもはや不可能の文字はない」と断言する社長のほうが“腕が良い”のです。

2009年10月02日(金)更新

迷子にならないために

●フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』によれば、「『迷子(まいご)』とは、自分の所在がわからなくなり、目的地に到達することが困難な状況に陥った子供、もしくはその状態を指す」、とあります。また、百貨店や行楽地、その他の雑踏などにおいて、本人の目的に関わりなく、引率者が子供の所在を確認できなくなった時点で迷子とみなされる、ともあります。

●迷子は子供だけがなるものではありません。大人でも迷子になります。実際私も、初めて訪れた外国の町で迷子になったことが何度もありました。しかし、子供とは違い、お金は持っていますし、携帯電話もあるのでパニックにはならないで済んでいるだけのことです。

最近は、人生の迷子、経営の迷子をよく見かけます

・目的地がどこか分からない
・目的地への道順が分からない
・そもそも、今どこにいるのか分からない

という意味での「迷子」は、全国にたくさんいるのではないでしょうか。
●私がコンサルタントを始めた15年前、ある社長からこんな話を聞きました。

「うちは創業以来20年間一度も赤字を出したことがないし、金銭的苦労をしたこともない。こんなにも会社経営って簡単なものなのに、世間では社長業って大変だなんて言っている。

そんなとき、俺も一発、社長らしいことをやってみようと、自社ビルを建てることを決め、生まれて初めて借金をした。当時の売上高の何倍もの金額を借り、ようやく完成した自社ビルの落成記念パーティの案内状を作っているとき、バブルが崩壊した。その後、あっという間に倒産の危機に見舞われ、今では社長業って本当に大変だなあと実感している」

●私が「社長、顔色もいいし、お元気そうですがよく生き残ってこられましたね」と言うと、その社長は神妙な顔でこんな話しをしてくれました。

「武沢さん、私はものすごくラッキーだったと思う。なぜなら、倒産の危機に見舞われて以来10数年間、運転資金を銀行から借りることができなくなった。そのおかげで、利益と現金が酸素のように大事なものだと実感できるようになったし、それを先行管理するための方法を考案し、社長らしい仕事をやれるようになっていったのだと思う

●そこで私が、「社長らしい仕事って何ですか」と質問すると、「現実に向き合い、将来に向き合うことでしょ」という答えが返ってきました

●この社長、資金繰りに追われて困窮しているときは、すべてを経理に任せ、自分は現実から逃げていたそうです。しかし、逃げていてはかえって不安が広がるのだと気づき、月末にいくら足りないのか、いつなら支払えるのか、来月はどんな見通しなのか、といった問題や現実に社長自身が向き合いました。その結果、会社が良い方向に向かいだしたといいます。

逃げると迷子になるのです。経営者自身が「今自社はどこにいるのか」を確認し、向かうべきゴールをもう一度フォーカスしなおす作業をちゃんとやっている会社は、どんな時代がやってきてもしなやかに対応することができます。

●2009年もいよいよ最終四半期に入りました。今どこにいるのか? 残り3か月の目標は何なのか? をもう一度確認しましょう。

2009年09月25日(金)更新

志をまもる工夫

●先日、講演会で経営理念について語り、その後の質疑応答で次のような質問を受けました。

「経営理念の大切さについては重々承知しているつもりです。そこで昨年、納得のいく経営理念を作り、社内外に発表したのですが、何も変化が起きません。正直なところ拍子抜けだったのですが、これは理念の中身に問題があるのですか? それとも作る過程で何かが足りなかったのでしょうか?」

●この問いに対し、私は次のように答えました。

中小企業において、“経営理念”という大がかりなテーマに興味を持っているのは社長だけです。幹部も含めたほとんどの社員は、自分の口に入る小さなサイズの食べ物にしか興味がありません。ですから、経営理念も幹部や社員の口に入るよう、小さなサイズにカットしてあげれば食べてくれますし、咀嚼もしてくれます

●以下は、司馬遼太郎の小説『峠』(新潮社刊)からの抜粋です。

・・・
志は塩のように溶けやすい。男子の生涯の苦渋というものはその志の高さをいかにまもりぬくかというところにあり、それをまもりぬく工夫は格別なものではなく、日常茶飯事の自己規律にある、という。

箸のあげおろしにも自分の仕方がなければならぬ。物の言いかた、人とのつきあいかた、息の吸い方、息の吐き方、酒ののみ方、あそび方、ふざけ方、すべてがその志をまもるがための工夫によってつらぬかれておらねばならぬ、というのが継之助の考え方であった。
・・・
●私は、この文の中にある「志」というくだりを、「経営理念」に置きかえることができると思います。

「いくら崇高で立派な経営理念を作ったとしても、それは塩のように溶けやすいものである。その崇高な理念をいかにまもりぬくかというと、日常茶飯の仕事に理念が反映されておらねばならぬ。

商品の品質、価格、パンフレットやホームページのあり方、営業マンの売り方、社内での会話や会議のやり方、人材の採用や育成、評価制度や賃金制度など、経営のすみずみにいたるまで、経営理念を実践する工夫によってつらぬかれておらねばならぬ」

●話を講演会での質疑応答に戻しましょう。質問者の会社の社員は、与えられた経営理念が自分の口に入らないのでリアクションのしようがなかったのでしょう。ですから、「何も反応が返ってこなかった」のはある意味では当然なのです。

●ごく稀に、「社長、すばらしい理念です。僕は一生この会社で、理念を実現するためにがんばります」という人がいますが、それは百人に一人か二人かという逸材でしょう。それほど少数派なのですから、反応がないからといって落胆する必要はありません

正しい問題認識というのは、「この経営理念を実現するには、これからわが社にどのような変化が必要か」を考えることです。社員に向かってそうした問いかけをすることではじめて、社員もアイデアを出すようになるでしょう。そうした方向で議論し、一歩ずつ行動していくことで、社員の目の色が変わってくるはずです。それが、志や理念といった観念的なものを実現していく手順なのです

2009年09月11日(金)更新

ビジュアル化の必要性

●人生とは、「小さなプロジェクトが集まってできた、大きなプロジェクト」と考えることができます。小さなプロジェクト(家庭とか健康とか教育とか)も、大きなプロジェクト(志とか夢など)も成功させたいもの。そのためには、効果的な計画立案やプロジェクト管理、タイムマネジメントの技法を身につけることが必要です。当然、企業経営にも同じことが言えるでしょう。

●ある日、計画立案に関する二日間のセミナーを受講し、「計画→実行→評価(Plan→Do→Check)」という管理のサイクルだけではうまくいかない、と教えられました。

「計画」をする前に、「ビジュアル化」というもっと大切なプロセスがあるというのです。「ビジュアル化」は、規模の大小を問わず、あらゆるプロジェクトで最初に取り組むべきであり、期待するイメージが曖昧なのに「計画」を立てても、その後のプロジェクトが頓挫しやすいということです

●なるほど、と私は膝を打ちました。「ビジュアル化」といえば、近年、マインドマッピングなどの技法が流行しています。論理的思考に長けた左脳型人間でも、特別な練習を積むことなく作成出来るのがウケているのでしょう。最近では「マンダラチャート」という技法も人気ですが、イメージを明確にするためにこうした技法を覚えておくといいかも知れません。
●しかし、やり方を間違えると逆効果になります。ロシアの心理学者シェレシェフスキー(1892~1958)は、記憶力の問題で悩んでいたといいます。といっても、すぐに忘れてしまうのではなく、なんでも覚えてしまう記憶力のために苦しんでいたそうです。

●そこで、「少しでも多く忘れたい」といろいろな方法に挑戦し、行き着いた一つの方法が「聞いたことをそのまますべて書き写す」ことでした

●この画期的な方法によって、悩みを軽減させていたというから皮肉な話です。私たちは日々のことを書き出し、その中から優先順位づけをして行動しようとしていますが、別の視点からみると、大切なことを忘れるための方法かもしれないのです。

●最近、『ストーリービジョンが経営を変える』(酒井光雄著、日本経営合理化協会出版局刊)という本が売れていますが、従来の経営計画だけでなく、将来のイメージを明確にする取り組みがますます必要とされている現われなのかもしれません

「まず計画ありき」ではなく、「まずビジュアル化ありき」ということを念頭に置いて、会社運営、人生運営をしていきましょう

2009年06月12日(金)更新

ミッション・インポッシブル

プロならば、「ミッション・インポッシブル(不可能と思える指令)」に挑戦し、以前は不可能だったことでも、可能にしていくことが大切です。実績に裏打ちされた自信というものは、自己概念をより強固にしてくれるからです

●卑近な例で恐縮ですが、私も「ミッション・インポッシブル」を何度かクリアしてきました。特に大きな節目となったのは、次の5つのミッションです。

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最初のミッション…企画スタッフ職で成功せよ(27歳)

20代半ばまでは、町工場の工員や小売業の販売員として経験を積み、それなりに責任を果たしていましたが、27歳のときに初めての頭脳労働となる企画職を命じられました。そのとき与えられたテーマは人事教育。直属の上司は社長でしたので、勤務先のオフィスに出社したときにはとにかく頭が真っ白だったのを覚えています。

しかし、1年後に私が考案した社員教育制度が動きだし、それが機能し始めたときの手応えと自信は相当なものがありました。

二つ目のミッション…フルコミセールスマンとして成功せよ(31歳)

結婚、未知の街だった名古屋への引っ越し、完全歩合制(フルコミ)のセールスマンへの転職、と初めてづくしに挑み、すべて乗り切ったのが31歳のときでした。

完全歩合制だったので、どこで何をしていても自由です。売りまくって億万長者になる可能性もあれば、一文無しになって夜逃げすることもある、という状態でした。

「収入がほしい」「仕事をしよう」と思っても、セールスとは相手があってのことです。思うように成果が上がらないときはやる気も低下し、数か月間収入が途絶えたこともありました。

しかし、最終的には国内ベスト10の販売実績をあげ、その後、組織のマネジャーとして表彰されるくらいの実績をあげることができました。ここで私は、新たな自己概念を獲得したのです。


三つ目のミッション…経営コンサルタントとして成功せよ(40歳)

経営コンサルタントという仕事が何なのかもよくわからないまま、とにかくやりたくて開業しました。これも大変むずかしいミッションでした。

友人が何社か顧問先を紹介してくれたので、初期の苦しさを緩和することはできましたが、自分で自分を売り込むことには長い間慣れることができませんでした。

最初こそ自転車操業でしたが、開業して1年経ったころには、安定した収入が得られるようになりました。その頃になると、「自分の労働がストレートに収入になる」という実感をもてるようになり、感無量だったことを覚えています。


四つ目のミッション…インターネットで成功せよ(46歳)

コンサルタントの仕事が軌道にのってから数年が経ち、もっとエキサイティングな冒険がしたくてインターネットに取り組みました。

最初はホームページを作ってアクセスを集めることしか眼中になかったのですが、メールマガジンの存在を知り、やってみることにしました。ネットバブルの崩壊により業界が閑散としていたころの話です(もっとも、当時の私はそんなタイミングだったとは、まったく知りませんでした)。

最初はメルマガを発行すること自体が恥ずかしく、自分の原稿が稚拙にみえて耐えられないほどでした。しかし、毎日継続していると、それが習慣化して度胸もついてきました。

読者数が1,000人、5,000人、10,000人、20,000人、30,000人とハードルを越えていくたびに大騒ぎし、私のビジネスも人生も自己概念も大きく変わっていきました。


五つ目のミッション…本の作家として成功せよ(49歳)

読者数が多いメルマガとして、「がんばれ社長!」の知名度も上がり、ネットからの収入も増えてきましたが、当時の私はまだ著作がなく、書いたとしてもそれが売れるかどうか自信がありませんでした。

しかし、49歳のときに処女作となる『経営の教科書』(明日香出版社)を執筆し、発売3日後に増刷がかかるくらい売れました。これをきっかけに出版の依頼が増えるようになり、今では5冊の著作があります。

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六つ目のミッション…????

六つ目となるミッションの内容は、まだ決まっていません。ですが、これからも「ミッション・インポッシブル」を乗り越えていきたいと思っています。

2009年04月24日(金)更新

劇団四季はなぜ強い

●10数年前、当時小学生だった長女にせがまれて『キャッツ』を見て、私はミュージカルと劇団四季のファンになりました。『キャッツ』だけでも十数回観ていますし、本場ブロードウエイの『キャッツ』まで観劇したほどです。最近は夫婦で行くことも多くなり、『マンマ・ミーア』の名古屋公演にも何度か足を運びました。

●劇団四季の年間公演回数は3,000回強、売上高は230億円強と、この数年ほど高原状態が続いています。大不況のあおりを受けてチケットを値下げするなど、先行きは楽観視できませんが、報道によれば当面の業績はまだまだ底堅いようです。

●そんな劇団四季の強さの秘訣について知りたいと思い、あるとき同社のサイトをくまなく見ていたら、ヒントになりそうなコンテンツを発見しました。それは「理念」の力ではないか、ということです

●劇団四季のサイトには、1953年(昭和28年)に四季を創立したときの仲間、浅利慶太氏と日下武史氏の「二人の仲間」と題した対談記事が掲載されていました(今はリニューアルに伴って削除されています)。
●その対談のなかで浅利氏は、「僕の一生を決めた」として『演劇論』(ルイ・ジュヴェ著)の一節を紹介しています。そのなかから一部を引用してみましょう。

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日下:フランスの大演出家で、プロデューサーでもあったルイ・ジュヴェの
   「演劇論」を讀んで以来だね。

浅利:そう。そこに「演劇の問題」というエッセーがある。それが僕の一生を決めた。

日下:内容を話してみてよ。

浅利:最近朝日新聞の読書面に連載したエッセーの中で紹介した。ちょっと
   堅い文章だし、長くなるけれど、読んでみようか。

日下:是非やってよ。

浅利:「演劇に諸問題などありはしない、問題はただ一つだけだ。それは当るか
   当らないかの問題だ。当りなくして演劇はない。大衆の同意、その喝采、
   これこそこの芸術の唯一の目的と断じて憚らぬ。演劇は先づ一つの事業、
   繁昌する一つの商業的な企業であらねばならぬ。

   然る後に初めて演劇は芸術の領域に自己の地位を確保することを許容される。
   二つの目標を同時に結びつけねばならぬ怖るべき二者選一、それは演劇の
   地位をあらゆる追従とあらゆる妥協の面の上に置く。

   現実的なものと精神的なものとが結びつき、相対立する必然とは正にかくの
   如きものであって、これを以てすればわれわれの職業の苦い快楽も、
   その憐れむべき偉大さも一挙に説明することが出来る。(鈴木力衛訳)」

   こういうことなんだよ。

日下:四季の理念の根本にはこの考え方がある。
 ------------------------------------------------------------

●いかがでしょうか。「演劇の問題はただ一つだけだ。それは当たるか当たらないかの問題だ。当たりなくして演劇はない。」とは何たる痛快な断言でしょう。

そしてのちにこう続くのがまたまた明快です。

「演劇は先づ一つの事業、繁昌する一つの商業的な企業であらねばならぬ。然る後に初めて演劇は芸術の領域に自己の地位を確保することを許容される。(後略)」

これは演劇の問題だけではありません。一般の事業においてもまさしく当てはまるはずです。それはこうなります。

事業の問題はただ一つだけだ。それは利益が出るか出ないかの問題だ。利益なくして事業はない。事業はまず一つの繁昌する商業的な企業であらねばならぬ。然る後に初めて事業は理念や思想の領域に自己の地位を確保することを許容される。」(「がんばれ社長!」訳)

●劇団四季の考え方がすばらしいというよりは、ルイ・ジュヴェの「演劇論」の方を賛美すべきかもしれませんが、劇団四季の場合はその徹底度合いが並外れているから、賞賛に値するのではないでしょうか。

●昨今の経営環境のなかでも最高益を更新している会社のほとんどが、理念を際だたせている会社であることにも注目したいものです。

2009年04月17日(金)更新

リーダーの魅力

●ある日、無精ひげを剃らないままいつも行っているカフェにいったところ、女性店員に「ちょい悪オヤジみたいですね」と言われました。

●気をよくした私は、それから一週間ひげを剃らなかったのですが、外見をちょっとだけ不良オヤジっぽくしてみたところで、中味が変わらなきゃ意味がないと悟り、結局、ひげはきれいさっぱり落としました。人の中味は生き様で決まるので、どうせならそちらを魅力的にしたいものです

●特に企業のトップである社長は、表面的なビジュアルや発言内容ではなく、生き様が一貫していなければ、魅力が生まれてきません。もちろん、人間ですから悪戦苦闘し、失敗もすることもあるでしょうが、目指すものがぶれてはいけません。

●また、欠点がいくつかあったとしても、人にはない長所があればそちらのほうが魅力となるでしょう。魅力とは、人として欠点がないこと大事なのではありません。たとえ欠点があっても、それ以上に大きな長所があるからこそ、魅力が生じてくるのです
●旧約聖書でも、ダビデがゴリアテを倒したとき、街中大騒ぎになり彼をイスラエルの英雄として扱いました。そのダビデ自身は欠点も多く、ひどいケースだと、自分の部下の奥方に惚れてしまい、奥様ほしさに部下を戦死させたりしています。そんなひどい悪事もしていますが、それを上回るだけの大きな魅力があったからこそ、旧約聖書を代表するヒーローになったのでしょう。

●論語のなかで孔子はこう語っています。

「その知及ぶべし、その愚及ぶべからざるなり」

その意味は、彼の賢い点は真似ができるけれども、馬鹿っぷりは到底まねができないということです。めずらしく孔子が、ある人物の愚のみごとさをほめたたえているのです。

●ダビデにも論語にも共通する人間の魅力とは、次の5つにまとめられるのではないでしょうか。

1.誰にも負けない強みがある(長所)
2.人よりはるかに劣るような弱みがある(短所)
3.それらを隠そうとしない(裏表なし)
4.バカなことができる(愚)
5.周囲が想像できないほど高い志がある(イチローのような孤高な「志」)

2009年04月10日(金)更新

情熱のマネジメント

●フランスの啓蒙家、ラ・ロシュフーコーは「人間の心の中では情熱の不断の生殖が行われていて、一つの情熱の消滅はもう一つの情熱の出現と、ほぼ決まっている」と語っています。この意見が正しいかどうかはわかりませんが、『孟子』も「心を養うには欲をすくなくするよりいい方法はない」と教えています。情熱は、ここぞという時に一気呵成に使うべきであって、チョロチョロと小出しにしていては大した仕事はできないという意味でしょう。

●情熱量の最大値が100ポイントのAさんがここにいるとします。彼は何事にも才能豊かで、本業の経営も、業界活動も、趣味のスポーツも、子供の教育も、地域活動も熱心に行なっています。彼が、それぞれに情熱を分散して使った結果、本業経営に投入できた情熱を60ポイントとしましょう。

●さらにAさんは、本業経営の中で動いている6つのプロジェクトに関心を分散しています。本業に注ぎ込んだ60ポイントを6で割ると、1つの案件にはそれぞれ10ポイントずつ投入していることになります。

●一方、情熱量はAさんよりはるかに見劣りするBさんは、最大で60ポイントの情熱しかもっていません。ところが、彼は不器用なため本業の経営に徹していること、その中でも事業の領域をしぼりこんでいるので、1つのプロジェクトに15ポイントずつ割くことができたとします。もし、AさんとBさんが同じ業界で働いていたとすると、きっとBさんの会社が勝つことでしょう

●ここに「小」が「大」に勝ち、「弱者」が「強者」に勝つ戦略があるのです。才能でも資金でも人材でも、見劣りする企業や個人が勝つときは、こうした一点集中しているときだけなのです
●さらにロシュフーコーはこうも言っています。

「小さなことに熱中してしまう人は大きなことができなくなる」

量の個人差はあるにしろ、人は情熱の対象なしでは生きていけません。その情熱の対象はしっかりとマネジメントすべきであり、あなた自身の大切な仕事なのです。小さなことに熱中してしまって、大きなことをおろそかにしていないかどうか、ときどき点検する必要があるでしょう

●私は一年に四冊の手帳を使います。いつも同じ手帳を使うのですが、四半期ごとにまっさらな手帳を卸しているのです。そうすることで、お正月のときの神聖な気分を奮い起こし、大きなことに挑もうとしているのです。今年も第一四半期が終わって、今の私の手帳はまっさらです。

あなたは「情熱のマネジメント」をどのようにされているのでしょうか
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ボードメンバープロフィール

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武沢 信行氏

1954年生まれ。愛知県名古屋市在住の経営コンサルタント。中小企業の社長に圧倒的な人気を誇る日刊メールマガジン『がんばれ社長!今日のポイント』発行者(部数27,000)。メルマガ読者の交流会「非凡会」を全国展開するほか、2005年より中国でもメルマガを中国語で配信し、すでに16,000人の読者を集めている。名古屋本社の他、東京虎ノ門、中国上海市にも現地オフィスをもつ。著書に、『当たり前だけどわかっていない経営の教科書』(明日香出版社)などがある。

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